著者
村瀬 洋 Vinod V.V.
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.9, pp.2035-2042, 1998-09
被引用文献数
116

本論文では, 画像中に興味ある物体が含まれているかどうか, その位置はどこかを高速に探索するアクティブ探索法について述べる.位置と大きさが不明な物体を画像中から精度良く検出するには, 従来は, 入力画像中の局所領域に着目し, その位置と大きさを変化させながら, 局所領域と参照画像との膨大な回数の照合を行う必要があり, 高速な物体検出は困難であった.本手法では, 物体の形状変形などに安定な色ヒストグラムを特徴として利用し, ヒストグラムの代数的な性質を利用することにより, 特徴照合の際に, 入力画像中のある位置の類似値からその近傍の類似値の上限値を計算する.上限値が探索値より小さければ, その領域での探索が省略できるため, 照合回数を極端に低減できる.本手法により, 総当り法に比較して, 近似を使うことなく, 計算時間を10倍から1000倍程度向上できることを実証した.物体の追跡, 検索, 計数などへの応用例についても述べる.
著者
松岡 達雄 ハッソン ロバート ダル ステファニー バーロウ マイケル 古井 貞煕
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.2070-2077, 1996-12-25
参考文献数
24
被引用文献数
7

本論文では音声理解システムにおいて,音声認識結果である自然言語を,システムを駆動する意味言語に変換するための言語モデルを,コーパスから自動的に獲得する方法について述べる.提案法では,まず,自然言語/意味言語における単語を,出現する文脈の類似度を尺度とした統計的なクラスタリングによりグループ化する.次に,自然言語,意味言語をそれぞれネットワーク文法で表現し,自然言語の文法ネットワーク中の状態遷移と対応する意味言語の文法ネットワーク中の状態遷移間の共起確率を,自然言語と意味言語が1対となったコーパスを用いて推定する.この共起確率を翻訳言語モデルとして自然言語から意味言語への変換を行う.単語のクラスタリングによりネットワーク中の状態数が削減されているため,スパースデータからの推定の問題を回避し,頑健な翻訳言語モデルを推定することができる.米国ARPAの音声理解評価タスクである航空旅行情報システム(Air Travel Information System: ATIS)を対象として評価を行い,提案法の有効性を示す.
著者
岩井 儀雄 八木 康史 谷内田 正彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.44-55, 1997-01-25
参考文献数
16
被引用文献数
58

単眼動画像からの構造・運動推定問題は剛体で単純な形状であれば可能であるが, 関節物体などは解析的に問題を解くのが困難で形状モデルを用いた方法がよく研究されている.特に, 関節物体の一つである手の運動推定は, 手話理解や人工現実感のような応用が期待できる. 手の動作を認識する研究の中で, 手話理解のようなカのフィードバックを必要としないインタフェースでは, 手に何もつけない状態の方が有効である. 本研究では非接触で手の3次元運動と位置を復元する方法を提案する. 非接触の入力装置としては単眼のカメラを用いて, 手形状モデルを生成し, 時系列画像から手の特徴抽出および対応付けを行う. 対応付けの結果より得られた特徴点の軌跡から手の3次元運動を求め, その後, 獲得した手形状モデルを用いてモデルマッチングの手法で指の位置を推定する.
著者
山田 憲嗣 高橋 秀也 志水 英二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.11, pp.2986-2994, 1997-11-25
参考文献数
8
被引用文献数
3

本論文では, 短波長域における結像法として利用されている符号化開口法を可視光域に適用し, 物体の位置と物体表面の3次元形状を検出する手法について述べる. 本手法は物体から開口面までの距離により, 投影面上に映る開口面の大きさが変化する特性を用い, 開口面から物体までの距離を検出する. この距離検出を対象物体の表面の各画素に拡張することで物体表面の3次元形状を検出する. 実際に, 短波長域で用いる符号化開口法を可視光域で用いることができる条件を考察し, 試作システムを構築して3次元物体の形状を検出した. 提案する検出法は, 両眼視法とは異なり, 物体の反射光だけを利用した単眼視法であるので, 簡単な測定システムで3次元形状検出を実現することができる. また, 光だけでなく波動の性質をもつものであれば可視でも不可視でも本手法を利用し, 3次元形状検出を行うことが可能である.
著者
山本 和英 増山 繁 内藤 昭三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1968-1972, 1996-11-25
参考文献数
8
被引用文献数
4

