著者
金山 彰宏 小曽根 惠子
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.81-85, 2002-09-30 (Released:2019-07-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1

越冬から目覚めたコガタスズメバチの女王を用いて,古い巣盤への産卵誘引とコロニー形成に向けての室内飼育を行った.その結果,女王蜂による古い巣盤への産卵が確認された.約2ヶ月の室内飼育後,屋外に移設した巣は,その後,自然環境の巣と変わらぬコロニーを形成した.屋外に移設後,ビデオカメラを用いて,働き蜂の日周活動を観察した.帰巣働き蜂による餌の持ち帰り状況から,一コロニーにおける捕獲昆虫類の個体数を計算すると,年間約20,000個体と推計された.
著者
宮ノ下 明大 佐野 俊夫
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.21-24, 2013
参考文献数
6

<p>2012年10,11月に関東地方(東京都,神奈川県,千葉県,茨城県)の7カ所において屋外にノシメマダラメイガの性フェロモントラップを設置し,その捕獲数を調べた.2011年に行った同地方での調査と比較し,トラップ(ガチョン)は屋外で安定して本種を捕獲できること,年や調査地域が異なっても11月の捕獲数が大幅に減少するという捕獲消長が確認された.本調査で確認された10月前半の捕獲数の地域差について,夜間の平均気温との関係を調べたところ,平均気温の高いと考えられる東京都品川区や神奈川県横浜市で多数の捕獲が見られた.しかし,捕獲数と気温の関係を明瞭に説明することはできず,各調査地域での本種の発生量やその季節変動など他の要因も関係していると思われた.</p>
著者
田中 伸久 小林 貞 田中 英文 佐々 学 萱原 伊智郎 山口 安宣 林 治稔 小澤 邦寿
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-5, 2004
参考文献数
12
被引用文献数
1

群馬県内において,ユスリカ幼虫が上水道給水栓から発見される苦情事例が発生した.ユスリカは,ヨシムラツヤユスリカおよびハモンユスリカ属の幼虫であり,これらは浄水場内でも確認されたことから,浄水場内のユスリカ幼虫が給水栓に達したものと推測された.また,前塩素濃度を上げる,凝集剤 (PAC) を多めに入れる,濾過機の逆洗回数を増やす,清掃を行うなどの積極的かつ厳重な管理によって,このような事例は防ぎうることが示唆された.
著者
青山 修三
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.59-62, 2015-10-25 (Released:2019-04-10)
参考文献数
8

札幌市内で6月と7月に捕獲したヤマトゴキブリ成虫雄5個体と雌9個体集団飼育し,本種の産卵・幼虫の孵化状況と 孵化幼虫の越冬に関する実験を行った.卵鞘数,孵化率,孵化幼虫数はいずれも8月が最多であり,卵期間は短かった.1齢幼虫での越冬は極めて難しいが,2齢から4齢幼虫では越冬できることから,札幌の野外環境で十分な定着が可 であることが示唆された.
著者
高橋 朋也 藤野 全弘 白神 弘介 辻 英明
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.13-15, 1999

<p>蚊の被害が著しい,関東のある工場で調査を行い,次の結果を得た.</p><p>1.アンケート調査の結果,蚊の被害は工場全域に及び,その度合は労働環境悪化にまでもつながるものであった.主要加害種はイエカ属,特にチカイエカで,その発生源も確認できた.</p><p>2.捕獲調査の結果,捕まった蚊の99%がイエカ属で,捕獲地点近くのし尿浄化槽でチカイエカの成虫が多発活動していることが確認され,本工場の主要加害種はこれらであると云える.</p>
著者
青山 修三
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.21-25, 2006-06-30 (Released:2019-04-10)
参考文献数
7
被引用文献数
3

札幌産ヤマトシロアリ職蟻の温度反応を3種の実験により他地域産のコロニーと比較した.二重の試験管の温度を20.0℃から徐々に-4.0℃まで低下させる温度下降に伴う反応行動を比較した結果,産地が南から北へ行くに従って活発行動を示す温度範囲が下降する傾向が見られた.温度下降終了後10時間後の平均蘇生率は札幌産84%,秋田産16%,つくば産46%,鹿児島産20%を示し,札幌産の蘇生率が高かった.しかしながら緩慢,停止,仮死の温度反応には産地間で明瞭な差は見られなかった.広口瓶を用いての越冬期間中の死亡率を比較した結果,越冬期間中の死亡率は札幌産が最も低い54.7%で,秋田産が93.3%,鹿児島産は100%であった.シャーレ内カラマツ蒸煮材の食害による早春季採餌量比較をした結果,実験終了時のカラマツ蒸煮材への食害度は札幌産(生存率86.8%)が最も大きく,秋田産(生存率55.6%)は軽微,鹿児島産(生存率6.8%)では認められなかった.これらの結果から,今回供試した札幌産ヤマトシロアリが他地域産よりも低温に適応している可能性が示唆された.
著者
宮ノ下 明大 今村 太郎
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.53-57, 2011-11-30 (Released:2019-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

