著者
三重野 佳子
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.53, pp.27-37, 2012-02

S.P.キャスティールは、20世紀のユダヤ系作家の作品では、ユダヤ人たちのアメリカに根付きたいという願望が、自然への憧れに表れていると分析した。本論では、現代ユダヤ系作家マイケル・シェイボンの『ワンダー・ボーイズ』で自然がどのように捉えられているかを考察した。主人公は新たな自己を求めて西部へと旅をするが、自然は「理想郷」ではなく「元理想郷」として、ユダヤ人のアイデンティティの曖昧性と相俟って描かれているように思われる。
著者
安松 みゆき
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 = Memoirs of Beppu University (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.61, pp.1-13, 2020-02

小論では、これまで都市単位での建築遺構に注目してきたが、今回は、ナチ政権下では象徴的な意味を持つ事例を取り上げた。そして3回の考察にわたって用いた分析方法、すなわち、破壊(一部破壊も含)、転用、変更なし、廃墟に分析した上で、これ以前に取り上げた事例と比較し検討した。それによって、破壊された遺構には、土地の持つ意味を変えてしまうほどの政治性の有無が深く関わっている可能性が想定された。その場合には、ナチドキュメンテーションセンターなどを設立することで、負の遺産であることを明示していた。ミュンヒェンでは文化都市であるため、総統官邸も芸術関係の転用によって脱ナチ化を実施するなど、都市によっても脱ナチ化の様相は異なっていた。脱ナチ化には問題点も残され、この問題は引き続き留意しなければならない。
著者
王 金林 賀川 光夫
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.30, pp.p41-52, 1989-01
著者
段上 達雄
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学大学院紀要 (ISSN:13450530)
巻号頁・発行日
no.23, pp.1-16, 2021-03

仏教の荘厳具として日本に伝来した傘蓋や幡は、仏菩薩を本尊とする法会で荘厳して供養するために用いられた。奈良時代、傘形の天蓋は灌頂会のような仏教法会の場を荘厳するために用いられていた。天蓋は寺院の仏像の頭上に懸けられるが、高僧などの人の頭上にも懸けられている。また、舞楽や神楽を演舞する舞台を荘厳するようになり、神楽では神霊の依り代となると共に魂振りの道具として用いられるようになる。
著者
白峰 旬
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 = Memoirs of Beppu University (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.60, pp.151-161, 2019-02

本稿は、慶長5年(1600)10月20日に立花家の軍勢と鍋島家・龍造寺家の軍勢が対戦した江上八院の戦い(江上合戦)において、鍋島家側が作成した頸帳(首帳)の内容について考察した。さらに、鍋島家先手の兵科別編成、この戦いにおける戦闘の具体的状況、『佐賀藩諸家差出戦功書』における記載内容についても論及した。 さらに追記では、江上八院の戦い関係の書状として、これまで関係書籍でよく引用されてきた「(慶長五年)十月廿日付吉村橘左衛門尉宛鍋島直茂書状」において、戦場地名を示す「八郎院」という記載は、「八郎院」ではなく「八之院」が正しいことを指摘した。
著者
白峰 旬
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学大学院紀要 = Bulletin of Beppu University Graduate School (ISSN:13450530)
巻号頁・発行日
no.19, pp.37-47, 2017-03

合戦の際に出される感状や合戦手負注文についての研究史としては、中世から戦国期に関する事例研究は豊富であるが、近世における事例研究はいまだ未開拓の分野であるといえよう。よって、本稿では近世(慶長5年)の事例研究として、慶長5年(1600)10月20日の江上合戦についての立花宗茂発給の感状と軍忠一見状(合戦手負注文)に関して考察をおこなう。
著者
山野 敬士
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 = Memoirs of Beppu University (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.58, pp.27-37, 2017-02

本論は、映画『ミッドナイト・イン・パリ』を利用して「アメリカ文学史」の講義を効果的に実践する方法を考察したものである。映画に登場するロスト・ジェネレーションのアメリカ人作家達の伝記的事実や作品の読解が、どのような影響を映画鑑賞に与えるかを分析した。また、逆に映画内の描写を考えることが、文学作品の解釈の幅を拡げる可能性も探った。
著者
安松 みゆき
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学大学院紀要 = Bulletin of Beppu University Graduate School (ISSN:13450530)
巻号頁・発行日
no.21, pp.77-85, 2019-03

森鷗外の『独逸日記』に登場する洋画家の原田直次郎は、鷗外によれば、ドイツ留学時に出会った現地の女性マリイとの間に非嫡出子があった。それが史実であることを裏付ける史料を二年前に三本松倫代氏が東京都公文書館で発見し、鍵岡正謹氏によって紹介された。筆者はそれに関連するドイツ側の史料を見出した。またそれとは別にマリイと非提出子のその後を示す新たな史料も入手した。それらをここに紹介しつつ、鷗外の説明内容と照合することで、原田に関する新たな情報を補う一方、鷗外の『独逸日記』が伝える事実関係の信憑性を検討する。
著者
米元 俊一
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 = Memoirs of Beppu University (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.58, pp.119-136, 2017-02

蒸留器の最初は香料蒸留であり、その後酒に応用された。西への流れは香料と酒蒸留がセットで発展したが東への流れは香料蒸留が徐々に少なくなり、特に雲南に入ってからは蒸し器を応用した蒸留器で造った蒸留酒が主になった。現在、世界の蒸留器の伝播・発生においてニーダムの学説が主流だが、東南および東アジアでは調理上の蒸し文化が酒の製造における原料の蒸しに、さらにその延長上で蒸留に応用され蒸留酒が生まれた。蒸留器(特に本格焼酎)の発生にもう一つの別ルートがあったと考える。
著者
佐藤 瑠威
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.35, pp.p42-51, 1994-01