複数のテキストに対する要約について述べる.日本語新聞記事を対象として,単一のテキストの要約にはない,重複部分の把握,およびその除去という固有の問題に対して,連体修飾語,類似節,名詞句の言換えを利用した要約手法とその実験結果について述べる.
著者
永江 孝規 長橋 宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.7, pp.1834-1842, 1997-07-25
参考文献数
27
被引用文献数
8

等値面の構成と陰影付けは3次元空間内のスカラ値の分布を視覚化する際に用いられる手法の一つである. スカラ値の3次元格子状配列として与えられたボリュームデータから等値面を構成する手法は, 与えられたしきい値に応じて格子点間に線形補間点を計算し, それらの補間点を適当に連結して得られる三角形パッチの集まりとして等値面を近似するという方法がほとんどである. 本論文では理論的にもコーディング的にも簡潔で, 高速かつ正確に等値面を構成する方法として, ボリュームの各単位格子を構成する八つのボクセル値の3重線形補間によって得られる3次曲面を直接構成し, 滑らかに陰影付けする手法を提案する.
著者
石川 聖二 竹田 照人 加藤 清史 後藤 昌昭 野口 信宏 香月 武
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.10, pp.2655-2662, 1997-10-25
参考文献数
12
被引用文献数
7

本論文は, 対称に近い非対称形(潜在的対称形)の解析法と, 人の頭蓋骨の非対称性解析への本法の応用について述べている. 形の対称性は物体の著しい形状的特徴であり,それをコンピュータで認識する意義は大きい. しかし, 完全な対称形を解析する手法は数多く提案されているが, 潜在的対称形の解析法はほとんど研究されていない. 本論文では, 面対称に注目し, 鏡映対称像を利用して, 潜在的面対称形に潜在的対称面を設定する手法を提案する. 次に本手法を用いて, 人体頭部のCTデータから復元される頭蓋骨上に潜在的対称面を設定し, その面の左右の非対称部位の抽出を行い, 非対称の程度の数量化を試みる. このような頭蓋骨の形状解析法は, 口腔外科のように頭蓋顔面領域の疾患を治療する領域で有益な手段を与える. 提案法を合成データおよび頭蓋骨データに適用し, 良好な結果を得た.
著者
川村 春美 乾 敏郎 鈴木 智 徳永 幸生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.1046-1056, 1997-05-25
参考文献数
7
被引用文献数
5

カラー画像から, 照明光の色を推定する手法の一つに, 物体の平均の色が灰色であると仮定(灰色仮説)し, 画像の平均の色を照明光の色として推定する手法がある. この手法は, 照明光の推定値が物体の平均の色に依存するため, 仮説が成り立たない場合, 推定精度が低下することが問題であった. 本論文では, 相異なる照明光下における共通物体からの反射光の平均の色が, 黒体放射軌跡上にある場合に, 灰色仮説が局所的に成立すること, および, その場合に, 共通物体からの反射光の平均を照明光の色として推定できることを示す. 更に反射光の平均と照明光の色とが知覚的に同一である場合の照明光推定の方法および実験結果を示す. また, 相異なる複数物体における反射光の中から灰色仮説が成立するような色の組合せを選択する方法も示す
著者
吉村 ミツ 吉村 功
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.7, pp.1764-1773, 1997-07-25
被引用文献数
12

