著者
山﨑 久道
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.290-296, 2022-08-01 (Released:2022-08-01)

インフォプロや図書館員の役割は,情報とそれを求める人を適切に結びつける「情報の仲介者」ということである。文献の整理技術や情報管理,インデクシング(索引作業)は,そのための必須の技法と位置付けられる。情報の組織化,メタデータ作成などと,表現されることもある。これは,自然語による,時空を超えたコミュニケーションの不安定性を克服する手段である。インフォプロが自らの仕事を効果的,効率的に遂行するには,こうしたスキルと理論の習得が必要である。こうした点で共通点を持つINFOSTAとTP&Dフォーラムが,コラボレーションすることは,のぞましいことである。
著者
今満 亨崇
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.289, 2022-08-01 (Released:2022-08-01)

情報科学技術協会(当協会)が長年後援してきた,TP&Dフォーラムという研究集会があります。整理技術・情報管理の世界,より具体的には図書館分類法,Indexing論,情報検索,情報管理,目録法といった領域を対象とする研究集会です。この度,大変喜ばしいことに,この研究集会で発表された内容や,そこで行われた議論についてまとめた記事を当雑誌へ掲載できることになりました。インフォプロの業務は,様々な学問的背景や研究領域を有しています。その中でも,TP&Dフォーラムが対象としてきた領域は,インフォプロの専門性を構成するコア領域の一つです。そこで本特集では,インフォプロにとっての整理技術・情報管理の重要性を再確認するとともに,その研究動向をお伝えする特集としました。まずは当協会の会長でもありTP&Dフォーラムの活動にも積極的に参加されている山﨑久道氏に,インフォプロの専門性と整理技術・情報管理がどのように関連しているかを非常に明解にご解説頂きました。その後,「TP&Dフォーラム2021」の内容を小特集としてまとめております。最初に鈴木学氏に2021年のフォーラムそのものの概要をまとめて頂き,具体的な発表内容が続きます。福田一史氏にはコミュニティ生成データを典拠とした目録作成の試みについて,発表内容及びフォーラム内で行われた議論を踏まえて,論文としてまとめて頂きました。インフォプロ以外の人々がインターネット上で作成しているデータを,目録作成の典拠として活用する可能性や課題を検討した論考で,将来の業務にも影響を与えうるものです。この論文執筆の前にTP&Dフォーラムでどのような議論が行われたのか,森原久美子氏に討議報告の形でまとめて頂きました。研究内容に関する議論が興味深いのはもちろんですが,研究者ではなく実務者が論文や記事が執筆されるまでの議論の過程を知ることはなかなかありません。そういった観点から読んでも得るものが多くあります。ところで,TP&Dフォーラムは2021年の開催で30年の節目を迎えており,これまでとこれからについてパネルディスカッションを中心として議論を行っています。記事では実際のフォーラムの流れに則り,まずはパネリストの方々の発言要旨をまとめて頂きました。その次の記事では,参加者を含めた討論の内容や,これまでの発表内容の傾向の変化をまとめています。これら記事からは,関係各人の熱い想いが感じられるとともに,TP&Dフォーラムの今後ますますの発展が期待できる内容となっております。本特集が,整理技術・情報管理の重要性を再確認するととともに,その将来について考えるきっかけとなれば幸いです。(会誌編集担当委員:今満亨崇(主査),青野正太,野村紀匡,李東真)
著者
石田 晴久
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.16-21, 1994-01-01 (Released:2017-05-26)

インターネットの形態は,(1)LAN(構内ネットワーク)の拡張型,(2)地域インターネット,(3)広域インターネット,(4)国際インターネットに分けられる。このうち,(2)については,全国各地で徐々に構築が進んでいる。また(3)の広域ネットとしては,WIDE, SINET, TISNなどの学術網のほか,IIJやSPINのような商用ネットも出現し始めた。今後,望まれるのは省庁や小中高校などの参入およびインターネットによる官庁の情報公開である。
著者
久間木 寧子 平井 克之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第19回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.31-35, 2022 (Released:2022-07-01)

大学全体の研究活動の向上に資する有用な研究力分析については,多くの取り組みがなされているが,今回は,情報の共有,特に「共感」できる研究力分析から,大学全体の研究活動の向上に繋がる課題抽出を狙った取り組みを紹介する。共感できる研究分析で提供する情報としては,大学の方針に基づくデータの共有と,共感しやすく,研究力向上に向けた活動促進につながるような研究者側からの課題抽出/課題提起,2つの側面を重視している。情報共有では,学内の研究者が最も共感できる所属単位[部局(学部・学系)等]と,研究活動の指標として身近である研究業績[科研費の状況・論文の業績]をきっかけとして,研究担当副学部長等への部局訪問を実施してきた。その結果,部局が必要とする研究推進関連の情報については,ある程度の方針が見えてきた。次の展開としては,部局訪問で得た課題への新しいアプローチや研究担当副学部長ネットワークの活用を進める。
著者
小島 史照
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.263-268, 2022-07-01 (Released:2022-07-01)

