1 0 0 0 遺伝と環境

著者
徳田 御稔
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
教育と医学 (ISSN:04529677)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.91-96, 1954-02
著者
工藤 教和
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.35-50, 2007-01

科学技術教育の制度的整備の遅れとイギリス産業の「衰退」を結びつける議論が多い。このような議論を吟味するには,具体的な技術教育組織の成立とそこで育まれた人々の実際の活躍の場を検討してみることが不可欠である。19世紀から20世紀にかけての金属鉱業技術教育と鉱山技術者について大量の観察を行なったディクソン論文の紹介を兼ねてこれを行なう。本稿では,まず前提となる19世紀後半に姿を現す金属鉱業技術教育組織の成立過程を概観する。次稿においては,ディクソンの成果を紹介しながら,それぞれの技術教育組織から育った技術者の特徴を考察する予定である。赤川元章教授退任記念号
著者
池田 幸弘
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.1-21, 2005-12

故玉置紀夫教授追悼号本稿は,若き日の小泉信三(1888-1966)のイギリス滞在,ドイツ滞在時の経験についてできるだけ実証的な論述を与えようとしたものである。初回の小泉の留学は,1912年秋から1916年春にまで及んでおり,文字どおり,悩み多き疾風怒濤の青春時代でもあった。執筆にさいしては,小泉全集のほか,2001年に慶應義塾大学出版会から公刊された『青年小泉信三の日記』を利用した。これは戦時中に焼失した日記のなかで奇跡的に残った資料で,今般小泉家の方々のご好意によってその出版が可能になったものである。いままでも小泉の外遊については彼自身の回想を中心にかなりの情報が入手可能であるが,この日記の公刊がなおも意味を持つのは,原則として日単位で小泉の行動がフォロウできること,そして小泉の集書のプロセスや聴講した講義についてさらに詳細に知ることができることによる。拙稿は,イギリスに足をふみいれてから第一次大戦勃発時までの小泉の行動をこの日記によって追跡したものである。とくに,LSE やベルリン大学で聴講した講義,集書の過程,ジェボンズの子息との面会,そして開戦直前,直後のドイツでの体験に焦点があてられている。なお,本稿の原型たる英文論文はマッコリー大学において,2005年7月5日から8日にかけて開催された第十八回オーストラリア経済思想史学会で報告された。
著者
安藤 光代
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.67-84, 2007-12

商学部創立50周年記念 = Commemorating the fiftieth anniversary of the faculty50周年記念論文近年急増する自由貿易協定(FTA)の経済効果については,日本のFTA を含め,従来からCGE モデルシミュレーション分析等による事前評価が数多くなされてきた。しかし,ここ数年のFTA 締結に向けた日本の積極的な動きを鑑みれば,既存のFTA の経済効果を事後的に把握し,将来のFTA 締結への政策的含意を得ることが重要である。本論文では,日本の経済連携協定(EPA)の経済効果について,初期段階の効果ではあるものの,実質的な関税削減効果の詳細な分析やグラビティ・モデル推計などを通じて事後的に評価し,今後のFTA/EPA の設計における政策的含意を議論した。 日星EPA については,遅ればせながらFTA の波に乗る第一歩を踏み出したという意味で一定の存在意義があっただろうが,実質的な関税削減は少なく,直接的な貿易自由化の効果はかなり限定的である。一方,日本にとって初めて農業分野での実質的な貿易自由化を伴った日墨EPAについては,輸出や投資の面で一定の効果が認められるが,現時点で直接的な貿易自由化の効果が顕著なのは完成車の輸出においてである。また,EPA によって設置されたビジネス環境整備委員会での二国間協議を通じたメキシコのビジネス環境の改善やメキシコの政府調達における日本企業の参加など,貿易自由化以外の面でも一定の効果が認められる。 今後の日本のFTA の設計において,特にMFN 関税の高い国との協定では,EPA 関税とMFN関税の逆転など段階的な関税削減の弊害を考慮すべきである。また,MFN 関税と同様,農業分野の一部の品目を中心に複雑な関税体系が採用される傾向にあるが,よりシンプルでかつ自由化水準の高いEPA が望ましい。そして,とりわけ日本企業の進出が盛んな国との協定では,日墨EPA でのビジネス環境整備委員会のようなチャンネルを活用し,貿易自由化以外の側面も柔軟に盛り込んでいくべきである。
著者
山本 勲
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.1-14, 2007-12

