著者
小島 廣光
出版者
北海道大学經濟學部
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.7-44, 1984-12
著者
櫻田 譲
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.49-73, 2013-01-17

本稿は(1)平成20年度証券税制改正が資本市場に与えた影響をイベントスタディによって検証し, (2)分析対象法人の財務状況によって当該税制改正報道がそれらの株価に与えた影響の相違を観察している。本稿で注目した同税制改正は, 個人投資家の株式譲渡損と配当所得を相殺可能としたため, 実質的に証券優遇税制として仕上がった。そこで当該税制改正情報の資本市場への投入を契機として, 高配当性向法人が好感されると考えた。なぜなら投資家は株式譲渡損を相殺するためにより多くの受取配当金の確保を必要とすることから, とりわけ高配当性向法人に注目すると考えたからである。追加の分析結果によれば, 高配当性向法人はPBRや流動比率が悪化するほど高評価され, 他方、低配当性向法人は利益成長性が悪化しても固定長期適合率が相対的に高く維持されていれば高評価されていることが判明した。なお, 本稿前段に相当する上記(1)の検討課題は, 筆者が指導する修士院生による研究成果(修士論文)の一部でもある。他方, 本稿後段に相当する上記(2)の検討課題は, 本稿執筆者・櫻田による単独作業として分析結果を導出したことを付言しておく。
著者
鈴木 輝好
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.193-201, 2004-09

企業年金保険は年金基金向けに提供される保険会社の運用商品であり、最低利回り保証や成果配当といった仕組みを有する。また、所定の控除金を支払うことにより契約をいつでも解約でき、その時の返戻金は保証された利回りと成果配当により単調に増加する契約者持分を基準にして算出される。本論文ではこれらの仕組みをリスク中立測度の下で評価した。その際、生命保険会社から年金基金に対して持ちかけられる契約の転換、さらには生命保険会社には資産運用が悪化した場合にデフォルトする危険性があることを考慮に入れた。いくつかの仮定の下で、問題は二つの互いに分離できない早期行使のある無期限平均値オプションの価格付けに帰着した。その結果、本論文では企業年金保険の価格に関する解析解の導出に成功した。また、得られた解析解を用いてデフォルトリスクに関する影響を分析したところ、投資適格級の範囲内ではデフォルトリスクの差は商品格差として表れにくいことが分かった。
著者
井上 久志
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.v-vi, 2007-01-25
著者
井上 久志
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.v-vi, 2007-01-25
著者
篠藤 涼子 グラシエラ
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.127-142, 2011-09

アメリカにおける財務諸表監査は, 法で強制される以前から企業によって自発的に行われていた。アメリカにおける財務諸表監査は, アメリカの経済環境に適応することで企業及び職業会計士自らの自主規制の下で成熟していった。やがて自発的な財務諸表監査の実施は限界に達した。そして, それを補う形で証券諸法のもとに財務諸表監査は制度化された。しかしながら, アメリカにおける財務諸表監査制度は, ゼロからのスタートではなく, 自発的に積み上げられていた経験や慣習を基盤として法が不十分を補う形で, アメリカの財務諸表監査の実務が制度化された。本稿は, このような特徴的なアメリカの財務諸表監査制度について, アメリカ財務諸表監査の生成・制度化がどのようになされたかを明らかにする事を目的とする。
著者
田中 嘉浩
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.41-47, 2013-01-17

選挙, 市場, オークション, 政策等, 異なる選好を持つ人々の間で第三者が集団としての選好を決めなければならないことが多い。本稿では特に2集団マッチング, 中でも1対1マッチングに関して Gale and Shapley (1962) に提案されたDeferred Acceptanceアルゴリズムが導出する安定マッチングの性質や問題点について明らかにする。安定マッチングに関しては, Deferred Acceptanceアルゴリズムは存在の構成的証明になっているが, 束に対するTarskiの不動点定理を用いる存在証明を紹介し, 安定マッチングの線形計画表現を述べる。また, 2集団マッチングに関するDeferred Acceptanceアルゴリズムの(多対1にし, 他の要素を加えた改良版の)適用例や, その周辺の話題, 様々な方向への一般化を概観し, その他の解法の考え方についても触れる。
著者
谷口 勇仁
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.179-187, 2009-12-10

2000年6月に発生した雪印乳業株式会社の集団食中毒事件は社会的に大きな注目を浴び,製品の安全性に関するエポックメイキングな事件として位置づけられている。また,学術的にも,雪印乳業集団食中毒事件は様々な観点から検討がなされている。特に,食中毒事件の発生原因について,直接の原因や組織的原因等,様々な要因が検討されている。 本稿では,雪印乳業集団食中毒事件の発生原因について考察された研究を検討し,その発生原因として指摘されている様々な要因について整理・検討を行うことを目的とする。まず,雪印乳業集団食中毒事件について概観し,雪印乳業集団食中毒事件に関する公式見解とメディアの見解を検討する。その後,雪印乳業集団食中毒事件の発生原因について考察している先行研究を整理し,(1)競争環境の激化,(2)事故経験の忘却,(3)利益優先主義の企業風土,(4)安全意識の欠落という要因を抽出した。
著者
多田 和美
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.79-106, 2008-09-11

