著者
西田 ふみ 高木 満里子 杉下 陽子 堀田 明弘 根木 昭
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.195-199, 1998-07-10 (Released:2009-10-29)
参考文献数
8

BRADDICK RANDOM-DOT GRADED STEREO SLIDES®(以下,RANDOM-DOT SLIDESと略す)を用いて,間歇性外斜視の遠見立体視機能について検討した。結果はRANDOM-DOT SLIDESでは720″の視標での正答率は70.4%,360″までは72.6%,180″までは58.1%,90″までは46.8%であった。
著者
重冨 いずみ 原 道子 倉田 美和 東垂水 きみ子 塚本 和子 白数 純也 湖崎 淳 湖崎 克
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.197-202, 2001-07-15 (Released:2009-10-29)
参考文献数
5

視野異常がある患者から遠近感がつかみにくいと耳にすることがある。このことから緑内障性視野異常のある患者において立体視機能がどの程度あるのか、また立体視に影響を及ぼす視野異常の部位について検討した。対象は当院にて経過観察中の緑内障患者49名(平均66.8±11.6)才で、矯正視力0.7以下、±7D以上の屈折異常、2D以上の不同視、無水晶体眼、斜視、および眼底疾患を有する患者は除外した。遠見立体視はニコンツインチャート、近見立体視はチトマスステレオテストを用いた。緑内障の病期分類はゴールドマン視野計を用いて、湖崎分類で判定し、中心部10度以内の視野はハンフリー視野計を用いて評価した。視野障害が進行している方の眼の病期がIII b期までは立体視機能は良く保たれていた。しかし、IV期になると立体視機能は著しく低下した。中心視野で鼻下側の障害がある症例では、立体視が不良である傾向があった。中心視野の極めて狭い症例では近見の立体視検査で視標の大きさによって結果にばらつきがあった。これらの症例では小さな視標では立体視が良好であったが、大きな視標では逆に不良であった。
著者
鈴木 美加 比金 真菜 佐藤 千尋 松野 希望 齋藤 章子 森 隆史 橋本 禎子 八子 恵子 石龍 鉄樹
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.147-153, 2017 (Released:2018-03-17)
参考文献数
17
被引用文献数
2

【目的】3歳児健康診査における視覚検査(以下、3歳児健診)において、Retinomax®とSpot™ Vision Screenerの2機種を用いて、自然瞳孔での屈折検査を施行したので、その結果を報告する。【対象及び方法】対象は、福島市の3歳児健診を受診した71名の142眼である。Retinomax®とSpot™ Vision Screenerを用いて自然瞳孔での屈折検査を施行し、2機種の等価球面屈折値および円柱屈折値を比較した。【結果】Retinomax®とSpot™ Vision Screenerともに71名の全受診児で、両眼の屈折値の測定が可能であった。等価球面屈折値は、Retinomax®では-1.19±1.14D(平均値±標準偏差,範囲:-5.00~+4.00D)、Spot™ Vision Screenerでは+0.28±0.56D(-1.125~+3.75D)で有意差を認めた(Wilcoxon符号付順位検定,p<0.001)。等価球面屈折値が近視と測定されたものは、Retinomax®では121眼(85%)、Spot™ Vision Screenerでは30眼(21%)であった。円柱屈折値は、Retinomax®では0.54±0.50D(0.00~2.50D)、Spot™ Vision Screenerでは0.73±0.56D(0.00~3.00D)で有意差を認めた(Wilcoxon符号付順位検定,p<0.001)。【結論】Spot™ Vision ScreenerはRetinomax®に比較し、等価球面屈折値が遠視に測定される傾向にある。この結果は、Spot™ Vision Screenerでは器械近視が誘発されにくいためであると考えられる。したがって、Spot™ Vision Screenerは、健診において自然瞳孔で弱視の要因となる屈折異常をスクリーニングする精度をあげる機器として期待される。
著者
中村 桂子 濱村 美恵子 野邊 由美子 澤 ふみ子 菅澤 淳 森下 清文 内海 隆
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.154-159, 1991