商学部創立50周年記念 = Commemorating the fiftieth anniversary of the faculty50周年記念論文本稿では,『慶應義塾家計パネル調査』(2004~07年調査)のパネル・データを用いて,デフレを脱却しつつある2004~06年の日本経済において,労働者個々人の賃金がどの程度伸縮的であったかを検証するとともに,Dickens et al. (2007)の分析結果を用いて名目賃金の下方硬直性の度合いを国際比較する。分析の結果,日本の労働者個々人の名目賃金のうち,パートタイム労働者の時給やフルタイム労働者の所定内月給については,下方硬直性の度合いが国際的にみて大きい一方で,フルタイム労働者の年間給与は,国際的にみて下方硬直性の度合いが小さいとの結果が得られた。つまり,日本の近年のフルタイム労働者の名目賃金は,所定内給与は下方硬直的であるものの,残業手当や賞与による調整幅が大きいために,それらを合わせた年間給与でみれば,国際的にみて大きな伸縮性をもっていると評価できる。もっとも,2004~06年の景気回復期でもフルタイム労働者の所定内月給が下方硬直的であったことには留意すべきであり,日本の名目賃金は,所定内月給の調整を必要とするほどの大規模なショックに対しては必ずしも伸縮的には変動しない可能性があるとの解釈もできる。一方,フルタイム労働者のどのような属性で賃金の据え置きや賃金カットが顕著に生じているかを検証したところ,下方硬直性が確認された所定内月給が据え置かれる確率については,属性による大きな違いはみられず,ある特定の属性に偏って下方硬直性が生じていることはなかった。また,賃金カットについては,所定内月給,年間給与ともに,賃金水準の高い労働者ほど賃金カットを受けやすく,その度合いも大きいことがわかった。このことは,賃金格差が縮小傾向にあることを示唆する。
著者
黒川 行治
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.27-44, 2016-10

本論文の目的は, 会計の利害調整の機能・役割に関連する経営者の報酬と従業員の給料の格差の問題, 労働対価の分配の正義を公共哲学の観点から考察することである。企業の統治形態, 取締役会の位置づけについて, 古典的・伝統的モデル(所有主指向モデル), 修正モデル(企業体指向モデル), 社会企業モデル(多様な構成員指向モデル)の3つのモデルを検討し, コーポレートガバナンス・コードは, 修正モデルを前提としているが, 社会企業モデルに依拠しないと経営者の高額報酬の問題は解決しないことを示す。次に, 公共哲学の諸理論を援用すると, 経営者の高額報酬・大きな格差を肯定する論理とそれを否定する論理がそれぞれ複数存在するが, 筆者の私見では, ロールズの格差原理およびジョンストンの新しいバランスのとれた相互性の理論に依拠し, 大きな格差の存在には否定的である。最後に, 会計の利害調整機能・役割と労働対価の分配の正義との関連性について言及し結論とする。論文
著者
伊藤 眞
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.15-39, 2017-02

