著者
塚本 記子 佐藤 百合絵 八木 有子 平塚 志保 荻田 珠江 佐川 正
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.345-350, 2011-07

本研究の目的は,基礎体温の測定の継続にかかわる要因を明らかにし,女性の健康を促進する教育への一助とすることである。調査対象は,基礎体温の測定を6ヵ月以上継続しているA大学の女子学生4名とし,半構成的面接を行い分析した。その結果,【基礎体温の測定を行動化に結びつける知識と動機がある】【確実な排卵・月経日の予測で,生活の質の向上が図れる】【妊娠・避妊のコントロールにより自尊感情が高まる】【女性としての機能が正常に働いていることを実感できる】【測定行為に対する気楽さと,それを支えるツールと活用法をもつ】の5つのカテゴリーが抽出された。基礎体温の測定の自発的な開始には,基礎体温がどのように役立つかという情報や,自分の身体について知りたいという動機が関係し,生活の質やセルフケア能力が向上しているという実感が測定の継続を支えていた。また,気楽な気持ちで取り組み,手軽なツールを活用することで負担感を軽減し,さらに女性としての機能をもっている喜びや自立感が継続を助長していた。
著者
鈴木 紀子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.335-345, 2013-07

本研究の目的は父親の育児休業取得前の思い,取得中・後の思いと行動を明らかにすることである。育児休業を取得した父親11名を対象に半構造化面接を実施した。育児休業取得前の思いでは,育児・育児休業に対する【興味・関心】や【父親でもできる育児に積極的参加】など10カテゴリーを抽出した。育児休業取得中の思いと行動のうち,「育児休業取得中の楽しかったこと」では【子どもと過ごす時間】【子どもの日々の成長・発達の確認】【育児・家事スキルの向上】【仕事ではできない経験】など9カテゴリーが抽出された。さらに「育児休業取得中の困ったこと/つらかったこと」では【不慣れな育児・家事】【子どものペースに合わせた育児】など11カテゴリーが抽出された。【同じ境遇の友人がいない】【自分が母乳を出せないこと】は男性特有の悩みであった。対象者は【子どもと過ごす時間】【子どもの日々の成長・発達の確認】を楽しかったと感じる一方,【不慣れな育児・家事】をつらかったと感じていた。これは産後の初産婦と同様の心理状態であることが示唆された。また,育児休業を取得したことで,取得後に【ワークライフバランスの調整】をすることが示唆された。
著者
鈴木 紀子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.534-543, 2014-07

本研究の目的は,父親が育児休業を取得することに対する周囲の反応及びそれに対する父親の対応を明らかにすることである。育児休業を取得した父親11名を対象に半構造化面接を実施した。その結果「妻の反応」は【肯定的態度】【育児休業取得の理解と必要性についての葛藤】など6のカテゴリーを抽出した。「夫・妻の両親の反応」は【否定的な態度】【男性が育児休業を取得する必要性への問いかけ】など7のカテゴリーを抽出した。妻及び夫・妻の両親共に【キャリアのリスクに対する懸念】【経済のリスクに対する懸念】を抱いていた。「会社の反応」は【同僚・部下・子育て経験者からの理解】【上司の否定的な態度】など9のカテゴリーを抽出した。周囲の反応は年齢や性別により異なり取得しにくい雰囲気があることが示唆された。また「育児休業取得に否定や懸念を示す両親への対応」は【理解を得るために説明】など3のカテゴリーを抽出した。「育児休業取得にむけての会社への配慮」は【早い段階から育児休業取得の意思を伝えておく】【育児休業取得にむけた仕事の調整】のカテゴリーが抽出された。育児休業取得促進にむけての周囲への対応の在り方について一助となった。
著者
廣瀬 紀子 石田 貞代
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.564-570, 2009-01
被引用文献数
1

2006年6月〜2007年2月に東京近県の総合病院で妊婦51人を対象に,認知行動療法の手法を用いた体重コントロールのための無作為化比較の介入研究を行った。研究目的は,認知行動療法の手法が妊娠中体重コントロールに及ぼす効果を明らかにすることである。本研究で用いた認知行動療法の手法は,生きがい連結法,セルフモニタリング法,行動強化法である。介入群には妊娠5ヵ月の妊婦健診時に生きがい連結法による目標体重の設定および分娩に至るまでの間のセルフモニタリング法,および妊婦健診ごとに行動強化法を行った。結果は研究期間内に分娩が終了した38人(対照群17人,介入群21人)を比較した。分娩時の目標体重は対照群では12人(57.1%),介入群では16人(94.1%)が達成し,介入群の達成者の割合が有意に多かった(p=0.012)。妊娠中の体重コントロールに関する自己効力感尺度得点は,介入後4ヵ月目,5ヵ月目に対照群に比べて介入群が有意に高かった(p=0.043)(p=0.002)。目標体重の達成状況および自己効力感が高められたことから,認知行動療法は妊婦の体重コントロールに効果があることが示唆された。
著者
鈴井 江三子 吉村 正 沖野 幸 柳井 晴夫 判治 康代 加納 尚美 毛利 多恵子 廣瀬 健
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.611-619, 2010-01
参考文献数
14