製薬関連企業の特許調査の実務者の集まりである日本FARMDOC協議会(JFA)では,毎年5-6件の研究テーマを設定して活動している。本稿では「Markush構造研究会」「製造方法研究会」の2件について成果を紹介する。Markush構造研究会では2017年当時,利用可能であったデータベースについて機能の詳細を調査するとともに,複数の調査事例における結果の比較・考察を行った。2021年の製造方法研究会では,低分子化合物および調査の網羅性に課題がある大環状化合物の製造方法特許について調査手法を検討し,有益な調査ノウハウを得ることができた。さらに,各種調査事例においてPatSnapはCAplusを補完できる可能性が示されたことから,今年度も研究を継続している。
著者
大島 優香
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.257-262, 2022-07-01 (Released:2022-07-01)

化学構造検索による特許検索において,索引系データベースはその化学物質索引の信頼性と検索機能の利便性から必須である。一方,全文系特許データベースでは,索引系データベースでは索引されなかった化学物質の検索ができること,タイムラグ無く検索できることが実証できた。特に出願前先行技術調査や無効化資料調査の場面での活用が期待できる。全文系特許データベースの化学物質切出しは,システムにより異なる。そして,正確性の観点で,現時点で,どのシステムにおいても不十分と言える。今後の化学物質辞書の充実やAI技術の進展等により,正確な化学物質切出しに期待する。
著者
坪内 優佳
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.251-256, 2022-07-01 (Released:2022-07-01)

PATENTSCOPE特許検索サービスは,世界知的所有権機関(WIPO, World Intellectual Property Organization)が無料で提供する特許文献検索サービスで,1億200万件以上(2022年3月末時点で)におよぶ特許文献を検索・閲覧することができる。2021年3月からは一部の非特許文献の検索も可能となり,同年9月からは化学化合物検索に関し,マーカッシュ構造の検索機能も追加されるなど,PATENTSCOPEは進化を続けている。本稿では,進化を続けるPATENTSCOPEについて,その特徴や最新機能も含めた全体像を紹介する。
著者
安藤 俊幸
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.245-250, 2022-07-01 (Released:2022-07-01)

最近では知財情報業務への人工知能(AI: Artificial Intelligence)の適用も身近な存在になってきている。商用のAIを利用した特許調査ツールも複数登場している。ただ,これら商用のAI調査ツールをユーザーが使いこなす上で押さえておくべき基本事項や限界・課題も多いのも現実である。本報では,特許調査でのAI活用について,過去の概念検索の導入過程を振り返り,概念検索とAI検索との比較を,特許調査と機械学習の観点から特許調査システムのユーザーの立場として述べる。また,現在の深層学習(第3世代AI)の限界も指摘され,第4世代AIと言うべき提案もなされている。商用のAI利用特許調査システムにおいても,第4世代AIを目指すツールが出現しており注目している。
著者
隅田 英一郎
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.232-237, 2022-07-01 (Released:2022-07-01)

深層ニューラルネットの登場によって人工知能の実用化が様々な分野で進んでいる。自動翻訳はその典型的な成功事例である。2016年以降の深層ニューラルネットによる自動翻訳の高精度化は革命的である。汎用だけでなく分野特化型もあり,多くのサービスが上市され,加速度的に普及し始めている。高精度化の背景にある自動翻訳の固有の事柄を説明し,自動翻訳を一層高精度にするために研究者以外が大きく貢献できることを述べる。また,自動翻訳が音声技術と連携することによって可能となる,逐次通訳と同時通訳の自動化についても現状と展望を述べる。
著者
パテントドキュメンテーション委員会
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.231, 2022-07-01 (Released:2022-07-01)

