著者
伊藤 伸泰
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.478-487, 2012
参考文献数
61

物理学が無限大の代名詞として扱ってきたアボガドロ数に,計算機の発達により手が届きはじめている.1秒間に1京演算以上を実行するという10PFLOPS以上の性能を持つ計算機によってである.こうした「アボガドロ級」計算機を活用すれば,ナノスケールからマクロスケールまでをこれまで以上にしっかりとつなぐことができると期待される.比較的簡単な分子模型を多数集めた系の計算機シミュレーションによる研究の結果,熱平衡状態および線形非平衡現象の実現と解析は軌道にのり,さらに1,000^3個程度の系を念頭に非線形非平衡現象へと進んでいる.非線形非平衡状態を解明し飼い慣らした次に期待されているのは,生物のような自律的に機能するシステムをナノスケールの計算で得られた知見に基づいて解明し自在に作り出す技術を確立することである.そのためにはアボガドロ級の計算機で実現する10,000^3個程度の系のシミュレーションが強力な手段となる.この可能性を検討する「アボガドロ数への挑戦」が,現在,進行中である.
著者
粕谷 伸太 川崎 雅裕
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.666-668, 2002-09-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
10

近年になって再び,Qボールと呼ばれるノントポロジカル・ソリトンが注目されるようになった.それは,超対称性標準模型の中に自然に組み込まれ,宇宙のバリオン数と暗黒物質を同時に説明できる可能性が示唆されたからである.ここでは,この枠組がどのようにうまくいっているのか,また,観測(実験)と矛盾がないのか,について述べる.
著者
伊藤 直紀 須藤 靖 北山 哲
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.349-357, 2004-06-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
36

Galaxy clusters have been observed mainly in the optical and X-ray regions, and played an important role in probing the universe in addition to the cosmic microwave background (CMB) and the three-dimensional distribution of galaxies. In recent years, another method of observing galaxy clusters in mm and sub-mm bands, the Sunyaev-Zel'dovich (SZ) effect, has made significant progress. This is based on the inverse Compton scattering off the CMB photons due to the high-temperature intracluster gas, which was proposed in early 1970's. This method has a remarkable advantage that the observed flux is independent of the distance to the cluster. Recent significant progress in detectors promises that the SZ effect will indeed lead the cluster observation in this decade. This article presents a summary of the past and the present researches in the SZ effect and discusses the future prospects, with particular emphasis on theoretical and observational achievements in Japan.
著者
長野 正道
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.826-830, 2002-11-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
11
被引用文献数
1

多数のリミットサイクル振動子について,それらの"振動運動を記述する変数の一部を個々の振動子の変数の線形結合で置き換える"という,振動子間結合による「新しい」リズム同期化法を見出した.この振動子間結合の方法は,粘菌細胞の生体センサーである受容体が持つ機能を数学的に一般化することにより得られた.