本研究では,自然出産を提唱してきたA診療所における1972〜2007年までの36年間の分娩記録17,687件を基に,分娩時の母体年齢,在胎週数,分娩時刻や出生体重の推移を明らかにした。また,開院10年目頃から変化した出産管理の方法が,どう周産期のアウトカムに影響を与えているのかを考察した。その結果,分娩時の母体年齢の推移は,1972〜1981年は約50%の人は25歳までに出産していたものが,2002〜2007年は約50%の人は34歳までに出産し,5歳上昇し,約80%の人は34歳までに出産していた。平均在胎週数の推移は,1979年を境に在胎週数は有意(P<0.01)に短くなっており,同診療所の妊婦健診に超音波診断が導入された時期とほぼ一致していることが明らかになった。分娩時刻の推移は,1972〜1981年にかけては,午前8時〜午後4時までが分娩時刻のピークであったものが,1982年以降の30年間は午前0時〜午前8時までが分娩時刻のピークとなり,自然出産を提唱し始めた1982年を境に有意(P<0.01)に分娩時刻に差がみられた。平均出生体重の推移は,出生体重の分布図を10年ごとにみた場合,1972〜1991年の20年間は出生体重の分布幅は大きかったが,1992年頃から徐々に偏差が狭くなり,2002年以降は出生体重の平均値あたりに分布が集中し,とくに偏差が狭くなっていることがわかった。以上,A診療所における周産期のアウトカムは,出産管理の内容を変化させた年次によってその様相が異なっていることが明らかになった。
著者
中林 美奈子 寺西 敬子 新鞍 真理子 泉野 潔 成瀬 優知 吉田 佳世 村田 直子 高木 絹枝 若松 裕子 下田 よしゑ 横井 和子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.655-665, 2006-01

明らかな医学的異常がない児をもつ母親を出産後4〜18ヵ月まで追跡し, 精神健康度の変化とそれにかかわる要因を明らかにした。精神健康度はGHQ28日本語版の要素スケールである「不安と不眠」スケールを用いて評価した。その結果, 1)産後4〜18ヵ月の母親の精神健康度の変化として, 4ヵ月時点での良好さを18ヵ月まで維持していた者(良好維持群)28.1%, 良好さを維持できなかった者(悪化群)19.8%, 4ヵ月調査での不良さを改善していた者(改善群)9.4%, 不良さを継続していた者(不良継続群)42.7%いう実態が示された。2)産後4ヵ月の母親における精神健康度悪化予測要因として, (1)夫から情緒的ならびに情報サポートを受けていないと感じていること, (2)身体的疲労感を自覚していること, (3)イライラしておこりっぽいと自覚していることが抽出された。3)産後4ヵ月の母親における精神健康度不良継続要因として, (1)夜間に1回以上覚醒すること, (2)気分や健康状態が悪い, 疲労回復剤を飲みたい, 疲れを感じる, 身体が火照る・寒気がするなどの身体的症状を自覚していること, (3)いつもストレスを感じる, いろんなことを重荷に感じる, 不安を感じ緊張するなどの不安と不眠症状を自覚していることが抽出された。4)育児期間にある母親の心の健康を良好に保つためには, 産後4ヵ月時点で母親の精神健康度とその関連する要因を評価し, 予測的に働きかけることが重要である。
著者
玉上 麻美
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.110-119, 2013-04

不妊治療後の流産に対する処置は短期間で終了し,看護支援を十分に受けられないなか,女性自身で喪失体験を乗り越えざるを得ないのが現状である。先行研究において,流産からの立ち直りには困難な状況から立ち直る力,レジリエンスが存在することを明らかにした。本研究では,不妊治療後に流産を経験した女性が自身のもつレジリエンスを自覚し,立ち直りを促進するために活用できるレジリエンス測定尺度を開発することを目的とした。尺度項目は,不妊治療後に流産を経験した女性へのインタビュー結果を元に57項目を選定した。協力の得られた体外受精・胚移植などの臨床実施を登録している21施設にて,現在も不妊治療中で,不妊治療後に妊娠12週未満の流産を経験した女性250名に調査票を配布し回答の得られた120名(回収率48%)を対象とした。因子分析の結果,「看護師・医師のサポート」因子(11項目・α=0.89),「問題解決能力」因子(5項目・α=0.83),「価値の転換」因子(3項目・α=0.85)が抽出された。19項目のレジリエンス測定尺度において信頼性,構成概念妥当性,基準関連妥当性が確認され,不妊治療後に流産を経験した女性のレジリエンスを促進する援助に活用できることが明らかになった。
著者
井田 歩美 合田 典子 片岡 久美恵
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.427-436, 2013-01
参考文献数
20

