著者
金田 明彦
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要 (ISSN:13477765)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.141-149, 2006-03-31

実践的なコミュニケーション能力の育成とコミュニケーション・デザイン概念の具現化のために,また,特色ある大学教育像の模索の一つとして学生プロジェクト教育に取組んでいる.仁愛大学開学2年目より開始した数々の学生プロジェクトの中で,継続的に実施され,学内外での認知も得られてきた本学の入学式プロジェクトは一つのモデル事業といえる.その活動のねらいとプロセス,およびその運営については,先輩から後輩へと伝えられていき,本学の完成年度と連動し一つの活動形態が完成された.また,その実践的な活動の中で様々なコミュニケーション・シーンを体験していくことにより,参加学生のリーダー・シップの醸成やコミュニケーション能力を高めてきている.実証的評価はこれからであるが,学生による組織と事業との関わりの中で,事業成果や教育効果を高めていると認識している.
著者
桑守 豊美
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.13-17, 2011-12-30

On March 11, 2011, the Great East Japan Earthquake inflicted unprecedented damage, causing amassive tidal wave and leading to a disaster at the Fukushima Nuclear Power Plant. Motivated by areport on the nuclear accident at Chernobyl, the present report examines the handling of radioactivematerial, focusing on the National Research Center of Nutrition and Health in Kiev, Ukraine, thecountry where Chernobyl is located. Although 25 years have passed since the disaster in Chernobyl,many lessons can be learned, such as how to develop a system for measurement of the amount ofcesium in food products, how to deal with the public, and more.
著者
堀江 和代 菅瀬 君子 小嶋 汐美 堀江 祥允
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.7-12, 2013-03-31

Food-cultural exchanges between Koreans and Japanese people since the ancient era have been widely known. In the present studies, the food acculturation of Koreans to the Japanese was studied. Three groups of volunteers, the Korean living either in Seoul(n=44, aged 45±5 years) or in Aichi prefecture, Japan(n=48, aged 45±10 years), and the Japanese living in Aichi prefecture,Japan(n=57, aged 43±9 years) were recruited. The participants answered a series of questions by questionnaires to measure the effect of Korean foods including seasonings on Japanese ones.The data collected showed that the daily meals of the Koreans living in Japan were affected well by both Korean and Japanese foods and a variety of seasonings, and they extended their daily menus, particularly the usage of traditional seasonings remained distinctively.
著者
森 俊之 谷出 千代子 乙部 貴幸 竹内 惠子 高谷 理恵子 中井 昭夫
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間学部篇 (ISSN:21853355)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.61-67, 2011-12-30

ブックスタートに取り組んでいる自治体と取り組んでいない自治体を比較することで,乳幼児期からの絵本の読み聞かせがその後の子どもの読書習慣に及ぼす影響を検討した.7年間以上ブックスタートに取り組んでいる自治体と未だ取り組んでいない自治体を1か所ずつ選び,当該自治体の公共図書館の近隣に立地する小学校7校で,1年生の子どもをもつ保護者を対象に子どもの生活習慣や読書環境に関するアンケート調査を行った.乳児期におけるブックスタートの体験が,小学1 年生の時点での読書習慣を増やし,ゲーム習慣を減らすという結果が見出された.また,乳児期に親子でブックスタートを体験することで,保護者の図書館利用頻度が高まり,保護者による子どもへの読み聞かせの頻度が高まるという結果も示された.ブックスタートは,保護者の読み聞かせ行動などを変化させ,それにより小学校入学後の子どもの読書習慣など生活習慣に影響を及ぼすと考えられる.
著者
坪田 信子
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
no.3, pp.83-95, 2011

歌曲の生命を大きく担っているのは 「詩= ことば」である. 世界各国にはそれぞれの母国語に よる詩に付曲された歌曲があり,わが国ではそれが,日本語の原詩による「日本歌曲」となる. 本研究ではその視点を「歌詞の背景」に置き,「日本歌曲」の原点となった明治以降の学校唱歌 と,* 文部(科学)省小学校学習指導要領音楽科に示されてきた表現(歌唱)分野の「** 共通教 材曲」に焦点を当てて,引き続き探究を進めるものである. 研究(その1)では,明治末期から今 日までの約100 年間,小学校音楽教育の教材となった歌曲において,その不可欠の要素である「歌 詞」はどのように認識され位置してきたかと言う視点から探究をすすめた. その結果「共通教材曲」 には,「日本歌曲」の成立・発展の過程へと受け継がれた「日本の心」と言う抒情性を深く育む源 となった歴史的意義があることが改めて確認された.本研究(その2)では,それらの「共通教材曲」 の「歌詞」は唱歌教育のなかではどのように解釈・指導され世代を超えて受け継がれたのかについ て,その背景の一端を探るものである. * 文部科学省/平成13 年度の中央省庁再編により旧「文部省」と旧「科学技術庁」が統合した名称 ** 共通教材曲/小学校指導要領で学年ごとに歌唱と鑑賞それぞれに示された3 ~ 4 曲の必修指導曲
著者
伊東 知之 谷出 千代子
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.121-130, 2010-12-30

