著者
国広 悌二
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.683-690, 2010-09-05 (Released:2020-01-18)
参考文献数
43

くりこみ群方程式を用いた非線型方程式の漸近解析の方法を発展方程式の縮約への応用に焦点を絞り,初等的且つ明快な手続きとして解説する.そこでは,永年項を含む摂動解の包絡線として大域解を構成することで不変多様体の構成とその上での縮約された方程式の導出が達成される.くり込み群方程式が包絡線方程式として解釈できることを示す.くり込み群の方法に基づく縮約理論は,非線形振動子に対するKrylov-Bogoliubov-Miteopolskyや蔵本によって定式化された縮約の一般論によく対応することが強調される.
著者
南部 陽一郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.199-201, 1975-03-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
4
著者
堀内 昶 池田 清美
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.836-844, 1983-11-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
52

原子核のクラスター模型は, はじめは殻模型を補完するものとして, 最近では広い質量数及びエネルギー領域に適用しうるものとして用いられ, 軽い核の構造とその動的性質を記述するに不可欠な模型の一つとなっている. クラスター模型は"原子核内で核子が局所的に強く相関しあう部分的小集団"であるクラスターを単位とし, そのクラスターの集合体で取扱う模型である. それ故クラスター相関が強く現れる際には, クラスター間相対運動が原子核の運動様式の基本となるとする立場の模型である. この意味で, 殻模型とは立脚点が質的に異なる模型である. この解説は, 原子核の分子的 (クラスター) 構造の我国を中心とする研究について概説し, 近年活発となって来ている周辺研究分野との結びつきについて紹介するものである.
著者
兵頭 俊夫
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
大学の物理教育 (ISSN:1340993X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.3-7, 2020-03-15 (Released:2020-04-15)
参考文献数
11

1.はじめに2018年に開催された第26回国際度量衡総会(CGPM)で改定された,定義定数に基づくSI基本単位の定義1)について前稿2)で述べた.本稿ではSI第9版3)の付録1と4を参照しつつ,今回
著者
岸根 順一郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.294-295, 2016-05-05 (Released:2016-07-12)
参考文献数
6
被引用文献数
1
著者
川田 和正 大西 宗博 佐古 崇志 瀧田 正人
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.155-160, 2022-03-04 (Released:2022-04-05)
参考文献数
29

宇宙線は宇宙から等方的にやって来る陽子を主成分とする高エネルギーの原子核である.1912年の宇宙線発見以来,そのエネルギースペクトルは10桁以上にわたり観測されてきたが,その起源,加速機構や伝播など多くの謎が残されている.宇宙線スペクトルは冪関数で表されるが,最も顕著な特徴は4 PeV(=4,000 TeV)付近の折れ曲がりであり,そのエネルギー以上で宇宙線フラックスの減少割合が高くなる.この観測結果から,少なくともPeV付近までの宇宙線は銀河系内の天体,例えば超新星残骸で加速されていると考えられてきた.しかし,宇宙線をPeV付近に加速できる「ペバトロン」と名付けられた天体の探索が長年続けられてきたが,そのような天体の正体はいまだ不明である.荷電粒子である宇宙線は銀河磁場によって曲げられ到来方向を失うため起源の特定は難しいが,直進するガンマ線はそれを可能にする.PeV宇宙線は起源天体近くの分子雲と衝突すると,宇宙線エネルギーの約10%(=100 TeV)をもつガンマ線を放射するため,100 TeV以上のガンマ線観測はペバトロン特定の強力な手段となる.しかし,これまでに実験的に知られている銀河系内天体における宇宙線の加速限界は,超新星残骸のガンマ線観測から0.01 PeV程度であり,ペバトロンの加速エネルギーには全く達していない.Tibet ASγ実験は,中国チベット自治区の高原(標高4,300 m)に設置された空気シャワー観測装置により広視野で宇宙線・ガンマ線の観測を行っている.高エネルギーガンマ線(または宇宙線)は,大気中で「空気シャワー」と呼ばれる粒子カスケードを起こし,シャワー状に粒子が地上に降り注ぐ.この空気シャワー中の粒子を,多数の粒子検出器からなる空気シャワー観測装置で捉え,元のガンマ線のエネルギーと到来方向を決定する.また,ガンマ線信号に対して雑音となる宇宙線を排除するために,空気シャワーに含まれるミューオンを利用する.空気シャワー中に含まれるミューオン数を測定するために,ミューオン以外の粒子が十分吸収される地下に,約3,400 m2の水チェレンコフ型ミューオン観測装置が建設された.ガンマ線起源の空気シャワー中のミューオン数は,宇宙線起源のそれと比べて極端に少ないため,ガンマ線と宇宙線の選別が高精度で可能になった.これにより,100 TeV以上で宇宙線雑音を1,000分の1に減らすことに成功し,超新星残骸/パルサー星雲である「かに星雲」から世界で初めて100 TeVを超えるガンマ線を統計的有意に観測した.ガンマ線の最高エネルギーは450 TeVにも達し,当時観測史上最も高いエネルギーのガンマ線の検出に成功した.これは,PeV近くまで加速された電子が低エネルギーの光子を叩き上げる逆コンプトン散乱によってガンマ線が放射されていると考えて矛盾がなく,宇宙線の起源とは言えなかった.しかしその後,超新星残骸「G106.3+2.7」と分子雲の方向が重なる場所からも100 TeVを超えるガンマ線の観測に成功した.これは,PeV宇宙線が分子雲と衝突して発生した中性パイ中間子の崩壊を通してガンマ線が発生したと考えるのが自然であり,ペバトロンの有力な候補の発見となった.