著者
竹内 浩二 竹内 純 菊池 豊 秋山 清 網野 範子 沼沢 健一 伊藤 綾
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.56, pp.99-102, 2009 (Released:2010-12-28)
参考文献数
8

東京都多摩地域でソルゴー障壁を組み合わせた露地ナス生産圃場において,ソルゴー上の昆虫と天敵を調査したところ,ヒエノアブラムシが5~10月に発生し,これを捕食するテントウムシ類やクサカゲロウ類,ヒラタアブ類など30種以上の土着天敵が確認された。また,現地ではソルゴー品種として主に‘風立’を使っていたが,この妥当性を試験圃場,現地栽培圃場で調査したところ,アブラムシ類の発生,草丈など生育状況による防風性,出穂の状況から,東京都においては‘風立’が適当と考えられた。また,試験圃場において露地ナス栽培におけるソルゴー障壁の効果を検討した。ソルゴー障壁区では定植後の農薬散布を実施しなかったが,アブラムシ類の発生は対照区(定植後のアブラムシ剤3回)に比べて少なく,ミカンキイロアザミウマ,カンザワハダニの発生も対照区並に抑えることができた。しかしながら,ホコリダニが多発することがあり,ソルゴー障壁栽培を導入し減農薬栽培を行うにあたってはテントウムシ類やクサカゲロウ類,ヒラタアブ類などに影響が少なくかつホコリダニに効果の高い薬剤の選択といった対応が必要と考えられる。
著者
髙橋 怜子 福田 充 山﨑 周一郎 駒場 麻有佳
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.65, pp.26-28, 2018-12-01 (Released:2019-12-30)
参考文献数
4

トマトかいよう病は管理作業等による二次伝染でほ場内に蔓延すると考えられる。本病原菌汚染ハサミを用いた連続切り付け処理により伝染能力を検証したところ,連続して切断作業をする場合,50回以上の作業の間,本病菌を伝搬させる可能性が示唆された。すなわち,ほ場においては汚染ハサミ1本で50株以上に本病が伝搬される可能性がある。そこで,地上部からの二次伝染防止対策として,各種消毒資材を用いたハサミ消毒による防除効果を検討した。その結果,熱ハサミで最も防除効果が高く,次いで,70%エタノール,塩素系殺菌剤であるケミクロン®Gで防除効果が認められた。ベンチアゾール系殺菌剤であるイチバン,食酢,重曹では防除効果は認められなかった。
著者
長坂 幸吉 日本 典秀 上杉 龍士 勾坂 晶 光永 貴之
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.63, pp.81-86, 2016-12-01 (Released:2017-12-26)
参考文献数
11

コレマンアブラバチ (以下コレマンとする) とナケルクロアブラバチ (以下ナケルとする) の併用によるアブラムシ防除効果を施設イチゴにおいて検証した。2014年作では発生初期のワタアブラムシ (以下ワタとする) に対して,両アブラバチを各1頭/m2で放飼した放飼区と無放飼区とでワタの個体数を比較したところ,放飼区では有意に個体数増加が抑制された。2015年作では,各アブラバチを0.5頭/m2で放飼した放飼区と無放飼区との間で接種したチューリップヒゲナガアブラムシ (以下チューリップとする) の個体数を比較したところ,放飼区での個体数は無放飼区に比べて有意に少なかった。また,同時に発生したワタに対しても,有意に個体数増加を抑制した。コレマンはワタのみにマミーを形成したが,ナケルはワタとチューリップの両方にマミーを形成した。これら2事例の結果から,コレマンとナケルの併用により両アブラムシが同時発生しても密度を抑制できる可能性が示唆された。
著者
伊藤 綾 竹内 浩二 高木 章雄 櫻井 文隆 渋澤 英城 菅谷 悦子 栄森 弘己 山岸 明
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.53, pp.153-156, 2006-12-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
6

近年, 東京都の江東地域においてエダマメの葉の黄化や生育不良, 収穫減少などの生育障害が発生している。そこで2005年に都内のエダマメ圃場63カ所を調査した結果, 江東地域では20圃場で生育障害が発生していた。そのうち19圃場では根部にダイズシストセンチュウのシストの寄生と, 土壌中に高密度の本種のシストと卵を認め, ダイズシストセンチュウが生育障害の原因となっている可能性が高いと考えられた。なお, 多摩地域においても初めて本種の分布を確認した。
著者
井上 美保 手塚 信夫 森 章一
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.56, pp.17-19, 2009 (Released:2010-12-28)
参考文献数
5

