著者
Nagata Yasushi Miyakawa Masami Yokozawa Toshiyuki
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.83-92, 2003-07-15
被引用文献数
2

複数の計測器の性能を比較する場合,入力と出力の間に単回帰モデルを想定して,回帰係数と誤差分散のそれぞれを比較することが考えられる。しかし,計測器の物理的なメカニズムが異なり,出力の単位が異なる場合は,このような比較には意味がない。そこで,出力の単位に依存せず,回帰係数と誤差分散の両方のかねあいをはかる尺度としてSN比が提案されている。このSN比の違いの検定は,統計学的には誤差に正規性を仮定すると,非心t分布の非心パラメータの検定問題に帰着する。厳密な検定は大変複雑になるので,本稿では非心t分布に分散安定化変換を適用することにより簡便な検定方式を導く。同じ問題に対してMiwaが別の検定方式を導いている。本稿では,2つ以上の計測器のSN比の一様性の検定に対して,両者の検定方式の性能を比較し,提案する検定方式は公称の値に近くて公称の値以下となる有意水準を持つこと,そして妥当な検出力を持つことを示す。
著者
黒木 学 宮川 雅巳
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.79-89, 1999-04-15
被引用文献数
8

工程解析において品質特性とともに環境要因, 材料特性, 処理条件, 中間特性といった要因系変数が連続変数として観測される場合を扱う.特性と要因の関係に加えて要因間の関係を記述するのに, 因果ダイアグラムと線形構造方程式モデルを用いる.特性をねらいの範囲に調整・制御するために, ある処理条件に対して外的操作を加える状況を考える.この設定において統計的因果分析の最近の成果である介入効果の推測理論を, 工程解析の場面に適用する基本的フレームワークを与え, 回帰モデルで介入効果を識別するための変数選択基準を明らかにする.また, 線形構造方程式モデルにおいて, 平均に加えて分散に対する介入効果を明示する.具体的な適用例に通してこれらの有効性を考察する.
著者
宮川 雅巳 吉田 勝実
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.12-18, 1992-04-15
被引用文献数
1

In this paper, interaction patterns in L_<18> orthogonal array are classified as the confounding patterns between interaction and main effect ,and the degree of confounding is evaluated quantitatively for each pattern. An equivalence relationship is defined among the forms of confounding patterns to classify into several confounding patterns. To evaluate the degree of confounding quantitatively, the ratio of sums of squares between interaction and main effect are used. For instance, these results suggest that when there are only factors with three levels and the number of factors is six at most, these factors should be assigned from the third column to reduce the confoundings as least as possible.
著者
永田 靖
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.78-88, 1997-04-15
被引用文献数
1

回帰分析において寄与率R^2,自由度調整済み寄与率R*^2は,モデルの適合度を表す指標として常に参照される統計量である.さらに,品質管理の分野では自由度2重調整済み寄与率R**^2が参照されることも多い.しかし,自由度調整済み寄与率や自由度2重調製済み寄与率は変数選択の立場から導入されたものである.変数選択の観点からよい統計量であるかどうかと,母寄与率の点推定の観点からよい統計量であるかどうかは別の問題である.本稿では,修正寄与率R*^<2+>=max {0, R*^2},R**^<2+>=max{0, R**^<2+>}を含めて,母寄与率の点推定の立場から検討する.得られる結論は次のとおりである.推定精度の観点からは,どのタイプの寄与率もサンプルサイズがかなり大きくないと信頼しにくい.このことを念頭に入れた上でモデルの適合度の尺度として用いるのならば,バイアスの程度とMSEの観点からR*^<2+>を用いるのが一番望ましい.R^2には重大な上側へのバイアスが存在する.また,自由度2重調製済み寄与率R**^2やその修正寄与率R**^<2+>は下側へのバイアスが重大であり,MSEも他の寄与率に比べて大きいので母寄与率の点推定量として適切ではない.
著者
仁科 健
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, 1987-01-15

互いに独立な連続する確率変数の位置母数がシフト変化するモデルを想定する。このモデルには, 「変化の検出」, 「変化点の推定」, および「変化量の推定」の3つの問題がある.本研究は, これらの問題を解析する手法として累積和法を取り上げ, 「変化量の推定」を対象とする.変化量の推定量には, BS 5703 (1980), Woodward (1964)ら, および仁科(1983)があり, 今回の報告では, 変化点の推定量の分布との関連からこれらの推定量を評価する.
著者
河野 哲也 西 康晴
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.260-268, 2011-04-15
被引用文献数
1