父親の育児参加は子どもや母親にとって安定した生活観を保持する上で大切なことであることは周知の通りである。次世代育成支援対策推進法の施行により、都道府県、市町村の子育て支援に対する具体策の実施が各地で始まり、福井県でも「父親子育て応援企業」・「父親の子育て力向上推進事業」への支援をスタートさせ、父親の育児参加への方向性を明確化しようとしている。その中で、特に父親を取り巻く環境における体制作りから具体的育児実践法への試みがより必要となって来た。拠って、その実践活動を保育士養成機関が実施した場合にみる、望ましい活動の在り方をワークショップを通して検証したものである。結果として出前型実践講座が幅広い父親の育児参加と家庭における実践につながることが判明した。
著者
水田 敏郎 藤澤 清 吉田 和則 保野 孝弘 大森 慈子 宮地 弘一郎 権藤 恭之 堅田 明義
出版者
仁愛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では,知的障害を有する高齢者を対象に認知機能の検討をおこなった.S1-S2パラダイムに基づき,S1を顔刺激としS2で提示される複数の顔刺激からS1を検出するものとし,ボタン押し反応や視行動,ならびに心拍反応から検討を行った.その結果,若年成人群ではS1-S2間隔における心拍反応において,第1減速-加速-第2減速の三相からなる一過性の変動が出現し予期的減速反応を反映したものと考えた.また,後半S2提示直後の刺激探索に関する方略の獲得にあわせて,反応時間の短縮が認められた.他方,高齢者群では正答率,平均反応所要時間などの指標はいずれも若年成人に比べると成績が劣っていた.心拍反応については個人差が大きかったが全体的に若年群に比べて変化が小さく,加齢による心拍変動の減少によると思われた.次に,知的障害高齢者を対象とした同様の心理機能の検討を試みた.その結果,知的障害を有する事例はS2として提示した複数の刺激のなかからターゲット刺激を検出するのが困難であった.そのうち1事例の反応所要時間は顕著に延長しサッケード潜時は比較的短かった.この事例の心拍反応には,わずかに予期的反応を反映した減速反応がみられた.また別の事例では,反応所要時間は比較的短くサッケード潜時は延長していた.本事例の心拍反応はS1提示直後から減速し,S1に対する低位的性格をもつ反応と位置づけた.また同事例では予期的反応がほとんど惹起されず,このことが原因となってサッケードの生起が遅れたと考えられた.以上より本パラダイムで心拍指標を用いて検討すると,刺激の分析を含めた認知過程ならびに予期的反応の生起過程を捉えることが可能になるといえる.また心拍に反映された2つの心理過程は,行動指標の結果にも合致し,知的障害高齢者の認知機能の評価に有効であることが指摘できた.
著者
西村 則昭
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要 (ISSN:13477765)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.109-123, 2006-12-30

児童養護施設R学園で子どもの遊び相手のボランティアをしていたとき,筆者は幼児や小学生の子どもたちを楽しませるため,さまざまな「こわい話」を行なった.そのときの子どもたちの反応,様子を報告し,彼らの心理(児童養護施設の子どもならではの心理も含めて)について,魂の現象学の立場(現象を客観的・科学的に観るのではなく,現象の中に入っていって,自分の心も見つめながら,現象の中の論理を見出していくような姿勢)で考えてみた.
著者
畑中 佳子
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要 (ISSN:13477765)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.73-78, 2004-03-31

文字表記モニタリングにおいて学習-テスト間の文字表記一致の効果がみられた畑中・藤田 (2002) と同様の材料・学習手続きのもとで, 一般的な潜在記憶課題である単語完成を用いて, 文字の表記形態一致の効果に熟知性が関与しているのかどうかを検討した. その結果, 学習-テスト間の文字表記の一致・不一致によってプライミング得点に差はなく, 文字表記一致の効果は認められなかった. 熟知性のより敏感な測度であるはずの単語完成課題においてさえ文字表記一致の効果がなかったことから, 文字表記モニタリングにおいて文字表記一致の効果がもたらされたのは, 熟知性ではなく, 意味的・概念的な処理過程によると考えられる.