著者
中山田 真吾 田中 良哉
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.162-168, 2019-06-30 (Released:2019-08-22)
参考文献数
15

関節リウマチ(RA)の治療では,メトトレキサート(MTX)などの従来型合成抗リウマチ薬(csDMARD),及び,生物学的抗リウマチ薬(bDMARD)による早期からの適切な治療介入により,臨床的,構造的,機能的な寛解が目標となった.しかし,これらの治療でも治療抵抗性の症例が多く存在する.Janus kinase(JAK)阻害薬は,サイトカインシグナルを媒介するキナーゼのJAKを選択的に阻害し,関節リウマチ(RA)の病態へのマルチターゲット作用により臨床効果を発揮する.高分子の蛋白製剤であるbDMARDは静脈内または皮下注射での投与に限定されるのに対し,JAK阻害薬は内服可能な分子標的合成抗リウマチ薬(tsDMARD)であり,bDMARDと同等の効果を有する.本邦では,2013年にトファシチニブ,2017年にバリシチニブがRAに対して上市された.実臨床でのJAK阻害薬の優れた臨床効果が確認されつつあるが,JAK阻害薬の安全性への懸念が少ないわけではなく,生物学的製剤と同様,感染症などの十分なスクリーニングのもと導入すべきである.これまでの臨床試験や市販後調査で蓄積されたJAK阻害薬の有効性と安全性の知見をもとに,リウマチ専門医によるJAK阻害薬の適正な使用が望まれる.
著者
織部 元廣 永野 修司 立川 裕史 塚川 博志
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.24-30, 2007

&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;We evaluated the effects of fasting on symptoms in 15 fibromyalgia syndrome (FMS) patients and 6 rheumatoid arthritis (RA) patients over 10 days in an open, non-randomized, controlled study. The results revealed significantly greater improvement (p<0.05) in the visual analogue scale (VAS) of pain in the 13 out of 15 FMS patients who completed the fasting versus the 6 RA patients in the10 days duration.<br>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;Both groups reduced in body weight with a significant average loss of 5 kg (p<0.01) respectively. The appearance of Ketone bodies in urine did not seem to affect the level of pain reduction. Obviously, the VAS score of the RA group showed a different pattern in the10days duration compared to the FMS group.<br>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;The RA group showed a relatively "straight line pattern". That is within the10 days, relatively insignificant fluctuation in the VAS was observed within the entire group. On the other hand, almost every one in the FMS group showed a "fluctuated line pattern" of aggravation, and after that the VAS score rapidly decreased. As a marked decrease in the VAS score occurred when starvation appeared, it suggested the sensation of starvation played an important role in the disappearance of bodily pains with the FMS group.<br>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;It is therefore concluded that fasting therapy has a beneficial effect on FMS symptoms, as compared to the insignificant effect on RA symptoms, at least in a short period such as 10 days.
著者
宮腰 尚久
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.203-208, 2013-09-30 (Released:2015-06-30)
参考文献数
20

高齢者の骨折を防ぐには,転倒を予防することが必須である.高齢者の転倒は,身体運動機能の低下のほか,視覚機能の低下や認知機能の障害などのさまざまな要因によって生じるが,身体運動機能には,少なからずビタミンDが関与していると考えられている.これまでの研究により,血中25(OH)D濃度が低い高齢者は,身体運動機能が衰え,転倒しやすい状態にあることが判明している.また,海外では,多くのランダム化比較試験を用いたメタアナリシスによって,ビタミンD(天然型および活性型)投与による有意な転倒予防効果が示されている.このような,ビタミンD投与による転倒予防効果は,ビタミンDの投与量が十分であり,血中25(OH)D濃度が高く維持された場合に発揮されやすい.ビタミンDによる転倒予防効果は,主に,筋に対する作用によって生じると考えられるが,その作用機序には,genomic作用とnon-genomic作用のふたつが存在する.われわれの研究では,ラットのステロイド誘発性ミオパチーモデルにおいて,アルファカルシドールは,筋張力を維持し,筋疲労を抑制し,ステロイド薬によって生じた筋委縮を部分的に抑制していた.今後は,ビタミンDの転倒予防効果に関して,わが国における臨床でのエビデンスの蓄積とともに,さらに詳細な機序の解明が望まれる.
著者
松井 聖 吉川 卓宏 佐野 統
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.155-161, 2019-06-30 (Released:2019-08-22)
参考文献数
11