中途視覚障害者に弱視用テレビ式拡大読書器Closed Circuit Television(以下CCTVと略す)を導入し,実際の活用状況について検討を行ったので報告する.対象の視力は0.04~0.35の5症例で,その中の3例は視野異常を有している.使用機種としてミカミのTOP-01とナイツのビジョンスキャナを使用した.<br>その結果,ルーペが役に立たない症例においても文字使用が可能となり,羞明感が強かった症例には白黒反転が有効であった.しかし現実には『見やすさ』は評価しながらも疲労感が強く使用頻度は一週間に10~30分程度と十分活用ができていない状況であった.それでも患者自身にとっては精神面での支えとなり,本人の満足度が高かった.導入に際しては慎重な対応が必要で,1ヶ月程度の試用期間を設けることが理想である.<br>また,経済的な面を考慮して家庭にあるビデオカメラを利用して簡易CCTVを作ることも可能なので,その具体例なども提示する.
著者
松本 富美子 大牟禮 和代 富山 園子 谷田 清美 田野上 恭子 大鳥 利文
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.157-163, 1997-07-20 (Released:2009-10-29)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

間歇性外斜視の症例に対し,斜位化を目的とした視能訓練を行なった。症例は5例で,年齢は8歳~13歳8ヵ月,斜視角は,近見時は20Δ~25Δ,遠見時は10Δ~20Δであった。訓練方法は,Flashing methodによる抑制除去訓練,Framing cardによる生理的複視認知訓練, Stereo cardやプリズムによる融像訓練を順次行なった。抑制除去訓練は院内で,他の訓練は主に家庭で1日2~3回,1回5~10分程度行ない,全訓練期間は平均14.6週間であった。結果,訓練前は間歇性外斜視であった5例全例が,訓練後には抑制が除去され融像力が強くなり,各むき眼位や各距離で安定した外斜位になった。間歇性外斜視に対する視能訓練は有用で,特に抑制除去訓練を行なうことが斜位化するために有効であると考えた。
著者
間原 千草 三村 治
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.25-34, 2011 (Released:2012-02-22)
参考文献数
21
被引用文献数
1

麻痺性斜視とは眼球運動制限を伴った斜視で、水平斜視だけでなく上下斜視、回旋斜視なども含まれる。特に、上下斜視や回旋斜視では、患者の強い複視や眼精疲労のため日常生活に支障をきたしているにもかかわらず、一見斜視に見えないことや眼球運動制限が肉眼的に分かり難いことから、診断がつかず心因性や詐病として扱われているケースもある。 このような患者を見逃すことなく、診断が行われるためには的確な検査が非常に重要である。 本稿では、臨床的に頻度の高い外転神経麻痺と滑車神経麻痺に重点を置いて、視能訓練士が実際に行っている検査とその注意点、コツについて症例を呈示しながら述べたい。
著者
小鷲 宏昭 西岡 大輔 山口 咲子 安達 恵利香 松岡 久美子 林 孝雄
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.231-237, 2017

<p><b>【目的】</b>色覚検査において正常と診断されても色弁別能が弱いものは、Low normal color visionと呼ばれる。今回我々は、色覚検査では正常色覚と診断できるが、アノマロスコープにて混色等色域の拡大がみられる、Low normal color visionと考えられた父娘例を経験したので報告する。</p><p><b>【症例】</b>17歳、女子。母親に色覚異常を指摘され来院した。今まで色覚検査を受けたことはなく、私生活においても不便さを感じていなかった。石原色覚検査表Ⅱで誤読3表、Panel D-15はminor errorsであった。アノマロスコープでは正常Rayleighにて混色30-40へ等色範囲の広がりがみられたが、1型・2型Rayleighでは等色は起こらなかった。日常生活では赤と茶、青と緑を誤認することがあった。後日、両親に色覚検査を施行し、母親は全検査において正常であった。父親は石原色覚検査表Ⅱにて誤読1表、Panel D-15はno errors、アノマロスコープにて混色35-40へ等色範囲の軽度な広がりがみられたが、色誤認の経験はなかった。</p><p><b>【結論】</b>父娘ともアノマロスコープにて等色域の拡大がみられたことから、Low normal color vision と考えられた。石原色覚検査表やPanel D-15においておおむね正常と判定されても、僅かな誤りがある場合はアノマロスコープで精査することが重要である。</p>
著者
深井 小久子 早川 友恵 難波 哲子 逸見 裕子
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.37-40, 1981

In the recent examination method of stereopsis, a target with random dots having a real depth, such as the Frisby test, has been developed. As an objective method of binocularity test, the binocular effect of VECP was examined comparatively on several kinds of real solid target. Visual stimulation was given by the binocular liquid crystal electric shutter which triggered an average computer to induce a steady state VECP.<br>Target with less uneven surface such as flat checkerboard pattern, white plaster bust, panel of the Frisby test and projected doll's slide on screen induced a binocular excitation of VECP up to &radic;2 times.<br>Target with rich uneven surface such as a French doll with tucked skirt and building of black and white wooden blocks induced a remarkable increase of binocular excitation up to &radic;4 times. Consequently, for the objective test of binocularity by VECP, building of wooden blocks was found to be the best stimulating target since the building could indicate an amount of disparity from the Vieth-M&uuml;ller circle.
著者
井上 恵子 上岡 康雄 仲泊 聡
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌
巻号頁・発行日
vol.28, pp.245-251, 2000

