著者
森 あかね Akane Mori
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.1-17, 2021-02-28

律令や孝子説話等の例において、継母と継子の恋愛関係は「不孝」と結びつけられる。光源氏の「孝」を称賛する場面が繰り返されるものの、光源氏と継母的立場である藤壺の関係に対しても「不孝」への連想が働いていたと想定され、「薄雲」の天変に繋がっている。光源氏とともに語られる「孝」は不孝を照射し矛盾を示す皮肉的なものとして機能しており、それは本来的な「孝」思想から離れた物語の「孝」と位置付けられる。論説(Article)
著者
板垣 竜太 戸邉 秀明 水谷 智 Ryuta Itagaki Hideaki Tobe Satoshi Mizutani
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.27-59, 2010-08-10

本稿は国際的な視野から日本植民地研究を再考した。その際、「比較帝国研究」の枠組とは一線を画すことに留意し、日本帝国を他の植民地帝国と比較するというよりは、日本植民地研究の史学史と現況に焦点を合わせた。すなわち、マルクス主義、近代化論、ポストコロニアル論などの欧米の学界に由来する歴史研究の枠組が、日本植民地研究にどう受容され、対話がおこなわれ、批判され、鍛えられてきたかに注目し、議論を展開した。
著者
本岡 拓哉 Takuya Motooka
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.25-53, 2015-11-26

戦後日本の都市の河川敷には居住地が存在していた。しかし,戦後復興や都市化が進展する中で,いつしかこうした地区は消滅していくことになった。本稿は,こうした河川敷居住地のうち、行政からの土地の払い下げという形で集団移転を成し遂げた,広島市を流れる太田川放水路沿いに存在した旭橋下流地区を取り上げ,集団移転を可能とさせた居住者の連帯の状況やその背景についてアプローチするものである。
著者
友寄 元樹 Motoki Tomoyose
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.151-176, 2023-02-28

本稿の目的は,ニューカレドニアの日本人移民史を再考することである。とりわけ,19世紀フランスの流刑と日本人移民を連続した歴史的出来事として捉え,近代世界システムの形成に伴う余剰労働力の「放逐」のプロセスとして描写する。本稿では,19 世紀フランスにおける都市問題を取り上げ,流刑へと発展する過程を見ていく。同時に,フランスが太平洋に帝国領土を拡張する流れを辿り,ニューカレドニア流刑地が誕生するプロセスを明らかにする。この時,フランスの都市問題と帝国拡大の思惑が重なるのである。そして,ニューカレドニア流刑の理想と現実を確認し,日本人移民到着に至る歴史を示す。第一回移民の募集は,明治政府の後ろ盾のもと,九州の男性を対象に約一ヶ月という短期間で行われた。本研究はこれまで個別に扱われてきたニューカレドニア流刑と日本人移民の歴史を接合させ,一国史的に認識されてきたニューカレドニア史を描き直す試みである。
著者
岩坪 健 Takeshi Iwatsubo
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.1-17, 2014-02-28

楽器の中には、男性向け(または女性向け)の楽器がある。ジェンダーの考えによれば、男性性の楽器と女性性の楽器である。源氏物語には四種類の絃楽器が描かれている。それらを考察すると、男性性と女性性の楽器に分類できる。
著者
鍛冶 博之 Hiroyuki Kaji
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
no.78, pp.23-47, 2007-03-15

28兆円近くの市場規模を誇るパチンコ業界は、今や日本を代表する巨大産業のひとつである。しかしその成長・発展の産業史は、法的規制や偏見を含めた数々の課題を抱え込みながら、時にそれらを克服し、時に妥協点を見出しながら形成されてきた歴史でもある。そしてそれらの課題のなかには、今なお未解決のまま残されているものが少なくない。パチンコ業界全体が「業界の健全化」をいっそう推進し、業界改革を実現するためには、個別ホール企業による経営改革のほかに、業界全体が長年にわたって抱え続けてきた諸問題に真正面から取組んで解決して聞く積極的姿勢が必要とされるのである。筆者は、特に1980年代以降のパチンコホール業界における経営改革に関する研究を進めているが、本稿はこの研究を補足する役割をもつ。つまり、ホール業界が経営改革を実現させていくうえで解決すべき従来からの課題を取り上げてその問題点と対策法を、本号と次号の2回に分けて論じていきたいと考えている。ただし業界が抱える課題は多岐にわたるので、本稿では「経理の不透明性に関する課題」「換金システムに関する課題」「パチンコ依存症に関する課題」「ゴト師と不正機器に関する課題」「競合の激化に関する課題」「『パチンコ』という言葉自体に関する課題」の6点に絞って分析を進める。
著者
福田 智子 Tomoko Fukuda
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.1-21, 2021-11-30

『源氏物語色紙画帖』(請求記号:721.2/G9216、資料番号:166700140)の名称で、同志社大学文化情報学部に所蔵されている本書は、『源氏物語』の本文と画が、一帖につき一枚ずつで計十二帖分、二十四枚収められている。取り上げられている帖は、桐壺・若紫・紅葉賀・花宴・明石・蓬生・絵合・初音・若菜下・夕霧・橋姫・早蕨であり、『源氏物語』の帖の順序に沿っている。本稿は、これらの帖の本文と画について、他の『源氏物語』伝本および源氏絵と比較検討しながら、本書を紹介、考察するものである。資料(Material)近世から近代に至る日本伝統文化の分野横断的研究とデータサイエンス教材への活用
著者
植村 正治 Shoji Uemura
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.49-81, 2021-08-31

