著者
鹿児島 誠一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.249-256, 1990-04-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
27

臨界温度はまだ10K程度にすぎないが, 酸化物高温超伝導体と並んで, 科学的・技術的な可能性を秘めているのが有機物の超伝導体である. そもそも有機物を相手として超伝導を調べるねらいは何なのか, また, 他の超伝導体と比べてどのような新しい知見が得られているのか, 酸化物高温超伝導体との比較も含めて, 有機超伝導の研究の現状と展望を紹介する.
著者
中村 卓史
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.448-455, 1995

最近キロメートルサイズの本格的なレーザー干渉計型の重力波検出器の建設がはじまり,2000年頃には3台以上が稼働しはじめて,重力波の本格的な観測体制がスタートする.ここでは,最も有望な重力波の源と考えられている連星中性子星の合体に焦点を絞って,歴史的経過を含めて易しく解説する.
著者
福島 正己
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.20-27, 2005-01-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
31

1020電子ボルト(eV)を超える巨大なエネルギーを持った素粒子が宇宙から飛来し,AGASAやHiResなどの空気シャワー観測装置で検出されている.これらの宇宙線は銀河系外の高エネルギー天体で発生し,長距離の宇宙空間を伝播して地球に到達したと考えられるが,到来方向には起源となる候補天体が見当たらず,その起源は謎である.またAGASAによる観測は,宇宙背景放射との衝突から期待されるエネルギー限界を超えてスペクトラムが続いていることを示しているが,HiResの観測はエネルギー限界の存在とほぼ一致している.「極高エネルギーの宇宙線は何処で生まれるのか」,「宇宙線のエネルギーに限界はあるか」を巡って続く議論に終止符を打つべく,大規模な観測装置の建設が南米アルゼンチンと米国ユタ州で始まった.宇宙ステーションからの観測も計画されている.新たな観測によって,極高エネルギー宇宙線の発生起源と伝播機構が解明され,標準的な素粒子と天体の理論を超える新たな物理への糸口となることが期待される.
著者
山本 喜久
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.928-934, 2005-12-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
31

本稿では, 物理学と工学の境界領域で量子力学が本質的な役割を演じ, そして成功を収めたいくつかの事例を取り上げる.具体的には, 核磁気共鳴, レーザー, 量子情報, の3つの分野を概観する.この3つの分野に着目したのには2つの理由がある.その第一は, 過去60年にわたって, 時系列的に発展してきたこれら3つの分野の基本概念・原理には驚くほど共通するものが多いことである.第二の理由は, これらの分野で基礎研究から応用へ至る道筋で, 新しい時代を切り開いてきた研究者間のバトンタッチのあり様にも, やはり共通したものがあり興味深いからである.
著者
江尻 有郷
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
大学の物理教育
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.111-114, 2017

<p>1.はじめに</p><p>我が国の物理オリンピック活動は10年以上となった.そもそもの始まりを思い起こしてみたい.2004年,日本学術会議物理学研究連絡会議 (物研連) 開催中のある日,当時,物研連議員で</p>
著者
松永 義夫
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.26-33, 1976-01-05 (Released:2008-04-14)

元素を組み合せることによって, 無機固体の種類が著しくふえ, 新しい物性が出現するように, 分子を構成単位とする化合物, すなわち分子化合物を取上げることによって, 分子性結晶の分野は大きく拡げられる. その主体は電荷移動型と呼ばれるタイプに属し, 成分分子を選ぶことによりイオン性, 共有結合性, 更には金属性を帯びた結晶さえ得ることができる. また, 水素結合や陽子移動の要素を共存させると, 顕著に性質の異なる多形, 甚だしい物性の変化を伴う相転移を作り出す可能性も開ける.
著者
Ryogo Kubo Mario Yokota Sadao Nakajima
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
Journal of the Physical Society of Japan (ISSN:00319015)
巻号頁・発行日
vol.12, no.11, pp.1203-1211, 1957-11-05 (Released:2007-06-01)
参考文献数
23
被引用文献数
573

The possibility is examined to give rigorous expressions for kinetic coefficients such as heat conductivity, diffusion constant, thermoelectric power and so on which relate the flow of a certain kind to the generalized forces of thermal nature. We take here as the fundamental assumption Onsager’s assumption that the average regression of spontaneous fluctuation of macroscopic variables follows the macroscopic physical laws. The kinetic coefficient Gjl appearing in the phenomenological equation, \dotαj=∑Gjl(∂S⁄∂αl) is shown then to be expressed asGjl=(kβ)−1∫0∞dτ∫0β<\dotαl(−ihλ)\dotαj(τ)>dλwhere k is the Boltzmann constant and β=1⁄kT. This is the same type of formula as we have for kinetic coefficients for mechanical disturbances (Kubo, J. Phys. Soc. 12 (1957) 570). The theory is illustrated for the example of electronic transport phenomena.
著者
中村 亮介 古野 忠秀 中西 守
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.2-6, 1998-01-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
23

免疫系は, 生体に侵入した異物を認識し, これを排除する高等動物に特有な生体防御システムである. 免疫系の特徴は「自己と非自己の認識」にある. 自己と非自己の認識は, T細胞とB細胞の細胞間相互作用によりなされている. 本文では, その自己と非自己の認識の分子メカニズムをまず紹介する. ついで, この自己と非自己の認識を介した免疫系のネットワークの特質を述べる. 免疫系のネットワークでは, 細胞の直接の相互作用や液性因子を介して互いの細胞に情報が伝達され, 活性化が誘導される. この細胞の活性化の研究には最新の光学顕微鏡技術が有用であり, そのような実験結果を紹介しつつ, 免疫系における細胞間相互作用の実体を述べる.