著者
大木 秀一 彦 聖美
出版者
石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa journal of nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.7-18, 2013

英米の書籍(基本書)をもとに研究方法論としての文献レビュー(文献研究)について検討した.インターネットで書籍検索を実施した結果,システマティック・レビューやメタアナリシスなど高度な文献研究のみを扱った書籍を除外すると2012年9月現在,文献レビューに関する英文の書籍は13種類25冊であった.各書籍の最新版をもとに内容を検討し以下の知見を得た.書籍の起源は1998年と推定された.文献レビューは,一定の手順と技術に基づいて実施される,それ自体が独立した研究方法論と言える.優れた文献レビューには網羅性(情報量)と独創性の2側面が要求される.大学院生(学位論文の執筆)では必須の素養に位置付けられる.文献レビューのトレーニングは,文献検索(情報収集)能力,文献の品質評価能力,各種データの統合力,オリジナリティの創出力,学術的作文能力など,研究に必要な基礎的能力を習得する機会として有用だと思われる.(著者抄録)
著者
清水 暢子 松永 昌宏 長谷川 昇 梅村 朋弘 山田 恭子 望月 美也子 加藤 真弓
出版者
石川県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

医学的管理が充実している日本の高齢者であっても、認知症予備群から認知症へ移行する数は増加の一途である。一方、チェンマイ県での認知症罹患率は、日本の6分の1程度に留まっている。そこで本研究の目的は、タイ北部農村部とタイの都市部の高齢者、日本の北陸地方の農村部と都市部の高齢者の、認知機能面、身体機能面、社会生活面、栄養摂取面、精神心理面、保健行動面を評価し、その影響要因について、また、継続して3年間の認知機能経年変化値や脳血流量変化量を従属変数に、生活習慣や環境、社会背景を説明変数として何が認知機能の経年変化に影響を与えているかを比較検討することであった。日本側の農村部および都市部在住の高齢者の調査から、ミニメンタルステートテスト(MMSE)の値と言語流暢性課題と運動課題を同時に行う二重課題実施中の前頭前野の脳血流との間に有意な関連がみられ、近赤外分光法(NIRS)を使用した前頭前野血流変化量は認知機能低下の予測因子として重要な指標となり得ることが示唆された。また高齢者の宗教観および社会的孤立が認知機能に及ぼす影響についての調査結果から日本の都市部と農村部ではMMSEとMOCAの認知機能検査結果に違いはなかったが、農村部では信仰有りが有意に高く、「信仰の有無」、「高齢者のうつ」、「社会的孤立状態」は認知機能の経年変化の予測因子になり得ることが示唆された。一方、タイ,チェンマイ市内都市部と農村部の3か所の高齢者サロンに通所する高齢者へ、半構成的インタビューを中心に行った結果からは、「老いることの意味」について全員が「老い」をポジティブに受け止めていた。タイ高齢者の宗教心が老いへ向かう態度や日々の生活への態度にポジティブに関連している可能性があった。宗教的背景が他者とかかわる機会を持たせ、「人の役に立つ」ことを満たすために、高齢であっても孤立しない環境である可能性があった。
著者
瀧澤 理穂
出版者
石川県立看護大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

子どもをもつがん患者は、自身の病名を子どもに伝えるか否かに苦悩を抱き、本来治療に向けるべきエネルギーを消耗し、心身の負担が増大することが報告されている。しかし、看護師は十分な患者支援が出来ていない現状にある。患者への寄り添いを看護師の重要な役割を考えるNewmanは、看護師が患者とパートナーとなり対話を行うことで、患者が自分らしい生き方を見出すことが出来ると述べている。そこで本研究は、子どもに自分の病名を伝えることに悩むがん患者と研究者が、Newman理論に基づいたパートナーとなり対話を行ったならば、患者が自分なりにどのような解決の方向性を見出していくか、その体験を明らかとする。
著者
木森 佳子 須釜 淳子 宮地 利明 中山 和也
出版者
石川県立看護大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、失敗する可能性の高い目視困難な末梢静脈を可視化する装置開発を最終目的に、近赤外光を用いた静脈透視技術と画像処理技術の課題を解決することである。これらの共通課題は深層静脈の可視化である。静脈透視技術について可視性に影響する光源とカメラと皮膚の位置関係、ナローバンドの効果、偏光フィルターの角度について検討した。その結果、これらの角度等により静脈の見え方は違いがあり最適値付近が明らかになった。画像処理技術の改良によってこれまでのプロトタイプより静脈可視化率が向上した。静脈の深さではなくコントラストの向上が功を奏した。臨床の意見を基に穿刺に有用な画像処理技術も向上した。
著者
米田 昌代 吉田 和枝 曽山 小織 島田 啓子
出版者
石川県立看護大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

