著者
堤 健
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.210-214, 2017-11-02 (Released:2018-04-16)
参考文献数
5
著者
陳 以珊 久保義弘
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.107-113, 2020-08-07 (Released:2020-09-12)
参考文献数
24

Gタンパク質結合型内向き整流性K+(GIRK)チャネルは,種々の生理的役割を担うイオンチャネルである.例えば,脳においてはGIRK1とGIRK2のヘテロ複合体が存在し,神経細胞の興奮性を制御しており,心房においてはGIRK1とGIRK4のヘテロ複合体が存在し,心拍の調節に寄与している.われわれは,小分子ライブラリーのスクリーニングにより,抗寄生虫薬として知られるIvermectinがGIRKチャネルを活性化すること,さらに,抗ヒスタミン薬として知られるTerfenadineがGIRKチャネルを抑制することを新たに見出した.本研究では,アフリカツメガエル卵母細胞にGタンパク質結合型受容体の共発現なしに種々のGIRKチャネルを発現させ,二電極膜電位固定法により電気生理学的解析を行い,IvermectinがGIRK2サブユニットに活性化作用を示し,TerfenadineがGIRK1サブユニットに抑制作用を示すことを見出した.次に,キメラ分子や点変異体の網羅的解析により作用の構造基盤の同定を試みた.その結果,Ivermectinの活性化作用にはGIRK2のアミノ末端細胞内領域と第1膜貫通部の間に位置するSlide Helix上のIle82が重要であること,また,Terfenadineの抑制作用にはイオン選択性フィルターの背後に位置するPore Helix上のPhe137が重要であることを見出した.さらに,Ivermectinの活性化作用は,Gタンパク質には依存せず,PIP2を要すること,また,Terfenadineの結合とPIP2の結合には競合が見られることが明らかになった.
著者
相庭 武司
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.160-168, 2019-07-18 (Released:2020-09-12)
参考文献数
33

心筋細胞のカルシウム動態(Ca2+ハンドリング)は,活動電位波形や心筋収縮にも密接に関係し,イオンチャネルやトランスポーターなどのさまざまな影響を受けるため,遺伝性不整脈疾患においても,Ca2+ハンドリングの異常は致死性不整脈の発生に強く関係している.QT延長症候群やカテコラミン誘発性多形性心室頻拍においては交感神経の緊張が催不整脈的に,Brugada症候群においては交感神経の緊張は不整脈抑制に作用している.一方で心不全においては,細胞内のCa過負荷や電気的な非同期性収縮によって,Ca2+ハンドリング異常を生じ,収縮性の低下につながっている.特に,左室非同期性心不全(dyssynchronous heart failure)においては,左室内で収縮が遅れる側壁側においてCa2+ハンドリング異常が顕著であり,両室ペーシングによる心室再同期療法(CRT)によって電気的なズレが改善すると,Ca2+ハンドリング異常も改善を認めた.このようにCa2+ハンドリング異常は心筋細胞の興奮・収縮連関において非常に重要な意味をもっており,それらを理解することで致死性不整脈の発生や心不全の成因を解明し,新たな薬物治療の重要な標的となることが期待される.
著者
滝川 正晃 合屋 雅彦 池ノ内 孝 清水 悠輝 雨宮 未来 鎌田 龍明 西村 卓郎 田尾 進 宮﨑 晋介 笹野 哲郎
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.36-43, 2023-04-04 (Released:2023-04-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1

心房細動アブレーションに関連する心房頻拍(AT)は,しばしばマクロリエントリーを機序とし,とりわけ,肺静脈,僧帽弁輪,三尖弁輪を解剖学的障壁として旋回する.それゆえ,解剖学的障壁間の線状焼灼は,これらのATを治療する上で不可欠である.Differential pacingを用いたブロックラインの確認は,心房粗動に対する,三尖弁-下大静脈間峡部の線状焼灼の完成度を評価する方法として報告されたが,他の線状焼灼の完成の有無の確認にも応用される.しかしながら,高解像度のマッピングで,Differential pacingではブロックラインの完成を20~30%で誤診してしまう可能性が報告されている.オムニポーラー技術を用いると,3つの単極電極と直行する2つの双極電極からなるクリックという単位において,360°の心内電位から最適な電位を選択し,Activation Vectorとしてリアルタイムに表示することが可能である.今回本機能を用いて,線状焼灼の完成をリアルタイムに評価するのに成功した1例を経験したので報告する.
著者
徳留 大剛 小和瀬 晋弥 鈴木 穣 寺田 直正 伊藤 浩一 前垣 雅治 増田 慶太 長田 淳
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.16-24, 2019-03-20 (Released:2019-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

