著者
井上 透
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.210-214, 2022-06-01 (Released:2022-06-01)

デジタルアーカイブは,文化・科学・教育・産業資源をデジタル化により保存・継承・公開することで,情報への継続したアクセスを担保し,意思決定やイノベーション,リスクコントロールを支援することで人々の生活を豊かにする営為・システムである。デジタルアーカイブを開発,運営する人材,デジタル・アーキビストへのニーズは増加している。2006年に始められた日本デジタル・アーキビスト資格認定機構による人材育成制度は①対象・文化の理解,②情報のデジタル記録と利用,そのための③法と倫理から構成されており,図書館司書,博物館学芸員,自治体職員,教育関係者,企業関係者等約6,700名へ資格を与えている。
著者
北川 正路
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.204-209, 2022-06-01 (Released:2022-06-01)

特定非営利活動法人日本医学図書館協会は,2004年1月に,認定資格「ヘルスサイエンス情報専門員」の申請募集を開始した。本認定資格は,「基礎」,「中級」,「上級」の3種類から構成され,3種類とも,業績と専門職活動によるポイントを自己申告することにより審査・認定がなされる。現在の認定資格の申請,審査・認定の方法は,2014年に本協会にて承認された「専門職能力開発プログラム」に基づいて定められており,認定資格事業が,教育・研究関連の事業と連携して,専門職能力の向上における自己研鑽,自己啓発を支援することを想定している。更に,認定資格の認定は,ヘルスサイエンス情報専門職の専門性が内外に認識されるきっかけとなっている。
著者
大谷 康晴
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.198-203, 2022-06-01 (Released:2022-06-01)

日本図書館協会認定司書は2010年に開始して制度として定着している。しかし,その発足には多くの時間を要している。その原因は「専門性評価」そのものにもあるため簡単な問題ではない。それでも,インフォプロには「専門性評価」は必要と考える。たとえば司書の場合,外部から見てその知識・技能を測ることが難しく社会的評価が低い状態に陥っている。これは経済学でいうレモン市場の状況に近い。この状況を改善するため認定司書のような「専門性評価」は必要であり,インフォプロにおいても同様であると考える。
著者
青野 正太
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.191, 2022-06-01 (Released:2022-06-01)

今月号は,「インフォプロの認定制度」と題してお届けします。昨今,図書館においては職員の非正規率の増加が指摘され,日本図書館協会図書館政策企画委員会専門職制度検討チームから「専門職制度検討チーム報告~非正規雇用職員が職員数の多くを占める時代における職員制度のあり方について~」(2019年3月)という報告が出されました1)。さらに,日本私立大学連盟が提言した「ポストコロナ時代の大学のあり方~デジタルを活用した新しい学びの実現~」(2021年8月)においては,“基準で想定されている専門的職員(第38条3)である司書は図書館機能の多様化に伴って,図書館職員に求められる能力も多様化したため,形骸化している”と指摘されています2)3)。このように,図書館司書をはじめとするインフォプロの働く環境は厳しい状況にあります。そうした中で,認定制度はスキルや経験を証明することにつながるとともに,キャリア形成を支援する手段となることが期待されます。そこで本特集では,インフォプロの認定制度について経緯を含めて解説し,その意義や今後果たしうる役割を明らかにしたいと考えています。まず,総論として,相模女子大学学芸学部の宮原志津子様には,専門職の質保証として機能している海外の図書館情報学専門職資格の事例を取り上げ,日本の司書資格における課題を示していただきました。次に各論として,3種類の認定制度について,制度運営に携わっている方に,制度づくりの背景から今後の課題に至るまで解説していただきました。青山学院大学コミュニティ人間科学部の大谷康晴様には,日本図書館協会が2010年に創設した認定司書制度についてご解説いただいた上で,専門性評価の必要性と制度化における課題についても触れていただきました。東京慈恵医科大学学術情報センターの北川正路様には,日本医学図書館協会が2004年に創設したヘルスサイエンス情報専門員制度についてご解説いただきました。岐阜女子大学文化創造学部の井上透様には,2006年に始められた日本デジタル・アーキビスト資格認定機構によるデジタル・アーキビスト認定を中心とする人材育成制度についてご解説いただきました。最後に,認定制度の活用事例として,認定司書,ヘルスサイエンス情報専門員として活躍されているインフォプロの方に取組内容をお寄せいただきました。日本図書館協会認定司書第1060号である砂生絵里奈様には,ご自身の認定司書としての活動についてご解説いただきました。ヘルスサイエンス情報専門員(上級)である牛澤典子様には,ご自身のヘルスサイエンス情報専門員としての活動についてご解説いただきました。読者の皆様におかれましては,本特集記事を通して認定制度の現状を理解していただくとともに,制度の活用についても知っていただき,インフォプロのキャリア形成について考えるきっかけとなれば幸甚です。なお,情報科学技術協会で実施している検索技術者検定もインフォプロの能力を認定する制度といえるものですが,別稿で扱う予定のため,今回は取り上げていません。(会誌編集担当委員:青野正太(主査),安達修介,長谷川智,長谷川幸代)1) 専門職制度検討チーム報告:非正規雇用職員が職員数の多くを占める時代における職員制度のあり方について.日本図書館協会図書館政策企画委員会専門職制度検討チーム.2019,34p.http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/seisakukikaku/senmonshokuseido.pdf, (参照2022-04-26)2) ポストコロナ時代の大学のあり方:デジタルを活用した新しい学びの実現.日本私立大学連盟.2021,23p.https://www.shidairen.or.jp/files/user/20200803postcorona.pdf, (参照2022-04-26)3) なお,日本私立大学連盟は2021年10月21日に“ポストコロナ時代に向け,図書館という場の機能は高度化・多様化する極めて重要な存在”であり,“その機能と合わせ司書の役割は,専門職員として更に大きな意味を持つものであるにも関わらず,現行の大学設置基準の条文では不十分であり,改めてその役割を再定義する必要がある”旨を説明するページを公開しています。“提言「ポストコロナ時代の大学のあり方」における図書館等の記述について”日本私立大学連盟.https://www.shidairen.or.jp/topics_details/id=3412, (参照2022-04-26)
著者
池内 有為
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.170-176, 2022-05-01 (Released:2022-05-01)