この研究の目的は、周産期の死(死産・新生児死亡)を経験した母親・家族を社会全体で支えるシステムを開発することである。今回、全国の主要な医療機関(産科・NICU)、行政(県・市区町村)、赤ちゃんを亡くした方の自助グループに対して各々の退院後のグリーフケアの現状と関係機関の地域連携の現状・課題・新たな提案について調査を実施し、その結果をもとに連携システムのモデル案を作成した。その後、母性看護学・助産学の研究者から意見を聴取し、さらに吟味を重ね、周産期のグリーフケアにおける地域連携システムモデル案Ⅰ案を完成するに至った。
著者
村井 嘉子 北山 幸枝 南堀 直之 中野 泰規 栗原 早苗
出版者
石川県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、安静療法(降圧と臥床安静)を行う急性大動脈解離(StanfordB型)患者の看護実践の構造を明らかにした。研究方法は、質的帰納的研究方法(Grounded Theory Approach)である。25サブカテゴリー、7カテゴリー及びコアカテゴリーを抽出した。看護実践は、急性動脈解離の急変のハイリスクに供えながら、患者の日常性を再構築することであった。CureとCareが融合した看護実践の一部を解明した。
著者
小林 宏光 安河内 朗 綿貫 茂喜 中山 栄純
出版者
石川県立看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

心拍変動解析の手法は数学的には高度化してきているが,これが必ずしも生理学的指標としての心拍変動測定の精度・信頼性の向上につながっていない。我々は以前から心拍変動測定における呼吸コントロールの必要性を主張してきており,現状では専門の研究者の間では一定の理解が得られていると思われるが,市販されている心拍変動解析ソフトウェアではこの点に配慮したものは存在しない。本課題は、心拍変動測定・解析のためのソフトウェアを開発することを目的とするものであるが,周波数解析の手法などは従来からあるシンプルで確立した手法を用い,一方で呼吸の影響やデータの時間的整合性などに関しては十分な配慮した設計を行い,この指標の実際の測定における信頼性の向上につなげることを目標とする。本課題ではそれぞれに特徴を持つ3種類の心拍変動測定・解析システムを開発した。開発されたソフトウェアは,できるだけハードウェア環境に依存しないよう心がけて作成したが,AD変換を要するシステムでは特定の計測ボードに依存する部分が存在する。しかし,逆に心電計に関しては汎用性を持つので,心電計と解析ソフトウェアが一体となったメーカー製のシステムと比べれば,汎用性の面でもメリットがあると思われる。POLAR S-810を用いたシステムは,特定の心拍計に依存したシステムであるが,この機器の価格が非常に安いため,多人数の同時測定には特に適していると思われる。呼吸の影響やデータの時間的整合性に対する配慮はメーカー製の製品で最も欠けている点であるが,これらの点についても一定の配慮をした設計を行った。今回開発したソフトウェアは,まだ改良の余地を残すものではあるが,現段階でも十分な有用性を持つものであると思われる。
著者
子吉 知恵美
出版者
石川県立看護大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

就学前における発達障害児(ADHD/注意欠陥多動性障害・LD/学習障害・高機能自閉症など)の子どもたちとその保護者に対する支援をつなげていくためのツールに関する研究である。乳幼児健診で子どもの発達障害を指摘された後、子どもが不適応を起こさないように、保育所・幼稚園、さらに小学校へと適切な関わりがなされるように、子どもの特性を関わる職種が理解し、援助をしていけるように、どのような支援ツールが有効であるのか検討した。
著者
織田 初江
出版者
石川県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

糖尿病に関する生活改善のために必要となる自己管理能力の測定用具として、糖尿病自己管理エンパワーメント尺度の開発を目的に本研究を行った。その結果、尺度項目として3因子39項目が選定された。この尺度における3因子の累積寄与率は、63.6%であった。また、下位尺度間相関では3つの下位尺度は互いに有意な正の相関を示した。各下位尺度のα係数は、いずれも0.9以上の高い信頼性を示した。