両心室ペースメーカーの左室(LV)リード植込み手技を行う前に冠静脈(coronary vein:CV)と左横隔神経(left phrenic nerve:LPN)の情報を得ることは植込み手技の戦略を立てるうえで重要である.今回,われわれは単純CTからCVとLPNの3D画像を作成し,その正確性について,20例のCRT植込み症例で検討した.評価方法については,CVは術中の造影画像と比較し,LPNはLVリードで横隔神経刺激が発生した部位と一致しているかを確認した.3D画像は全症例で作成でき,CVについては19/20例で一致,LPNは全10例で走行部位とペーシングでの横隔神経刺激発生部位が一致していたことから,3D画像は正確に描出できていると考えられた.単純CTから作成したCVとLPNの3D画像は,CRT植込みの術前に正確性の高い解剖学的情報を把握でき,有用である.(心電図,2019;39:16~24)
著者
栗田 隆志
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.565-566, 2008-12-18 (Released:2010-09-09)
参考文献数
3
著者
遠藤 裕久 戸叶 隆司 清水 孝史 和田 英樹 土井 信一郎 塩澤 知之 小西 宏和 比企 優 華藤 芳輝 久保田 直純 田村 浩 尾藤 史康 木津 京子 諏訪 哲 住吉 正孝 中里 祐二 代田 浩之
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.436-441, 2013 (Released:2015-07-16)
参考文献数
7

症例は,84歳女性.高血圧症に対して,2011年4月からアゼルニジピン16mg/日の内服が開始された.同年5月14日,めまい・眼前暗黒感が出現し当院受診,心電図上洞停止,心拍数40/分前後の房室接合部調律がみられ,入院となった.ただちにアゼルニジピンを中止,翌日には心拍数75/分の洞調律に回復した.後日施行した電気生理学的検査では,200/分のオーバードライブ洞抑制試験において洞結節回復時間が3,065msecと延長を認めた.また来院時のアゼルニジピン血中濃度は,7.89ng/mlと通常の治療域であった.ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬による症候性徐脈の症例報告は少ない.今回われわれは,潜在性の洞結節機能不全がアゼルニジピンにより顕在化し,著明な症候性徐脈を呈した1例を経験したため,報告する.
著者
丸山 徹 深田 光敬
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.40-43, 2015 (Released:2015-08-03)
参考文献数
8
被引用文献数
2 1
著者
清水 昭彦 山縣 俊彦 上山 剛 早野 智子 立野 博也 江里 正弘 大村 昌人 田村 健司 松崎 益徳
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.195-202, 1998
被引用文献数
1

心房細動の発生機序を検討するために, 右房に期外刺激法と洞調律時の心房内マッピング, P波同期加算平均心電図を行い, 発作性心房細動例 (paf) の心房筋の電気生理学的特性を検討した.高位右房期外刺激で反復性心房応答 (RAF) と最大伝導遅延を求めると, RAF誘発例の83%の有効不応期 (ERP) は250ms以下でかつ最大伝導遅延は40ms以上であった.ジソピラマイドは有意にERPを延長させ, 逆に, イソプロテレノールは有意にERPを短縮させた.両薬剤ともに最大伝導遅延を短縮させて, RAFの誘発は抑制された.心房内マッピングとP波同期加算平均心電図を行った症例では, paf群は対照と比較して有意に異常心房電位数が多く, フィルター化P波持続時間は延長し, P波初期および終末期ベクトルマグニチュードは低値であった.<BR>心房細動の発生には, 心房細動の基質, 心房筋ERPの短縮と伝導遅延が重要である.<BR>心房細動の発生機序に関しては, 今世紀の前半よリリエントリーと自動能亢進の問で長く論争が行なわれている.最近でも, fooal atrial fibrillationの報告が行なわれているし, 心房細動の一部の機序に撃発活動も考えられている.リエントリーとしては, Moeらの唱えたmultiple wavelet説が有力であり, 解剖学的欠損を持たずにリエントリーの中心に向かう興奮波によって作られた機能的ブロックの形成によって興奮波が回旋する"leading circle" (図1) 説や興奮が螺旋状に回旋してその中心の核が移動するSplral wave説がある.以上, 心房細動の発生機序は種々考えられているが, 現在の臨床レベルでこれらの電気生理学的現象を直接証明することは不可能であり, 通常は心房細動例と対照例の心房内マツピングやP波同期加算平均心電図あるいは心房期外刺激による心房筋の反応を検討することで, 心房細動の心房筋の電気生理学的特性が検討され, 間接的に心房細動が起こる基質の存在が調べられている.
著者
嶋根 章 岡嶋 克則 木内 邦彦 横井 公宣 寺西 仁 青木 恒介 千村 美里 津端 英雄 斎田 天 宮田 大嗣 高橋 八大 鳥羽 敬義 大石 醒悟 三好 直貴 月城 泰栄 高谷 具史 小林 征一 山田 愼一郎 谷口 泰代 矢坂 義則 林 孝俊 横山 光宏
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.421-428, 2014 (Released:2015-07-27)
参考文献数
15

