著者
杉田 茂樹
出版者
小樽商科大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

○研究目的極めて大量の科学論文を掲載する無料の電子ジャーナル(以下、「OAメガジャーナル」という。)の急成長が学術出版関係者の注目を集めている。本研究は、OAメガジャーナルの全般的特質とそれが科学文献流通において占める位置と影響を明らかにすることを目的とした。○研究方法標準的学術雑誌引用情報索引による各OAメガジャーナルの論文出版状況,インパクトファクター等の調査、国際図書館コンソーシアム連合年次会議等における情報収集を踏まえ、OAメガジャーナルの投稿規程や編集方針、刊行元出版社・学会の報告書類、関連論文などを中心に文献調査を行った。○研究成果、代表的OAメガジャーナルである、PLoS ONE (PUBLIC LIBRARY of SCIENCE刊行)の成長要因として、別の高品質誌でPLoSが培ってきたブランド力、草創期の高インパクトファクター、査読プロセスの簡略化に伴う出版スピード、比較的安価な論文出版加工料(Article Processing Charge)設定などが挙げられる。PLoS ONE以外で同様の簡略査読方式を採用する学術誌は約10誌存在し、「メガ」と称すべき成長はまだ見られない。また、OAメガジャーナルへのさらなる論文集中のメカニズムとして、・別の学術雑誌でリジェクトされた論文を、著者の希望があれば受け皿としてのOAメガジャーナルに掲載するモデル(カスケード査読)は学術出版全体に広まりつつあり、ひとつの出版社の内部だけでなく、複数学会誌間の投稿論文転送もはじまっている。一方、論文出版加工料でなく個人会員制や機関会員制をとる簡略査読誌もあらわれ、OA出版の多様化がさらに進みつつあることがうかがわれた。
著者
加地 太一
出版者
小樽商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

メタヒューリスティクスが経験的に良い解を導き出してくれていることは多くの研究でも示されている.しかし,なぜ,メタヒューリスティクスが良い解を導き出してくれるのかは一つの謎であるともいえる.そこで本研究では,時系列解析の手法を用いて,メタヒューリスティクスに対する問題の解構造を分析しその特徴的な性質を取り出す.それによりメタヒューリスティクスの各手法の性能を理論的に推定しその性能を明らかにするとともに,その能力の謎を解き明かすことを目指す.また,そこから得られた理論的知見をもとにした新アルゴリズムの設計を展開する.
著者
伊藤 一
出版者
小樽商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

バイヤーの歴史的形成過程を考察すると、機能分割の流れが読み取れる。つまり、権限分散化と専門職的性格である。元来、購買と販売は同一人物が行い売れ行き状況が購買に反映していた。しかし販売時点のセルフサービス化と総合小売商業として取り扱い品目の増大にともない、バイヤー業務が独立した形態を有することになる。販売面を担当するスーパーバイザーと購買面を担当するバイヤーに2分割されていく。その後,バイヤー業務が煩雑になり、本来持っていた商品開発の役割が失われるにしたがって、通常の再購買、修正購買と新規購買の業務を分割し前二者を担当する、ディストリビューターと後者を担当するバイヤーとの3分割制度へ移行している企業が見られる。また企業間での戦略の違いが組織形態を変化させている。現状小売業は以下の2つのタイプに別れると想定される。まずイトーヨーカ堂(IY型)がとる購買戦略は、新規商品開発・発掘戦略であり、これに対応して上記のような3分割の機能分割型的組織を採用している。これに対してダイエーなどほとんどの小売企業が採用している購買部門がほとんどの関連機能を包括するタイプで、総合的組織がある。購買に関する戦略、規模、権限、機能と組織に関して比較考察し、類型化を行った購買戦略では、イトーヨーカ堂は、消費者のニーズを重視し、高品質商品をバイイングする点に戦略を資源を傾注している。つまり新規商品を探索することにバイヤー業務を傾注させている。そこで商品開発型購買と表現できる。これに対してダイエー、その他の多くの大手小売企業は、価格を重視し、仕入先から安い価格条件で商品を仕入れる努力に資源を傾注している。したがって、取引条件重視型購買と表現できる。
著者
中村 史
出版者
小樽商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