データキュレーターの役割を“研究によって生み出されるデータから有用なデータを選択し,第三者が再利用できるようにFAIRデータ(見つけられる,アクセスできる,相互運用できる,再利用できるデータ)として流通させ,長期にわたって管理・保存すること”と定義して,研究データ管理サービスやデータライブラリアンとの関係を整理した。また,大学・研究図書館協会の『研究データのキュレーション』に基づいて,データキュレーションのライフサイクルに沿って実務の内容を示した。さらに,日本の現状をふまえてデータキュレーションを(1)分野専門家,(2)図書館員,(3)情報技術専門家で分担することを提案した上で,人材育成について検討した。
著者
長谷川 幸代
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.159, 2022-05-01 (Released:2022-05-01)

2022年5月号の特集テーマは,「データの価値を創出するために」です。近年,イノベーションの創出を目的として,官公庁データ,研究データ,民間データなど,あらゆるデータの利活用が推進されています。これまでの社会では,存在する膨大なデータを収集して「ビッグデータ」としてまとめることが中心となりがちでした。それが昨今は,データの収集,蓄積,管理,流通を的確かつ効果的に行い,それらを利活用して新たな価値を作り出していくことが期待されています。情報専門家であるインフォプロも,従来の資料や情報の収集と提供からさらに発展し,新たな情報資源ともいえる多様なデータを扱う機会が増えてきています。このような中で,改めて身に付けておく基礎知識や求められる能力などについて検討する必要が出てきているのではないでしょうか。今号がこの状況に際して,データ利活用の現状やスキル,人材育成等の側面から皆さまに情報を提供する機会となることを願います。本特集では,まず総論として林和弘氏から,オープンサイエンス政策と学術情報流通を中心とした研究データ利活用の国内及び海外の動向について解説し,さらに展望について述べていただきました。次に,吉武道子氏からは,主に材料科学分野を例に取り上げ,データの種類ごとにデータの利活用の現状と,利活用するために必要な処理であるデータキュレーションについての概観を論じていただきました。池内有為氏には,「データキュレーター」について定義を行い,その役割や人材育成について解説していただきました。河塚幸子氏からは,図書館で利用可能なデジタルデータを中心に現状を紹介,さらにその活用に向けて図書館がどのように対応していくべきかの役割と課題について述べていただきました。水田正弘氏には,データを活用して実社会に役立てる方法について論じていただく中で,必要となるデータに関する状況について解説し,推測統計や記述統計等についてもふれていただきました。大量かつ多種にわたるデータを蓄積していくだけでなく,そこに付加価値を付けて社会に還元していくスキルと人材がとても重要になってきます。インフォプロが直面する新たな課題も出てくると思われます。今号がそのようなことに対して,新たな知見を与える契機になれば幸いです。(会誌編集担当委員:長谷川幸代(主査),今満亨崇,中川紗央里,水野澄子)
著者
水田 正弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.183-186, 2022-05-01 (Released:2022-05-01)

