著者
尾崎 吉郎 木畑 佳代子 田中 晶大 嶋元 佳子 安室 秀樹 横井 崇 孫 瑛洙 川上 勝之 伊藤 量基 西 憲一 野村 昌作
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.207-213, 2011-09-30 (Released:2015-12-16)
参考文献数
8

膠原病関連血管炎では肺胞出血を伴うことがあり,強力な免疫抑制により治療されるが長期の機械的人工換気が必要となる例も多い.36歳女性,46歳女性,72歳女性の3症例のびまん性肺胞出血に対し,Airway pressure release ventilationモードでの人工換気を止血の補助療法とし,著効を得た.いずれも診断後直ちにAPRVで管理し,速やかに止血され平均第8.5日で抜管が可能であった.
著者
槇野 茂樹
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.255-260, 2011-12-30 (Released:2015-12-30)
参考文献数
8

RAに伴う肺病変は,RAそのもの,RAの合併病態によるもの,薬剤性,感染性,偶発性などがあり,胸膜,気道,肺実質,肺間質,腫瘤/結節,肺血管などを冒し多彩である. 気道病変は,ろ胞性細気管支炎,閉塞性細気管支炎があり,薬剤性や感染性もある. 実質性病変は感染性肺炎が主体である.一般細菌性肺炎,肺結核,肺真菌症,ニューモシスチス肺炎,サイトメガロウィルス肺炎などがある.RA治療薬の抗TNF-α剤では肺結核,非結核性抗酸菌症が問題になる. 腫瘤/結節性病変では,リウマトイド結節があり腫瘍との鑑別が問題となる. RAの間質性肺炎の合併は約5%で男性に多い.COP,DAD,UIP,NSIPの4病型が見られる.慢性型ではNSIPよりUIPの方が多くUIPは男性,かつ喫煙者に多いようである. RA治療薬は薬剤性肺炎を起こしやすく,金剤,MTX,レフルノミドなどで頻度が高いが他の製剤でも起こる.DAD様,COP様など種々のタイプの薬剤性肺炎がみられるが,1つの薬剤で多くのパターンが見られる. RAに伴う肺病変に対する対応では,治療前スクリーニング,RAに伴う肺病変の管理・治療,治療中の新規肺病変への対応,肺病変を有する患者へのRA治療の対応の4つの局面があり,肺病変の知識を集める,胸部X線を必ずチェックする,呼吸器内科医への相談ルートを確保することが必要と考える.
著者
針谷 正祥
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.215-222, 2012-09-30 (Released:2015-08-31)
参考文献数
32

目的:肺合併症を有するrheumatoid arthritis(RA)患者の検査,治療,予後等に関するエビデンスを整理し,そのリスクマネージメントをリウマチ医の視点から議論することを目的とした.対象・方法:国内・外のRA およびリウマチ性疾患の肺合併症に関する論文,学会発表を使用した.結果:RAに合併する様々な肺合併症中で,頻度および治療・生命予後への影響からinterstitial pneumonia(IP)が最も重要であり,胸部単純レントゲン写真異常は1~12%,高分解能Computed Tomography(CT)では約20~30%に異常が認められる.IPを伴うRA患者の生命予後規定因子として,病理組織パターン,高分解能CTによる画像パターン,呼吸機能などが報告されている.IPを中心とする肺合併症は国内外の疫学研究で,有意なRAの感染症リスク因子であることが示されている.一方,RA患者に発現する感染症のうち,呼吸器感染症は全体の約半数をしめ,生命予後に影響を及ぼす.IPおよび気道病変を伴うRA患者のマネージメントでは,これらの病態がRAの関節外症状の一つであり,早期にRAの活動性を制御できない場合には,易感染性,呼吸機能低下によって治療選択肢が狭められ,さらにRAの活動性が持続するといった悪循環を形成することを認識することが重要である.結論:現在の抗リウマチ薬・生物学的製剤では進行した肺合併症を伴うRA患者の治療は必ずしも容易ではなく,早期からの積極的な治療介入および新たな作用機序を有する薬剤の開発が望まれる.
著者
浅子 来美
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.29-36, 2011-03-30 (Released:2016-01-30)
参考文献数
12