「AIを用いた特許検索」を掲げて「KIBIT」が登場して大きな話題を呼んだのが2015年のことでした。それ以降,様々な検索システムがAIを前面に打ち出した拡張機能を搭載しており,今日ではAIを使った特許検索や特許分析,IPランドスケープ作成等を日常の調査業務に取り入れておられる方も少なくないことと推察いたします。重ねてAI技術の発展は自動翻訳や自動分類などの技術にも波及し,これらの技術が特許調査の領域でも使われ始めていることはご承知の通りです。化合物調査の分野でも,従来のように人の手により化合物構造式を索引してデータベース化するのではなく,AIが自動的に特許全文から化合物名称や構造式を取り込んで索引を作成する手法が提案され,実装が進んでおります。これらAI技術を核とした様々な機能の追加により,特許調査実務はまさに今,転換点を迎えていると言っても過言ではないと思います。本特集号は,これらの新しい手法に関する基本的知識や使用に際して留意すべきことをまとめて,特許調査に関わる皆様のお役に立てればという思いで企画しました。また,新しい調査・解析手法を日々研究しているエンドユーザー協議会様の研究成果の一端を紹介することで,最新の検索技術に対する知見を深めていただくことも企図しております。最初にAI自動翻訳の第一人者でおられる国立研究開発法人情報通信研究機構フェローの隅田英一郎氏に,自動翻訳の基本と同時通訳への適用を見据えた今後の展開について,初心者にもわかりやすく解説していただきました。第二稿は一般財団法人日本特許情報機構の長部喜幸氏に,中国特許のAI翻訳と自動分類についてSDGs特許を分類した実例を挙げてご紹介いただきました。第三稿は,アジア特許情報研究会の安藤俊幸氏に,AIを用いる特許調査と概念検索の利用に際する留意点をご提案いただきました。第四稿はデータベース提供の立場から世界知的所有権機関(WIPO)の坪内優佳氏に,WIPOが公開している「PATENTSCOPE」について解説いただいております。第五稿は日本アグケム情報協議会の大島優香氏に,第六稿は日本FARMDOC協議会の小島史照氏に,それぞれの協議会がユーザー視点で取り組まれた化合物検索システムの研究成果をご紹介いただきました。なお,化合物検索については各稿で取り上げた以外にも各種システムがありますが,今回は事例紹介の位置づけですので,全ての検索システムに言及してはおりませんことをご承知おきください。最終稿は日本EPI協議会の田中厚子氏に,IPランドスケープの事例として協議会での研究事例をご紹介いただいております。いずれの論文も読み応えがあり示唆に富んだものとなっております。皆様の日々の調査実務のご参考になれば幸甚です。INFOSTAパテントドキュメンテーション委員会
著者
林 賢紀
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第5回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.75-79, 2008 (Released:2008-10-30)
参考文献数
9

近年における学術情報の急激な電子化、特に一次情報である電子ジャーナルの普及はめざましい。これらの電子情報資源へは、抄録・索引データベースやOPACのような書誌所在データベースの検索結果からリンクリゾルバと呼ばれるツールを介して、自機関で利用可能な電子ジャーナルなどの情報資源へ利用者を適切に誘導することが可能となっている。本稿では、一般的なリンクリゾルバの利用方法に加え、WebブラウザであるFirefoxから直接リンクリゾルバを利用するためのツールや、保有するデータベースから利用者が自機関のリンクリゾルバを利用する手法など、農林水産研究情報総合センターにおけるリンクリゾルバの多面的な活用事例について報告する。
著者
竹内 比呂也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.72-77, 2012-02-01 (Released:2017-04-18)
参考文献数
24
被引用文献数
1

日本の紀要,特に大学紀要の現状について,その定義の困難さ,歴史,掲載論文の特性,質についてのこれまでの議論に着目してレビューした。紀要が学会誌や専門誌に取って代わられなることなく継続して刊行されている理由を,特に人文社会科学における研究や研究者の意識などから検討した。また紀要の電子化について,機関リポジトリの発展および大学図書館間のILLの状況を踏まえて現状を述べた。最後に,学術情報メディアとしての紀要の質の確保と,紙媒体と電子版が共存するハイブリッド環境下において書庫狭隘化に直面している大学図書館における合理的な紀要管理の方向性について議論した。
著者
長谷川 寿一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.138-144, 1995-04-01 (Released:2017-05-26)
参考文献数
8

「論文を執筆できる」ということは、大学教育における大きな到達目標のひとつであるに違いない。にもかかわらず,大学生にとって論文を書くことがどのような意味をもつのか,また大学人は学生に対して論文執筆をどのように教育したらよいのか,といった基本的な問いに対しては,従来,正面から答えられることが少なかった。本稿では,論文執筆の原点は,他者との交流を通じて自らの主張を節度をもって根拠づけることであるとの認識から出発し,レポートと論文の相違点,論ずるに足る主題とは何か,論拠の示し方などについて述べ,さらに,執筆上のトラブルや悩みの対処の仕方などを論じた。