店舗数でカフェ・チェーントップのスターバックスの設立から2015年の資本構成変更とその理由および2014年3月期までの損益を概観したうえで, 同じシアトル出自のタリーズコーヒーおよび日本出自で店舗数が一番多いドトールコーヒーグループとの損益比較(2014年3月期の決算数値)ならびに1店当たり損益の比較を行う。競争が激しい環境のカフェ業界において, 3社とも売上および営業利益は増加している。その中でもスターバックスは絶対額ではもちろん増加率でもトップで, 2015年3月期(推定値)の売上高は前期比1.094倍, 営業利益は同1.224倍となっており, タリーズおよびドトールを凌駕している。カフェ・チェーンの競争相手として登場した100円のセブンカフェは5度目の挑戦であり取引関係者も含めた開発チームを組織し, すべてにわたりベストを目指した。2013年1月から2016年2月までに累計20億杯を達成し大成功した。それにもかかわらず, セブンカフェはカフェ・チェーンおよび缶・ペットボトルの売上にほとんど影響を与えず, 新規顧客層を創造した。主要なカフェ・チェーンの深煎りの濃いコーヒーを否定, 農場まで行って良質なコーヒー豆を探し出し, その豆にあった焙煎と一杯一杯抽出を行うサードウェーブ, そしてコーヒーに魅入られ, 東京, オスロおよびパリで各々探求され花開いたコーヒー豆の魅力を最大限引き出す個性的なカフェを概観する。また, カフェ・チェーンに対するアンチ・テーゼとして生まれた宇田川カフェグループを概観する。さらに, コンセプトカフェとして, メイドカフェを筆頭とするさまざまなカフェを概観する。起業家であるカフェ・オーナーは根源的無知に基づく新たなカフェという仮説を市場に提示し, 市場の消費者による検証を受けている。果たして如何なるカフェが生き残るのか。Overviewing history from the establishment of Starbucks Japan as the top of cafe chain in the number of shops, and the change in capital structure in 2015 and the reason, then the profit and loss for 5 fiscal years ended March 2014. We compare the profit and loss, and profit and loss per shop, for fiscal years ended March 2014 of Starbucks, with Tully's coffee in Seattle origin and Doutor Coffee Group in Japan origin. In the competitive environment cafe industry, both sales and operating profit increased in all three companies. Among them, Starbucks is top in the amount as well as the rate of increase, the sales (estimate) for the fiscal year ending March 2015 is 1.094 times of the previous fiscal year and the operating profit is 1.224 times, surpassing Tully's and Doutor.The 100 yen Seven Cafe, which appeared as a competitor of the cafe chain, was the 5th challenge and the development team including related business staffs was organized and aimed at the best all over. From January 2013 until February 2016 cumulative 2 billion cups were achieved and it was a great success. Nevertheless, Seven Cafe created a new customer base with little impact on sales of cafe chain, cans and PET bottles of beverages.Overviewing 3rd wave coffee (Blue Bottle Coffee), based on denial of deep roasted coffee in the major cafe chain, going to the farm, finding good quality coffee beans and roasting such beans that match the bean and attracting cup by cup, and the unique cafes that maximizes the charm of coffee beans, whose owner were fascinated by coffee and seeking all the aspect and process, and blooming (Café Bach) in Tokyo, (FUGLEN) in Oslo and (La Caféothèque) in Paris.Overviewing Udagawa Cafe group born as an anti-thesis against cafe chain. Furthermore, as a concept cafe, we survey various cafes to begin with maid cafes. Cafe-owner as an entrepreneur, presents the hypothesis of a new cafe based on radical ignorance to the market and is subject to verification by market consumers. Which cafe will survive?論文
著者
関場 武
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.247-264, 2005-12

故玉置紀夫教授追悼号明治初期から中期にかけて,夥しい数の字引き・字典類が刊行されているが,その中で多くの啓蒙的な著作を出し,辞書の編集者としてもそれなりに活躍した人物の中から,青木輔清を選び,彼が関わった30余点に及ぶ字書・辞典類について,その半数程を中心に諸版の有様を紹介し書誌的な考察を加えたもの。
著者
鷹野 宏行
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.199-207, 2005-04

植竹晃久教授退任記念号本稿では,わが国における映像製作の典型的なファイナンスパーターンの製作委員会に注目し,その組織,会計,税務などの現況を考察し,その制度的不備を指摘する。さらに,現在注目されている日本版LLC についてその最新動向を踏まえ,コンテンツ製作全般に最も適した組織体であることを主張する。そして,コンテンツ産業振興のためには,LLC を利用した資金調達が可能となるようLLC における諸制度(会計基準,パススルー課税,労務出資)の確立が早急の対策課題であることを述べる。
著者
深尾 光洋
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.123-140, 2006-06