1 0 0 0 IR 連携による景

著者
浅野 則子
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学大学院紀要 (ISSN:13450530)
巻号頁・発行日
no.21, pp.1-8, 2019-03

万葉集には内舎人として久仁京にいる家持と旧都に残る弟書持との贈答歌が収録されている。家持と書持との関係、さらに二人がいる場所があまりに明らかなために二人の「心情」表現としてのみ解釈されているが、平城京において歌の文化圏を持つ家持とその世界にいたと思われる書持にとって歌に表現する意味を二人に歌われる「景」から考えていきたい。
著者
吉井 文子
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 = Memoirs of Beppu University (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.59, pp.181-192, 2018-02

香りの本体は分子である。香りについて化学教育を推進するため、マンガ「超香少年サトル」を取り上げ、マンガの中に出てくる香りの成分を明らかにし、その分子の立体構造を理解しやすいように表示することにした。今回は、特に「食べ物や飲み物」に関わる香りに着目し、分子の構造は分子力学法を用いて求めた。また、マンガの中に現れた香りのはたらきのうち、香りとおいしさ、香りと記憶についての説明を加えた。
著者
冨吉 素子
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.52, pp.43-54, 2011-02

一昔前の「母」は、多くは「慈母」といわれ、親しまれ、尊敬される存在であった。現在もまた多くの母親はそうであり、なおいっそう親しい存在でもある。しかし、母親の過保護、過干渉により苦しんで日々を過ごしている青年男女も多い。臨床精神医学で報告されたこの事実を、家族調査報告のデータにより社会学的に検証できるかどうか、分析を行った。その結果「過干渉」の母親は、「規範性」の高い母親と関係するという傾向性を得た。
著者
工藤 邦彦
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.57, pp.73-85, 2016-02

奄美大島名瀬在住時に作家、郷土史家、教師、司書と多彩な側面をみせた文人図書館長・島尾敏雄が鹿児島県立図書館奄美分館と後継の県立奄美図書館に遺したコレクションの形成過程を検証した。「島尾敏雄コレクション」は、その形成過程から広域の地域・郷土資料群を意識した「琉球弧的資料群」と、島尾文学の源流である「文学館的資料群」とに大別できる。
著者
中山 昭則
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.53, pp.169-180, 2012-02

本研究は、フランス南部ラングドック地方における近年の地域構造の特性を明らかにすることを目的とした。ラングドック地方は1960年代後半から大規模な観光開発が国家プロジェクトとして実施された。また、その中心都市モンペリエ市は1980年代以降大胆な都市再開発およびトラム導入が行われ市街地の構造は大きく変化した。このように、事例地域では地域構造は大きく変容していることが判明した。尚、本研究は2011年3月モンペリエにて研修の機会を得た際に行った現地視察をもとに進めた。
著者
石井 保廣
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.50, pp.95-105, 2009-02

別府大学創立100周年記念特集号
著者
浅野 紀子
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学大学院紀要 (ISSN:13450530)
巻号頁・発行日
no.19, pp.1-8, 2017-03

「越中」という鄙に赴任した家持にとって、越中の景を表現しようとした場合、都の歌の景えお捉え直すことが必要となっていく。その時、同じ都の文化圏を共有する池主との贈答によって実景を超えた「景」という新たな表現を作り出していくことが可能になったと思われる。その表現世界は、都でも越中でもない歌世界の仮定された「鄙」となるのであった。
著者
白峰 旬
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.55, pp.35-47, 2014-02

〈はじめに~4.7月18日付明行坊・経聞坊宛稲葉通孝書状についての検討〉関ヶ原の戦い福島正則清須城稲葉通孝書状浅野幸長書状筆者は2012年3月に拙稿「フィクションとしての小山評定-家康神話創出の一事例-」(『別府大学大学院紀要』14号)を発表して、従来、"小山評定"は、慶長5年7月25日、徳川家康が上杉討伐のために東下した諸将を小山(下野国、現栃木県小山市)に招集して、上杉討伐の中止と諸将の西上を決定した軍議として通説化して扱われてきた点を批判し、一次史料の詳細な内容検討によりこれまで通説で肯定されてきた"小山評定"が歴史的事実ではなく、フィクションであることを論証した。この前掲拙稿の内容に対して、本多隆成氏は同年10月に同氏の論文「小山評定の再検討」(『織豊期研究』14号)を発表し、詳細な御批判を加えられた。よって、本稿では、本多氏によって前掲拙稿に加えられた批判点を検討して反論するとともに、前掲拙稿で検討できなかった諸点についても本稿では論及して考察した。
著者
白峰 旬
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学大学院紀要 (ISSN:13450530)
巻号頁・発行日
no.18, pp.65-77, 2016-03

『十六・七世紀イエズス会日本報告集』は、イエズス会宣教師が日本における布教活動に関して、その成果を報告したものであるが、『十六・七世紀イエズス会日本報告集』には布教活動とは直接関係のない諸大名の軍役人数(兵力数)の記載について具体的な数字が出てくる箇所がある。これまでの研究史では、このような視点から『十六・七世紀イエズス会日本報告集』を読み解いた研究成果はなかったので、その事例を『十六・七世紀イエズス会日本報告集』から掲出して若干の考察を加えることとする。