- 著者
-
宮原 将平
- 出版者
- 一般社団法人 日本物理学会
- 雑誌
- 日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, no.3, pp.160-167, 1972-03-05 (Released:2008-04-14)
- 参考文献数
- 18
本稿はもともと日本物理学会の北海道年会(1971年)において綜合講演として話したことにもとづきそれに若干補筆したものである. ところで, 十年ばかり前にやはり物理学会のシンポジウムで似たような話をした記憶がある. それにもとづいて雑誌「金属物理」1960年第1号に「磁性体研究の歴史」: 将来の展望のために : という一文を書いた. 歴史については別として展望について何をいったか反省してみることは, 十年を経た今日において興味あることである. そこで私は三つの提案をしていた. 第1は性急に全般的な理論をたてることをいそぐことより"物質"の役割を強調したこと, 第2には"典型的物質"というものを提案したこと, 第3には物質を極端な条件下におくことを第2の典型性との関係で考えてみたことである. 以上のような提案がじっさいの研究の発展の上でどれだけ意味をもっていたかは, さらに歴史の批判にまたなければならないだろう. しかし, 私の考えでは, それは物質の典型性との関係ではじめて意味をもちうるものと思うのであるが. 昔話はそのくらいにしておいて, 本題に入らなければならない. ここでは歴史を, 十年前にしたのとは少しちがった角度から述べようと思う.