著者
内田 慎一 永長 直人
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.182-186, 2003-03-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
26

銅酸化物の高温超伝導体にはフォノンが関与せず,電子間の強い相互作用が主役であると信じられてきた.最近,高温超伝導体中の電子が,明らかにフォノンと強く相互作用しているという光電子分光の実験結果がNature誌(2001年8月)に発表された.また,MgB2やC60での高温超伝導の報告は,フォノンの役割が決して無視できないことを示唆している.銅酸化物において,フォノンが無視されてきた経緯,フォノンがかかわっていると考えられる実験事実,そして,強い電子相関の下で,電子-格子相互作用をどのように考えればよいかについて述べる.
著者
小形 正男
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.893-901, 1994-11-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
81

一次元強相関電子系のモデルとして,ハバードモデルとt-Jモデルをとり上げる.とくに基底状態の波動関数についての理解が,この5年間で急速に拡がった.このことを中心に,個人的な感想を交えながらまとめてみました.(1)一次元系に特徴的なスピンと電荷の分離が,波動関数にどのように現れるか?(2)二次元を含む高次元への変分関数として拡張が可能かどうか?という二つの点を念頭に置きながら波動関数を見ていくことにする.Gutzwiller-Jastrow型の波動関数,Laughlin波動関数との類似性,RVB状態との関係について議論する.

1 0 0 0 OA 宇宙線と気象

著者
和田 雅美 須田 友重
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.563-574, 1966-08-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
70
著者
山田 雅章 岡林 典男
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.1002-1011, 1982-12-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
29

最近スフェロマク(spheromak)という, 球形に近いプラズマ配位が核融合研究において注目されている. この配位は, 宇宙空間に自然に存在する事も考えられ, 特に自分自身の中に流れる電流によって閉じ込め磁場が出来, それによってプラズマが閉じ込められるのが特長である. 従ってこの配位ではトロイダル磁場コイルが要らず, 核融合装置に有望な点が多く, 近来スフェロマク配位が実際に実験室でも作られるようになった. ここでは, 効率の良い核融合装置を作るという観点からこの配位を観て, 最近のこの配位の研究状況を紹介する.
著者
福留 秀雄
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.19, no.12, pp.821-827, 1964-12-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
3
著者
富永 昭
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.326-331, 2000-05-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
31
被引用文献数
6

熱音響現象は「熱」と「音」との関わる熱力学現象であり,初期には線形近似の流体力学で記述され,後に熱力学的な理解が進んだ.過去20年ほどの問に熱音響現象を理解することと,この現象を応用する研究とが平行して進歩してきた.熱音響現象は物理学の盲点のような現象である.「音」を流体の断熱的運動と捉えていたら,熱音響現象は理解できない.固体壁と振動流体との熱交換が重要だからだ.非一様温度の非平衡系なので,熱音響自励振動という散逸構造も出現する.熱力学的理解のために,熱力学の示量性状態量と一旦決別して,熱流やエネルギー流などの古い概念を復活させる.熱音響理論ではこれらの流れを示量性状態量と結びつけて熱音響現象を議論する.
著者
福村 知昭 長谷川 哲也
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.519-524, 2000-07-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
27
被引用文献数
1

巨大磁気抵抗を示すいろいろな強磁性体が最近見つかっている.その中でも,強磁性体トンネル接合の無限層構造を自然に有し巨大なトンネル磁気抵抗を示すLa1.4Sr1.6Mn2O7,高々5mol%のMn添加により約100Kという高温で強磁性を示す磁性半導体(Ga,Mn)Asは注目されている材料である.前者は異方性が強く温度変化の大きい磁性を示す点で,後者は強磁性の起源が未解決という点で,"異常な"強磁性体といえる.一般に強磁性体は微視的な磁気構造-磁区-を有しており,これは磁性体の種類に応じて様々な形態を持つ.我々は各種磁性体の磁区構造を観察するために,極低温から室温まで測定できる走査型ホール素子顕微鏡を開発した.ここでは走査型プローブ顕微鏡による磁区観察法を簡潔に述べ,磁気記録媒体の磁区・表面形状および上に述べた物質の磁区構造の観察結果を紹介する.
著者
桜井 利夫 橋詰 富博
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.34-40, 1992-01-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
14

顕微鏡としてまた超微細加工手法として, 最近, 注目をあびている走査トンネル顕微鏡の生命は, 探針の形状・特性にある. この探針の原子レベルでの評価・調整を容易にするために電界イオン顕微鏡を内蔵した複合型走査トンネル顕微鏡(PI-STM)が開発された. その詳細について解説し, 金属表面への応用例を紹介し, その高性能・安定性を示す.
著者
横山 浩 井上 貴仁 伊藤 順司
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.281-286, 1994-04-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
20
被引用文献数
2

走査型トンネル顕微鏡の誕生というコロンブスの卵は,原子間力顕微鏡をはじめとするSPM(走査型プローブ顕微鏡)と呼ばれる顕微鏡技術の一族に成長・進化し,現在では,表面の形状に留まらず様々な物性・機能をも局所的に観測し画像化する表面解析技術として,著しい発展を見せている.筆者らは,表面電位,誘電率などの電気物性をナノメートルオーダーの分解能で計測するSPMとして,走査型マクスウェル応力顕微鏡(SMM)の開発をすすめている.SMMは,原子間力顕微鏡と同様に,探針に働く力を検出するタイプのSPMであり,外部交流電圧により誘起される強制振動電気力の測定のみから,表面の様々な電気的情報を同時に引き出せることを特徴とする.ここでは,金属薄膜の接触電位差や有機分子薄膜の相分離構造の微視的観察の例を交えて,その概要を紹介する.
著者
杉本 茂樹
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.903-907, 2003-12-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
13

長い間,超弦理論にはタキオンがないと思われていましたが,最近,いくつかの超弦理論はタキオン場を含むより大きな枠組みに拡張されることが分かってきました.このタキオニックな超弦理論の枠組みは,Dブレインなどの非摂動的な構造を理解する上で大変重要な役割を果たし,また弦理論の新たな定式化を与える可能性も秘めています.さらに,これらの超弦理論に基づく宇宙観も変革を迫られることになります。
著者
木下 恭一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.248-255, 1993-04-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
20

地上に住む人類にとって微小重力環境は長い間無縁の存在であった.しかし,ロケット技術の発達によって,長時間継続しての微小重力環境利用が可能になった.こうして,微小重力環境を利用したライフサイエンス実験や材料実験の幕開けを迎えた.我国でも先頃行われた宇宙実験「ふわっと'92」を始め実験計画が目白押であり,将来は宇宙基地への参加も予定されている.ここでは微小重力環境がどのようなものであるかを説明し,その特徴について述べる.さらに,微小重力環境を利用した材料製造のメリット,デメリットについて,特に結晶成長に的を絞って,具体例をあげながら説明する.最後に日本の微小重力利用実験計画の現状と将来展望に触れる.
著者
牧野 淳一郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.330-336, 2002

最近になってM82銀河の中心近くに太陽質量の1,000倍程度の「中間質量」ブラックホールが見つかった. これまでは太陽質量の100から100万倍の間のブラックホールは全く見つかっていなかった. M82での発見はブラックホール, 特に多くの銀河の中心にあると思われる太陽質量の100万倍を超える大質量ブラックホールの形成過程に対する我々の理解を大きく変えるものである. この解説では, 大質量ブラックホールの形成過程に対する, 上の発見をふまえた新しいシナリオを紹介する. 我々はこれがブラックホール形成シナリオの「決定版」になる可能性は十分にあると考えている.