ソフトウェア開発の上流工程である設計工程において作り込まれる欠陥を未然防止・早期検出するためには,欠陥の原因系を検討することが重要である.欠陥の原因系は大きくプロセス視点とドキュメント視点に分けられる.プロセス視点の従来研究は人的要因に関する研究など広く検討されているが,ドキュメント視点における設計欠陥の原因系の従来研究はいくつかあるものの原因系が設計欠陥発生にどの程度関係しているのかは検討されていない.そこで本研究では,ドキュメント視点の原因系の一つとして単語対の意味の類似性に着目し,類似性と設計欠陥発生との関係を実験により明らかにすることを目的とする.本実験では,類似性の高い単語対をいくつか埋め込んだドキュメントと低い単語対をいくつか埋め込んだドキュメントの二種類のドキュメントを用意し,それを入力として設計実験を行った.そして,実験結果を定量的に評価した結果,「単語対の類似性は設計欠陥発生に関係がある」という知見を得た.
著者
吉野 睦 近藤 総 仁科 健
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.260-266, 2008-04-15
参考文献数
12
被引用文献数
2

シミュレーション実験の利用には実機実験の再現性が確保されていることが前提となる.実機実験の結果とシミュレーションの結果を一致させるプロセスを"合わせ込み"と呼ぶ.しかしながら,合わせ込みの再現性を向上することは,そのために多くの実験点を必要とし,リードタイム短縮の障害となっている.現在,その再現性と効率を両立する具体的な方法が確立しているわけではない.本研究では合わせ込みにタグチメソッドで提唱されている2段階設計法を応用する.その事例研究としてワイヤボンディングの共振問題を取り上げる.
著者
棟近 雅彦 三輪 高志
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.96-108, 2000-10-15
被引用文献数
2

市場のニーズをいかにして把握するか, いかにして製品の設計に取り入れるかは企業にとって常に課題となる.近年, 市場のニーズは多様化しているため, 単に機能的なものにとどまらず, 人間のイメージやフィーリングによって評価される感性的なニーズにも注目する必要がある.感性的なニーズを把握するための調査では, SD(Semantic Differential)法によるアンケート調査が用いられた事例が多くみられる.SD法とは, 評価用語に形容詞対を用い, 対象の意味を測定する手法である.しかし, 調査にSD法を適用するにあたり, どのような情報を把握するべきかが明確になっていないために, 評価用語としてどのようなものを取り上げるかについての指針がないのが現状である.本報では, 感性的なニーズを把握するための調査では, どのような情報を得るべきかを明確にし, SD法のアンケート調査に用いる評価用語選定の指針を提案する.本報で提案する指針を用いることで, 系統的に評価用語を抽出することが可能となる.また, 認知知覚過程に基づき感性品質がどのように評価されているのかを明らかにすることにより, 感性品質を考慮した製品設計のための有用な情報を得ることができる.
著者
西村 龍介
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, 1983-01-15
著者
具 本瑛 中條 武志
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.105-118, 2001-10-15

本研究では, 複数の製品に対する消費者の品質要求を狩野らによって提案された魅力的品質・当たり前品質の視点から調査・分析し, 製品の種類の違い, 消費者属性の違いによって, 魅力的品質・当たり前品質となる品質項目がどのように変化するのかをモデル化することを試みた.結果として, 全体的には品質項目の内容・区分によって魅力的品質項目・当たり前品質項目・一元的品質項目・無関心品質項目のいずれになるかが決まること, 同じ品質項目でも, 製品の種類によって魅力的・当たり前に感じる人, 無関心な人の割合が変化すること, 消費者の属性によって魅力的・当たり前に感じる人の割合が若干変化することなどがわかった.
著者
鈴木 和幸 佐藤 智行
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.105-113, 1997-01-15

システムの規模が巨大化し,その故障の影響がますます大きくなる今日,状態監視保全がより重要性を増している.この状態監視保全においては外部から直接把握できないシステムの状態に関する情報を与えるモニターが重要な役割を担う.しかし,このモニターは誤報や欠報の例のように必ずしもシステムの真の状態を伝えるとは限らない.Blackwell Girshick^<[2]>は,統計的意思決定問題において,"2つの実験の比較"を扱い,実験により得られる情報の優劣を判定するための十分条件を導出した.彼らの方法は複数台のモニターに対する優劣の比較に応用しうる.本研究は,コスト(損失関数)の大小関数の情報を利用することにより,2つのモニターの優劣の比較を文献[2]よりもよりゆるやかな条件により為しうることを示す.なお,本研究の結果は2状態2アクション問題を扱ったMurakami^[7]の結果を含むものである.
著者
山来 寧志 猪原 正守
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, 1999-04-15

ある配色から受ける感情の背後にある潜在的特性と物理量との因果関係を知るためには, 最初に因子分析法によって潜在因子を抽出し, 回帰分析法によってそれらの因果関係を解明する方法が一般的である.本研究では, 感情を引き起こす対象としてお菓子のパッケージを取り上げ, パッケージから受ける印象をアンケート調査により評価, それに対して因子分析法と実験計画法を適用することで, 潜在因子と設計特性の関係を明らかにする方法を提案した.