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著者
田中 愼一
出版者
北海道大学經濟學部 = HOKKAIDO UNIVERSITY SAPPORO,JAPAN
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.12-24, 1998-03
著者
阿部 智和
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.75-86, 2013-01-17

本論文の目的は, 組織メンバー間の物理的な距離によるコミュニケーション・パターンへの影響に注目することにある。すなわち, Allen(1977)や阿部(2008)などの先行研究の追試を行なうことを目的としている。本論文を通じて得られる結論は, (1)Allen(1977)やConrath(1973)などの既存研究が明らかにしている通り, 組織メンバー間の物理的な距離が隔たるほど, 対面コミュニケーションの発生回数が急激に減少すること, (2)電話は距離を隔てた者とのコミュニケーション手段となりうるのに対し, 電子メールは距離とは無関係に利用されていること, の2点である。
著者
佐野 浩一郎
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.71-77, 2008-09-11

この論文では, 不平等が経済成長にあたえる影響を分析する。90年代以降, 内生的成長理論が発展する過程で経済成長と不平等の関係を扱う研究が多数発表された。それらの研究は, 伝統的な開発経済学における見解とは逆に, 不平等であるほど経済成長率は低くなる, というインプリケーションを持っていた。しかし, この逆相関関係は決定的な支持を得られているとは言い難い。理論的にも実証的にも逆の結論を持つ研究が存在するからである。さらに, 不平等と経済成長の間には非線型的な関係があることを示唆する研究も存在する。そこで, この論文では不平等と経済成長の間の逆U字型の関係を理論的に導出することを試みる。基礎となる研究はAlesina and Rodrik (1994) である。彼らのモデルでは, 生産要素として財政支出を考慮しており, その財政支出の水準は多数決投票によって決定される。不平等度が高まるほど, 中位投票者の選好する税率が高まり, 成長率が低くなる。このモデルを拡張し, 財政支出に外部効果があることを想定すると, 投票者が財政支出の生産性向上効果を過小評価することになり, 結果として不平等と成長率の間に逆U字型の関係が生じる事になる。
著者
片岡 孝夫
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.87-100, 2009-03-12

サーチ論的な貨幣的交換のモデルを用いて貨幣供給量と定常均衡の関係,ならびに定常均衡の動学的分析を行う。 貨幣供給量が最適な定常均衡に対応する水準にあるとき,連続的な定常均衡が存在し,それらの中のどれが実現するかは初期条件に依存する。貨幣供給量が上の水準を上回るときには,比較的好ましい鞍点安定的定な常均衡が存在するが,その水準に僅かでも及ばない場合には,貨幣は機能不全を起こし,経済は常に自給自足経済と同程度の劣悪な状態に収束してしまう。このような状況下で,政府が増発した貨幣で実物財を購入するならば,その財が廃棄されたとしても,パレートの意味で改善がなされる場合があることが示される。
著者
荻野 昭一
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.7-28, 2012-07-12

インサイダー取引が規制されている趣旨は, 証券市場に対する投資者の信頼性の確保と市場機能の維持にある。近年, インサイダー取引規制に係る決定事実の解釈について2件の重要な最高裁判例がみられた。一連の審級の中で最大の論点となったのは, 決定事実について法令所定の「決定」があったと判断されるためには, 事実の実現可能性の高低の程度がどのように関係するかといった解釈問題である。議論の本質には, 規制体系の趣旨を重視して形成的解釈をとる論旨と, 規制の趣旨を重視して実質的解釈をとる論旨の主張が交錯し, 今日においてもなお論理的な対立を招いている。そもそも, 論点となってきた「実現可能性」などという条文に存在しない考慮要素が問題となっていることの本質はどこにあるのか。最高裁決定の考え方の背景にある形式的な規制体系を重視し, それが投資判断に対する個々具体的な影響の有無程度を問わない趣旨であると解することが, はたしてインサイダー取引規制の趣旨に適っているのかという問題について整理をし, 現実問題として決定事実に該当するか否かの判断基準としてどのような考慮要素が必要かについての考察を試みたものである。
出版者
九州大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:0022975X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.361-380, 2000-12
著者
浅見 克彦
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.299-314, 2003-12-16
著者
蟹江 章
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.95-104, 2007-01-25