研究代表者は、平成15年度から18年度まで4年間の基盤研究Cによる研究「日本文学のジャータカ説話(本生譚)と源流・インド説話との比較研究」、及び、これに先立つ数年間の研究成果(平成13年度から14年度にも前段階の研究について科学研究費補助金・若手研究Bを取得)に基づき、博士学位請求論文『ジャータカ説話の原型と展開』を執筆した。これを桃山学院大学大学院文学研究科に提出し、平成18年3月17日、同大学大学院文学研究科より「博士(比較文化学)」(文博乙第一号)を取得している。最終年度・平成18年度には、この博士論文の改稿・整備を行った。並行して、科学研究費補助傘の「研究成果公開促進費」を申請してこれを取得し、汲古書院より、今年度、平成19年6月30日原稿組み入れ予定、平成20年1月16日発行予定として、さらに作業を進めている。書名は『三宝絵本生課の原型と展開』(博士論文の論題を変更)であり、目次によって概要を示せば、第一章 『三宝絵』とその本生譚第二章 シビ王本生譚の原型と展開第三章 シビ王本生譚の主題とその達成第四章 スタソーマ王本生譚の原型と展開(一)第五章 スタソーマ王本生譚の原型と展開(二)第六章 スタソーマ王本生譚の思想的背景第七章 大施太子本生譚の原型と展開第八章 大施太子本生譚の誕生となっている。日本・平安時代、永観2年(984)成立の『三宝絵』に流入した本生課(ジャータカ説話)にどのようなインド的、仏教的背景があるのか、その原型または起源、展開または変容の諸相について考察している。またそれぞれの本生譚ないしその類型話が文学としてどのように読み解けるかを解明しようとしたものである。
著者
吉田 直希
出版者
小樽商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、ジョン・クレランドの『ファニー・ヒル』を生み出した18世紀イギリスにおける階級・人種・ジェンダーの問題意識を明らかにし、ポルノグラフィーに関するポスト・ジェンダー/セクシュアリティ論を構築することであった。17年度の研究では、近年のジェンダー研究におけるオリジナル/コピーの関係性についての議論を出発点とし、裏世界の深奥に潜むイギリス帝国、植民地の存在を明らかにすることを目指した。成果としては、ジョン・ゲイの犯罪文学における野蛮/洗練の対比を精査し、作品の表面に表れない、グローバルシステム内の人種問題をあぶりだした。また18世紀のトランスナショナルなジェンダー・階級・国家表象をサミュエル・ジョンソンの作品解釈によって確認した。18年度の研究では、ウィリアム・ホガースの『娼婦一代記』と『ファニー・ヒル』の比較から、信頼できない語り手=ファニーのオリジナリティを明らかにした。ファニーの幸福な結婚で終わる性の遍歴の裏に確認できる近代的主体の転倒した「階級・人種・ジェンダー」意識を新歴史主義的に検討する必要性を主張した。19年度の研究では、現代のアニメーション研究の成果を視野に入れ、エロティック・アートのグローバルな普及・発展の過程を検証した。江戸時代の春画、あるいはアニメにおける「少女=戦士」の表象に関わる作品も併せて検証した。日常的現実に媒介される「虚構」それ自体にリアリティを見いだす精神性は、現代アニメにおける「おたく」的生産/消費と密接に関連しているが、虚構それ自体を欲望することの意味をホガース版画の歴史性という観点から多面的に検討した。
著者
梶原 武久
出版者
小樽商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

電子機器メーカーのA社を対象とするフィールドスタディを実施した。とりわけ、同社において過去に蓄積されてきた品質コストデータの分析に取り組んだ。現状は暫定的な分析段階であるが、分析結果は概ね以下の通りである。品質の作り込みと継続的学習が重視される日本的品質管理のもとでは、予防コストと評価コストを維持するか、もしくは削減しながら、失敗コストの削減が可能であると考えられてきた。しかし分析結果によれば、品質コストデータの蓄積が開始された1992年から1996年までは、上記の関係がみられるが、それ以降においては、予防コストや評価コストに減少がみられる一方で、失敗コストが横ばい、もしくは上昇傾向にあることが明らかになった。この分析結果は、従来の定説とは大きく異なるものであることから、今後、なぜこうした分析結果が得られたのかについて検討を進めていく必要があると考えられる。また過去の失敗コストが、将来の出荷額に及ぼす影響についても検証を行った。暫定的な分析結果によれば、5期前の内部失敗コストが、現在の出荷額にマイナスの影響を及ぼすことが示された。一方、外部失敗コストが出荷額に及ぼす影響については検出することは出来なかった。これらの分析結果が得られた理由としては、内部失敗コストが増加することによって、手直しや補修が発生するために、通常の生産活動が制約されると考えられる。また外部失敗コストが出荷額に及ぼす影響を検出することが出来なかったのは、同社の主要製品が、産業材であること、また外部クレームについては、手直しや補修が行われないことが主要な原因であると考えられるが、今後さらに検討が必要である。
著者
山田 久就
出版者
小樽商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