本稿は,日本コカ・コーラ社の事例を通して,海外子会社の製品開発活動の進展プロセスを解明することを目的としている。具体的には,海外子会社の役割進化モデル(Birkinshaw and Hood,1998)を出発点として,海外子会社の製品開発活動が他国向け製品も開発する段階に進展するまでのプロセスの実証研究を行っている。 日本コカ・コーラ社は,コカ・コーラグループの海外子会社のなかでも世界各国で活用される製品を最も数多く自主開発している,すなわち最も製品開発活動が進展している海外子会社である。事例分析の結果,同社の製品開発活動は1)本国親会社の役割指定,2)海外子会社の選択,3)現地環境などの要因が影響していることが明らかになった。さらに,海外子会社の自律性と本国親会社と海外子会社間の関係強化という多国籍企業内部の要因も重要となることが明らかになった。 これらの発見事実は,近年活発化している海外での製品開発活動に重要な示唆を含んでいると考えられる。
著者
平井 廣一 足立 清人
出版者
北海道大学大学院経済学研究院
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.103-113, 2018-06-14

近代日本経済史の分野では,明治初期の地租改正を契機に成立する地主的土地所有の歴史的性格をめぐって,地租を「近代的租税」と規定するか,あるいは絶対主義下の「半封建的貢租」とするかで見解が分かれている。また地主的土地所有についても,「近代的土地所有」であるか,あるいは「半封建的土地所有」と規定するかで見解の対立が見られる。本稿は,「半封建的土地所有論」が立論の根拠とする「近代的土地所有権の未成熟」論を,民法における土地法ないしは借地借家法の視点から再検討を加える。すなわち,「近代的土地所有権」がイギリスをモデルとして成立したことをもってその典型といえるのか,また「土地用益権の物権構成」は果たして近代的土地所有権が確立するための必須の条件なのかを法理論的に再検討する。
著者
横本 真千子
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.27-43, 2014-12-09

1980年代からインドネシアは海外への労働者派遣を本格化させた。大多数は,アジア各国へ出稼ぎに行く女性家事労働者である。小論では,現在の募集・派遣ネットワークの歴史的形成過程と内在する問題点を指摘し,出稼ぎ国の香港での調査から,募集・派遣ネットワークがいかに彼女たちの就労に影響を与えているかを考察する。現在の海外出稼ぎの募集・派遣ネットワークは,募集人の村での活動や渡航費用の前借りなどの点で,政府が制度化に乗り出す前に農村において慣行化したインフォーマルな海外渡航ネットワークと似通っている。海外出稼ぎ女性家事労働者は,農村在住の募集人から海外出稼ぎの情報を入手し,仲介企業へと帯同される。彼女たちは,渡航前に渡航関連費用を工面する必要がないかわりに,渡航後およそ半年にわたって賃金のほぼ全額を渡航費用の返済に充てる。この募集慣行が,香港で働くインドネシア人女性家事労働者に他国の出稼ぎ労働者に比べて低賃金かつ悪条件での就労を強いる要因となっている。女性家事労働者は,香港での就業によって情報へのアクセスが可能になる。そして,海外出稼ぎ終了後,彼女たち自身が募集人となって渡航ネットワークの一端を担う。
著者
紀國 洋
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.385-395, 2007-01

本稿は,銀行間のATMネットワーク提携のインセンティブを複占の水平的製品差別化モデルを用いることにより分析している。各銀行はATMネットワーク規模を拡大させることにより,自己の供給する口座サービスの価値を高めることができる。しかし,水平的差別化競争下においては,ネットワーク効果を享受するためには,ライバルのネットワーク規模よりも上回らなければならない。モデル分析から本稿が得た主要な結論は次のとおりである。(1)銀行間提携によってネットワーク規模が拡大したとしても,相対的な観点からはネットワーク効果は互いに打ち消しあってしまう。従って,銀行間のネットワークの提携は,それによるネットワーク規模の増加分が,相手に比べて大きい銀行に有利に働き,小さい銀行に不利に働く。それ故,提携前のネットワーク規模が大きい銀行には提携のインセンティブがない。(2)ネットワークの提携により産業全体の利潤が増加するケースが存在する。その場合,適切な金銭的移転スキームの採用により,両銀行の利潤を増加させるような提携が可能である。(3)たとえ,ネットワーク提携が可能であったとしても,社会的厚生の観点からは提携の私的インセンティブは常に過少である。
著者
村田 潔
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.13-22, 2008-03-10
被引用文献数
1

ネット上に公開されている無数の情報の中から,自らが利用したい情報を見つけ出すためのツールとして,検索エンジンは広く利用されている。あらゆるタイプのメディアがデジタルメディアに集約化され,サイバースペースがリアルスペースの「ミラーワールド」であると見なされるようになりつつある今日,検索エンジンは,人々が何を見て,何を知ることができるのかを決定する要因となってきている。このことは,個人や組織が知ることのできる情報が検索エンジンによって制約されるばかりではなく,個人や組織が発信した情報が他者によって知覚されるか否かについても検索エンジンの機能が大きく影響していることを意味する。この点において,検索エンジンがどのような検索結果を表示するのかは,民主主義の根幹である言論の自由に対する直接的な影響力を持ち,したがって,ネット検索企業は,その社会責任の重さを認識し,それを全うするよう行動しなければならないのである。
著者
植田 和弘 李 秀澈
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.1-11, 2014-01-24

日本の原発政策は,再処理・増殖炉路線を採用し,高レベル放射性廃棄物の地層部分を前提にしている。しかし現実には,どちらの前提も満たされておらず,バックエンドの未確立は原発稼働の基盤を揺るがしつつある。放射性廃棄物の処分は,発生者責任の原則がうたわれているが,直接的な排出者ではなく日本原燃(株)や原子力環境整備機構という中間的な組織に責任が転嫁させている。