近年,核家族化や地域連帯感の希薄化による子育ての孤立が指摘されている。一方で,インターネットの急速な普及により,乳幼児の母親世代でのインターネット利用は日常化していると推察される。そこで,専門職者としての具体的な支援のあり方を検討するため,母親の子育て情報に関するインターネット利用の実態を調査し,その特徴と課題を明らかにすることとした。方法は,平成22年3〜4月に乳児を対象とした市町村主催の『子育てふれあい教室』に参加した乳児の母親を対象とし,無記名自記式質問紙を用いた実態調査研究を行った。調査内容は,対象の属性,インターネットの利用状況などである。131人から回答を得(回収率92.9%),有効回答数は127人であった。結果,子育てに関連しインターネットを利用している母親は約8割であった。その利用状況は頻度および時間ともに健全で,メリットやデメリットを理解したうえで利用していた。専門職者は,母親の多くがインターネット上で情報収集や意見交換をしている現状を認識し,積極的に関心を寄せる必要がある。さらに,今後は母親の望むインターネット情報について把握し,分析する必要がある。
著者
天野 道代 恵美須 文枝 志村 千鶴子 岡田 由香
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.354-365, 2013-07

本研究は,キャリア途上にある女性が,予期せぬ妊娠に気づいてから初めての出産にのぞむまでの体験を明らかにすることを目的とした。妊娠32週以降の女性で,自分の仕事に対して明確な目標をもち,その経験を積み重ねることに価値を置いて働いて(学んで)いた13名を対象に半構成的面接を行い,質的帰納的に分析した。その結果,妊婦は,土台となる【妊娠前に育成されたキャリア意識】があり,【職業生活が揺さぶられる予期せぬ妊娠の体験】に遭遇し困惑する実態が示され,そして,【妊娠と仕事との調和のとれた働き方にたどり着く体験】までには,さまざまな生活上の調整を行い,それを経て気持ちが落ち着き,その結果,【仕事と家族と自分をつなげる方向にキャリアの価値が広がる体験】という経過で,妊娠の体験を認識していた。以上のとおり,予期せぬ妊娠は,女性が歩むキャリア形成においての節目となっていた。妊娠して出産することを決意した女性は,その後のすべての体験をプラスに受け止める姿勢が養われ,キャリアと妊娠を融合しながら,他者とともに生きるという新たな生活の価値を獲得していた。妊娠初期には,職場や家族との調整に混乱状態にある女性を支援することの重要性が示唆された。
著者
比嘉 京美
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.233-235, 2002-06-01
著者
五十嵐 世津子 森 圭子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.326-334, 2004-07
被引用文献数
1

今日のような不妊治療がなかった時代に,子どもを産むための方策として,どのような言い伝えが存在したのかを明らかにし,現代における生殖観との違いについてみた。そのための資料として,昭和の初期に聞き取り調査をしてまとめられた「日本産育習俗資料集成」を用いた。1)子どもを得るための方策として429件の内容があった。(1)妊娠するための具体的な方策に関するもの(2)妊娠を祈願するもの(3)男児を出産するための方策に関するもの(男女の産みわけも含む)(4)分析不能なものの4つのカテゴリーに分類できた。2)妊娠するための具体的な方策は,「食べる」(50件),「またぐ」(46件),「すわる/腰かける」(26件),「寝る」(25件),「もらう」(24件),「身につける」(17件),「育てる」(14件),「温泉にはいる/行く」(13件),「ぬすむ」(9件),「くぐる」(5件),「借りてくる」(4件),「さする/なでる」(4件),「灸をする」(3件),「抱く」(3件),その他(10件)であった。3)今日の不妊治療のような積極的な治療的行為としての意味を見いだすことはできず,上記の方策は,【摂食に関わる行動・動作】【日常生活上での身体的な活動を伴う行動・動作】【身体接触を伴う行動・動作】【日常生活に付随した行動・動作】に分類できた。この行動・動作の背後にある意味として,摂食や接触,また日常的な行為のなかで,なにかにあやかって,さらには,なにかをとりこんで妊娠・出産するという意味合いのつよい方策であった。