著者
内山 龍雄
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.635-642, 1969-10-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
4

素粒子の電荷がすべてne0(n=0, ±1,…)の形にあらわされるという事実を再現するために現在までに提唱された理論の主なもの3つを概説する。第1はDiracのmagnetic monopoleに関する論文で, これと関連して電荷の量子化が示される。第2はKaluza, Kleinの統一場理論で, そこでは第5座標X5に正準共役なP5が電荷を示すことに着目して素電荷の存在を示す。最後に筆者自身の考えを紹介する。これは一般化されたゲージ場の一種として荷電ベクトル場を導入し, これが素電荷の運搬役をつとめることによって素電荷の普遍性を示す。
著者
小方 厚
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
大学の物理教育 (ISSN:1340993X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.25-28, 2022-03-15 (Released:2022-04-15)
参考文献数
23

1.音楽と物理学音は物理学の対象だが,音楽は芸術であり,物理学で扱おうとしても一筋縄ではいかない.ヘルムホルツの歴史的な著書1)は音楽を聴くことを出発点として,まず聴覚の生理を物理に還元するこ

1 0 0 0 OA 泡の流体力学

著者
松信 八十男
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.22, no.8, pp.500-507, 1967-08-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
45
著者
樋口 卓也
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.73, no.10, pp.720-725, 2018-10-05 (Released:2019-05-17)
参考文献数
19

エレクトロニクスの進歩の歴史は,その速度向上の歴史と言っても良い.エレクトロニクスの速度を決める要因は多々あるが,その中でも特にここでは電流をどれだけ短い時間で発生させられるかを考えてみよう.通常のエレクトロニクスが扱える時間よりもずっと短い時間だけ光るパルスレーザーを用いてその限界を調べる試みが進められている.フォトダイオードなどの通常の光受信機を用いると光のパルスが受信機を通っている間に徐々に電流は発生し,光の強度を電流として測定できる.しかしこの場合,我々が測定しているものは光強度の1周期平均であり,光の電場波形そのものではない.光の強度が強くなり,その光の電場の強さが物質の中で電子が感じている力よりも強くなると,電子が光の振動する一周期よりも短い時間で動き出すことができる.この時,電子の応答は光電場に対して非摂動的な非線形性を示し,応答の結果は光の(1周期を平均した)強度だけによっては決まらず,詳細な電場波形の時間発展の様子によって決定される.実際にこのような現象はこれまでガス状の原子や分子,透明な絶縁体などで発見されてきた.それではエレクトロニクスに欠かすことのできない良導体では光の電場で電子を駆動することはできるのだろうか.しかしこのような実験は電気を流す物質では実現が難しかった.これは金属は通常光の反射や吸収が強く,物質の中にまで強い光が届かないために,その中の電子が強い光を感じることができないからである.そこでグラフェンを用いることでこの困難を乗り越え,光の電場によって電子を駆動することで光の一周期より短い時間(1フェムト秒以下)で電流を流し始め,光の波形によってその電流の向きを制御することに成功した.グラフェンは良導体ではあるものの,原子一層分の厚みしかないために,光の反射や吸収が少ないという特徴がある.ここで重要となってくるのは,光が当たっている間,光の電場による加速によってグラフェン中の電子の運動量が時間とともに変化することである.この運動量の変化量が大きくなると,光と物質の相互作用を摂動展開した時にその展開が収束しない領域に達する.すると電子の運動はLandau-Zener過程のように振る舞い,光の1サイクルよりも短い時間で電子がバンド間を遷移するようになる.さらにこのような短い時間になると,電子の量子力学的な波としての性質が重要になってくる.この研究では,光の振動の半周期の間に起きる電子の波の経路干渉(Landau-Zener-Stückelberg干渉)によって電流の向きが決定されることが分かった.この経路干渉の結果は光によって駆動された電子の波数空間での軌道に大きく依存しており,光の偏光によってこの軌道を自在に操ることで電流の向きを光の1サイクルよりも短い時間でスイッチすることができることも明らかになった.光は1015 Hz程度の高い周波数で振動しているので,本来電気信号が扱えるよりもずっと多くの情報を単位時間あたりに運ぶことができる.この高い密度の情報を読み取れる原理が示されたことで,光を直接電気信号のように扱えるエレクトロニクス技術への一歩が踏み出せたと言える.
著者
松田 良一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
大学の物理教育 (ISSN:1340993X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.116-119, 2020-11-15 (Released:2020-12-15)
参考文献数
7

1.はじめに中等および高等教育における理数系教育問題を理数系学会が議論する場として「理数系学会教育問題連絡会」がある.しかし,当初は生物学系の学会はその連絡会には参加していなかった.西暦
著者
中村 晃 工藤 知草 高 香滋
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集 71.2 (ISSN:21890803)
巻号頁・発行日
pp.3230, 2016 (Released:2017-12-05)

フーコーの振り子の実験では、振り子の振動面が回転することで、地球の自転を知ることができる。大きな建物の天井にひもをつけ、ひもを長くし、また重いおもりを振動させると、安定した振動を実現できる。小型のフーコーの振り子では、減衰や楕円運動を制御する工夫が必要になる。本研究では、市販の部材を用いて学生実験でも容易に導入可能なフーコーの振り子の実験教材を開発した。
著者
大栗 博司
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.130-133, 2015-02-05 (Released:2019-08-21)

