著者
郭 浥塵
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.9-21, 2021 (Released:2023-09-24)

本研究は既存の主流eスポーツの枠組みに属さない任天堂世界大会のストリーミングを観察し、プロトタイプ理論に依拠して人々が〈本当のeスポーツ〉を正統化する過程を明らかにした。ビデオゲームで行う競技がeスポーツとして制度化される際には「ゲーム」「スポーツ」「メディアエンタテインメント」のフレームが存在し、タイトルごとに異なる側面が強調される。競技ゲーミングの諸要素をめぐり人々はマチズモ、アスレティシズム、エンジョイメントの価値観を軸に判断を下し、eスポーツの〈本当らしさ〉を社会的に構築していく。エンジョイメントは他の二つの価値観と違って非慣習的要素を許容するため、ゲームデザインと競技メカニクスを多様化させ、既存の〈本当のeスポーツ〉という概念を拡張してコミュニティの裾野を広げることで、新しいeスポーツ文化を創造し得る。
著者
藤原 正仁
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-11, 2019 (Released:2021-07-01)

近年、デジタルゲームの技術の進展やゲームユーザーの年齢層の拡大により、ゲームの内容や表現が多様化している。本研究では、ゲーム開発者の職業倫理の規定要因を明らかにすることを目的として、11 名のゲーム開 発者に対して半構造化面接調査を行った。その結果、個人要因、組織要因、産業要因という 3 つのカテゴリーが導 出された。個人要因としては、(1)他者との相互作用、(2)社内のガイドライン共有、(3)制約の中での表現追求、(4) 国際展開の経験、(5)子どもとの関わり、(6)社会への眼差しという 6 つのサブカテゴリーが得られた。また、組織 要因としては、ゲーム会社(パブリッシャー)において、知的財産部、法務部、QA(品質保証)部によるゲームの 法や倫理に関するチェックが行われていることが把握された。そして、産業要因としては、プラットフォーマーの倫理規定と CERO 倫理規定に沿った倫理上のマネジメントが行われていることが明らかにされた。
著者
福山 佑樹 床鍋 佳枝 森田 裕介
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.31-40, 2017 (Released:2019-10-01)

近年、ゲームデザインの要素をゲーム以外の文脈で活用する「ゲーミフィケーション」が教育の 分野でも注目されている。本研究では、タブレット端末で動作するゲーミフィケーションの要素を取 り入れた電子教材「アプリゼミ」を使用して、2 つの小学校においてその影響を検証するための 2 週間 の実践を行った。実践前後に行ったテストとアンケートの結果、ゲーミフィケーション教材は児童のモ チベーションを高め、算数の能力、特に計算分野の能力を高める効果があることが分かった。また、実 践前後に行った教員へのインタビュー調査からゲーミフィケーション教材には教室における児童のエン ゲージメントを高める効果がある一方、授業における実施には通常授業への切り替えの難しさを教員が 感じるなど、ゲーミフィケーションならではの困難があることが示唆された。
著者
濵田 俊也
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.33-44, 2021 (Released:2021-06-01)

本研究は、ゲーミフィケーションが活用されたサービスのユーザーの、サービスに対する「ロイヤリティ」の形成過程の検証を目的として、コミュニティ機能や外部 SNS 連携機能を含むゲームの仕組みが備わった学習支援サービスのユーザー調査を行った。分析の結果、サービスへの「知覚価値」による「ロイヤリティ」への正の影響(直接効果)と共に「ゲーミフィケーションへの満足」の媒介効果が確認され(部分媒介)、「ゲーミフィケーションへの満足」による「ロイヤリティ」への影響については「拒否回避欲求」の強弱による差異が生じており(調整効果)、「拒否回避欲求」の弱いユーザーは強いユーザーよりも「ロイヤリティ」が高まる程度が強いことが示された。「賞賛獲得欲求」の調整効果はみとめられなかった。これらの結果から、「知覚価値」と「ゲーミフィケーションへの満足」が「ロイヤリティ」を同時に高めることと、他者の否定的な見方をあまり気にしないユーザーについては気にするユーザーよりもゲーミフィケーションの「ロイヤリティ」を高める効果が高いことが明らかになった。
著者
小山 友介
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.76-84, 2008

