著者
半田 知也
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.45-52, 2012
被引用文献数
2

アナログ映像からデジタル映像への技術進展、3次元(3D)映画の公開などを背景に、家庭用3Dテレビ、ゲームの発売、複数の放送局が3D番組放送を開始するなど、3D映像は映像文化として定着の兆しを見せ始めている。現在主流である二眼式3D映像は、2台のカメラで簡単に立体空間を再現できる反面、不適切な空間映像を作りやすく、生体安全性について懸念されている。近年の3D映像は、3D映像制作ガイドラインの準拠、映像編集における技術革新、小児に対する視聴制限などにより生体安全性を最大限考慮されて製作されている。しかしながら、3D映像の生体安全性の担保には視聴者の3D映像への理解及び3D映像の適切な視聴法が重要となる。両眼視機能の専門家である視能訓練士は、3D映像を含む映像技術に対する理解を深め、その効果と注意点を客観的に評価し、社会に啓発する必要がある。現在、3D映像は映像メディアとしてだけではなく、教育・医療応用が注目されている。特に3D映像技術そのものを応用できる眼科検査応用への展望が開けてきた。<BR> 本稿では3D映像の現状について概説し、視能訓練士の立場から3D映像の視機能への影響及び、3D映像技術の視機能検査・訓練応用について述べる。
著者
常盤 純子 石川 奈津美 山本 莉奈 竹下 孝之 中澤 徹
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.257-262, 2014 (Released:2015-03-19)
参考文献数
11
被引用文献数
1

調節痙攣は毛様体筋の不随意的な持続的収縮により過剰な近視を呈する病態であり、その多くは心因性である。調節は通常両眼対称性に生じる反応であることから、心因性の調節痙攣も一般的には両眼性で生じ、片眼性での報告は希である。今回我々は、片眼性の調節痙攣と心因性視覚障害が合併した特異な症例を経験したので報告する。 症例は14歳女性。左眼の視力低下を自覚し近医を受診、他覚的にあきらかな異常が認められなかったため精査目的で当院を紹介され受診した。左眼は通常の視力検査では視力が出ず、トリック法を用いると良好な矯正視力が得られた。また視野検査では求心性視野狭窄を認めた。細隙灯検査や眼底検査などの他覚的検査で異常は見られなかったことなどから、心因性視覚障害と診断された。また、右眼に比べ左眼のみ過度の近視化が認められたが、調節麻痺下では屈折値に左右差はなく、眼軸長も左右差がなかったことから、左眼の片眼性調節痙攣が疑われた。 その後、経過観察中に矯正視力の変動を繰り返し、トリック法を用いても良好な視力が得られなくなり、自覚的視力は無光覚まで低下するようになった。それと同時期に輻輳痙攣も見られるようになった。 調節痙攣に対する治療として、累進屈折力レンズや調節麻痺剤の点眼を使用したが、十分な改善は得られず、輻輳痙攣が若干軽減した程度であった。片眼性の調節痙攣と心因性視覚障害という特異な所見を呈し、各種治療にも抵抗性であったが、その後の生活環境の変化で心理的ストレスが軽減された様子があり、発症1年後には自覚症状は改善し、調節痙攣などの所見は自然消失した。
著者
佐藤 宏道 勝山 成美
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.154-160, 1993-12-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
30
被引用文献数
1

サルの大脳皮質一次視覚野(V1)の機能と構造の関連を理解する枠組を概説するとともに,V1が視覚中枢の中でどのように位置付けられるのかを最近の知見を交えて概説した.V1の機能構築を理解するには,網膜部位再現,層分化,ニューロン活動の刺激特異性,機能円柱などについて知ることが重要である.また視覚情報の流れとV1の役割を機能面および構造面から理解するのには,視覚刺激の運動や立体視の情報を運ぶ大細胞系(magnocellular system)と,形態や色などの情報を運ぶ小細胞系(parvocellular system)というV1にいたるまで並列な2つの経路の違いを知ることが助けとなる.両系によってV1に入力された情報は,それぞれの刺激特徴を専門に処理する並列な計算モジュールである機能円柱内で層間の階層的な処理を経た後,高次視覚野に分配出力される.視野の一点の情報を処理している各々のV1ニューロンの活動が,視野全体の再構築のためにどのように統合されているかについては不明の点が多いが,光学的計測法など新技術を導入した研究によってこの問題について新たな発展が期待される.
著者
石田 篤行 益子 直子 箕輪 美紗斗 湯田 兼次
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.201-206, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
18