低視力者に対する視覚補助具の中で強度凸レンズ眼鏡の果たす役割について検討した。対象は矯正視力0.4以下の低視力者18名で、男性9例、女性9例であり、年齢は16歳から84歳、平均56.4歳である。処方した視覚補助具の内訳は、ルーペが最も多く18例中11例・61%で処方され、ついで強度凸レンズ眼鏡7例・39%で、その他拡大読書器3例、単眼鏡および弱視眼鏡が3例、遮光眼鏡が2例であった。2種類以上の補助具を併用した症例は9例であった。強度凸レンズ眼鏡の加入度数は+6.0Dから+12.0Dまでで平均+8.0Dであった。両眼視が可能であった症例は7例中4例で、単眼使用の3例は他眼の視力が指数弁の症例、恒常性外斜視の症例、および不同視の強い症例であった。強度凸レンズ眼鏡は読書距離が短くなる欠点はあるが、通常の眼鏡と同様の外観を有する点で心理的に患者に受け入れられやすく、ルーペと異なり両手が自由になるため書字を希望する人に適しており、加入度が+8.0D以下であれば両眼視が可能であることも多く、また場合によっては2重焦点眼鏡として遠近両用にすることも可能である。さらに特別な視覚補助具のトライアルセットを備えていない一般眼科外来で処方・訓練を行なうことができるなど多くの利点を持っていることから、中等度以下の低視力者に対して積極的に利用されるべきだと思われる。
著者
星原 徳子 岡 真由美 通堂 小也香 橋本 真代 森 壽子 長島 瞳 河原 正明 藤本 政明
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌
巻号頁・発行日
vol.46, pp.119-128, 2017

<p><b>【目的】</b>言語聴覚士(ST)が所属する医療機関より精査目的で受診した発達障害児の眼科的評価および治療法を分析し、視能訓練士(CO)の発達障害児に対する視能評価を通した医療連携と発達支援について検討した。</p><p><b>【対象・方法】</b>対象は、発達障害児17例(未就学児9例、就学児8例)で、初診時年齢は2歳8か月~12歳9か月(中央値6歳1か月)であった。発達障害にかかわる診断名は、自閉症スペクトラム障害、注意欠如多動性障害、学習障害、発達性協調運動障害、言語発達障害、構音障害、これら合併例であった。</p><p><b>【結果】</b>STからの紹介理由は、視覚的問題12例、視行動の問題6例、家族歴に伴う精査目的3例に大別された(重複例を含む)。視覚的問題の内訳は、眼位異常4例、頭位異常3例、片目つぶり2例、注視・追視困難1例、眼鏡装用不十分3例であった。これら12例中11例が弱視または斜視等による視能障害があると診断された。視行動の問題を有していた6例全例が、弱視または斜視と診断された。治療は、外斜視手術施行2例、健眼遮閉法1例、両下眼瞼内反症手術1例(重複例を含む)であった。また、全例に屈折異常があり、等価球面値±0.75D以上の症例14例(82%)において屈折矯正を行った。</p><p><b>【結論】</b>COとSTの医療連携により、COは早期に視能評価と視能矯正を実施することが可能であった。COは、視知覚認知課題の遂行に視覚入力系を整える役割があった。</p>
著者
玉井 ひろみ 豊永 友紀 長澤 佳恵 堀 浩子 津村 晶子 佐々木 奈穂 福井 智恵子 岩下 憲四郎 弓削 堅志 岡見 豊一 山岸 和矢
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.121-125, 2001-07-15 (Released:2009-10-29)
参考文献数
8

遠方視力検査は5mとされているが、1.1mの距離で検査を行えるスペースセイビングチャート®(SSC-330 Type II、ニデック社、以下SSC)の有用性を検討したので報告する。症例は小児22例、成人105例。小児は5~8歳、9~12歳の症例に分けて検討した。成人は屈折異常のみ、偽水晶体眼、白内障の症例の測定を行った。さらに白内障では、核白内障、皮質白内障、後嚢下白内障に分けて、それぞれ裸眼視力、矯正視力、等価球面値の差について比較検討した。その結果、各症例ともSSCと5m視力表における裸眼視力、矯正視力はよく一致しており、等価球面値の差も0.1D以下で調節介入は見られなかった。使用して感じた利点は1.省スペースとして有用、2.他人に視標が見えないためプライバシーの保護ができる点であった。一方、欠点は1.視標の数が0.1以下で少なく低視力者に使いにくい、2.正面でしか視標が見えないので視野が狭いと視標が見つけにくいのではないか、という点であった。
著者
平島 ユイ子
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.29-33, 2014 (Released:2015-03-19)
参考文献数
5