日本全体で高齢化が進んでいるが,RA患者は治療がよくなり,寛解に持ち込むことができるようになったため,生命予後がよくなっている.このため,RA高齢者の治療においてどのように行っていくことがよいか急務の課題と考える. 一方,高齢者の腎機能は,日本腎臓病学会から慢性腎臓病(CKD)のガイドライン2012が出されている.このデータからは,年齢別のCKDの頻度をみてみると,eGFR<60mL/分/1.73m2の割合は男性の場合,60〜69歳で約17%,70〜79歳で約28%,80歳以上で約45%,女性の場合は,60〜69歳で約16%,70〜79歳で約32%,80歳以上で約47%となっている.つまり,70〜79歳では3人に1人,80歳以上では2人に1人の割合で腎機能低下があり,腎機能を悪化させる薬剤が使いにくい現状があることを十分認識した上で治療を行う必要がある. 日本腎臓病学会の腎機能の悪い時の薬物使用のためにCKDのガイドライン2012では,クレアチニンクリアランス(Ccr/分)が>50と10〜50,<10と透析(HD)をしている区分になっている.RA治療薬をみてみると,Ccr/分が10〜50,<10とHDの区分で,使用できる薬剤はアダリムマブ,インフリキシマブ,エタネルセプト,トシリズマブ,サラゾスルファピリジンであった.メトトレキサートはCcr>50で専門医に相談となっている.2012のガイドラインであるので現在,使われている生物学的製剤,JAK阻害薬は含まれていない. また,我々も参加しているNinJaデータベースからの今年度の日本リウマチ学会の発表では,2012,2013,2014年の3年間登録された関節リウマチ患者のeGFR<30mL/分/1.73m2の群ではeGFR<60~100mL/分/1.73m2の群, eGFR<30~60mL/分/1.73m2の群と比較して,DAS28-ESR,DAS28-CRP,CDAI,SDAIのRA活動性指標において有意な低下を認めなかった.つまり,ステージG4(eGFR<15~29mL/分/1.73m2),G5(eGFR<15mL/分/1.73m2)CKD合併RA患者は活動性コントロールが困難である可能生が示された. これらの既存の報告を踏まえて,当科のデータを示しつつ,RA高齢者の腎機能とRA治療の薬剤の選択について討論を行いたい.
著者
東 直人
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.219-227, 2017-12-30 (Released:2018-03-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

シェーグレン症候群(SS)は腺組織の破壊により涙液や唾液の産生低下を来たし,眼や口腔内などの乾燥症状を呈する.外分泌腺以外の臓器の病変や全身症状を呈することがあり,これらを腺外病変という.腺外病変は軽症のものが多いが,予後に影響する臓器病変もあり臨床上重要である.2015年にSSは指定難病となり,診断基準と重症度分類を満たす場合に医療費助成の対象となったが,この日常診療上の実務を通じてSSの腺外病変を身近に感じるようになった方も少なくないだろう.また,SSは他の膠原病を合併することが多く,臓器病変を呈した場合,SSによるものか,合併する他の膠原病によるものかを鑑別する必要がある.しかし,特徴的な症状や検査所見がはっきりせず,その鑑別に迷うことも少なくない. このようにSSは多彩な病態を呈するため,まず適切な診断が必要であり,診断基準の理解と活用が不可欠である.また,SSの治療は,乾燥症状に対しては対症療法が主となるが,腺外病変に対しては病状に応じてステロイド薬や免疫抑制薬を用いた治療を行う.治療方針を決定する上で,腺外病変の理解と疾患活動性指標を用いたその評価が重要となる.そして,これらの理解は適切な臨床研究のためにも必要となる.2017年には厚労省研究班(住田班)が作成した“シェーグレン症候群診療ガイドライン2017年版”が公開された.SSの理解の一助としたい.
著者
房間 美恵 中原 英子 金子 祐子 竹内 勤
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.181-187, 2019-09-30 (Released:2019-11-02)
参考文献数
19
被引用文献数
1

2010年にTreat to Target(T2T)(目標達成に向けた治療)リコメンデーションが提唱され,この概念は日本でも,全国的な普及活動によりリウマチ診療に従事する医療者に浸透してきた.この中のoverarching principles(基本的な考え方)で最初に述べられているのが医師と患者との「shared decision making(共同意思決定)」であるが,患者が自身の病気や治療を理解し,共同意思決定プロセスに参画するためには患者教育が必須である. 2015年にEULARから,2つの基本的な考え方と8つの推奨事項からなる炎症性関節炎患者に対する患者教育のリコメンデーションが提唱された.基本的な考え方の中では,患者教育は医療者と患者が双方向で行うべきであること,患者自身が病気と付き合いながら生活を自己管理できるように支援すること,そしてこれら実現のために医療者は患者と十分コミュニケーションを取りながら共同意思決定を行うことが必要不可欠であることが示されている.患者教育とT2T実践,共同意思決定は密接に関連しあう.患者教育をすべての炎症性関節炎患者の標準治療の一部として実施できるよう,その課題を評価し,より良い教育支援に向けて多職種協働で取り組むことが重要である.