唐木圀和教授退任記念号 中国経済特集中国は1978年の改革開放政策の実施以降,従来の社会主義に基づく統制経済から市場経済に移行してきた。それに伴い,国内市場でも価格統制と配給制が徐々に廃止され,自由な国際貿易が可能となる経済に変貌してきた。1993年には国内における配給切符が全廃されたあと,1996年には国際的な経常取引に関する為替管理が撤廃され,財・サービスの国際取引が自由に行えるようになった。こうした中国の国際金融政策は,日本における敗戦直後の戦時統制から1964年の経常取引の自由化に至る動きと似た側面があるので,二国の経験を対比することで,中国の国際金融政策の展望を試みる。中国は90年代後半以降の経常収支黒字の定着と近年の外貨準備の急増に伴い,米国や日本から人民元の切り上げ圧力を受けるようになった。中国は資本取引については厳しい為替管理を行っているが,中国経済の国際化に伴って資本移動を押さえ込むことが困難になってきている。この結果,中国の外貨準備高は発展途上国としては異例のGDP 比40パーセント程度に達し,さらに増加を続けている。外貨準備を保有する中国人民銀行(中央銀行)は,外貨買い入れ代金の支払いによる金融緩和効果を打ち消すために,保有する人民元建て国債を大量に売却するとともに,自ら人民銀行債券を発行して資金を吸収している。しかし国内金融政策を国内均衡のために運営することと,固定相場制を維持することの両立が困難になりつつある。本稿では,日本における1970年代前半のインフレの原因は,変動相場制移行前後の日銀の金融政策運営の失敗にあることを指摘し,人民銀行はこうした失敗を繰り返すべきではなく,早期に固定相場制から変動相場制に移行すべきであると論ずる。
著者
関 計夫
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
教育と医学 (ISSN:04529677)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.161-165, 1953-09
著者
伊藤 眞
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.27-56, 2013-10

論文住宅ローンのプールを信託に出し, 信託受益権としたうえで, 優先劣後化を行う。このうち優先受益権は譲渡し, 劣後受益権はオリジネーター(債権の譲渡人)が自己保有する。残存部分として処理されるこの劣後受益権に取得差額が生じた場合, 金融機関は償却原価法を適用する。劣後受益権は取得価額(帳簿価額)が元本金額を上回る場合, 収益配当金として入金したキャッシュフロー(元本については, 優先受益権がすべて回収した後に回収する)を利息部分と元本の回収部分に分けて処理する。これに対し, わが国の税務当局は, この処理を否認し, 入金額をすべて益金計上するものとした。会社は, 不服申し立てをしたが, 認められないため, 裁判を起こした。しかし, 東京地方裁判所(以下「東京地裁」という)において, 予約差額の期間配分は認められず, 敗訴した。会社(原告)は東京高等裁判に控訴し審理中である。会計基準および実務指針ならびにこれらの基礎となった米国基準に即して会計処理(償却原価法を含む)を検討すると, 会社の処理が妥当であると解される。次に, 債権の証券化(優先劣後化を含む)による影響を具体的な数値例を用いた簡潔なモデルで分析すると, 市場金利が下がった場合の優先劣後化に伴う劣後受益権への影響は, 債権プールの加重平均利率が優先受益権の市場利率を上回る場合, その元本額にその金利差を乗じて算出した金額の現在価値(金利のみのストリップ債権と同じ性質のもの)が劣後受益権の現在価値の一部となり, 残存部分である劣後受益権の取得原価を構成することが明らかとなった。当該取得原価は, 劣後持分権の元本を超過するから, 償却原価法を適用し, 利息部分と元本の回収部分に分けて処理しなければならないことは明らかである。言い換えれば, この劣後受益権は, 住宅ローン契約に基づき現金を支出して取得した債権を信託し優先劣後化後に優先受益権譲渡契約による譲渡後の劣後受益権(残存部分)の確定した契約キャッシュフローの当初認識時の現在価値である取得原価(帳簿価額)と元本額との間に生じた差額である。最後に, 東京地裁の判決内容を検討するが, 上記検討結果から見れば, 判決が採用した被告である税務当局の主張は自らに都合のよい主張を述べているだけであって説得力ある論拠はない。したがって, 判決は不当なものであると解される。