学習障害の一つである読み書き障害の主な原因は音韻意識(音に対応する文字の記憶や音声からの意味の想起など)の育ちにくさであるが、視機能の問題を併せ持つこともある。視機能の問題があると読み書きはより困難になる。周囲が視機能の問題を理解し、支援するためには、学校でどのような困難さが現れるのかを明らかにする必要があった。そこで、視機能の問題を持つ学習障害児1症例の学校における困難さを明らかにし、支援について検討した。症例は視機能に問題があることに8歳で初めて気づいた。書字の特異な部分省略と文字が動くという訴えによって眼科受診し、斜視と診断された。フレネル膜付き眼鏡が処方されたことで文字のずれや省略が軽減した。また、照明や文字の拡大等の支援を学校で得ることで視覚的な困難さが減り、読み書きを伴う学習に取り組める様になった。
著者
星原 徳子
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.69-71, 2004-07-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
4

フレネル膜プリズム(以下膜プリズム)の貼り間違いによる例を示す。13歳の女子、先天内斜視に対して膜プリズムで眼位と両眼視機能の経過観察中、前回に処方した膜プリズムを装用して受診した際、内斜視の増大、両眼視機能の低下が生じた。しかし、担当した視能訓練士(ORT)はこれらの原因を追究することができなかった。再検査により、膜プリズムの貼り間違いが生じていることが判明した。視能矯正中のヒヤリハット防止策として次の点をあげる。1.先入観、思い込みをしない2.自覚的な装用感を確認する3.膜プリズム装用に違和感等があれば連絡をとる4.膜プリズムの装着は基底方向を確認する5.眼鏡チェックは担当したORTが行う6.カルテにその経過を記載する
著者
村上 環 曹 美枝子 富田 香 田中 靖彦 植村 恭夫
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.61-64, 1993-12-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
6

近視を伴う後天内斜視と診断された男性7例,女性11例計18例の臨床像について検討した.発症年齢は9歳から40歳までの平均17歳で,思春期に発症が多くみられた.屈折度は-3.0D以上が75.0%にみられ,平均-4.47Dであった.斜視角は屈折矯正下にて,遠見16Δから50Δ平均32Δの内斜視,近見16Δから50Δ平均30Δの内斜視で,遠見と近見の斜視角の差が10Δ以上の症例は認められなかった.治療法としては大部分の症例に手術を行い,手術施行例15例中14例は10Δ以下の正位または内斜視となり良好な眼位矯正効果を得た.術後の再発例は2例で,1例は35Δの内斜視が残っており,他の1例は初回手術から10年後に再発したために,再手術を施行し,その後内斜位を保っている.また自然治癒例も1例に認められた.発症要因については,近業の増加と精神的要因の関与を推測している.
著者
星原 徳子 岡 真由美 山本 真代 金永 圭祐 森 壽子 長島 瞳 河原 正明 藤本 政明
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.59-65, 2013 (Released:2014-03-13)
参考文献数
29

【目的】発達障害の早期発見は、社会生活での自立の促進において重要である。視能訓練士(以下CO)は小児の視覚だけでなく他機能との関わりにも注目し、成長発達の支援に関わる必要がある。今回、COと他院耳鼻科言語聴覚士(以下ST)が連携し、発達障害の評価と支援が可能であった症例を報告する。【対象・方法】2004年6月~2012年6月にK眼科で弱視または斜視と診断された18歳未満の症例412例中、発達障害を疑いSTが所属する専門医療機関への受診を促した12例であった。症例は未就学児8例(2歳5か月~5歳8か月)、就学児4例(6歳6か月~14歳3か月)であった。発達評価には遠城寺式・乳幼児分析的発達検査表、同旧版(以下遠城寺式発達検査表)を使用した。【結果】生活年齢に相応した視機能検査ができなかったのは5例であった。発達障害を疑った視機能検査時の特徴は、発音不明瞭6例、多動4例、クレーン現象1例、コミュニケーション不良2例であった。12例全例の親が現状を否定する言動をし、ペアレントトレーニングを要した。STによる積極的訓練を開始できたのは7例、STによる6か月毎の経過観察を要しているものが2例だった。ST受診を拒否または一度受診したが訓練拒否したものが3例であった。【結論】遠城寺式発達検査表の項目を考慮して視機能検査を施行することは、小児の発達状態の評価に有用であった。COがSTと連携することで発達障害児の早期発見と就学前後での支援につながった。
著者
福山 千代美 加藤 栄子 普天間 歩 大久保 恵里 後藤 祐子 平岡 真砂代 今井 洋子
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.145-152, 1998-07-10 (Released:2009-10-29)
参考文献数
12

