著者
長手 厚史 太田 喜元 星野 兼次
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン (ISSN:21860661)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.211-218, 2021 (Released:2021-12-01)
参考文献数
18

高度約20 km の成層圏から超広域のエリアをカバーする成層圏プラットフォーム(HAPS: HighAltitude Platform Station)への期待が高まっている.最大で半径100 km のエリアに無線区間1 ms以下の低遅延で通信サービスを提供可能であり,また今後急速な普及が予想されるドローンや空飛ぶクルマが飛行する上空エリアへの通信プラットフォームとしても有望である.このため,我が国のBeyond 5G 戦略の一環としても期待されている.また,上空を飛行するソーラープレーン等に搭載される無線中継局から普段使用するスマートフォンと直接通信可能である.災害時にもその影響を受けることなく,ユーザも特別な端末を持ち歩くことなく普段使用しているスマートフォンで即座に通信可能であることから,究極の災害対策プラットフォームとしても位置付けられる.本稿では,成層圏プラットフォーム及びHAPS 移動通信システムの概要を述べるとともに,更なる発展に向けた研究開発動向を解説する.
著者
安里 彰
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.300-309, 2022-04-01 (Released:2022-04-01)
参考文献数
34

富士通は理化学研究所とともにフラッグシップ2020プロジェクトに参画し,スーパーコンピュータ「京」に続く我が国の旗艦コンピュータシステムとなるスーパーコンピュータ「富岳」を開発した.フラッグシップ2020プロジェクトでは,多様なアプリケーションを高性能かつ低電力で実行可能とすることを目標に掲げ,その達成のためにコデザインと呼ぶフレームワークを導入して「富岳」の開発に取り組んだ.コデザインはシステム開発者とアプリケーション開発者が協調してアプリケーション性能に優れたシステムを目指すアプローチで,アプリケーションの特性分析結果を用いて,システムハードウェア設計上の多くのパラメータが決定された.そして完成した「富岳」はコデザインの狙いどおり,実用的なアプリケーションを高性能かつ低電力で実行可能なシステムとなった.コデザインの対象は,ハードウェアからアプリケーションまで多岐にわたるが,本論文ではその中で主に「富岳」のプロセッサA64FXの開発に焦点を当てて開発を振り返る.
著者
鈴木 謙一 高橋 成五
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン (ISSN:21860661)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.307-313, 2022 (Released:2022-03-01)
参考文献数
17

日本を取り巻く広大な海洋及びその資源の有効活用,老朽化する水中インフラや新たな水中インフラの増加に伴う効率的な水中構造物点検,スマート漁業の進展など,今後水中へのICT/IoT 技術の積極的な導入が期待されている.そのため,我々は地上並みの高速ネットワークを水中に実現し,水中の3D データを取得するため,水中ライダの検討を行ってきた.本論文では,特に水中の測距データを取得する水中ライダの開発に向けた取組みについて紹介する.まずライダについて紹介するとともに,可視光ライダ化が水中の物体の測距が可能であることを示す.次に可視光ライダを耐圧容器に収容することにより開発した水中ライダを用いて,実際に水中で物体の3D スキャンを行った結果を示す.今後,実験で明らかになった問題点への対策及び再実験による評価を重ね水中ライダの完成度を向上させる予定である.
著者
槇原 靖 村松 大吾 八木 康史
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.318-328, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)
参考文献数
48
被引用文献数
3

人の歩き方(歩容)には,年齢・性別・感情・健康状態といった様々な情報が含まれている.中でも,人の歩き方の個性に基づいて個人を認証する歩容認証が注目を集めている.歩容認証は,ほかのバイオメトリクスとは異なり,カメラから遠く離れた人物の無意識の歩行に対しても適用可能であるため,科学捜査などへの応用が期待される.本稿では,歩容認証の基本的な特徴表現などを紹介するとともに,近年の深層学習を取り入れた手法も紹介する.更に,歩容認証手法の科学捜査への応用事例についても紹介し,最後に,今後の歩行認証技術の展望を述べる.
著者
宮本 俊幸
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.20-27, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)
参考文献数
43

離散事象システム・並行システムのモデル化言語の一つであるペトリネットは,1962年にカール・アダム・ペトリによって導入されて以来,様々な理論及び応用研究がなされてきた.ペトリネットにおける最も基本的な解析問題の一つに,与えられた状態に到達可能かどうかを判定する可達問題がある.可達問題は決定可能であるが,計算量が指数オーダとなるためペトリネットにおける諸性質の解析は容易ではない.近年の計算機能力の進歩や様々な手法の開発により,ある程度の規模のペトリネットまでは可達問題を解くことができるようになっている.本稿ではペトリネットの可達問題に対する最近の手法である,記号状態表現を用いる手法,アンフォールディングを用いる手法,モジュラー可達空間を用いる手法,モデル検査ツールを用いる手法を概説する.
著者
高野 勝美 山吉 康弘 鈴木 貴彦 増田 純平 武田 利浩 野本 弘平
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン (ISSN:21860661)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.18-29, 2022 (Released:2022-06-01)
参考文献数
28

たくさんの情報を遠くまで運べる光通信技術の進歩により,スマートフォンなどで便利に情報をやりとりできる時代です.光通信はどのように行われているのか,そういった疑問に答えるために,発光ダイオードやレーザダイオードを光らせて,光に音を乗せて送ってみます.本稿では,手軽に入手できる光部品,電子部品で電子回路を組み立て作る光送信機と光受信機を紹介します.光無線通信,可視光通信,光ファイバ通信を体感できます.現実の光通信で使われている技術の系譜について文献等を引用しながら解説します.
著者
ZHAO Yu GAO Sheng GALLINARI Patrick GUO Jun
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
IEICE Transactions on Information and Systems (ISSN:09168532)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.1242-1250, 2017
被引用文献数
1

<p>It inevitably comes out information overload problem with the increasing available data on e-commence websites. Most existing approaches have been proposed to recommend the users personal significant and interesting items on e-commence websites, by estimating unknown rating which the user may rate the unrated item, i.e., rating prediction. However, the existing approaches are unable to perform user prediction and item prediction, since they just treat the ratings as real numbers and learn nothing about the ratings' embeddings in the training process. In this paper, motivated by relation prediction in multi-relational graph, we propose a novel embedding model, namely RPEM, to solve the problem including the tasks of rating prediction, user prediction and item prediction simultaneously for recommendation systems, by learning the latent semantic representation of the users, items and ratings. In addition, we apply the proposed model to cross-domain recommendation, which is able to realize recommendation generation in multiple domains. Empirical comparison on several real datasets validates the effectiveness of the proposed model. The data is available at https://github.com/yuzhaour/da.</p>
著者
山田 辰美 矢原 大司 近藤 重邦 小林 英嗣 山崎 育生 湊 賢治
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン (ISSN:21860661)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.117-125, 2012-09-01 (Released:2012-12-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

ホームICT (Information and Communication Technology) 基盤とは,新しいホームICTサービスを実現するために必要となる様々な共通機能を基盤として提供することで,迅速なサービス導入,サービス開発コストの低減などを実現する基盤技術である.本稿では,ホームICTサービスを創造するための基盤であるホームICT基盤に関する研究開発の取組みについて紹介する.