アバール語(標準語およびホトダ方言)の不定詞従属節に関して(1)代名詞(再帰代名詞、相互代名詞、人称代名詞)の振る舞いという観点、(2)不定詞従属節の動詞と上位節の名詞句との一致という観点を中心として研究を行った。・国際シンポジウムLENCA-2: The Typology of Argument Structure and Grammatical Relations(ロシア連邦カザン市、5月11日〜5月14日)で標準アバール語における不定詞従属節と相互代名詞の振る舞いの関係について発表を行った。・8月26日〜9月14日の期間にロシア連邦マハチカラ市およびホトダ村でアバール語母語話者に対して質問形式の調査を行った。・標準アバール語において、不定詞従属節にある人称代名詞は上位節にある自動詞のSや他動詞のAとは同一指示になりにくいことやなる場合の条件を明らかにした。また、不定詞従属節にある再帰代名詞zhi-AMとzhi-AM-goが上位節のどのような名詞句を先行詞にすることができるのかを明らかにした。不定詞節における代名詞の分布には話者の出身地によってかなり揺れがあることも明らかになった。・標準アバール語で不定詞と結びつく動詞、とくに不定詞節のSやOを上位節のSやOがコントロールしない動詞をさらに探し出し、それぞれの動詞に関して従属節にある絶対格名詞句と上位にある動詞との一致がどのようになるのかについて明らかにした。・標準アバール語の不定詞従属節において、代名詞の分布は不定詞従属節の動詞と上位節の名詞句との一致に基本的に影響を受けないことを明らかにした。・ホトダ方言の電子化テキスト(約30,000語)を母語話者の協力を得て作成した。・電子化テキストとインフォーマント調査からホトダ方言で不定詞従属節と結びつく動詞をリストアップした。
著者
入谷 純 角野 浩
出版者
小樽商科大学
雑誌
商學討究 (ISSN:04748638)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.271-294, 2001-03-28

論説
著者
玉井 武
出版者
小樽商科大学
雑誌
小樽商大人文研究 (ISSN:0482458X)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.45-67, 1960-07-10
著者
小田 福男 佐古田 彰 山本 充 李 濟民 小柳 貢 桑原 康行 瀬戸 篤
出版者
小樽商科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

平成11年度〜平成13年度にかけて、「極東ロシアにおける資源開発に伴う北東アジア経済の変化に関する地域学的研究」をテーマに、北東アジア経済と北海道経済の連携可能性について検討を行ってきた。そして、そうした研究の成果は、主に平成13年度の内容を中心に述べるとすれば、以下のように整理される。まず、マクロ経済的見地からは、「サハリンプロジェクトの動向」として、近年のプロジェクトの実態に関して検討を行っている。また、より大局的見地から、「ロシア連邦における極東サハリン州の経済的位置づけ」として、ロシア経済全体から見たサハリン経済の実態に関して検討を行っている。次に、ミクロ経済的見地からは、「ウラジオストックの住宅建築」として住宅産業にテーマを絞り、北海道企業のサハリン・ロシア極東進出の可能性について検討を行っている。また、こうした流れから、北海道企業の海外進出に関するテーマとして、「グローバル時代における日本企業の国際競争力-北海道企業のグローバル対応-」についても詳しく検討を行っている。さらには、「北海道企業の知的財産権戦略モデル」として、北海道企業の特許戦略による体力強化の可能性についても検討を行っている。そして、最後に法的見地からは、「海底石油資源開発の際の油流出事故により生じる損害についての国際賠償責任」として、国際法的見地からロシアとの国際ビジネスに関する実態について検討を行っている。また、「ロシア法における共同事業形態」として、ロシアにおける具体的な企業法の実態について検討を行っている。以上の複眼的見地から、「極東ロシアにおける資源開発に伴う北東アジア経済の変化に関する地域学的研究」を進め、様々な内容に関してその実態が明らかにされた。北東アジア経済と北海道経済との連携可能性を探る上で、こうした研究成果の有効活用が望まれる。
著者
米田 力生
出版者
小樽商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

一般的な空間である荷重付きディリクレ空間上の作用素、特に掛け算作用素、テープリッツ作用素、ハンケル作用素がいつ閉値域を持つのかを特徴付けを行った。ベルグマン空間上での掛け算作用素に関しては勿論、一般的な空間である荷重付きディリクレ空間上の掛け算作用素が閉値域を持つ必要条件に関する必要十分条件に関しては知られているが、テープリッツ作用素、ハンケル作用素がいつ閉値域を持つのかに関しては殆ど知られていない。そこで、シンボルを解析函数に限定して、サンプリング集合の特徴付けを行い、その解析結果を利用して、テープリッツ作用素及びハンケル作用素がいつ閉値域を持つかに関する結果を得た。
著者
米田 力生
出版者
小樽商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