我々は,調節緊張を起こした症例の,診断,背景ならびに治療法について検討したので報告する。対象は,調節緊張と診断され,症状の改善に長期間を要した9症例である。観察期間は,2~29(平均12.0)ヵ月であった。年齢は,9歳から11歳の小学校高学年の6名と,22歳から27歳の20歳代の成人3名の2つの分布を呈し,性別では女性に多かった。主訴は,学童群では視力障害が多かったが,成人群では羞明が多かった。初診時の裸眼視力は0.3以下が多く,矯正不良の症例が過半数を占め,全ての症例でマイナスレンズで矯正された。調節麻痺下では+1D程度の遠視が検出され,多くは+1D以上の戻りが認められた。このため調節緊張の症例では,潜伏遠視を背景とすることが多く,調節麻痺下の視力検査が有用であると考えられた。治療の原則は遠視の眼鏡常用と調節緩和で,予後は良好であるが,きめ細かな対処が必要である。
著者
高橋 千里 池田 史子 坂庭 敦子 塚田 貴大 大平 陽子 岸 章治 石田 香代子 高山 秀男
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.139-143, 2009 (Released:2010-03-25)
参考文献数
9

目的:恒常性外斜視に対し、プリズム眼鏡による眼位矯正に視能訓練を併用し、両眼視機能の獲得と斜視角の減少を示す、良好な経過を得た2症例を報告する。症例:症例1:2歳女児。生後6ヵ月で外斜視を発症し、近医を経て受診した。初診時45△の外斜視で、輻湊はできず、恒常性外斜視と診断した。母親が手術を希望しなかったため、プリズム眼鏡による光学的矯正と輻湊訓練を開始した。眼位にあわせてプリズムを減量し、治療開始5年後、7歳の時点で14△基底内方のプリズム眼鏡で斜位を保っている。両眼視機能は融像まで確認できた。症例2:1歳5ヵ月男児。生後6ヵ月位から左眼が外斜視になることに母親が気付き受診した。初診時、近見40△の左眼外斜視で、屈折は右眼-5.0D、左眼-10.0Dであった。左眼は豹紋状眼底を呈していた。プリズム眼鏡による光学的矯正および、遮閉訓練と輻湊訓練を開始した。眼位に合わせてプリズムを減量した。治療開始後5年(6歳)、屈折矯正眼鏡のみで近見4△の外斜位となり、両眼視機能はTitmus stereo testsにて100秒であった。結論:恒常性外斜視に対してプリズム眼鏡による光学的治療に視能訓練を併用することで、両眼視機能の獲得と斜視角の減少を示す症例を経験した。恒常性外斜視に対しても、プリズム治療は有用と考えられた。
著者
松本 長太
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.1-7, 2002-08-25 (Released:2009-10-29)
参考文献数
14

視野検査は、緑内障をはじめとする各種眼疾患の診断、経過観察において欠かすことのできない重要な視機能検査である。近年では、自動視野計の普及により誰でも容易に視野検査が行えるようになった。視野検査は視覚の感度分布を定量的に評価することであり、これには視覚系の様々な生理学的特性が影響する。自動視野計を用いた静的視野測定においても、従来から標準的な測定条件として設定されている視標サイズ、視標呈示時間、背景輝度は、視覚系における様々な生理学的特性を基に視野測定に適していると考えられる条件に設定されている。さらに近年では緑内障などの早期視機能障害を評価するために、Frequency doubling technique (FDT), FIicker perimetry, Blue on yellow perimetryなど従来の明度識別視野とは異なった特殊な検査視標を用いた視野検査法も日常診療に普及しつつある。これら特殊な視野検査法はM-cell系の評価、K-cell系の評価など視覚情報処理におけるより選択的な機能を評価することを目的としている。日常診療において視野検査を行いその測定結果を判断する場合、単に自動視野計の検査員として検査を進めるのではなく、これら視覚の生理学的特性を十分理解して検査に臨むことは、適切な視野測定の施行、測定結果の正しい評価において大変重要なことである。