著者
清水 嘉子
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.47-53, 2007-04

本研究は、母親の心理的育児ストレスおよびその対処について明らかにし、さらに尿中ストレスホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、コルチゾール)との関係について検討した。乳幼児期の育児をしている母親21名から得られた心理的育児ストレス33項目およびその対処に関する回答および採尿をもとに分析を行った。その結果、母親の尿中ストレスホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、コルチゾール)と心理的育児ストレスの関係では、尿中アドレナリンの高い母親と総ストレス値の高い母親、「夫の育児サポート」や「育児に伴う束縛感」のストレスが高い母親に比較的強い相関が認められた。尿中コルチゾールは「夫の育児サポート」のストレスが高い母親に比較的強い相関が認められた。尿中ノルアドレナリンが高い母親とドーパミンが高い母親に強い相関が認められた。(著者抄録)
著者
東田 有加 大橋 一友
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.153-159, 2014-04

本研究では周囲からのタバコ煙の曝露を受ける非喫煙妊婦(受動喫煙妊婦)の実態と原因喫煙者を検討した。5ヵ所の産婦人科クリニックを受診した823名の妊婦を対象とし,喫煙状況を自記式質問紙調査した。受動喫煙妊婦は妊娠初期54.7%,中期54.3%,末期56.5%であった。原因喫煙者は夫が最も多く,妊娠初期79.4%,中期75.2%,末期76.2%であった。試験紙による尿中コチニン濃度を用いてタバコ煙への曝露レベルを半定量的に評価し,高濃度曝露群と低濃度曝露群に分類した。受動喫煙妊婦の高濃度曝露のリスクを高める原因喫煙者について多重ロジスティック回帰分析で検討した。高濃度曝露率は妊娠時期による差はなかったが,高濃度曝露のリスクを高める原因喫煙者は中期では夫(OR 11.8, 95% CI 1.4〜100.5),末期では夫以外の家族(OR 4.6, 95% CI 1.3〜15.8)であった。職場の喫煙はどの時期でもリスク要因ではなかった。妊婦の受動喫煙,とくに高濃度曝露の予防のためには,妊娠時期に応じた原因喫煙者を妊婦に伝え,家庭内での完全禁煙をめざす指導を行うことが重要である。
著者
大賀 明子 佐藤 喜美子 諏訪 きぬ
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.423-431, 2005-01
被引用文献数
4

周産期における生活状況をとらえ, その生活状況から現代の里帰り出産の実態を明らかにすることを目的に, 東京近郊都市に居住する乳幼児の両親を対象に調査を実施した。回収率25.2%, 506組の夫婦を分析した結果, 次のことが明らかになった。出産前に自宅を離れた妊婦の92.0%, 出産後自宅以外に退院した褥婦の95.7%は妻の実家で生活していた。生活サポートは, 実母が81.8%など親族ネットワークに支えられた状況であった。父親の21.9%は分娩前から, また28.1%は出産後から母子と別れて生活していた。(1)妊娠中から妊婦が自宅以外で生活, (2)実家に近い地域で分娩, (3)自宅以外に退院, (4)妊娠中から分娩後まで父親は新生児とは別に生活, (5)母親と新生児の自宅への帰宅は3週間以上後, (6)父親と新生児の接触は数日に1日以下, という6つの条件すべてを満たす伝統的里帰り出産をしていたのは17.2%存在した。里帰り出産における医学的な問題は解決の方向に向かっているが, 親役割獲得の上では, 新たな社会的問題が潜在する可能性がある。里帰り出産がわが国の習慣として存在し続ける背景を明らかにし, 内在する社会問題に対する取り組みが必要である。
著者
松岡 知子 堀内 寛子 山中 亜紀 伊藤 倫子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.398-404, 2000-12-01
参考文献数
16
被引用文献数
5
著者
永松 美雪 矢野 潔子 原 健一
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.519-529, 2014-01

女子大生および既婚の就労女性とパートナーの避妊に関する要因を明らかにすることを研究目的とした。平成23年10〜12月までに,九州北部地域で,同意を得た女性466名へ調査を実施した。調査項目は,女性とパートナーの年齢,社会的立場,避妊行動,人工妊娠中絶の経験,避妊の意思決定,女性とパートナーの関係性,女性自身と女性からみたパートナーの平等主義的性役割態度,将来の避妊に対する自己効力感で,佐賀大学医学部倫理委員会の承諾を得て実施した。有効回答を得た241名のうち現在パートナーが存在する114名で,妊娠を望んでいる女性11名を除いた103名中,本研究の分析対象は20歳代未婚の女子大生40名と30歳以上既婚の就労女性44名とした。女子大生が避妊行動を実行できることは,避妊の意思決定ができること,女性とパートナーの関係性が良好で,将来の避妊に対する自己効力感が高いことが関連していた。避妊の意思決定ができることは,女性からみたパートナーの平等主義的性役割態度が高いことが影響していた。既婚の就労女性が避妊行動を実行できることは,避妊の意思決定ができること,将来の避妊に対する自己効力感が高いことが関連していたが,女性とパートナーの関係性や平等主義的性役割態度は影響していなかった。