アブラナ科野菜黒腐病菌およびネギとニラの種子から検出されるFusarium属菌を対象に,70%エタノールに汚染種子を浸漬し,消毒効果と発芽への影響を調査した。ハクサイとチンゲンサイの黒腐病菌自然汚染種子およびチンゲンサイの人工汚染種子をエタノールに浸漬,風乾後,本菌の検出と発芽試験を行なった結果,10分間以上の浸漬では本菌は検出されなかった。また,15分間以内の浸漬では正常に発芽したが,30分間の浸漬では発芽がやや遅れた。また,ネギおよびニラのFusarium属菌自然汚染種子を用いた試験では,1分間以上の浸漬で本菌は検出されなかった。3分間以内の浸漬では正常に発芽したが,10~15分間の浸漬では発芽がやや遅れ,30分間の浸漬では根の先端が褐変した。以上の結果,黒腐病菌汚染種子のエタノール消毒には10~15分間,Fusarium属菌汚染種子の消毒には1~3分間の浸漬処理が適切である。本エタノール消毒法は,種子の乾燥が非常に早く簡便なため,少量の種子消毒に有効である。
著者
藤永 真史 小林 久茂 小松 和彦 小木曽 秀紀 上原 敬義 小野 佳枝 冨田 恭範 小河原 孝司
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.52, pp.25-29, 2005-12-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
4

長野県のセルリー栽培において最も問題である病害は, 連作によって引き起こされる難防除土壌病害の萎黄病である。これまでは, 化学合成薬剤である土壌くん蒸剤によって恒常的に防除を実施してきたが, 現状, 生産農家からは環境に負荷をかけない防除法の開発が強く要望されている。そこで, セルリー萎黄病防除対策として, 家庭用小型ボイラーを利用した簡易型熱散水殺菌装置による熱水土壌消毒法の有効性を検証した。その結果, 本法はセルリー萎黄病に対し高い防除効果を示すとともに, セルリー萎黄病菌密度は収穫時まで低く維持され, さらに, アスター萎凋病菌, カーネーション萎凋病菌, トルコギキョウ立枯病菌に対しても, 十分な殺菌効果が認められた。これらの作物は施設花き生産の基幹品目であることから, 今後の普及適応拡大に有望と判断される。
著者
小河原 孝司 冨田 恭範 西 和文 西宮 聡 窪田 耕一
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.53, pp.35-39, 2006-12-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
4

メロンつる割病レース1が前作で多発生した現地のビニルハウスにおいて, 熱水土壌消毒の防除効果およびその持続効果について検討した。サブソイラーを用いて深さ50cm程度まで耕私後, 2003年6月中旬に熱水土壌消毒装置を用いて約200L/m2の熱水を処理し, 約1週間放置した。処理期間中の最高地温は, 深さ30cm位置で64.7~92.9℃と, 高温を維持した。熱水処理前に深さ30cmまでの土壌から Fusarium 属菌が検出されたが, 処理後には深さ10cmで未検出, 深さ30cmでは菌密度が低下した。7月中旬にメロン品種「アールス雅春秋系」を定植したところ, 収穫時における発病株率は0~0.5%と, 高い防除効果が認められた。その後, 土壌消毒を行わず, 2003年12月下旬にメロン品種「オトメ」を定植したところ, 2月中旬 (交配期) には発病株率が37%と高くなった。生物検定法により, ハウス内土壌のつる割病菌の汚染程度を調査したところ, ハウス全体に菌が蔓延していた。
著者
桑原 克也 高橋 まさみ 大堀 智也 三木 静恵
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.58, pp.85-89, 2011-12-01 (Released:2013-01-25)
参考文献数
11

群馬県では,施設キュウリのネコブセンチュウの防除対策として,フスマを用いた土壌還元消毒 (以下フスマ還元) が普及しているが,十分な防除効果が得られない事例があった。そこで,低濃度エタノールを用いた土壌還元消毒 (以下エタノール還元) およびフスマ還元による下層土のネコブセンチュウに対する防除効果について,2009年と2010年の圃場試験により検討した。2010年試験でのフスマ還元後の土壌では,深さ20cmまでしかジピリジル反応を示さなかったのに対し,エタノール還元処理後では深さ50cmの土壌までジピリジル反応を示し,下層土まで還元状態が維持されていることが確認できた。2009年試験でのフスマ還元後の表層ではネコブセンチュウ第2期幼虫は検出されなかったが,深さ20cm以降の土壌層で検出され,栽培終了時にネコブセンチュウ密度が著しく増加した。一方,エタノール還元処理後では2か年とも深さ50cmまでの土壌層からは検出されず,栽培終了時でのネコブセンチュウ密度の増加はわずかであった。2か年の試験ともエタノール還元の防除価は,フスマ還元の防除価より高かった。よって,低濃度エタノールを用いた土壌還元消毒法では,下層土壌まで還元状態を維持しており,下層土のネコブセンチュウに対して安定的な防除効果があると考えられた。
著者
池田 二三高
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.57, pp.97-99, 2010 (Released:2012-02-22)
参考文献数
3