ベルグマン空間は、複素平面上の開単位円板上のp乗可積分正則関数からなるバナッハ空間であり、複素平面上の単位円上のp乗可積分正則関数からなるバナッハ空間として定義されるハーディー空間とは密接な関係があり、p=2の場合、両空間とも荷重付きディリクレ空間とみなすことが出来る。本研究の目的は、一般的な空間である荷重付きディリクレ空間上のハンケル作用素及びテープリッツ作用素の有界性、コンパクト性、及び閉値域を持つ条件の特徴付けを行うことである。そこで先ず、荷重付きディリクレ空間上で定義される二つの特殊な積分作用素が、ハンケル作用素及びテープリッツ作用素とかなり似通った性質をもつということに着目し、それらの積分作用素の解析を行った。具体的には、荷重付きディリクレ空間上で定義される二つの積分作用素及び掛け算作用素の有界性、コンパクト性、及び閉値域を持つ必要十分条件を特徴付ける研究に着手し一定の成果を上げた。その結果は幾つかの研究集会において発表し、現在、専門雑誌に投稿中である。そして、それら二つの積分作用素及び掛け算作用素の特徴付けを応用し、荷重付きブロッホ空間上の合成作用素、掛け算作用素が閉値域を持っ必要十分条件に関する研究を行い、これまでには無かった新しい結果を得た。そこでまとめた結果は学術論文として現在投稿中である。また、その結果に関して更なる吟味を重ね、荷重付きディリクレ空間上における(ある特殊な条件の下で)合成作用素、テープリッツ作用素の閉値域を持つ新しい必要十分条件を得た。その結果に関しては幾つかの研究集会において発表を行い、現在、専門雑誌に投稿中である。更に、具体的な例の検証から、別の必要十分条件に関する研究に着手し、幾つかの成果が上がってきている。これらの結果は来年度、発表予定であり、吟味の上で、専門雑誌に投稿する予定である。
著者
木曾 栄作
出版者
小樽商科大学
雑誌
商學討究 (ISSN:04748638)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.87-98, 1953-07-10

紹介
著者
豊国 孝
出版者
小樽商科大学
雑誌
小樽商科大学人文研究 (ISSN:0482458X)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.161-184, 1987-08
著者
杉村 泰教
出版者
小樽商科大学
雑誌
小樽商科大学人文研究 (ISSN:0482458X)
巻号頁・発行日
vol.89, pp.89-105, 1995-03

ウィリアム・ゴールディング(William Golding)の作品の中で,時間意識に強いこだわりを示しているのが『ピンチャー・マーティン』(Pincher Martin)と『自由落下』(Free Fall)である。『ピンチャー・マーティン』においては,主体の現時点の意識の大部分が過去の追憶の断片と非現実的な願望の断片に取って代られ,ごく稀に現在の自己の姿が垣間見られるような描写となっていた。『自由落下』では,現在の自己は『ピンチャー・マーティン』の場合ほど徹底して隠蔽されている訳ではないが,現時点における自己の姿の明確な把握をことさらに避けるところがある。即ち,今の時間が殆ど描かれず,過去の断片的時間と未来の断片的展望のみが主体の回復を求めて前面に押し出されている。過去の追憶と非現実的展望が現在の自己を押しのけて侵入し,寸断された時間が寸断された自己を無秩序に主張しているのである。確かにサミー(Sammy Mountjoy)の言うように,時間は生まれた時のしゃっくりから死ぬ時の喘ぎまでを煉瓦のように一列に並べたものではない。殊に記憶は,ある事件が他よりも重要であったり一つの事件が別の事件を喚起するような場合,時間の順序を崩すものである。だが,サミーの語る記憶がどれほど断片的なものであろうとも,それらを現時点で繋ぎとめることができれば自己の姿は今のような分裂状態にはないはずである。この意味で,『自由落下』のサミーは『ピンチャー・マーティン』のマーティン(Christopher Martin)同様,終始,自己の姿が捉えられない状況にある。以下に述べるのは,サミーの寸断された自己の存在が彼の寸断された時間に他ならず,この時間の断片を現時点の意識の中心に繋ぎとめることができなければ,自己の存在を取り戻すことは望めないという事実である。