【目的】生体共焦点顕微鏡を用いて、流行性角結膜炎(以下、EKC)の急性炎症後に角膜混濁を残した症例の角膜障害について検討した。【対象および方法】対象は、きくな湯田眼科にてEKCの急性炎症後、角膜混濁を残した症例10名19眼(8歳~77歳、平均年齢39.4歳:男性7名、女性3名)とした。方法は、生体共焦点顕微鏡を用いて角膜各層および角膜神経叢の観察を行った。また、Cochet-Bonnet角膜知覚計を用いて角膜知覚の測定も行った。【成績】すべての症例において、角膜内皮、実質深層に大きな異常は見られなかった。一方、実質浅層には細隙灯顕微鏡で観察された混濁に相当する異常所見が見られた。特に基底下神経叢では神経密度の低下、神経線維屈曲度の異常などの神経障害を意味する所見が捉えられた。また、平均角膜知覚は2.10±0.44g/m3で有意差を認めた。(Aspin-Welchのt検定、p<0.001)【結論】今回、EKC急性炎症後に角膜混濁を残した症例で角膜神経叢に異常所見が捉えられた。この結果より、角膜神経叢の障害が重度の場合、神経叢のリモデリング(再構築)の異常をきたすと推定される。そのため、神経由来の再生因子に障害を生じ、角膜混濁など病変の治癒が遷延化することが想定される。
著者
五十嵐 千里 友成 恵 税所 信子 杉谷 邦子
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.78-82, 1994-12-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
4

3歳から13歳までの不同視弱視20例に対し,アイパッチ等による遮蔽により患眼視力が0.5に達した段階を開始点とし,患眼に比べ四段階健眼の視力を低下させる漸増遮蔽膜(Ryser社製)を眼鏡に貼り終日遮蔽を試みた.(0.1)遮蔽膜から貼り,患眼の視力向上に伴い遮蔽膜の程度を漸減していった.診断後まもなくこの方法で治療したA群は順調に視力が向上した.これまでアイパッチでの遮蔽を拒んでいた比較的年齢の高いB群も本方法を受入れ,視力が向上し始めた.患眼視力1.0に達した10例の平均治療期間はA群で16.3月(6~29ヵ月),B群で30.5ヵ月(30~31ヵ月),そのうち遮蔽膜での平均治療期間はA群で11.9月(5~17ヵ月),B群で20ヵ月(17~23ヵ月)であった.
著者
横山 大輔 瀧川 円 小野 しずか 新井 紀子 古吉 三紀 古吉 直彦
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.161-166, 2014 (Released:2015-03-19)
参考文献数
9
被引用文献数
1

【目的】糖尿病眼筋麻痺は予後が比較的良好といわれているが微小な偏位や自覚症状の残存する症例をしばしば経験する。今回当院の糖尿病眼筋麻痺について臨床所見ならびに予後とその関連因子について検討した。【対象と方法】対象は2004~2013年に糖尿病眼筋麻痺と診断した14例である。発症年齢33~91歳。検査は交代プリズム遮閉試験、Bagolini線条鏡を用いた融像野試験、眼球運動検査、ヘモグロビンA1c(HbA1c)等を行った。深井らの後天性眼球運動障害の治癒基準に従った8)。経過観察期間は1か月~2年である。【結果】眼筋麻痺は全例が一側の単独神経麻痺を生じ、3例に他の神経に再発を認めた。内訳は動眼神経7眼、滑車神経4眼、外転神経6眼であった。治癒例は14例中10例(71%)であった。治癒までの期間は平均2.6か月であった。残存例は4例(29%)であった。残存例は、発症から5か月以上経過しており、動眼神経麻痺の上下筋障害が多かった。発症時のHbA1c7%以上は14例中11例(79%)に認めた。発症時のHbA1cが7%以上、血糖コントロール不良例、糖尿病罹病期間5年以上の症例に残存が多かった。また2例は眼筋麻痺発症が糖尿病発見の契機になった。【結論】糖尿病眼筋麻痺で残存例を29%に認めた。血糖コントロールは予後に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
高田 有希子 奥出 祥代 林 孝彰 月花 環 片桐 聡 北川 貴明 久保 朗子 小島 博己 常岡 寛
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.153-159, 2014 (Released:2015-03-19)
参考文献数
25