本論文は旅行小切手上に書かれた日本人の署名を自動的に照合するシステムについて述べている. 日本人の名前は, 通常3個ないし5個の漢字, 平仮名, 片仮名からなっている. 署名をするとき日本人は, たいていの場合その名前を構成文字間に空白をおいで書く. この空白を利用すると署名は各構成文字に分離できる. 本論文の筆者らはこれに着眼した署名照合システムを作り, その性能を実験を通して吟味し, 次の結果を得ている. 1.上段に書かれた1個の純正署名のみを参照して下段に書かれた署名を照合する場合には, 誤照合率を40%以下にすることができない. 2.純正署名を5個参照できる場合には, 誤照合率を16%程度に小さくすることができる. 3.署名を各構成文字に分離して照合を行うと, 分離しない場合に比べて誤照合率を7%程度小さくすることができる. 4.誤照合率は個人によって大きく異なり, 純正署名を5個参照できる場合, いつも安定していて他人にまねされにくい署名では誤照合率が0%になるが, 不安定な書き方の署名では誤照合率が30%以上にもなる. 本論文は, 以上の実験結果から, 旅行小切手で署名照合を有効に行うには, 純正署名を複数個利用できるようにすることが望ましいと結論づけている.
著者
李 元中 小畑 秀文
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.2161-2169, 1997-08-25
被引用文献数
10

顔画像の認識, 圧縮などの応用には, 顔の輪郭や目, 鼻, 口等の形状ならびにそれらの位置関係を正しく認識する必要がある. しかし, 安定かつ正確な各顔部品のエッジを抽出する手法はまだ確立されていない. 本論文では顔画像から顔部品の安定した位置検出を行い, それに基づいて顔のスケッチ画像を抽出する手法について述べる. 具体的には, まずMorphology手法を基本とし, 本研究で開発したCircle_filterとRectangle_filterにより, 顔の向きによらない瞳の中心点の位置を抽出する. 次は, 両瞳の中心点を手掛りとして各顔部品の相対位置を決め, 各顔部品の範囲を限定し, その中で各顔部品のエッジを検出する. それに基づき, 各顔部品の特徴点の位置を決め, それらを結ぶ曲線により顔のスケッチ画像を得る. 多数の顔画像に本手法を適用した結果, スケッチ画が安定に得られることがわかり, ロバストな手法であることが示された.
著者
山本 公洋 内藤 昭三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.12, pp.2790-2801, 1998-12
参考文献数
11
被引用文献数
1

本論文では, 解(標本)が複数のスキーマへと線形分割可能な組合せ最適化問題を対象として, 遺伝アルゴリズムの交叉によるスキーマ保存機構を, 任意の1種類のスキーマに着目して, サンプルビット列集合における着目するスキーマを含有する標本(着目標本)の個数の増減という観点から考察する.着目標本数の経時変化は, 淘汰の複写機能による増殖と交叉や突然変異の破壊機能による減衰が均衡する点の有無によって, 2種類の相(安定相と非安定相)に分かれることを示す.着目標本の適応度平均とサンプルビット列集合全体の適応度平均との大小関係に依存して, 安定相-非安定相間の相転移が発生することを示す.遺伝的アルゴリズムにおいて交叉率を高く設定することで, スキーマがサンプルビット列集合全体へ均等に埋め込まれ, 着目標本の適応度平均が高くなり, 均衡点が発生して, 着目標本数が一定に保たれることを示す.最後に, 計算機実験に基づき, 交叉によるスキーマ保存機構に関する考察が妥当であることを示す.
著者
長屋 茂喜 宮武 孝文 藤田 武洋 伊藤 渡 上田 博唯
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.568-576, 1996-04-25
被引用文献数
51

本論文では, シーンの構造や照明条件が大きく変化する環境下で, 映像中から移動物体を検出する新しい方式を提案する. 本方式の特長は, 各フレーム画像の移動物体領域を探索する代わりに, 時間相関の変化パターンを用いて映像中での移動物体が存在する時間区間を判定する点にある. 本方式はリアルタイムで移動物体を検出でき, 天候 (雨・雪など) や照明条件等の環境の変化に対してロバストである. また, カメラ位置や移動物体の進行方向等の制約がほとんどない. 屋外全天候・昼夜間を含む踏切映像 (撮影期間1年) から選択した代表的な六つのシーン (各10分合計60分) に対して評価実験を行い, 1組の固定したしきい値だけで, 大幅な環境変動が生じる映像に対して, 95%の正検出率を得た.