ウスモンミドリカスミカメTaylorilygus apicalis (Fieber)の成虫は,キク科植物の筒状花と筒状花の間に1粒ずつ産卵する。稀にホウの内側にも産卵する。産卵対象となる花は,筒状花を有する小ギク以下の小さな花に限られ,園芸種や雑草でも同様である。特にセイタカアワダチソウ,ヨモギ,アチノギク類など筒状花の小さい花を好む傾向が強かった。
著者
仲川 晃生 清水 繁夫 越智 直
出版者
The Kanto-Tosan Plant Protection Society
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.31-34, 2011-12-01
被引用文献数
1

2009年春作~2010年春作にかけて,亜リン酸肥料 (ホスプラス: 大塚化学製,アリンサンデス2号: 日本医薬品開発研究所製) のトマト疫病に対する防除効果について試験した。トマトは品種 「桃太郎」 を使い,春秋2回露地条件下で試験した。2009年春・秋作では液体肥料を使い,500倍または1,000倍に希釈した各液肥を,肩掛け式電動小型噴霧器により疫病の初発前から1週間毎に合計4回散布 (200L/10a) し,最終散布7日後に効果を判定した。この結果,対照のマンゼブ・メタラキシル剤より防除効果は劣るものの,亜リン酸液肥散布区では41.1~76.5に及ぶ防除価を示し,効果が認められた。次いで,省力防除を目的に粉末にした肥料 (アリンサンデス2号の10%または20%含有肥料,日本医薬品開発研究所試作) を使い,苗処理による本病防除効果を調べた。粉末肥料を5gまたは10gの割合でトマト苗移植時の植穴に処理した場合, 防除効果は認められなかった。しかし,育苗時に1gまたは2gの粉末肥料を小型 (9号) ポットの園芸培土と混和して育成した苗を圃場へ移植した場合は,処理量等により効果は異なるものの,防除価で15.1~56.7の効果を示し,一定の効果が認められ有効であると考えられた。
著者
大井田 寛
出版者
The Kanto-Tosan Plant Protection Society
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.60, pp.111-114, 2013

本研究では,CSNV などの媒介者として重要であり,薬剤抵抗性が発達しているミカンキイロアザミウマ (以下,ミカンキイロとする) のトマト生育初期における効果的な防除法の確立を目的とした。トマトの育苗期後半 (定植7日前) または定植時にシアントラニリプロール0.5%粒剤を株元処理し,その後の密度推移を調査することにより,生育初期における防除効果の違いを明らかにした。無処理区では,ミカンキイロ成虫が定植約1ヶ月後以降に急増し,幼虫も漸増して同時期には極めて高い密度に達した。一方,育苗期後半処理区では,ミカンキイロ成虫および幼虫が定植約1ヶ月後まで,それぞれほとんど観察されない状態で推移し,調査終了時まで低い密度に留まった。定植時処理区でもミカンキイロ成虫および幼虫は定植約3週間後まで低密度に抑えられたが,その後は増加し,最終調査時には無処理区の約1/2の密度に達した。これらミカンキイロの密度推移の状況から,本粒剤の残効は育苗期後半処理で処理後約5週間まで顕著に高く,定植時処理では処理3~4週間後まで期待できると考えられた。
著者
大井田 寛
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.60, pp.111-114, 2013

本研究では,CSNV などの媒介者として重要であり,薬剤抵抗性が発達しているミカンキイロアザミウマ (以下,ミカンキイロとする) のトマト生育初期における効果的な防除法の確立を目的とした。トマトの育苗期後半 (定植7日前) または定植時にシアントラニリプロール0.5%粒剤を株元処理し,その後の密度推移を調査することにより,生育初期における防除効果の違いを明らかにした。無処理区では,ミカンキイロ成虫が定植約1ヶ月後以降に急増し,幼虫も漸増して同時期には極めて高い密度に達した。一方,育苗期後半処理区では,ミカンキイロ成虫および幼虫が定植約1ヶ月後まで,それぞれほとんど観察されない状態で推移し,調査終了時まで低い密度に留まった。定植時処理区でもミカンキイロ成虫および幼虫は定植約3週間後まで低密度に抑えられたが,その後は増加し,最終調査時には無処理区の約1/2の密度に達した。これらミカンキイロの密度推移の状況から,本粒剤の残効は育苗期後半処理で処理後約5週間まで顕著に高く,定植時処理では処理3~4週間後まで期待できると考えられた。