著者
瀬川 高央
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.33-53, 2005-12-08

防衛庁・自衛隊は創設から半世紀を経た。わが国は,軽軍備国家・経済大国路線を維持しているが,自衛隊の任務・役割は,冷戦後の日米安保再定義により大きな変更を迫られた。対テロ戦争以降,自衛隊は自国領域の「専守防衛」と極東の範囲を超え,インド洋での連合軍後方支援やイラク人道復興支援活動といった「海外派遣」を拡大している。自衛隊の活動が領域外に拡大してきた背景として,日本の防衛力整備の拡張が考えられるが, それは「割りかけ回収」と呼ばれる装備調達制度の存在なしには有り得ない。本稿では,「割りかけ回収」制度による防衛力整備の過程を検討し,同制度が効率的な防衛力整備を可能とするだけでなく,(1)財政民主主義上問題を内包し,(2)防衛費GNP1%枠を仮象化し,(3)防衛費の透明性の喪失をもたらしていることを明確にする。対象の時期については,日本の防衛力整備が開始された1950年から,同制度の役割に画期が見られる1985年までとする。
著者
小山 光一
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.47-66, 2005-03-10

本稿は、わが国の財政赤字の構造を制度分析の観点から検討している。公債の累積を財政制度の欠陥として捉え、財政制度として国債の償還制度、財政政策、財政投融資、地方財政、社会保障(公的年金と医療)、および税制を取り上げる。各制度がどのような制度の欠陥をもち、それが財政赤字をどのように拡大させているのかを検討する。現実の制度の下で各経済主体は合理的な行動を行い、その結果として「制度の下での均衡」が生じる。制度の欠陥により、「制度の下での均衡」が非常に不安定な均衡になり、この結果、歳出が拡大するとともに税収が異常に低い状態になって、財政赤字が拡大していることを示す。さらに、公債累積の影響として財政破綻の可能性と公債の負担を論じる。公債が累積した結果、わが国は財政破綻の危機に直面しているとともに、累積した公債を償還していく過程で国民の負担は著しく高くなる。例えば、景気が回復しないで金利が上昇すれば、巨額の公債に対する利払い費は急激に上昇するので、財政は破綻の危機に直面し、これを回避するため国民の税負担は著しく高くなる。今後、財政破綻を回避しながら、どのように累積した公債を減少させていくかを検討している。
著者
李 湘平
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.205-220, 2008-03-10

株式会社という経営形態は,巨万の富を急速に築き,多くの人に利益をもたらし,さらに一国の経済発展を促進する。しかし,大規模な株式会社は,一旦不正・不当な行為が発生すると,社会に非常に大きな衝撃を与えるものである。バブル崩壊以後,企業不祥事が相次ぎ,経営者を規律づける機能の強化といったコーポレート・ガバナンスの議論が沸騰してきた。現在,コーポレート・ガバナンスの議論は極めて複雑な状況にあるが,その中核は,不正・不当行為を防止するために,株主が経営者を制御するメカニズムであると考えられる。監査役は,株主が経営者を有効に規律づけるのに,「見張り」という役割を担うのである。昭和49年以後の商法改正の軌跡をみれば,法は監査役に大きな期待を寄せ,監査役制度を何度も強化してきたが,企業不祥事が依然として続発しており,監査役は十分に機能しているとはいい難い状況にある。 本稿では、監査役制度の歴史や特質を取り上げ,コーポレート・ガバナンスにおける監査役の役割と位置づけについて考察している。
著者
横山 和子
出版者
北海道大学經濟學部 = HOKKAIDO UNIVERSITY SAPPORO,JAPAN
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.33-46, 1994-12
著者
上木 政美
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.63-79, 2004-09-09

中小企業に限らず大企業においても合併あるいは提携といった形で企業が結びつき競争力を高めようとする動きが活発である。企業間連携を考える場合、核になる企業が中心となって連携を形成するという一般的なイメージがあるが、核になる企業を持たない企業間連携(ハブレスカンパニー)という独創的な概念がある。この核になる企業を持たない企業間連携のあり方について理論と数値例を交えて検証する。テーマは「集積から発生する効果と企業の個性化」「情報の交換・共有」の2点である。
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.i-iii, 2007-03-08
著者
本田 宏
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.195-215, 2014-01

(旧西)ドイツでの原子力をめぐる政治過程の中で再三設定されてきた,原子力推進・反対両派の討議の場を保障する「政策対話」の主要事例を概観する。(1)反原発運動の拡大に当惑するSPD(社会民主党)とFDP(自由民主党)の連立政権が試みた「原子力市民対話」(1975~78年)。(2)紛糾する再処理工場計画の検討を専門家に委ねるため,CDU(キリスト教民主同盟)の州首相が設置したゴアレーベン国際評価会議(1978~79年)。高速増殖炉をめぐる連邦与党内および州政府との対立を契機に連邦議会が設置した「将来の原子力政策」(3)第一次および(4)第二次特別調査委員会(1979~82年)。(5)チェルノブイリ原発事故後の再処理工場や高速増殖炉の建設の放棄という情勢を踏まえた利害関係者による交渉としてのエネルギー・コンセンサス会議(1993年)。この延長線上にSPDと緑の党の連立政権と電力業界との脱原子力合意(2000年)がある。(6)福島原発事故後,キリスト教民主・社会同盟とFDPの連立政権が脱原子力への政策転換を正統化するため設置した「安全な電力供給に関する倫理委員会」(2011年)。以上である。