カネボウやライブドアなどの粉飾が相次いで明らかになり,財務諸表監査に対する不信感が高まっている。公認会計士・監査審査会による検査の結果,わが国の大手監査法人における監査の品質管理に重大な問題点があることが指摘されている。そして,これに基づいて,金融庁から監査法人に対して業務改善指示が出される事態となっている。 こうした監査不信を増大させるような状況を改善するために,日本公認会計士協会や金融審議会などが様々な角度からの対応策を発表したり検討したりしている。例えば,監査法人の強制的ローテーションや監査法人に対する刑事罰の適用などがあげられる。本稿では,こうした対応策が,監査に対する信頼回復にどの程度の有効性をもつか,そしてまた,より有効な対策となるために何が必要かを批判的に検討した。
著者
園 信太郎
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.47-49, 2007-06-07

統計学の入門講義において,分布の収束の一様性に関するポーヤの命題を述べ,これを証明すべきことを主張した。
著者
田中 愼一
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-32, 2007-06-07

明治前期に東京で地主側が本郷区の借地人たちを相手どって下掃除を請求する民事訴訟が起きていた。大審院での判決原本は最高裁判所で,東京控訴裁判所での判決原本は東京大学法学部でかなり前に閲覧できていたが,東京裁判所での判決原本は不明のままであった。この始審判決原文は国際日本文化研究センターの英断によって最近ようやく見ることができ,この論文を完成に導いてくれた。これまで相当な時間を費やしてきただけに感謝の念にたえない。三審とも判決原本を読みえたことで,この民事事件の全体像を再構成し,下掃除をめぐる利害状況を追究してみたのが本論文である。下肥は東京近郊農業地帯の米作や麦作といった最重要の主穀作の主肥となっていたから,近郊農村民が渇望するところであり,下肥材料を入手する下掃除は代金支払いを伴なう経済行為でもあったから,下掃除をさせる権限が不動産をめぐる関係者の間のどの階層に属するかで非和解的な対立が生じることになった。それはまた,都市不動産課税とも関連して込み入った利害状況の展開があり,解明を要すると考えられた。そして,本論文は明治前期東京下肥経済算術をおこなったのである。
著者
唐渡 興宣
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.1-34, 2007-03-08

本稿はこれに先行する私的所有論の続編をなし,所有論の体系的展開の一環を構成するものである。本源的所有の二次的,三次的構成において,共同体的土地所有と共同体から分離・排除された諸個人が作り出す用具の所有との分裂が土地所有解体の歴史的出発点をなす。土地所有は商品交換を土台とする私的所有に対立的に展開する。近代的土地所有は貨幣関係を基礎とした契約関係という法的関係(=承認関係)に規定された人格的関係において成立する。土地所有の史的成立はこうした人格的関係の成立の解明であり,それは封建的取得構造からブルジョア的取得構造への大転換に媒介されている。その転換は農業資本主義の成立として現れた。本稿は封建的経済構造に支えられた封建的土地所有の史的展開を解明した上で,その土地所有の解体の機序をなすのが労働地代から貨幣地代への移行とそれに伴う領主直営地における賃労働の発生である。それが領主直営地における借地化と領主的囲込みを発展させた。この過程における領主と農奴との関係としての封建的承認関係の解体は農奴の借地農への発展と農業資本主義を事実的に成立させていった。
著者
吉原 直毅
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.373-401, 2003-12-16

経済的資源配分の公正性の問題(分配的正義論)に関する、社会的選択理論と厚生経済学を軸とした理論経済学的なアプローチの近年の展開を概観する。分配的正義に関する従来の支配的見解は、人々の主観的効用の達成度の均等性を要請する「厚生の平等」論であった。対して、人々の主体的責任の問われ得る選択の結果とは見なし得ないような、天賦の才能や資質の格差に起因する、配分上の社会的格差への是正を動機とする「資源の平等」論を提起したのが、ロナルド・ドゥウォーキン(1981b)である。本論は、ドゥウォーキンの「資源の平等」論を、ミクロ経済理論と公理的交渉ゲーム理論の分析装置を用いて公理体系として定式化し、かつ批判したジョン・E・ローマーの研究、ドゥウォーキンの「資源の平等」論以降の政治哲学における分配的正義論の一潮流となった「責任と補償」アプローチを、ミクロ経済理論の分析装置を用いて公理体系として定式化し、その隠れた含意を明示化する事に貢献したマーク・フローベイやウォルター・ボッサール等の研究を概観し、その意義についてコメントする。