著者
田原 靖彦 佐藤 洋 西谷 修一
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.14-23, 2004-12-25 (Released:2017-06-02)
参考文献数
13

エコーが分離して知覚される限界の遅延時間(dTJd)の測定を通じて,聴覚の積分特注が検討された。聴感実験の音源としてインパルス,帯域ノイズパルス,純音パルス,そして日本語の4連音節単語が使用された。本研究により以下の知見を得た。1)聴覚積分による音感覚の減衰過程は,一般的にベキ乗関数によって表現される。しかし,実験音源とエコーレベルの範囲を限定すれば指数関数による表現も可能である。2)エコーが分離知覚されるための直接音とエコーの間の最小空白時間(臨界無音時間)は音源の匪類によらず約9msとなる。3)第2エコーのdTJdは,第1エコーを第2エコーの直接音と見なして,単一エコーの分離知覚モデルを適用することで説明できる。これらの結果を通じて,室内音響評価指標の改良に重要な意味を持つ,聴覚減衰過程の関数型,各種の聴覚パラメータ,エコーの分離知覚メカニズムが明らかとなった。
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.178-179, 2018-03-01 (Released:2018-09-01)
著者
田中 秀幸 永井 啓之亮 水谷 孝一
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.148-155, 2000-03-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
1

本研究の目的は, ピアノ1本弦の2次元的な振動を光学的に測定し, その性質を見出すことである。測定装置は単一のフォトトランジスタを用いた測定装置を2セット用意し, ピアノ弦の2次元振動の詳しい振る舞いを測定した。その結果, ハンマで垂直方向には叩かれた弦が水平方向の振動成分を持つのは, 駒からの寄与によるということが実験的に明らかにされた。また, 弦は2次元の回転運動をするが, その回転方向は周期的に入れ替わる。すなわち, 駒の与える境界条件によって, 垂直振動は水平振動よりもわずかに周波数が低くなる。更に, ピアノの1本弦から発生される音は従来言われているように2段減衰をするが, 調波成分によって, 減衰の仕方が大きく変わることが分かった。
著者
白土 保
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.715-719, 1998-10-01 (Released:2017-06-02)

二重奏音から, 個々の単音の基本周波数を分離抽出する手法と提案した。本手法は, 対象音の音響的性質に関して二つの穏やかな制約:(1)単音や調波複合音に類似しており, 低次の調波成分のパワーは他の部分音のパワーに比べ概して大きい, (2)二重奏音のパワースペクトルはそれぞれの単音のパワースペクトルの和として近似できる, ものを仮定している。このため本手法は, 対象とする楽器固有の音響特性やad hocなシステムパラメータを用いることなく幅広い範囲の二重奏音に対して適用することができる。また, 本手法では統計的検定手法を導入することにより, 基本周波数比が1:n(ただしnは2以上の整数)の関係, すなわち調波的関係の単音からなる二重奏音からの基本周波数の分離抽出を可能にしている。ヴァイオリン二重奏音, フルート二重奏音, 及び1台のピアノによるピアノ二重音に対し基本周波数分離抽出実験を行った。その結果, 調波的関係の単音からなる二重奏音に対し60〜90%程度, それ以外の二重奏音に対し90%程度の正解率で演奏された音名を同定でき, 本手法の有効性が確認された。
著者
長谷 芳樹 橘 亮輔 阪口 剛史 細井 裕司
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.647-649, 2008-11-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
4
被引用文献数
2

近年,日本語単語及び単音節の聴取実験に「親密度別単語了解度試験用音声データセット(FW03)」(NII音声資源コンソーシアム,2006)が広く用いられている。しかし,FW03の音声レベルは等価騒音レベルが等しくなるよう校正されているため,特に単音節音声の聴感レベルが試験語ごとに大きく異なるという問題があった。そこで我々は,単音節音声について聴取実験によるラウドネス校正を行い,その校正値を公開することとした。実験の結果,必要な補正量は最大で12dBを超えていた。FW03の単音節音声を用いる際には,この校正値を適用することが望ましい。
著者
徳田 恵一 益子 貴史 小林 隆夫 今井 聖
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.192-200, 1997-03-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
2

動的特徴 (音声のデルタ及びデルタデルタパラメータを含む混合連続分布HMMから音声パラメータ列を生成するための高速アルゴリズムを提案する。ここでは, 尤度最大の意味で最適な音声パラメータ列を生成することを考え, この問題を現実的な演算量で解くため, 適応フィルタリングにおけるRLSアルゴリズムと類似の手法を用いて高速アルゴリズムを導出した。また, 提案アルゴリズムにより, 静的及び動的特徴の統計情報(平均及び共分散)を反映した音声パラメータ列の生成が可能となることを例によって示すと共に, 提案アルゴリズムの音声の規則合成への応用について考察を加えている。