目的:Behçet病(BD)ではHLA-B51との相関が指摘されているが,近年HLA-A26との関連も示唆されている.今回,当院におけるBD患者のHLA-A26発現頻度とその臨床像の関連につき検討した. 対象・方法:1989年~2009年の間に当院にて厚生労働省の診断基準によりBDと診断された患者で,HLAの判明している161例(男性76例,女性85例)を対象とした. 結果:HLA-B51陽性率は48.4%,HLA-A26陽性率は29.2%で,いずれも日本人の健常者における発現頻度と比較し有意に高かった(p<0.0001,p=0.0135[Fisher’s exact probability test]).HLA-A26陽性群では,HLA-A26陰性群と比較し血管BD(4.3% vs.21.1%,p=0.0085)と関節炎(23.4% vs.41.2%,p=0.0463)が有意に少なく,有意差はないが腸管BDが多い傾向を示した.HLA-B51陽性とHLA-A26陽性については連鎖不平衡になかった. 結論:以上より,HLA-A26発現頻度は日本人BDでは有意に高いことが確認され,これが日本人におけるBD臨床像の特徴に一部関連する可能性が示唆された.
著者
加藤 幸夫 西村 正宏 菊地 寿幸 澤井 高志
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.20-31, 2009-03-30 (Released:2016-03-31)
参考文献数
40

A rabbit osteoarthritic knee model was used to analyze time-related accessibility of high molecular weight 2,700 kDa hyaluronan to healthy and osteoarthritic articular cartilage and synovium. Fluorescein-labeled high-molecular weight 2,700 kDa hyaluronan (F-HA) was found in shallow, inner and deep layers of degenerated cartilage within 3-24 h after injection. It quickly reached the deep cartilage layer and was retained within inner and deep layers up to day 28. In constrast, in healthy knees, F-HA accessibility was confined to superficial and shallow cartilage layers during 3-24 h and did not change until day 28, showing no signs of deep layer retention. In both healthy and osteoarthritic knees, F-HA penetrated synovium from its synovial lining cell layer to the interstitium in subsynovial fat tissue (deep layer) at 3-24 h after injection. Though having a high molecular weight, 2,700 kDa HA rapidly penetrated shallow, inner and deep layers of degenerated cartilage and deep layer of synovium after its intra-articular injection. The joint tissue penetration of 2,700 kDa HA after its intra-articular injection in an animal OA model indicates that soon after the injection, hyaluronan is rapidly accessible to synovial and degenerated cartilage tissues. There, it exerts its anti-inflammatory actions on the synovium and degeneration-inhibiting action on the articular cartilage.
著者
八木 信行 岩下 輝美 小柳 隆之 石川 浩明
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.73-78, 2010-03-30 (Released:2016-02-26)
参考文献数
16

目的:関節リウマチ患者を対象に実施したPMSの症例を用いて,腎機能別のミゾリビンの有効性と安全性ならびに腎機能への影響を検討した. 対象・方法:対象は1,805例の登録症例のうち,24週時にACRコアセットによる評価が実施され,投与開始時の推定腎機能(eGFR)が算出可能であった417例とした.eGFRはsCrと年齢から,日本腎臓学会CKD対策委員会が作成した日本人のeGFR推算式から算出しCKD stageに分類した.有効性はACRコアセットの20%改善症例率を検討した.有害事象は担当医師が本剤との因果関係を完全に否定したものを除き副作用と分類した. 結果:CKD stageによるACR20の改善率は有意な差を認めなかった.副作用の発現頻度にもCKD stageで発現頻度に違いはあるが,有意な差は認めなかった.腎機能は各CKD Stageとも腎機能低下は認めなかった.特にStage 3では,開始時のeGFRが50.2mL/min/1.73m²±7.0から24週後には60.2mL/min/1.73m²±17.9と有意な腎機能の改善が認められ,Stage 2でも同様であった. 結論:ミゾリビンはCKD stage 3までの患者や,高齢RA患者に対しても比較的使用しやすい薬剤ではないかと考えられた.
著者
岩下 輝美 吉田 寿雄 岡田 研也
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.37-44, 2015-03-30 (Released:2015-04-30)
参考文献数
16