植込み型除細動器(ICD)の心臓突然死予防効果は,多くの大規模臨床試験で実証されてきた.しかしながら,ICDのショック作動は不適切作動でさえも,予後の悪化と関連すると報告されている.ICDのショック作動の予後に対する影響を明らかにするため,器質的心疾患を有するICD症例253例〔男性79%,平均年齢63±11歳,1次予防36%,平均左室駆出率(LVEF)38±14%〕につき検討した.追跡期間(中央値1,428日)中,適切,不適切ショック作動ともに62例(24.5%)の症例で認め,55例が死亡した(心臓死31例).多変量解析で年齢(ハザード比1.044,p=0.007),LVEF(ハザード比0.969,p=0.011),血清クレアチニン値(ハザード比1.867,p<0.001),心房細動あるいは心房頻拍の既往(ハザード比2.093,p=0.012),適切ショック作動(ハザード比2.777,p=0.001)が全死亡の独立した予測因子であった.一方で,不適切ショック作動は全死亡と関連しなかった.ICDのショック作動が直接生命予後に与える影響は,少ないと考えられる.適切ショック作動は,心室不整脈の再発や新規発症を示す,生命予後不良のマーカーと考えられる.
著者
小田切 史徳 中里 祐二 秋山 泰利 島野 寛也 高野 梨絵 木村 友紀 塩澤 知之 田渕 晴名 林 英守 関田 学 戸叶 隆司 住吉 正孝 代田 浩之
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.165-175, 2018-11-02 (Released:2018-12-28)
参考文献数
28

皮下植込み型除細動器(subcutaneous implantable cardioverter defibrillator : S-ICD)の有効性と安全性は,すでに海外の臨床試験データから示されているが,これらのデータに本邦での使用経験は含まれていない.今回,当施設におけるS-ICDの初期使用経験について報告する.対象は2016年3月から9月までに当施設でS-ICD植込みを行った7例と,対照として経静脈的植込み型除細動器(transvenous implantable cardioverter defibrillator : TV-ICD)植込みを行った10例である.患者背景,原疾患,検査所見,既往歴,内服薬,手術方法,作動状況などについて,両群で比較検討した.植込み術を施行された17例(S-ICD 7例およびTV-ICD 10例)を213±86(127〜312)日後まで観察した.S-ICD植込みを行った7例は全例男性で,平均年齢は46.3±14.1(34〜68)歳,BMI(body mass index)は23.3±2.6(20.7〜27.9)kg/m2であった.一次予防目的が4例,二次予防目的が3例であった.また,原疾患に関しては,虚血性心筋症2例,非虚血性心筋症2例,Brugada症候群などを含むその他が3例であった.S-ICD植込み群は,7例全例で術中に除細動テストを施行し,そのうちの1例はシステム位置の再調整を要した.観察期間内で,S-ICD植込み群およびTV-ICD植込み群ともに適切作動は見られなかったが,S-ICD植込み群において,2例の不適切作動が見られた.有害事象については,TV-ICD植込み群と有意差は認められなかった.S-ICDは,植込み時に本体・リードの位置に注意を要するものの,短時間で安全に植込み可能であった.当施設で経験した2例の不適切作動は,心房粗動波とノイズのいずれもオーバーセンシングが原因と考えられ,適切なスクリーニング方法,治療ゾーンの調整やセンシングベクトルの選択には今後の検討を要すると考えられた.(心電図,2018;38:165~175)
著者
小野 克重
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.118-125, 2017-07-06 (Released:2018-04-16)
参考文献数
17

心電図におけるJ点とは,QRS群の終末部分とST部分の始まりの接合部(Junction)を指す.このJ点は,ときにnotch,またはslurとして観察され,このnotch(slur)全体をJ波と呼ぶ.心電図のST部分は,心室筋の脱分極が終了し再分極が始まるまでの間に,すべての心室筋がほぼ等電位にある時間帯であり,活動電位の第1~2相に相当する.ST部分は基線上に水平に位置することが原則とされるが,実際の心電図では脱分極の終了時点と再分極の開始時点が重なり合っている場合が多く,ST部分が基線に一致しないことも多い.このSTの上昇が1mm未満であるときは有意な所見であると見なされないが,心筋梗塞や心筋症の診断が否定されているにもかかわらず,著明なST上昇が認められる場合がある.この現象は心筋の早期再分極によるものとされ,早期再分極症候群(Early Repolarization Syndrome)と呼ばれる.Wasserburgerはその判断基準として,(1)ST接合部での1~4mmのST上昇,(2)凹状ST,(3)QRS波下行脚のnotch,あるいはslur,(4)ST上昇の認められる誘導でのT波増高所見,をあげている1).この早期再分極症候群に認められるQRS波下行脚のnotchはJ点そのものであるが,低体温症などの際に出現するOsborn波2)と極めて類似しており,両者は同一機序によって説明されるものと考えられている.本稿では,心電図のJ波の成り立ちを心筋の活動電位と膜電流異常によって概説する.