- 著者
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川合 知二
- 出版者
- 一般社団法人 日本物理学会
- 雑誌
- 日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.9, pp.667-674, 1997-09-05 (Released:2008-04-14)
- 参考文献数
- 49
- 被引用文献数
-
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走査トンネル顕微鏡(STM)の極微な針先によって, 固体表面分子の電子状態が実空間で観測でき, DNA塩基など1分子の識別が可能になってきた. 驚くことに, 吸着DNA分子を針先で一つ一つ移動操作することも可能になりつつあるが, そこには針先1原子と吸着1分子との波動関数の重なりや, 場合によっては極度に集中した電界など"極微表面"に特有な支配原理がある, この表面分子の世界では, 分子間および表面との相互作用に起因した華麗な2次元超構造が形成されることもSTMによって明らかになってきた. "極微な表面の科学"として, STMによるDNA分子の"識別", "操作", "自己組織化"の元となる原理を基礎から説き起こし, 研究の現状と今後の発展性について述べる.