著者
山根 信二
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.197-204, 2016

混乱するハッカー及びハッキングの理解を整理するために,本稿ではこれまでのハッカーのパブリックイメージがどのように形成されたのかをたどり,それらを史的展開の中に位置付ける.ハッカーの極端なパブリックイメージは時代ごとの不安が投影されていると考えることができる.これらはマスメディアによって作られただけでなく,計算機科学者や学会も役割を果たしてきた.更にハッカーに注目することで,これまでのコンピューティングの歴史を見直す新たな試みについて論じる.最後に今後の人材育成戦略についても取り上げる.
著者
林 優一
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.28-37, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)
参考文献数
13

情報セキュリティ確保に関する重要性が日々増大する中,上位レイヤにおけるセキュリティ確保と同様,物理層におけるセキュリティ確保の重要性も高まっている.近年の計測器の高精度化・低価格化,計算機の高速化と記憶装置の大容量化に伴い,従来では技術的に困難だった高度な攻撃の脅威が増大しており,こうした脅威は軍事・外交分野のみならず民生品へと拡大している.本稿では,物理層におけるセキュリティの中でも,攻撃の痕跡が残り難いため,その脅威の検出が困難とされる電磁波を通じたセキュリティ(電磁情報セキュリティ)の問題に焦点を当て,民生用機器にも拡大している電磁波を通じた情報漏えいの脅威について解説するとともに,情報漏えいのメカニズム,そして,メカニズムに基づく上位レイヤのプロトコルやアプリケーションに依存しない情報機器全般に適用可能な漏えい情報の計測を困難化する対策手法を紹介する.
著者
岡崎 秀晃 磯貝 海斗
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.44-59, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)
参考文献数
47

各産業に大きな利益と社会に大きな利便をもたらすと期待されている飛行型ドローン(マルチロータ)には,墜落という潜在的リスクが存在するため,モータ故障時の飛行制御の確立は重要課題となっている.本論文では,主としてモータの完全な故障問題に注目して,マルチロータのモータ故障問題の研究成果を紹介する.また,オイラー角の状態変数アプローチに基づいた,動作点(平衡点)とモータ完全故障時の墜落回避飛行状態の関連性の研究についても述べる.
著者
西浦 敬信
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.57-64, 2016-07-01 (Released:2016-07-02)
参考文献数
28
被引用文献数
1 7

パラメトリックスピーカを用いた高臨場音場再現手法について簡潔に解説する.特にパラメトリックスピーカの原理や従来の変調方式を説明した上で,高音質と高音圧を同時に実現可能なハイブリッド型振幅変調方式や音圧が最大となる距離を推定可能な復調評価指標を紹介する.加えて空間の1点でのみ音場を再現可能な極小領域オーディオスポット方式やスピーカの近傍でのみ音場を再現可能な近距離音響再生方式,及び音場再現エリアを制御可能な新しい音響再生デバイスの紹介など最新の研究動向を分かりやすく解説する.
著者
仲地 孝之
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.288-301, 2018-04-01 (Released:2018-04-01)
参考文献数
43
被引用文献数
1

MPEG Media Transport(MMT)は,ISO/IECのMoving Picture Experts Group(MPEG)が制定する次世代メディア伝送の国際標準規格である.高効率映像符号化のHEVC,マルチチャネルオーディオ符号化の3D Audioを含むISO/ICE23008のシステムパートとして位置付けられる.放送や通信など多様なネットワークでのメディア配信に適した方式であり,高信頼伝送のための機能もサポートしている.ISO/IEC 23008-1はメディアのカプセル化,配信プロトコル,制御情報を規定し,ISO/IEC 23008-10では高信頼伝送のための誤り訂正符号を規定する.現在は,実応用へ向けた取組みが加速している.本稿では,MMTの規格概要について解説するとともに,通信・放送分野への具体的な応用例として,① 4K・8K次世代ディジタル放送,② 超臨場感通信,③ 低遅延・マルチキャスト映像配信について紹介する.
著者
工藤 博章 山田 光穗 大西 昇
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.169-175, 2017-01-01 (Released:2017-01-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

近年,高精細画像を利用する機会がますます増加し,今後もより高精細化した映像の普及が見込まれている.高精細な映像を用いると,単位視角当りの画素数を保つことで,提示領域の拡大が実現でき臨場感が高まるといわれている.一方,単位視角当りの画素数の増加を実現することもでき,これは現実感の向上につながるといわれている.また,眼球運動の測定装置は,研究機器だけとしてでなく,PC やタブレット端末のインタフェース機器として使われるようにもなってきており,身近になっている.ここでは,今後,精細化画像の一層の普及とともに,立体映像についても精細化の進展,また映像の制御技術の発展を想定し,立体映像の知覚に関して行った心理実験での眼球運動の測定例について報告する.立体映像の提示方法において,知覚上重要となる,奥行きの違いで生じる遮蔽(オクルージョン)領域について着目した.