1 0 0 0 OA RS3PE症候群

著者
折口 智樹 有馬 和彦 梅田 雅孝 川㞍 真也 古賀 智裕 岩本 直樹 一瀬 邦弘 玉井 慎美 中村 英樹 川上 純 塚田 敏昭 宮下 賜一郎 溝上 明成 岩永 希 古山 雅子 中島 好一 庄村 史子 荒武 弘一朗 荒牧 俊幸 植木 幸孝 江口 勝美 福田 孝昭
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.48-54, 2019-03-30 (Released:2019-07-03)
参考文献数
16

概念:1985年にMcCartyらは,高齢で急性発症の左右対称性の多発(腱鞘)滑膜炎と手足の背側の浮腫を認める,RS3PE症候群という疾患概念を提唱した.病因・病態:血清Vascular endothelial growth factor(VEGF)濃度の著明な増加が認められ,関節局所の血流増加に関与しているものと考えられる.検査所見:赤血球沈降速度の亢進,CRPの高値を認めるが,リウマトイド因子,抗CCP抗体は陰性である.血清MMP-3濃度が著明に増加する.特に悪性腫瘍を合併した症例の血清MMP-3濃度は高値を示す.手関節の造影MRI検査では,手関節,MCP関節,PIP関節の腱滑膜炎と血流増加を認める.関節超音波検査においても,MRI同様,腱鞘滑膜炎および皮下浮腫の所見が認められる.関節X線画像上変形がないことが,RAとの鑑別に有用である.悪性腫瘍の合併:本疾患は胃癌,大腸癌,肺癌,乳癌,前立腺癌などの腺癌の合併が多いことが明らかになっている.治療:通常プレドニゾロン10~15mg/日の内服で開始する.初期投与量を投与する.通常,ステロイド薬に対する反応は劇的で1~2週以内に寛解に至る.
著者
李 進海 朝戸 佳世 酒井 健史 井上 明日圭 田崎 知江美 志賀 俊彦 樋野 尚一 矢野 智洋 岸本 和也 野﨑 祐史 西坂 文章 赤木 將男 船内 正憲 松村 到
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.305-309, 2014-12-30 (Released:2015-02-28)
参考文献数
13

RAを発症し,サラゾスルファピリジンに抵抗性を示したため,エタネルセプトが投与され,3ケ月後から発熱,皮疹,口内炎が出現し,ループス腎炎を伴うSLEを発症した症例(35歳,女性)を経験した.抗TNF-α製剤の投与によってSLEを発症したとする報告が散見されるが,本例のようにループス腎炎を伴う例は少ない.以上,抗TNF-α製剤による治療経過中は抗核抗体やSLEの素因の有無に留意する必要性が示唆された.
著者
菊地 克久 川崎 拓 奥村 法昭 笠原 俊幸 小泉 祐介 大澤 真 杉本 俊郎 藤本 徳殻 宮原 健一朗 今井 晋二 猿橋 康雄 松末 吉隆
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.119-125, 2011-06-30 (Released:2016-01-30)
参考文献数
17

Remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema(RS3PE)症候群に両側胸水を伴った症例を報告する.症例は83歳女性.炎症反応が高値で,好中球優位の滲出性胸水と手の蜂窩織炎様症状を認めた為,感染との鑑別診断に難渋した.ステロイドの増量で,手背と足背に圧痕を伴う浮腫(pitting edema)及び多発関節痛と高熱は急激に改善し,同時に胸水も劇的に改善を認めた.稀ではあるが,胸膜炎を伴うRS3PE症候群があるので注意を要する.
著者
田中 良哉
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.131-135, 2007-06-30 (Released:2016-12-30)
参考文献数
12
著者
佐藤 慎二
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.145-153, 2018-09-30 (Released:2019-06-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