「ビッグデータ」は,魅力的なワードであり,情報技術,特にインターネットや記憶装置の異常なまでの発展に伴い,大きな期待と注目を浴びてきた。しかし,実際にビッグデータを活用しようとすると,統計学をはじめとするデータ解析の技術がキーポイントになることが認識されてきた。すなわち,本質的なことは,「ビッグ」なデータを扱うことではなく,「データ」を活用することである。これらの活用のためには,データを扱うための考え方を整理する必要がある。本稿では,データに関係する状況,推測統計と記述統計,その発展形を含めて取り扱う。それらにより,データを活用して,実社会に役立てる方法を議論する。
著者
池田 貴儀
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.219-223, 2005-05-01 (Released:2017-05-25)
被引用文献数
2

会議録は, 研究者が最新の研究動向を知るための情報源であり, 図書館が収集すべき重要な資料にもかかわらず入手が困難とされている。その会議録について, 日本原子力研究所図書館では, 現在, 約1万9千件を収集し研究者に提供している。本稿では, 主として, 学協会からの会議情報の入手, 国際原子力情報システム(INIS)データベースの利用, 研究者からの情報入手といった会議録の収集手法を紹介した。また, 日本原子力研究所が研究報告書として刊行する会議録JAERI-Confのシリーズについても触れている。
著者
徳原 靖浩
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.8-13, 2016-01-01 (Released:2016-04-01)

東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室は,「イスラーム地域研究」ネットワークの拠点の一つとして,現地語資料の収集や整理に関わる課題に取り組んできた。本稿では,まずイスラーム地域の現地語資料の特徴と,日本における蔵書の概要について述べ,次に,アラビア文字資料の整理をコンピュータで行う際の問題点について,NACSIS-CATのアラビア文字対応の経緯とともに解説する。次に,現地語資料を効率的に収集・整理・利用する際の問題点と,それに対する東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室の取り組みについて紹介する。最後に,今後の展望について,日本の現状に合わせたネットワーク型の協力の利点に触れつつ述べる。
著者
三輪 宗弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.415-421, 2012-10-01 (Released:2017-04-18)
参考文献数
11

本稿では米国国立公文書館を利用する一人として,資料特に真珠湾攻撃直後に押収された日本商社資料の閲覧を通して,企業の日々の活動の資料が徹底的に分析され,日本の空襲ターゲット選定や日本に関する様々な情報収集にまで利用された実態を知ることができた筆者の経験を記述した。これらのことから,米国国立公文書館を利用すると,資料を収集して,分析して活用し,さらにそれを今日まで記録として残し,公開しているという点で,米国の資料管理の素晴らしさを実感できる。日米の資料公開の違いを痛感するのが軍事関係情報の公開の在り方である。シビリアンコントロールの観点からも情報公開の大切さを学ばなければならない。海外文書館での資料や情報の公開のあり方を学び,優れた制度を取り入れ,根付くように微力を尽くしたい。
著者
染谷 雅幸 石川 優佳 内記 香子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.156-161, 2001-03-01 (Released:2017-05-25)

東京大学法学部附属外国法文献センターで手に入れることができる, 海外の法令および判例資料の基本的な探し方について解説する。紙面の都合上, 本稿では, アメリカ, イギリス, フランスおよびドイツの4カ国に限った上で, それぞれの国の具体的な法令集・判例集を紹介している。国により, また年代により, 多様な形態の資料が存するため, それぞれの特徴や利用方法を理解することが, 法令および判例に関する情報を正確かつ速やかに把握するための第一歩である。難解とされている海外資料の検索を, 少しなりとも分かり易く伝えることが本稿の目的である。
著者
山口 直比古
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.141-147, 2022-04-01 (Released:2022-04-01)

PubMedには2021年末現在3,300万件以上の医学文献が収録されており,その多くは英語で書かれたものである。PubMedで医学文献を検索するとは,ほぼ英語論文を探すことになる。MeSHという索引・検索キーワードのシソーラスが用意されているが,同義語や関連語から適切なMeSHへマッピングするためのメタシソーラスなども用意されており,利用者(End User)は,思い浮かんだフリータームで検索しても,適切な結果が得られるBest Matchというシステムが用意されている。また,一般市民の利用も多く,MedlinePlusという一般市民向けの情報調査サイトも提供されており,誰でもが利用できる医学文献検索システムの提供が目指されている。
著者
中山 和弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.122-127, 2022-04-01 (Released:2022-04-01)

ヘルスリテラシーとは,健康や医療の情報を「入手」「理解」「評価」「活用」して適切な意思決定ができる力である。世界中でヘルスリテラシーの測定が行われ,その差が健康格差を生んでいるとして,人権問題としての取り組みの必要性が叫ばれている。日本においてもヘルスリテラシーに困難のある人は多く,入手や理解まではできたとしても,判断したり意思決定するのが難しい状況がみられた。このため,情報の信頼性を評価する方法のみならず,意思決定において選択肢の十分さを確認し,各選択肢に必ずある長所と短所を知り,それらのうちどれが大事かの価値観を明確にして選ぶプロセスを学ぶ必要がある。