一般相対論と量子力学の統合は,現代物理学の大きな課題のひとつである.この記事では,これを達成する究極の統一理論の最も有望な候補である超弦理論の現状,特にアインシュタインらの指摘した「量子もつれ」にかかわる最近の話題について解説する.
著者
北尾 彰朗
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.12, pp.893, 2017-12-05 (Released:2018-09-05)

新著紹介生体分子の統計力学入門;タンパク質の動きを理解するために
著者
張 紀久夫 石原 一 大淵 泰司
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.343-349, 1997-05-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
27

近ごろ盛んなメゾスコピック系の物理を考えるもう一つの切り口として, 光学応答における非局所性がある. これを取り入れた理論は従来の応答理論と量子電磁気学をつなぐ半古典論であるが, 輻射補正を含む散乱理論の形で線形・非線形応答が記述され, 物質と輻射場の運動を自己無撞着に決めることのできる実行可能な枠組みである. メゾスコピック系では, 感受率だけでなく,輻射シフトや寿命および内部電場が試料のサイズや形状に強く依存するために, 特異な応答が生じるが, そのいくつかの例をモデル計算の結果を用いて示す. これは物質の電磁気学を再構築する試みであると同時に, 応用へ向けた物質開発の新しい指導原理を探究する試みでもある.
著者
森 貴司 桑原 知剛 齊藤 圭司
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.800-804, 2017-11-05 (Released:2018-08-06)
参考文献数
25

レーザー光などの高強度,高周波数の周期外場によって非平衡状態に駆動された系は様々な興味深い性質を示すことが知られている.周期外場による効果を積極的に用いることで平衡状態では実現が困難な新奇物性を探究しようという研究が,近年強相関電子系や冷却原子系の分野で活発に進められている.周期外場に駆動された量子多体系は豊富な物理現象を示すと考えられている一方,周期外場によって系はエネルギーを吸収し続け,ついには完全に無秩序な高温の状態に緩和していくことが予想される.近年の孤立量子系における熱平衡化についての理論的整理を通して,固有状態熱平衡化仮説(ETH)という考え方が熱平衡化を説明する有望な視点の一つを与えるものとして提案され,数値計算によってその妥当性が確かめられてきた.このETHの周期駆動系への自然な拡張(これをフロケETHという)は,熱的に孤立した周期駆動下での量子多体系は最終的に温度無限大の状態に行き着くことを予想する.この予想は,強相関電子系や冷却原子系で議論されている周期外場下での興味深い非平衡状態は実際には真の定常状態ではなく,有限の寿命を持った準定常な非平衡状態であることを示唆する.それでは,完全に無秩序な状態に行き着く前に,このような準定常的な状態が本当に存在するか,存在するとしたら,それを理論的にどう理解できるか,という問題は非平衡統計物理学の基礎論の観点から面白い問題である.また,周期駆動と多体効果によって創発した興味深い物性がどの程度の時間スケールにわたって持続するのか,つまりこのような非平衡状態の安定性を明らかにすることは新奇物性の探究の面でも重要である.我々は,フロケ理論の数学的に厳密な解析によって,これらの問題に答えることに成功した.具体的には,フロケ理論で重要な役割をするフロケハミルトニアンのマグナス展開の漸近級数的な性質を数学的に厳密に証明し,この漸近収束性が,興味深い非平衡準定常状態が長時間にわたって安定に存在することを保証することを明らかにした.さらに,そのマグナス展開の発散の仕方から,非平衡定常状態が持続する時間スケールの下限を評価することができる.これらの研究によって,高強度,高周波数の外場のもとで,量子多体系は準定常状態に緩和した後に真の定常状態に緩和する,二段階緩和過程(Floquet prethermalization)が普遍的に生じることが明らかになった.この準定常状態は,フロケハミルトニアンのマグナス展開を低次で切断することによって得られる,静的な有効ハミルトニアンのGibbs状態(熱平衡状態)によって記述される.したがって,周期外場によって駆動された系の新奇物性を探究するという目的を達成するための基本的戦略は,「対応する有効ハミルトニアンの熱平衡状態が望ましい性質を持つように,物理系と周期外場をうまく選ぶべし」,ということになる.
著者
久保 亮五
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.1032-1039, 1979-12-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
41

Einsteinとブラウン運動の結び付きは一応は誰でも知っている. しかし, 光量子仮説, 固体比熱理論等々の仕事が, Planck以後, 量子力学の誕生までの四半世紀のあいだ, 立ちふさがる幾重もの壁を打ち破る作業としてもった意味は, 今日ともなれば忘却の中に埋れ, ひとびとは必ずしもそれを理解してはいない. その作業を貫く類い稀な洞察力は, Gibbsを知らないEinsteinの若き日に自ら作り上げた統計力学に深く根ざしたものであった. 原子像の実証をさぐる鍵は, ゆらぎの問題にあった. Einsteinをブラウン運動論に導いた根本の思想は, 量子力学への展開の過程にきわめて重要な役割を演じたが, それは現代の統計力学にひきつがれ, さらに将来に生きつづけるであろう.