特発性炎症性筋疾患(Idiopathic inflammatory myopathy: IIM)は骨格筋の炎症に伴う筋力低下を呈する疾患群であり,多発性筋炎(Polymyositis: PM),皮膚筋炎(Dermatomyositis: DM),封入体筋炎(Inclusion body myositis: IBM)に大別される.これまでIIM患者血清中には,特異的に見出される筋炎特異自己抗体(myositis specific antibodies: MSA)が報告されている.抗Jo-1抗体に代表される抗アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)抗体,抗signal recognition particle(SRP)抗体,抗Mi-2抗体は古くから知られている抗体であるが,2000年代に入り新たなMSAが相次いで発見された.これらのほとんどが特定の臨床症状や病型と関連するのみならず,診断の補助,治療法の選択,予後の推定など実臨床上で非常に有用であることが明らかにされている.特に,悪性腫瘍合併DMに高頻度に見出された抗transcriptional intermediary factor 1-γ(TIF1-γ)抗体と主に無筋症性皮膚筋炎(Clinically amyopathic dermatomyosits: CADM)に見出されて急速進行性間質性肺炎(Rapidly progressive interstitial lung disease: RP-ILD)と密接に関連する抗melanoma differentiation-associated gene 5(MDA5)抗体が臨床的に重要である.
著者
小熊 麻子 澤部 琢哉
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.20-27, 2013-03-30 (Released:2015-08-31)
参考文献数
11

目的:関節リウマチ(RA)に対する生物学的製剤療法において,効果不十分例に対しミゾリビン(MZR)パルス療法を行い,その有効性を検討すること. 対象・方法:当院にて生物学的製剤導入するも効果不十分であった8例(全例女性)に対して毎週のMTX内服日にMZRを同時に内服する投与法(MZRパルス療法)を併用し,その効果を圧痛関節数,腫脹関節数,ESR,CRP,DAS28-ESR,DAS28-CRP,SDAI,CDAI,患者VAS,mHAQ,RF,MMP-3,ヘモグロビンで評価した.またMZR血中濃度との関連についても検討した. 結果:投与開始後24週時点において,圧痛関節数,腫脹関節数,ESR,CRP,DAS28-ESR,DAS28-CRP,SDAI,CDAI,患者VAS,RFの有意な改善を認めた.MZR血中濃度は平均1.27±0.58μg/mlであり,血中濃度が0.12~0.49μg/mlと低かった1例については,臨床効果も不十分でありMZRの増量が必要であった.明らかな有害事象は認められなかった. 結論:生物学的製剤抵抗性のRAに対しMZRパルス療法を行い有意な疾患活動性の低下が見られ,明らかな有害事象は認めなかった.生物学的製剤抵抗性のRA例の治療において,MZRパルス療法の追加は有効な選択肢の一つとなりうる.
著者
三冨 博文 中野 弘雅 勝山 直興 伊東 宏 小川 仁史 柴田 朋彦 山田 秀裕 尾崎 承一 米山 喜平
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.208-213, 2010-06-30 (Released:2016-02-26)
参考文献数
12
被引用文献数
1

症例は74歳女性.平成10年に関節リウマチと診断し,当科で入退院を繰り返していた.平成20年4月上旬より労作時呼吸困難が出現.その後,呼吸困難は徐々に増悪し,4月25日に即日入院.入院時,頻脈,頻呼吸あり.胸部Xpと心臓超音波検査より心タンポナーデと診断し心囊穿刺を施行.心囊水の検査結果よりタンポナーデの原因をリウマチ性心外膜炎と診断し,メチルプレドニゾロン40mg/日を開始.その後,心タンポナーデの増悪なく6月3日に退院となった.
著者
中村 正
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.55-63, 2019-03-30 (Released:2019-07-03)
参考文献数
15

リウマチ性多発筋痛症(PMR)は高齢者に好発する炎症性リウマチ疾患で,全世界的に地域差や遺伝的相違があり白色人種,特に北欧に多い.肩甲帯,骨盤帯の近位筋群痛やこわばりを主症状とし,筋痛はあるが筋力低下や筋萎縮はなく,肩・股関節痛を伴うことが多い.炎症の主座である滑液包炎の原因は不明であり,診断に結び付くような特異項目はなく炎症指標の増高を認め,血清筋原性酵素値上昇や筋電図・筋生検での異常はなく,抗核抗体,リウマトイド因子,抗シトルリン化ペプチド抗体も通常陰性である. 大型血管炎に分類され肉芽腫性血管炎である巨細胞性血管炎(GCA)を合併することがあり,PMRとGCAとは共通の,あるいは連続的な病因を持つ関連性の深い病態を有していると推測される.頭痛,浅側頭動脈の怒張,蛇行,発赤,圧痛,特に,顎跛行や上肢跛行は特徴的で,視神経領域への血管炎の影響で視野・視力異常を来たし,失明は不可逆的で治療は急を要する. 超音波検査やmagnetic resonance imaging,fluoro-deoxy-glucose positoron-emission-tomographyなどの画像検査の進歩で,早期診断,早期治療が可能になり,ステロイド剤が著効することが特徴で,炎症指標の陰性化と症状の軽快を確認しながら比較的早めに通常減量するが,その後はごく少量ずつの漸減が望ましく再燃例では再増量やメトトレキサートなどを追加する.Interleukin-6阻害療法の有効性が報告され,免疫チェックポイント阻害療法に伴うPMR発症が報告されている. 画像診断の進歩や治療法の工夫でPMRとGCAへの臨床的方策は深まったものの,疫学的解明や病態生理の進展など,新たな課題が挙がってきた.
著者
齊藤 美佐子 青木 正紀 金子 菜穂 早川 純子 西成田 進
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.61-67, 2007-03-30 (Released:2016-12-30)
参考文献数
17

