- 著者
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寺谷 亮司
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2015, 2015
1.はじめに<br> 地方中小都市は,人口規模の大きな他の都市規模階層都市に比べ,人口減少が顕著であり,中心商店街の衰退程度もより深刻である。地方中小都市は,県庁所在都市のような中枢管理機能を持ち得ず,工業などの特殊機能の集積も概して少ない。地方中小都市の主たる基盤機能は,周辺地域の中心地としての古典的な中心地機能であろう。このため,地方中小都市の衰退要因としては,①大型小売店・コンビニなどの進出によって,中心地機能の発現主体としての小売店やその取引先の卸売店・生産者など地元企業の連鎖的衰退,②顧客である自市および周辺人口の減少,商圏の広域化による近隣大都市や郊外店への買物客の流出などを指摘できる。本報告では,1990年代以降における地方中小都市の人口や商業の変化動向を,滝川市を中心とする北海道都市を事例に検討する。<br><br>2.北海道都市の人口・商業動向<br> 北海道35都市は,人口規模(2000年)からみて,地方中核都市(人口30万人以上,札幌・旭川・函館),地方中心都市(同10~30万,釧路・帯広・苫小牧・小樽・北見・室蘭・江別),地方中小都市Ⅰ(同5~10万,岩見沢・千歳・石狩・北広島・登別),地方中小都市Ⅱ(同2.5~5万,滝川・稚内・網走・伊達・名寄・根室・美唄・紋別・留萌・深川・富良野・北斗),地方中小都市Ⅲ(同2.5万未満,士別・砂川・芦別・赤平・夕張・三笠・歌志内)に区分できる。これら都市規模類型別に人口変化率(1990~2010年)を算出すると,地方中核都市+7.6%,地方中心都市-5.1%,地方中小都市Ⅰ+10.4%,地方中小都市Ⅱ-12.9%,地方中小都市Ⅲ-32.7%であり,札幌圏のベットタウン都市群で構成される地方中小都市Ⅰを除けば,人口規模が少ないほど人口減少率が高い。最も人口が減少した地方中小都市Ⅲは旧炭鉱都市群であり,人口の過小さから都市と呼べる存在ではない。このため,滝川などの地方中小都市Ⅱが,地方中小都市の典型である。地方中小都市Ⅱの年間商業販売額の推移(1991~2007年)をみると,小売業が-11.1%であるのに対し,卸売業は-43.1%となり,より深刻な衰退状況にある。<br><br>3.買物流動よりみた北海道の都市システムの変化<br> 「北海道広域商圏動向調査(1992年・2009年)」によって,買物流動からみた北海道市町村間結合の変化(1992年→2009年)をみると,①自市町村内買物比率の低下(47.9→32.6%),②最多買物流出先市町への流出比率の増大(31.9→41.1%),③最多流出先が最寄りの中小都市から遠くの大都市へ変化(羽幌町における留萌→旭川など),④中心都市から近郊町村への流出比率の増大(釧路市から釧路町への流出比率が3.8→20.9%など)を指摘できる。これらは,市町村間結合の強化,商圏の広域化,大都市が直接市町村を支配する短絡的結合の増加,近隣市町への大型店立地による都市における都心機能の地位低下を示しており,いずれも地方都市の地位低下に直結する。<br><br>4.滝川市の事例<br> 滝川市は,石狩平野の東北部に位置する中空知地域の中心都市である。上記「北海道広域商圏動向調査」によれば,1992~2009年の変化として,中空知市町から滝川市への平均買物流出比率,さらに遠距離の北・南空知市町からの同比率も高まり,滝川の中空知における商業拠点性は高まり,その商圏は拡大した。しかし現在,滝川市の主たる商業機能を担っているのは,中心商店街ではなく,1990年代後半以降,国道12号線滝川バイパス沿いに集積した大型小売店である。一方,滝川市の中心商店街(鈴蘭通り・銀座通り・大通商店街)の現況をみると,空き店舗が多く(164店舗中35店舗),3つの大型ビル(売り場面積6,921・7,311・16,072㎡)はキーテナント撤退の結果,ほぼ廃ビルの状況にある。