本稿では日本のゲーム産業における開発力を測る客観指標の一つとして「タイトルが当初予定日に発売できたかどうか(発売延期率)」に着目し、雑誌『ファミ通』の発売日情報を元に、据置機のドミナントであるプレイステーションとプレイステーション2 (PS 2)のタイトル発売延期率を調査した。得られた結果は、次の通りである。 1)PSとPS 2の発売延期率の変化パターンは類似している。すなわち、発売年より 2年目の方が発売延期率が高く、その後減少する。 2)PS時代の方がPS 2時代より発売延期率が高い。 また、PSとPS2の発売延期率の推移は、自然に接続される。3)PS2では年末年始商戦に発売延期率が有意に増加するが、PSでは逆に有意に低下している。年度末に発売延期率が有意に上昇するのは共通している。これらの調査結果から得られる帰結は、次の 2点である。 1)家庭用ゲーム産業は全体では発売延期を起こさないように学習している、2)しかし、当初発売予定が年末年始だったことの発売延期率への影響がPS時代はマイナスだったのがPS 2時代にはプラスに転じたことから、家庭用ゲーム産薬全体にビジネスとしてのプレッシャ ーが強まっている可能性がある。
著者
魏 晶玄
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.137-146, 2008 (Released:2021-07-01)

本論文の目的は、工業製品とは異なる製品特性を持っているオンラインコンテンツ、その中でも特にオンラインゲームの成功した製品開発組戦の管理に対する探索的研究である。ここではJCEの「FreeStyle」というオンラインゲームを分析対象として取り上げ、成功した製品開発組職管理について分析し、仮説を導出した。本研究を通じて、成功した開発には、CEOの開発プロジェクト管理方式の重要な変化があったことと開発チーム内の強い統合力が存在していたことが発見された。CEOは直接的な管理ではなく、look&check方式を取り入れてプロジェクト進捗を管理する方法を取った。また失敗したゲーム開発チームを全面解散せずに、コア開発者はチーム内に残留させて、失敗ノウハウを開発チーム内で共有し再利用できるようにした。このような過程を通じて開発チームは、メンバー間の強い連帯感と内部統合力を維持することができた。この分析結果から本研究は、オンラインゲームのような創造的産業において経営者の間接的開発チーム管理方式、開発チーム内の強い統合力と開発成果は正の関係を持つという仮説を提示した。
著者
deHaan Jonathan Kono Fumiya
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.47-59, 2010
被引用文献数
9

この研究では、ゲームの双方向性が語彙習得に有効か否かを検証した。この実験では、日本の大 学生46人を、ゲームと英語の習熟度別に二人一組にし、一方の学生に市販の英語ミニゲームを10分間やっ てもらい、他方の学生にその様子をモニターで見ているよう指示した。このゲームの後で両方の学生に 同一内容の語彙想起テストを行い、認知的負荷(すなわち費やした知的努力や感じた困難さの程度)を 測定した。さらに、1週間後に再び語彙想起テストを行った。ゲームをした方も見ていた方も、英語の 語彙を記憶していたが、覚えていた語彙の数はゲームをした学生の方が少ない結果となった。これはゲー ムの双方向性が招いた認知的負荷によるものと考えられる。言語学習による教育ゲームの研究、デザイ ン、教授法、学習に対する影響を述べる。
著者
林 志修 佐々木 輝美
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.53-65, 2018 (Released:2019-10-01)

本研究では向社会的デジタルゲームに関する先行研究での課題の解決を試み、向社会的行動を文脈によって定義づけ、その定義に基づき、人気デジタルゲームタイトルの内容分析を行った。内容分析の結果、分析対象になった27個のデジタルゲームタイトルでは1時間当たり平均3.59回の向社会的行動が行われた。内容分析に基づき、デジタルゲームの中の向社会的行動とプレイヤーの向社会性の関係を明らかにするためインターネット調査を行った。その結果、向社会的行動の表現が多くみられたデジタルゲームのプレイ時間とプレイヤーの向社会性の間に有意傾向の正の相関がみられた。また、向社会的行動を文脈によって分類したとき、異なる種類の向社会的行動の持続時間はプレイヤーの向社会性と異なる関係を示すことが分かった。
著者
浅田 恵佑
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.39-50, 2009

ネット上でのコミュニケーションの多様化は進み、現在注目を集めるのが仮想的な空間内を「アバター」を用いてコミュニケーションが行える形態である。これは「Second Life」によって注目を集めたが、一方オンラインゲームの領域では同様のコミュニケーション形態を有しつつ、長期的で実質的 運営がされている状況がある。しかしそうした新しい空間はそれ単体で存在するのではなく、従来から 行われるテキストを主としたコミュニケーションと相互に関係している。本稿はテキストベース/アバターベースに区分したコミュニケーションの歴史と相互関係に関して整理し、今後のアバターベース・コミュニケーションを対象とした研究における課題と方向性について考察する。
著者
Jose P Zagal Amy S Bruckman 増田 泰子
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.92-101, 2008 (Released:2021-07-01)