A 64-year-old man was diagnosed with MPO-ANCA-related systemic vasculitis in March, 2004, because of multiple mononeuropathies, an interstitial pneumonia, a rapidly-progressive glomerulonephritis which was demonstrated by a biopsied-specimen from kidney. High dose intraveneous methylprednisolne bolus-therapy following an oral prednisolone were transiently effective. In August, 2004, the serum level of MPO-ANCA elevated again, and a macular purpura appeared in both arms. A hundred mg/day of oral cyclophosphamide was added to the prednisolone. In February, 2005, he was re-admitted to our hospital because of muscle weakness of extremities mainly in the left arm and leg. Laboratory examination showed a pancytopenia, high serum levels of ferritin (more than 3000μg/ml) and of MPO-ANCA. Bone marrow-aspirated smear showed a number of hemophagocytosis by macrophages. His general status worsened with continuous pyrexia and a decreased level of consciousness. He died in April, 2005, in spite of the treatments including several antibiotics and anti-fungal agents. An abscess formation in the right frontal lobe demonstrated by the autopsy seemed to be responsible for his final outcome. Histologically, the narrowing of lumen and thickening of small vessels in several organs such as kidneys and lungs were observed. In this case, the serum levels of cytokines such as INF-γ, TNF-α, which play an important role for the pathogenesis of hemophagocytic syndrome were undetectable. On the other hand, the serum levels of IL-6, IL-10 and soluble IL-2 receptor were high. These cytokine profiles were compatible with those in compensatory anti-inflammatory response syndrome (CARS) which reflects a cachexic condition but not systemic vasculitis nor hemophagocytic syndrome.
著者
高橋 康博
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.222-227, 2011-09-30 (Released:2015-12-16)
参考文献数
4

関節リウマチの治療は生物学的製剤の登場で,関節炎のコントロールが容易になった.運動療法も以前より積極的に筋力強化,可動域改善に取り組みやすくなった.基本的には,上肢は可動域拡大を下肢は筋力増強を目標に行う.運動負荷は,関節腫脹を目安にすることが臨床的であり,そのためにはセラピストは常に関節腫脹をみる姿勢が必要である.運動の実際では,可動域訓練は最終域でのセラピストが感じる感覚を大切に関節面を引き離し可動域の拡大をはかる.筋力増強では,痛みも含め今発揮できる筋力に対し最大の抵抗運動を行う.足趾運動は協力に矯正運動を行い,日常生活では長座位がとれることを目標に,起き上がりで必要な腹筋運動も頸椎に負担をかけないように行う.セラピストもコントロールしやすくなったRAに対し,積極的に関わりをもってもらいたい.
著者
菊池 啓 嶋田 亘 伊東 靖宜 辻本 晴俊 岡田 成弘
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.271-278, 2016

<p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;2015年6-7月近畿大学医学部堺病院整形外科外来通院患者の中で承諾の得られた396名に笑いのアンケート調査を行った.笑いを10項目で調査し,各項目に対し,性別,年齢別,疾患別(関節リウマチ:RA,慢性疼痛),地域性(淡路島の別調査RA患者22例)に差異がないかを比較検討した.396例中最も多かった結果は,①対象患者は関節疾患,②笑っていた時期は20-50歳,③笑い方は口を開け小声,④最近大声で笑ったのは数日以内,⑤おかしい時に笑う,⑥会話で笑う,⑦笑いが似合うのは明石家さんま,⑧社会と家族に笑いが必要,⑨主治医にくすぐられたら微笑む,⑩このアンケート調査で微笑む,が各項目の中で最大数であった.各項目を個々に分析すると年齢や性別よりもRAでは社会と家族に笑いが必要と答える患者が多いのに対し,慢性疼痛治療患者では笑いが少なく,医療では看護師や受付に笑いが必要との結果多かった.医師のみならず医療スタッフは患者も取り込んで,笑いを取り入れた治療をすることが全ての疾患に重要であろう.</p>