【目的】心因性視覚障害で、色覚異常を主訴として眼科受診するケースは少ない。今回、一過性の聴力障害後に、色覚異常を訴えた心因性視覚障害の1例を経験したので報告する。【症例】15歳女性。2013年1月頃より、一過性の左聴力障害を認めていたが、経過観察していた。同年2月右眼の色覚異常を自覚し、近医眼科を受診。同年3月精査目的にて当科受診となった。矯正視力は右眼1.5、左眼1.2であった。左右眼ともに前眼部、中間透光体、眼底に異常所見は認めず、Goldmann動的量的視野は正常で、網膜電図の潜時・振幅は正常範囲内であった。石原色覚検査表の分類表誤読数は右8表、左4表。パネルD-15では右fail、左passであった。Farnsworth-Munsell 100 Hue Test(F-M 100 Hue)の総偏差点は右148(正常範囲外)、左84(正常範囲内)であった。精査中、頭部MRIにて左聴神経腫瘍を認めた。2013年6月頃には自覚症状の改善を訴えており、同年7月再度色覚検査を行ったところ、石原色覚検査表誤読数は右2表、左1表。パネルD-15は左右眼それぞれpassと改善がみられた。F-M 100 Hueの総偏差点は右108、左124(ともに正常範囲外)であった。【結論】発症時、高校受験勉強の最中であり、一過性の左聴力障害などストレスとなる背景がいくつか存在していた。明らかな視路疾患や眼疾患がなかったことから、色覚異常は重複したストレスによる心因性視覚障害が原因であると思われた。
著者
秋山 優子 大熊 志保 平石 剛宏 金子 博行 林 孝雄 溝田 淳
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.119-122, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
10

片眼視力障害者の視力不良性外斜視に対し、手術を施行することはよく行われるが、両眼の失明者に対して手術が施行された症例の報告は、我々が調べ得た限りではみられなかった。今回両眼失明者の外斜視(外転偏位眼)に対して手術を行い、患者の精神的なQOL(quality of life)が向上した1例を経験したので報告する。 症例は61歳男性。ベーチェット病による続発性緑内障にて両眼失明。左眼は失明後に有痛性眼球癆となり、眼球摘出後に義眼を装着している。今回、残存している右眼が徐々に外転位に偏位し始め、他人からの指摘が気になったため、本人の強い希望にて眼位矯正手術を施行した。術後眼位は良好となり、患者本人の精神的な負担がなくなりQOLの向上に繋がった。 結論として失明眼による外転偏位眼に対しても、本人の希望があれば患者のQOL向上のため、今回のような手術を行うことは有用であると思われた。
著者
秋山 優子 大熊 志保 平石 剛宏 金子 博行 林 孝雄 溝田 淳
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.119-122, 2012

片眼視力障害者の視力不良性外斜視に対し、手術を施行することはよく行われるが、両眼の失明者に対して手術が施行された症例の報告は、我々が調べ得た限りではみられなかった。今回両眼失明者の外斜視(外転偏位眼)に対して手術を行い、患者の精神的なQOL(quality of life)が向上した1例を経験したので報告する。<BR> 症例は61歳男性。ベーチェット病による続発性緑内障にて両眼失明。左眼は失明後に有痛性眼球癆となり、眼球摘出後に義眼を装着している。今回、残存している右眼が徐々に外転位に偏位し始め、他人からの指摘が気になったため、本人の強い希望にて眼位矯正手術を施行した。術後眼位は良好となり、患者本人の精神的な負担がなくなりQOLの向上に繋がった。<BR> 結論として失明眼による外転偏位眼に対しても、本人の希望があれば患者のQOL向上のため、今回のような手術を行うことは有用であると思われた。
著者
國松 志保
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.17-19, 2013

眼科診療では、眼科医と視能訓練士との共同作業である。よりよい診療のためには、自分の検査・診断結果が、どのように患者の日常生活と関わっているのか、興味をもつことも、時には必要である。<BR> 緑内障患者の場合は、初期のみならず、視野障害の進行した後期から末期であっても、自覚症状がないことが多い。日常臨床の場で、「おかわりないですか?」「はい、かわりはありません」・・このような会話が、数多く繰り返されているのではないかと思う。しかし、本当に「おかわり」ないのだろうか?新しい薬剤や手術デバイスが登場し、画像解析の発展によりさまざまな新知見の得られている緑内障の分野だが、日常生活との関連については、今なお、不明瞭な点が多い。<BR> 本講演では、緑内障患者の「眼圧」・「視野」と日常生活との関連に注目したい。まず、「眼圧」については、「コーヒーを飲むと眼圧は上がる?」「運動すると眼圧は下がる?」等について、実際には、どのような研究が行われ、どこまで分かって、何が分かっていないのか、わかりやすく紹介したい。次に、「視野」については、視野欠損が読書に与える影響について考える。さらに、緑内障が悪化してしまった場合に、公共の交通網の乏しい地方では避けられない自動車運転の問題について、後期緑内障患者(両眼ともハンフリー視野中心24-2プログラムにてMean Deviation<-12dB)の自動車運転実態調査の結果を紹介する。また、本田技研工業の協力のもと開発した、緑内障患者用ドライビングシミュレータ(HondaセイフティーナビGlaucoma Edition)を用いた最新の研究成果についてもお話したいと思う。
著者
野矢 正 山中 忍
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.87-90, 2004-07-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
3

