著者
鈴木 秀幸
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.309-313, 2013-05-01 (Released:2013-09-06)
参考文献数
6

本論文では,交通信号の数理モデルとカオスボルツマンマシンを紹介する.また,これらのモデルを含むハイブリッドシステムのクラスとして,ビリヤードスピン系を提案する.ビリヤードスピン系は,複雑で大規模な工学システムに対する統計物理の観点からの理解の手掛かりとして期待できるほか,機械学習,アナログ計算等の分野への応用が期待できる.
著者
川崎 昭如 ヘンリー マイケル 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.387-394, 2013-07-01 (Released:2013-12-24)
参考文献数
11

東日本大震災後の海外諸国の対応と各国民の行動にはどのような関係があったか.また,自国から退避が勧告されたにもかかわらず退避しなかった外国人や,その逆の行動をとった外国人の意思決定の理由や信頼をおいた情報は何であったか.本稿では,震災直後の各国政府の対応を整理し,東日本大震災時に関東地方に居住していた外国人を対象としたアンケート調査より,震災後の退避行動とその意思決定の理由,信頼をおいた情報源を,諸外国の勧告レベルごとに分析し,関係性を分析した.
著者
北川 英夫
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.p131-144, 1984-03

左手にはアカデミックな課題"破壊〝が高くそそり立ち、右手にはプラティカル要求"安全〝が険しくそびえ立つ。その間の長い深い谷間道を昇り抜け、しだいにその左右を一眺に望む尾根伝いまで、私達の科学・技術-疲労・環境・破壊力学・信頼性,・・・ の歩いた道、その歴史的背景と感激、課題と方法と仲間達、そしてなによりも、私達の研究の楽しさと妙味について語る
著者
加藤 孝明
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.429-432, 2012-07-01 (Released:2013-02-23)
参考文献数
3

2012年1月大手新聞社は科学的知見をもとに「マグニチュード (M) 7級の首都直下地震が今後4年以内に約70%の確率で発生する」と報道した. その後追随したマスコミは, 「東京湾北部地震」を「首都直下地震」として取り扱って報道した. 明らかな誤解である. ここでいう「首都直下地震」は, 首都圏のどこかで起こる直下型地震のことをいう. 一般に直下地震の強震範囲は限定され, 首都圏全体が強震するわけではない. したがって, ある場所から十分に遠くで地震が起こっても被害は生じない. 4年で70%の発生確率の地震は, そういう地震をすべて含んだものである. 「東京湾北部地震」の発生確率ではないし, ある特定の場所が強震する確率ではない. 今回の一連の報道は, 一見, 社会全体として防災意識を高め, 防災対策の推進に寄与したと言えそうだが, その一方で, 負の側面がある. 科学的な知識が正しく社会に伝わっていない. 対策推進に寄与したことは免責にならない. 科学的に正しい知識をもって防災意識を啓発し, 同時に防災対策を推進できる状況をつくることが本来の状況である. 本稿では, 1月23日報道の情報ソースのいう確率とその後の報道の確率の違いが異なることを解説した上で, 「M7級首都直下地震の発生確率」と「首都圏内のある特定の場所 (或いは, 地域) がM7級首都直下地震によって強震する確率」との関係を示し, 地震の発生確率の適切な提示の仕方について論考する.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
西浦 博 合原 一幸
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.797-803, 2009
被引用文献数
1

新型インフルエンザ流行が世界的に拡大している.今冬および来年度以降の流行に備えてワクチン製造が必要だが, 製造可能なワクチン総数には上限があり, 同時に季節性インフルエンザのワクチン製造も求められる.本研究は, ワクチン製造資源を最も合理的に新型インフルエンザに配分する数理的手法を提案する.新型インフルエンザ単独の流行閾値条件に近いワクチン接種割合(あるいはそれ以上)を達成できるとき, 全資源を新型インフルエンザに費やすことは最適でない.モデル想定とパラメータ推定値が再流行を十分に記述できると仮定すると, 来年度以降のワクチンの年間最大製造量5000万人分の82.2%を新型インフルエンザに配分することで全死亡者数が最少に抑えられる.2009年度は, 製造可能な新型インフルエンザのワクチン総数に上限があるが, 新型インフルエンザの再生産数が季節性のそれの0.9倍以上ならば, 年度内に残る製造資源の全てを新型インフルエンザに費やすことが適切と考えられる.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
梅原 明彦 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.393-396, 2014-07-01 (Released:2014-09-27)
参考文献数
4

東日本大震災では被災地域内の火葬場の処理能力を遥かに上回る死者数が発生し,広域火葬計画の策定が進んでいなかったことや地域防災計画に遺体処理に関する項目を定めていなかったことから,大量の遺体の処理に大きく手間取り,宮城県内では仮埋葬という方法が取られた自治体があったことが分かった.この震災を機に遺体処理計画を検討する自治体が増えたが,その自治体の数はまだまだ少なく,被災地でもこれから検討を始める自治体が多いのが現状である.日本での災害時において犠牲者の遺族となった方々は,平常時よりもより迅速で且つ懇切丁寧な遺体処理を求める.しかし,遺族心情に配慮した方法はまだ十分に確立されていないため,遺体処理業務は防災計画において早急に改善を図らなければならない.
著者
福田 武雄
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.136-143, 1959-06-01

10周年誌
著者
金 池潤 金 栽滸 加藤 孝明
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.829-835, 2019-07-01 (Released:2019-07-31)
参考文献数
18

本研究は,韓国史上最大の被害規模を記録した浦項地震における応急仮設住宅の供給について振り返り,日本と韓国での事例を比較して,今後の改善の方向性を模索することを目的としている.浦項地震における応急仮設住宅の特徴は,被災者の所有地で設置する自己敷地仮設住宅・仮設店舗併用住宅・一戸当たり屋外空間の一定規模が確保できる団地型仮設住宅・団地内管理事務所の設置などがある.日本と韓国における応急仮設住宅の事例を供給思想・供給類型・提供までの期間,建設コストなどの観点から比較分析を行った.
著者
年吉 洋 曹 崀 合原 一幸
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.139-140, 2020

<p>2020 年1 月から3 月の約50 日間にわたって中国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の累積感染者数と累積死亡者の推移を追跡したところ,従来の報告には見られない特徴として,暫定死亡率(最終的な死亡率ではなく,その日までの累積死亡者数と累積感染者数の比)の推移データには極小点が見られ,かつ,そのタイミングは死亡者がピークとなる時期よりも8 日ほど早いことが分かった.また,統計データを近似したシグモイド曲線からも同様に,死亡率曲線に極小値が現れる条件が見出された.</p>
著者
中沢 護人
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.9, pp.243-248, 1964-09-01

平炉法の発明の100年にあたり,この方法の本質的契機である蓄熱方式と,高温製鋼反応の両側面について,同法が多くの科学的技術的成果を総合しながら形成されていった事情を明らかにする.
著者
金 池潤 金 栽滸 永島 佑樹 加藤 孝明
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.251-256, 2018

<p>2017 年11 月15 日発生した浦項地震(M5.4)は,韓国内で初めて地震避難所を運営した地震である.本研究では,韓国の防災対策の今後の方向性を示すために,浦項地震での避難所運営の実態に重点を置いて調査を実施した.</p><p>調査の結果,避難所として教会などの民間施設に最大約40% の避難者を受容しており,建築士会等の民間市民団体が緊急安全点検を実施し,企業からの物資支援が行われるなど,浦項地震では官民協力による対応が多く見られた.2016 年の慶州地震と比較して政府の災害対応は改善されたが,地震避難所運営マニュアルが存在しない点などの課題も抱えている.</p>