ミゾリビンの関節リウマチ患者に対する使用実態の把握,使用実態下における安全性・有効性に関する情報を収集し,本剤の適正使用に資することを目的として,2008年10月~2010年10月の間に本剤が投与開始された関節リウマチ患者を対象に市販後調査を実施した.安全性解析対象症例3,325例の平均年齢は66.2±12.5歳で,65歳以上が61.1%,75歳以上が28.4%であった.合併症は59.3%に認められた.副作用は330例に392件発現し,副作用発現症例率は9.92%,重篤副作用発現症例率は1.32%であった.EULAR改善基準で有効性を評価した結果,24週後の治療反応性はgood response13.4%,moderate response32.6%,no response54.0%であった.65歳以上と未満で,副作用発現症例率と有効性には差は認められなかったが,重篤副作用発現症例率は65歳以上が未満と比較して有意に高かった.本調査において,ミゾリビンは高齢者や合併症のあるリスクの高い症例に多く投与されていたが,比較的有効で安全な投与が可能であったことから,このような症例に対してはミゾリビンが選択肢の一つになり得ると考えられた.
著者
川合 眞一
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.88-89, 2012-03-30 (Released:2015-12-30)
参考文献数
4
著者
吉富 啓之
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.149-153, 2010-06-30 (Released:2016-02-26)
参考文献数
18

炎症性サイトカインを標的とした生物学的製剤の登場により関節リウマチ治療は寛解も実現可能な時代へと突入した.一方で,HLA-DRやPTPN22の遺伝子変異が関節リウマチと関連があることから,病態にCD4陽性T細胞も関与すると考えられている.実際に,T細胞への副刺激を阻害するAbataceptは臨床的に関節リウマチへ有効である.しかし,CD4陽性T細胞がどのように関節リウマチの病態に関与するのかについては明らかでない点が多い.CD4陽性細胞の分画には従来Th1細胞とTh2細胞が知られていたが,近年IL-17を産生するTh17細胞の存在が明らかとなっている.マウスモデルではTh17細胞が自己免疫疾患に重要な役割を果すことが明らかとなっており,Th17細胞はケモカイン受容体であるCCR6を特異的に発現しそのリガンドであるCCL20依存的に関節に遊走する.さらにヒトの場合でも,線維芽細胞様滑膜細胞をIL-1βで刺激するとCCL20依存的にTh17細胞を含むCCR6陽性細胞を引き寄せることが示されている.また,CCL20はIL-17とともにIL-6の産生に関与する.一方で,ヒト関節リウマチの末梢血および関節液でTh17細胞の増加は認められずむしろ低下しており,ヒトの関節リウマチにCD4陽性細胞が関与する機序についてさらなる解析が求められる.
著者
近藤 直樹 藤澤 純一 荒井 勝光 近藤 利恵 和田 庸子
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.323-328, 2011-12-30 (Released:2015-12-30)
参考文献数
7

トシリズマブ使用下に肺炎を生じた関節リウマチの2例を経験した.2例とも臨床症状は肺炎発症前より持続していた(症例1;全身倦怠感,悪寒,発熱,症例2;咳,痰,呼吸困難)が,初診時のCRPは陰性でありトシリズマブ投与の影響でマスクされていた.白血球数および好中球分画の上昇が見られ,肺炎発症前と比較しても高い上昇率を示していたことから,これらは肺炎の診断の一助となると思われた.2例とも肺炎軽快後RA疾患活動性が上昇し1例(症例1)はトシリズマブ再開,1例(症例2)はエタネルセプトへ変更した.
著者
竹本 美由紀 小野 舞子 棗田 将光 藤森 美鈴 高杉 幸司 江澤 和彦 原田 遼三 西田 圭一郎
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.36-44, 2017-03-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
16

