著者
後藤 祐一
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.163-207, 2009-06-11

本研究の目的は,NPO,政府,企業間の戦略的協働(以下「協働」と略記)がいかにして形成,実行および展開されるのかを解明することである。分析された事例は,1970年代後半から顕在化したスパイクタイヤに起因する粉塵問題の解決を目的とした協働である。分析の結果,(1)協働アクティビストがアジェンダの重要性を参加者に認識させる場合,協働が促進される,(2)組織のやる気が最も高い組織は,時間の経過とともに交替する,(3)参加者によって能動的もしくは偶然に,3種類の協働の窓がほぼ同時に開かれる場合,協働の実現可能性が高まる,等の仮説命題が支持された。
著者
荻野 昭一
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.207-227, 2014-01-24

平成25年金融商品取引法改正の中に,昭和63年に制定されたインサイダー取引規制の基本的構成を大きく変換させる改正が含まれている。すなわち,インサイダー取引規制とは,上場会社等の役員等の特別の立場にある者が,重要事実等を知った場合において,これが公表される前に所定の有価証券の取引を行うことを規制しているものである。これまで,情報受領者によるインサイダー取引を助長・誘発する可能性のある情報伝達行為については,禁止の対象とはされてこなかったところ,改正法は,情報伝達行為及び取引推奨行為を規制の直接の対象としたところに大きな意義が認められる。そして,これまでの形式的な規制体系によって構成要件の客観化・明確化という重要な特徴を有していたインサイダー取引規制体系に,新たに主観的な要件や抽象的な概念が加わることとなった。本稿は,金融審議会報告書の内容に照らしつつ,従来のインサイダー取引規制の基本的構成を大きく変換させることとなる情報伝達・取引推奨規制について,その構成要件を詳解した後,論点を抽出して考察を試みたものである。
著者
成田 泰子
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.57-68, 2004-03-09

1870年代以降、イギリス古典派経済学は衰退の様相を呈していた。その様な中でイギリス国内において、従来の古典派経済学の方法を激しく批判し、歴史的方法を採用すべきことを訴えたイギリス歴史学派が台頭してきた。彼らは、古典派に代わって主流派を形成するかのような勢いを示した。こうした状況の中で、ジョン・ネヴィル・ケインズ(John Neville Keynes)は、1891年、『経済学の領域と方法』を著し、理論派と歴史派との対立を理論派の立場から調停しようと試みた。本稿においては、『領域と方法』を、イギリス歴史学派による古典派批判に対するケインズからの回答の書として位置づける。なぜなら、ケインズが、イギリス歴史学派の活発な動きを非常に意識していたであろうことが容易に推察されるからである。こうして、従来ほとんど言及されることがなかったケインズとイギリス歴史学派との関係に着目し、イギリス歴史学派からの批判に対して、ケインズがどのような回答を与えたのかという点を、特に経済学の領域問題に焦点をあてて考察する。そして、ケインズがなした回答が経済学史上、いかなる意義持ったのかということを明確にする。
著者
柴田 裕通
出版者
北海道大学經濟學部 = HOKKAIDO UNIVERSITY SAPPORO,JAPAN
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.36-48, 2000-06
著者
平野 研
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.99-118, 2006-11-29

国際的支配-従属関係を非資本主義的帝国主義と資本主義的帝国主義とに分類して考察する。この概念を明らかにしながら,現在まで続く資本主義的帝国主義の起源を19世紀末ラテンアメリカにおける国民経済設立に求める。周辺が帝国に対して従属的で,かつ国内的には非資本主義的な経済外的強制力で統治する政治的機関として,従属的国民国家の確立することによって,非資本主義的帝国主義を脱却し,資本主義的帝国主義へと移行していった。そこでは支配-従属関係が隠蔽され,余剰収奪が強化されていく。初期資本主義的帝国主義では,周辺部の資本主義化による成長を押さえ込める程の経済的権力を中心部が有していなかったため,中心部は周辺部を非資本主義的生産関係に押しとどめておこうとした。これを再編非資本主義的低開発とする。グローバル資本主義段階に入ると資本主義的帝国主義は,周辺部における資本主義的生産関係の拡大を,帝国の資本蓄積へと結びつけることができるようになった。このような資本主義的帝国主義の変化は,低開発国の一部を資本主義的低開発として位置づけた。アジア,BRICs諸国などの成長はこのような流れから捉えられるべきである。
著者
岡田 美弥子
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.79-89, 2003-03-11
著者
寺町 信雄
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.1-21, 2009-03-12

1996年-2005年における日中間の貿易構造の特徴を議論する。使用する主なデータは,UNCTAD/WTOの国際貿易センター(ITC)による「SITA 1996-2005」のSITCの5桁の貿易データである。 先ず日中間貿易の総額について概観した後,SITC大分類より日中間貿易の純輸出比率曲線を導出し,それを用いた議論を行う。次にSITCの5桁の貿易データを用いて,一方向貿易・双方向貿易・垂直的産業内貿易・水平的産業内貿易・単価が異なる双方向貿易に仕分けし,一方向貿易に比べて双方向貿易および垂直的産業内貿易の割合が徐々に上昇していること,対中輸入より対中輸出の方がこの傾向が強いことを明らかにする。また,SITC貿易データを国連の用途別のBEC分類の貿易データにコンバートして,産業用資材と部品の中間財と,資本財と消費財の最終財に区分した日中間の貿易構造についても明らかにする。続いて,一方向・双方向・垂直的・水平的などに仕分けしたSITC分類の品目であると同時に,用途別のBEC分類の品目である仕分けを行うことによって,日中間の貿易構造の詳細な特徴を新たに追加する。最後に,まとめと今後の課題について述べる。
著者
清水 一史
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.1-9, 2013-02-21

現代世界経済の構造変化のもとで, 東アジアの経済統合が更に求められてきている。世界経済の構造変化の中でASEANは1976年から域内経済協力を進め, ASEAN自由貿易地域(AFTA)を確立し, 現在は2015年のASEAN経済共同体(AEC)の完成を目指している。アジア経済危機後には, ASEANを中心に広域の東アジアの地域協力とFTAも進められてきている。そして世界金融危機後の構造変化が, 東アジア経済統合の実現を強く迫っている。世界金融危機後にこれまでの東アジアと世界経済の成長の構造は転換を迫られ, ASEANや東アジアの経済統合がより求められるようになった。また世界金融危機後のアメリカの状況の変化は, 対アジア輸出の促進とともにTPPへの参加を促し, TPPの構築の動きはASEANと東アジアの経済統合に大きな影響を与えている。本稿では, 世界金融危機後の世界経済と東アジア経済の構造変化のもとにおける, 東アジアの経済統合を考察する。