著者
今口 忠政 上野 哲郎 申 美花
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.37-59, 2010-06

論文企業の事業再構築戦略とは,肥大化した事業分野を選択して競争力のある事業に経営資源を集中させる戦略であるが,そのためには人材,IT を高度に活用して知識集約化を推し進め,組織能力を高めたシステムへと転換することが求められる。また,環境変化に合わせて組織能力をダイナミックに組み替える能力も必要である。 本研究では,事業構造,組織構造を組み替える戦略行動を「組織能力の再構築プロセス」と捉え,組織能力の形成,変換のプロセスを日本企業,中国企業,韓国企業のケース研究によって解明しようとするものである。そのために,組織能力の概念を理論的に検討し,それらの組織能力がどのように構築されたかについて日本企業のコマツ,中国企業の中国博奇,韓国企業のサムスンを事例として研究した。コマツの本社や主力工場,中国博奇の日本法人,サムスンの日本法人を訪問してインタビュー調査を行った。その結果,持続的な競争優位を確立するためには,環境の変化を迅速に認識する能力,組織学習によって変換する能力,再構築したものを制度化し,構造化する能力の3段階のプロセスを経ることが必要であるといえる。
著者
小野 晃典
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.11-33, 2010-10

論文本論は, ホビー製品の2つの特性を定義した上で, 消費者関与研究の知見を活かしてホビー消費者の個人特性を論じると共に, 新製品普及研究の知見を活かしてホビー消費者の社会的相互作用を論じる。集中的消費やこだわり, あるいは, 創作活動といった特性は, ホビー消費者に特有とは言えない高関与消費者の特性である一方, ホビー消費者間の関係, および, ホビー消費者と一般市民の間に特有の関係のモデル化が重要であるということが見いだされる。
著者
渡部 直樹
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.25-41, 2008-10

樫原正勝教授退官記念号論文生物の進化から,制度や科学的知識の進化に至るまで,高次から低次にいたるまで,すべての進化は,何らかの定向性の性格を持ちうるといえる。この場合,一見ラマルク的に見える進化も,広い意味でのダーウィニズムの枠組みの中で,説明可能であり,生物学における進化も社会制度の進化も,基本的には,同じ方法で説明できる(方法の一元性)。また,ダーウィニズムの,遺伝―変異―淘汰,の過程は,状況の論理の応用によって,次の問題解決の図式,問題(P1)→暫定的解決(TT)→誤り排除(EE)→問題(P2)によって説明できる。更に,制度や科学的知識のような,ポパーのいう世界3 (人間精神の産物)における進化は,生物体のような世界1 (物的世界)における進化と比べて,合理的な推測と批判が大きな要素となり,そのため,あたかも定向進化や獲得形質の遺伝と言えるような状況も,進化過程の中に見出しやすくなる。
著者
坂本 義和
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.421-435, 2007-08 (Released:2007-00-00)

商学部創立50周年記念 = Commemorating the fiftieth anniversary of the faculty十川廣國教授退任記念号 = In honour of Professor Hirokuni Sogawa50周年記念論文・退任記念論文 Alfred D. Chandler, Jr. が明らかにした大企業の生成と展開のプロセスであるいわゆるチャンドラー・モデルは,これまで大企業の動向を説明する手段として経営史分野のみならず多岐にわたる学問分野において着目されてきた。しかしながら近年において,そのモデルでは20世紀後半以降の企業動向に対して説明に限界が生じるというポスト・チャンドラーの議論が展開されている。本稿では,このポスト・チャンドラーの議論,なかでも単に現状説明の限界を指摘するだけではなくChandlerの説明の背景理論を問題視するNaomi R. Lamoreaux, Daniel M. Raff and Peter Teminによる研究とRichard N. Langloisによる研究に焦点を当てることで,チャンドラー・モデルについて再検討を試みる。
著者
十川 廣國 青木 幹喜 遠藤 健哉
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.121-145, 2005-02

継続的に日本企業の組織能力とイノベーションの関係について調査を行なっている。この報告書は, 変革を求められている日本企業のマネジメントを継続と変化という視点からその異動についての2年目の調査結果をまとめたものである。
著者
園田 智昭
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.121-131, 2007-04

商学部創立50周年記念 = Commemorating the fiftieth anniversary of the faculty50周年記念論文本社部門の業績を管理する手法であるチャージバック・システムにおける課金の設定方法は,2 つの観点から分類することができる。第一の分類は,課金に利益を上乗せするか市場価格をベースとする方法(プロフィットベースの課金)と,原価をベースに課金を設定する方法(コストベースの課金)である。第二の分類は,課金をサービス量に関係なく固定的に設定するか,サービス量に応じて変動的に設定するか,という観点からの分類である。結果として,両者を組み合わせた4 種類の課金を考えることができるが,プロフィットベースで変動的な課金が最も優れている。本稿では,これら4 種類の課金設定方法について検討し,プロフィットベースの課金の長所,コストベースの課金と事業部制会計における配賦の違い,固定的な課金と変動的な課金の比較などについて検討するとともに,チャージバック・システムの新たな展開の可能性として,包括契約と個別契約,さらにはSLA について指摘した。
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
教育と医学 (ISSN:04529677)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.158-172, 2010-02