目的:関節リウマチ(RA)の実臨床において,足関節より末梢の関節病変による足趾の変形のほか,皮膚に胼胝・感染等を有する症例は多く,近年ではフットケアの介入が提唱されている.RA患者のフットケアの有効性を評価するためには足病変の定量化が重要であると考え,独自のフットケアスコアを考案し,背景因子や病態との関連性を調査した.対象:当センターで2016年1月~5月にフットケアを施行したRA患者42例を対象とした.方法:フットケアチェックシートに,症状(S)・変形(D)・胼胝(C)・感染(I)について有所見の総合スコアを60点として評価し,スコアと種々の背景因子(年齢・罹病期間・Class・Stage・疾患活動性・HAQ-DI・VAS・治療薬剤)との関連性を解析した.結果:総合スコアはClass進行群で有意に高く,年齢及び罹病期間に有意相関があり,特にHAQ-DIとの間に強い相関を認めた.各コンポーネントのうち,症状(S)はDAS28及びHAQ-DIと,変形(D)は罹病期間と,感染(I)は年齢及びHAQ-DIとの間に有意な相関を認めた.胼胝(C)はどの背景因子とも相関はみられなかったが,他のフットケア各コンポーネントとの相関をみると,変形(D)との間に有意な相関を認めた.生物学的製剤(bDMARD)使用の有無でフットケア各コンポーネントスコアを比較した結果では,感染スコアがbDMARD使用群で有意に高かった.結論:RA患者のフットケアに関わる足病変を定量化することで,足病変と患者背景因子との関連が初めて明らかとなった.今後は患者満足度向上を目指すうえで,フットケア介入の有効性や限界を調査し,数値目標の設定を行っていく必要がある.
著者
中西 宣文
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.106-112, 2012-06-30 (Released:2015-10-02)
参考文献数
25

結合組織病に合併する肺高血圧症は,病態は多くの点で特発性肺動脈性高血圧症と類似し,このため改訂版肺高血圧症臨床分類(ダナポイント分類)では第1群:肺動脈性高血圧症の項にConnective tissue disease-PAH(CTD-PAH)の名称で分類されている.しかしCTD-PAHは特発性肺動脈性高血圧症に比して予後が不良であることや,本症の肺高血圧の成因には結合組織病自身の病態に加え,左心系疾患による肺高血圧症,肺疾患による肺高血圧症,慢性血栓塞栓性肺高血圧症などの要素を含む極めて複雑な病態を持つことが判明してきた.CTD-PAHの治療には,現在は基本的には特発性肺動脈性高血圧症の治療指針に準じて本症に特異的な治療薬が用いられている.しかしわが国ではこれに加え免疫抑制剤を組み入れた治療指針が提案され,その有効性が検証されつつある.
著者
田中 敏秀 宮本 俊明
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.273-278, 2009-09-30 (Released:2016-03-31)
参考文献数
6

The patient was an18-year-old female who first showed high CPK levels in August 2000 (when she was 12years old). Muscle biopsy confirmed dermatomyositis. Together with skin rash, she was diagnosed with juvenile dermatomyositis. She was treated with oral prednisolone (PSL) at a daily dose of 60 mg (≒2 mg/kg). Cyclosporine A (140 mg daily) was added for complicating interstitial pneumonia. However, her disease frequently relapsed when she had the common cold or other triggering factors. Various second-line treatments, such as intravenous immunoglobulin (IVIg) (45 g; 2 sessions), monthly IVCY (700 mg/body; 22 sessions), pulse methylprednisolone (1 g; 9 sessions), azathioprine (AZP, 50 mg daily), methotrexate (MTX, 16 mg weekly) and mycophenolate mofetil (3 g daily), were attempted for relapses. However, her flare never placed under good control. On the first visit to our clinic at the age of 18 years (February 2007), she showed a significantly increased level of serum CPK. Despite the combination of oral PSL (20 mg daily), AZP (150 mg daily) and MTX (16 mg weekly), her CPK reached8, 154 IU/L. Thus, AZP and MTX were substituted with tacrolimus (TAC), which had never been used, and pulse therapy with methylprednisolone (m-PSL) followed by oral m-PSL (48 mg daily). Her serum levels of myogenic enzymes were normalized after this treatment and no relapse has been observed for a year.    Recently, there have been domestic and overseas studies describing the effectiveness of TAC on myositis. This is another case demonstrating the efficacy of the combination therapy of steroid hormone and TAC on dermatomyositis resistant to various immunosuppressants.