オートレフラクトメータには、両眼開放タイプと内部視標タイプがある。両種のオートレフラクトメータと自覚的屈折検査を比較して調べたので報告する。対象は、当院へ来院した患者43名の85眼で、年齢は6歳から78歳であった。両眼開放タイプとしてGRANDSEIKO-WR5100Kまたは、SHIN-NIPPON Nvision-K5001を、内部視標タイプとしてNIDEK AR-600Aまたは、NIDEK AR-1100を使用した。検査結果の球面値(S)および乱視度(C)を集計した平均値と標準偏差は、内部視標タイプS-3.515D±2.842D C-0.923±0.692D,両眼開放タイプS-3.132D±2.570D C-1047±0.753D,自覚的屈折検査S-2.869D±2.631D C-0.601±0.635D,であった。自覚的屈折検査に比較して、内部視標オートレフが球面値及び等価球面値で有意(t検定危険率5%)に近視傾向を示した。このことは、両眼開放オートレフの方が自覚的屈折検査により近い値であることを示唆している。眼鏡処方の時に両眼開放の自覚的屈折検査を行っている。一方、他覚的屈折検査にあっても両眼開放オートレフが自覚的検査に近い等価球面値であり、内部視標オートレフの値から自覚的屈折検査を始めるよりも有効であろうと思われた。球面値、乱視度、軸の全てが自覚的屈折検査と合致する例は皆無であり、自覚的屈折検査の重要性を再認識した。
著者
金谷 まり子
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.47-60, 2010 (Released:2011-03-28)
参考文献数
47
被引用文献数
1 1

多くの顔を持つと言われる間歇性外斜視の治療は古くて新しい問題である。 運動面では、せっかく手術をしても、術前、術後の視能矯正的管理がきちんと行われていなければ、多くの症例に戻りが見られ、手術を繰り返している症例も多い。一方視能矯正訓練においても、感覚面の状況をきちんと把握できず、見かけの輻湊訓練等のみを行っていることにより、せっかくの効果を得られていないことも多い。間歇性外斜視の治療においては、感覚面の治療なくしては、間歇性外斜視から、外斜視状態(tropia)をなくした外斜位(phoria)への完全治癒はあり得ないと考える。間歇性外斜視における感覚面で重要なのは、耳側網膜抑制状態であり、そのため、間歇性外斜視の感覚面の視能矯正的検査においては、この抑制状態をきちんと検査、把握することが大切である。 この感覚面の状態把握が大切なことは、今も昔も変わらず、間歇性外斜視の視能矯正的検査の基本である。したがって、1996年の日本視能訓練士協会の講演会シンポジウム「間歇性外斜視」の「間歇性外斜視の視能矯正的検査法」でも述べたことが基本である。その基本的視能矯正的検査を振り返り、特に、間歇性外斜視の病態像の中心である抑制状態の把握、治療方針決定に重要な眼位(最大偏位量)測定方法、その偏位量測定には欠かせない固視視標の重要性と意義、そして抑制検出にもつながる視能矯正的輻湊検査の理論と検査内容の把握について述べた。
著者
原 涼子 奥出 祥代 林 孝彰 北川 貴明 神前 賢一 久保 朗子 郡司 久人 常岡 寛
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.107-111, 2011 (Released:2012-02-22)
参考文献数
11

目的:心因性視覚障害は、視力障害や視野障害の他に色覚異常を訴えることが多い。今回、心因性視覚障害と診断され、片眼の色感覚が消失した1例を経験したので報告する。症例:16歳、女児。右眼で見た時の色感覚の消失を自覚し、近医を受診。2009年6月に東京慈恵会医科大学附属病院眼科へ紹介受診となった。症例は高校生であり、部活動に加え生徒会や学校行事など、学校生活の中で様々な役割を担っており忙しい毎日を過ごしていた。矯正視力は右眼(1.5)、左眼(1.5)であり、右眼のGoldmann視野は、V/4イソプターのらせん状視野、I/4からI/1イソプターの求心性視野狭窄を呈した。色覚検査として、仮性同色表、New Color Test、色相配列検査を片眼ずつ行い、いずれの検査も右眼のみ強度の色覚異常が検出された。特にNew Color Testでは有彩色と無彩色を分けることが難しく、主訴と一致する結果であった。全視野刺激網膜電図における杆体反応・錐体反応の潜時・振幅は正常範囲内であった。頭部MRIに異常所見はなかった。心因性視覚障害と診断し、経過観察していたところ、2010年2月に、色覚が改善したと本人から報告があり、2010年5月に再度色覚検査、視野検査を行ったところ、結果は全て正常であった。経過中、左眼の視機能異常は検出されなかった。結論:心因性視覚障害と診断されたのが、文化祭の実行委員になった直後であったことから、ストレス等による環境的・心理的要因がその背景にあると考えられた。