日本の経済発展の要因の一つである技術移転にとって工学系高等教育機関が重要だという観点から,工部大学校と,同校と併存していた東京大学理学部における機械工学教育を検証してきた。今後,両者の合併により設立された工科大学における教育について検証していくが,本稿は,工部省を巡る政治史や経済史で利用されてきた多数の建言書などを顧みることにより,工部省解体と工科大学設立の経緯と政治・社会的背景を検討した。研究ノート(Note)
著者
岩坪 健 Takeshi Iwatsubo
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.19-33, 2021-02-28

同志社大学所蔵「源氏物語色紙」を翻刻して、現代語訳と解説を付けた。資料(Material)
著者
福田 智子 Tomoko Fukuda
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1-25, 2020-11-30

本書は、「寳暦十年秋 藤原忠晟」という奥書をもつ百首歌である。外題・内題もない。『新編国歌大観』を検する限り重複する歌はなく、また、『類題和歌集』にも同じ歌は見当たらない。近世の百首歌については、未だ紹介されていないものが少なくないことが想定される。本書もその中の一書に過ぎないが、本百首歌の題が、おおむね宝治百首題に一致すること、宝暦十年(一七六〇)秋という年代が明記されていることなどから、宝治百首の近世における享受の一端を垣間見る史料にはなり得よう。そこで、本書を仮に藤原忠晟『百首』と称して紹介する。資料(Material)
著者
鍛冶 博之 Hiroyuki Kaji
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.121-146, 2018-05-31

1980年代以降、ベトナムは著しい経済成長を遂げ、多くの商品がベトナム国民の日常生活に普及するようになった。特にオートバイは日々の移動手段として購入され利用されており、ベトナム社会におけるランドマーク商品のひとつとして位置づけられよう。本稿は、発展途上国を対象とする商品史 研究の一例として、1990年代よりベトナムで急速に普及し、今日もなお生活者の不可欠な生活必需品として位置付けられるオートバイに注目し、オートバイが1990年代以降に急速に普及した経緯と背景を明らかにすることを目的とする。
著者
矢野 環 福田 智子 ヤノ タマキ フクダ トモコ Yano Tamaki Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.1-24, 2017-11-28

資料(Material)本稿は、「《資料》 竹幽文庫蔵『香道籬之菊』の紹介」(『社会科学』第46巻第2号、二〇一六年八月)を受け、「同―同(三)―」(『社会科学』第47巻第1号、二〇一七年五月)、「同―同(四)―」(『社会科学』第47巻第2号、二〇一七年八月)に引き続き、竹幽文庫蔵『香道籬之菊』所載の組香について、とくに和歌を主題とする組香の翻刻と考察をおこなうものである。本書は、礼・楽・射・御・書・数の6巻6冊から成り、177の組香が掲載されているが、その半数近くは、和歌および歌集の序文など、特定の作品を素材として組み立てられている。そこで、本稿では、射の巻から、五月雨香、時雨香、白菊香、夕暮香、水無月香、蓮葉香、花香の、七つの組香を取り上げた。
著者
夫 鍾閔 Jongmin Boo
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.57-84, 2021-11-30

本論文は,丸山眞男の思想をめぐる言説を取り上げて,そこにおいてどのような観点から,何が問題とされてきたかを検討するものである。まず,国民国家の問題点に積極的に取り組んで丸山を批判する議論を検討し,そこで丸山が国民国家論の思想家の代表として標的にされた理由を考察した。その後,国民国家批判の潮流と距離を置きながら丸山思想の意義を見出す諸解釈を検討したが,こうした議論が〈国民国家批判としての丸山批判〉から丸山をどのように救い出しているのかを確認した。これらの解釈は国民国家の問題性を認識しながらも,丸山と国民国家を分離させようとするが,そこには,自由主義と民主主義の対立という契機が働いている。しかし,それらの主張を丸山のテキストに即して検証したところ,その解釈には論理的な難点がある。その点,丸山のテキストの読解としては,丸山の国民国家論を一貫したものとして捉えたということで,国民国家批判論者たちによる丸山論のほうがより適切だったと結論付けると同時に,丸山の国民国家論に再解釈の余地があることも明らかにした。
著者
鍛冶 博之 Hiroyuki Kaji
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.49-76, 2013-05-31

パチンコホール経営では、遊技球一球あたり4円で貸し出す「4円パチンコ」が主流であったが、2000年代半ば以降、遊技球を一球当たり4円未満で貸し出す営業形態として「低貸玉営業」が登場し、特に遊技球一球あたり1円で貸し出す「1円パチンコ」が注目を集めるようになった。今や低貸玉営業はホールの経営戦略にとって不可欠な要素であり、4円パチンコに続く強力な市場を形成しつつある。本稿では、パチンコホール企業が2006年頃より展開するようになり今日のホール企業経営の主要戦略のひとつと位置付けられる低貸玉営業に注目し、低貸玉営業が登場して全国に普及した経緯とその背景を明らかにすることを目的とする。第1章では史的経緯、第2章では普及背景について考察する。
著者
鍛冶 博之 Hiroyuki Kaji
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
no.83, pp.99-125, 2009-02-28

本稿の目的は、第1に、小売・流通業界の大手企業であった株式会社ダイエーがパチンコホール事業を展開するようになった歴史的経緯を解明すること、第2に、1980年代後半からパチンコ業界の健全化の一環として展開される、ホール業界での「経営改革」にもたらした影響を考察すること、以上二点である。なお本稿では、ダイエーが日本ドリーム観光への経営支援と買収を行った時期(1980年代)と、株式会社パンドラを子会社化し、ホール業界への本格的参入を果たした時期(1990年代前・中期)に着目する。