この論文は、ゲーム研究クラスの教官が貞面している課題の調査結果についての報告である。筆者は半構造化法を用いて、ゲーム研究コースの教授と講師12名に面接調査を実施した。面接は理論的カ テゴリーと命題および結論を精緻化するために書き換え、繰り返しコード化された。その結果、ゲームについて学ぶことが複数の理由によって難題となりうるということが明らかになった。たとえば、テレ ビゲームの広範な先行経験が、学生がゲームについて批判的・分析的に判断する能力を阻害することが よくある。学生たちは自分の経験と観察を明確に述べることにも困難を抱えている。手段それ自体もま た、研究への障害をもたらしている。学生たちはゲームを十分に経験するために、ゲームに習熟しなければならないが、技術上の障壁のせいで彼らに経験すべき古いゲームを与えることが難しくなっている。 この論文では、こうした難問を解決するために教官が採用している多くの解決法を説明する。現在のゲー ム研究コースにはゲーム研究者になりうる人々の多様性を制限しかねない危険があるという問題に注目を引きつけることが、本論文の結論である。
著者
中村 勲
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.81-92, 2009

本文は、株式会社バンダイナムコゲームス(元・株式会社ナムコ)で展開されたレースゲーム 「ポールポジション」「ウイニングラン」「リッジレーサー」を具体例として取り上げ、投入された映像 技術の変遷を紹介する。合わせてこれらのレースゲームに託されたビデオゲーム企画者の狙いや、プレイヤーに提供したいゲーム体験がどのようなものであったか、という思想的側面の整理分類を試みる。 結果、これらのレースゲームが不連続な個別意志によって制作されたのではなく、プレイヤーの要求に 合わせて体系立てて制作された事に気付くと共に、ゲームの近未来の姿が従来からの延長線上に存在するのか否かについて議論する入口になる事を目指す。
著者
小山 友介
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.76-84, 2008 (Released:2021-07-01)

本稿では日本のゲーム産業における開発力を測る客観指標の一つとして「タイトルが当初予定日に発売できたかどうか(発売延期率)」に着目し、雑誌『ファミ通』の発売日情報を元に、据置機のドミナントであるプレイステーションとプレイステーション2 (PS 2)のタイトル発売延期率を調査した。 得られた結果は、次の通りである。 1)PSとPS 2の発売延期率の変化パターンは類似している。すなわち、発売年より 2年目の方が発売延期率が高く、その後減少する。 2)PS時代の方がPS 2時代より発売延期率が高い。 また、PSとPS2の発売延期率の推移は、自然に接続される。3)PS2では年末年始商戦に発売延期率が有意に増加するが、PSでは逆に有意に低下している。年度末に発売延期率が有意に上昇するのは共通している。 これらの調査結果から得られる帰結は、次の 2点である。 1)家庭用ゲーム産業は全体では発売延期を起こさないように学習している、2)しかし、当初発売予定が年末年始だったことの発売延期率への影響がPS時代はマイナスだったのがPS 2時代にはプラスに転じたことから、家庭用ゲーム産薬全体にビジネスとしてのプレッシャ ーが強まっている可能性がある。
著者
サイトウ アキヒロ
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.73-77, 2011

I introduce a development process of game car navigation system "smooth navigator NX710" which I applied know-how of developing it to, and the purpose of this article is to perform subsequent inspection.After release of iPhone, it becomes the development posture to attach great importance to "a user experience", but the potential dissatisfaction for the operability of the user is not broken off.By the development of "NX710", I utilized "a game meat theory" and Clarion team and cooperation were to develop it and were able to realize a user experience not to be seen in a past product.Three points of conclusions obtained from this development1. It is improved a user experience of the household electrical appliance if I apply the operability of the game 2. The demonstration development that I can operate is effective. 3. I perform the development in top-down, and it is important that I take away the hierarchy structure of hardware and software.
著者
加藤 亮 河合 隆史 池下 花恵 二瓶 健次 佐藤 正 山形 仁 田代 泰典 山崎 隆
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.67-75, 2008 (Released:2021-07-01)
被引用文献数
1

本研究では、ビデオゲームの与える生理・心理的影響について、人間工学的な手法を用いて評価実験を行った。ビデオゲームの生体影響は多岐に渡るといえるが、筆者らは短期的・直接的なものとして、気分の変化に着目した。実険では、携帯ゲーム機用ソフト 5種類の15分間のプレイを求め、プレイ中の皮膚電気活動、プレイ前後の気分プロフィールおよび唾液中アミラーゼ活性を測定した。実験は、10例の被験者に対して、ゲームソフトの習熟前と習熟後の 2度行い、ソフト間の差異や習熟度、プレイ内容等の観点から比較・検討を行った。