チョコレート製品でのノシメマダラメイガ幼虫の発育を調べた.ミルクチョコレート製品での成虫羽化率は25℃で8%,30℃で22%と低く,発育日数は25℃で140日以上,30℃で88日以上かかった.これらの結果より,ノシメマダラメイガ幼虫にとって,チョコレートそのものは適した食物とはいえないと考えられた.アーモンドを含むミルクチョコレートでは,アーモンドを含まないものに比べて短い発育日数(約69日/25℃,約52日/30℃),高い成虫羽化率(50%/25℃,53%/30℃),重い成虫体重を示した.ロースト・アーモンドのみでは,チョコレートのみよりも成虫羽化率は高く(80%/25℃,53%/30℃),発育日数も短かった(約42日/25℃,約24日/30℃).ミルクチョコレート製品での成虫羽化率は,個別飼育の方が集団飼育(n=5)よりも高くなった.
著者
中野 敬一
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.85-90, 2003-10-30 (Released:2019-07-11)
参考文献数
12
被引用文献数
4

屋外公共施設のゴキブリ相と季節消長について,2000~2002年に東京都港区の屋外公共施設で夜間観察と粘着トラップによる捕獲により調査を行った.確認されたゴキブリの種類はクロゴキブリとヤマトゴキブリであった.夜間観察ではクロは7~10月に,ヤマトは4,5,10,11月に多く見られた.クロは成・幼虫ともに同じ時期に確認数が増加したが,ヤマト成虫は5~7月の幼虫の少なくなる時期に多くなる傾向があった.また,確認された幼虫はクロもヤマトも大型の個体が多かった.捕獲した幼虫の前胸背幅を測定した結果,クロは2~4mmの小型幼虫が,ヤマトは4~8mmの大型幼虫が多く捕獲された.
著者
金山 彰宏 小曽根 恵子
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.9-13, 1997-09-25 (Released:2019-07-11)
参考文献数
8
被引用文献数
3

潜伏場所から出て,活動場所で行動するチャバネゴキブリの夜間の活動を,カメラを用いて観察した.観察の結果,雄成虫の活動は極めて活発で,餌場はもとよりその周辺部にも広く分散する様子が観察された.一方,卵を持った雌成虫では,その活動範囲は非常に狭く,潜伏場所に潜む個体数に関係なく夜間の行動は少なかった.卵を持たない雌成虫は,餌場に集中する傾向が強かった.雄雌成虫が示す行動パターンは雌雄成虫,幼虫が混在した条件でも大きく異なることはなかった.食堂内の開放された場所に設置した粘着式トラップに捕獲されたチャバネゴキブリ成虫の構成比をみると,雄成虫は64%,卵を持たない雌成虫は32%,卵を持った雌成虫では4%であった.このことは実験室内で観察されたチャバネゴキブリ成虫の行動特性を良く現していると思われる.
著者
川口 侑子 牛頭 夕子 水原 寛美 田原 雄一郎
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.7-12, 2015-05-25 (Released:2019-04-10)
参考文献数
7

シリカゲルのゴキブリに対する効果は,粒子径の大きさに左右された.470 meshであれば,1m2あたり3gの処理で感受性系統ならびに抵抗性系統のチャバネゴキブリに対して,24時間で85%以上の個体が死亡した.30 mesh, 40 meshの粒子径のシリカゲルでは殺虫効力が見られなかった.トビイロゴキブリ老齢幼虫に対する殺虫効果 は劣った.470 meshのシリカゲルを室内に7日間放置した時の吸湿の程度は低く,殺虫効力には大きな影響をもたらさなかった.シリカゲルで死亡したゴキブリの肢や触角は硬直し,時間とともに脱落した.一連の試験から,処理面が乾いている場所でのシリカゲル微粉末処理は,チャバネゴキブリ駆除に対し有効で,現場での実用性が期待される.
著者
山内 健生 渡辺 護
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.13-16, 2013-05-25 (Released:2019-04-10)
参考文献数
16

富山県の山地(標高330m, 664m, および1,120m)にて,Townes型マレーズトラップを2009年7月から9月まで連続して設置し,スズメバチ類の捕獲を行なった.その結果,2亜科16種を捕獲した.捕獲個体数がもっとも多かったのはシダクロスズメバチで,全個体数の59.1%を占めた.ツヤクロスズメバチがこれに次いだ(15.7%).3地点とも最優占種はシダクロスズメバチであったが,種構成は標高によって異なっていた.アシナガバチ亜科に関しては,標高の高い地点ほど捕獲種数と個体数が少なく,標高1,120 m地点ではまったく採集されなかった.一方,スズメバチ亜科では標高が高い地点ほど捕獲種数と個体数が多かった.
著者
小曽根 惠子 金山 彰宏 小曽根 努
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.32-36, 1995-10-31 (Released:2019-07-11)
参考文献数
6
被引用文献数
4

雑居ビル地階の食室内に生息するゴキブリを用いて放逐実験を行い,実地におけるチャバネゴキブリ成虫の移動範囲を調査した.横浜市内の和風食堂(9.7×7.0m2)において,生け捕り式トラップに捕獲されたチャバネゴキブリ成虫にマーキングをして放逐,再捕獲を行った.再捕獲には粘着式トラップを用いた.雄および未抱卵雌を採集地点と異なる食堂入口付近で放逐した場合,多くの個体が厨房付近で再捕獲された.この移動は,エサ・水を求めての移動と思われた.雄および未抱卵雌を厨房で放逐し,放逐翌日に殺虫剤処理を行い,ゴキブリの1日の移動範囲を調査したところ,マーク個体は放逐場所のごく周辺で再捕獲された.また抱卵雌を食堂の入口および厨房近くの倉庫で放逐したが,いずれも移動範囲は放逐場所のごく周辺に限られ放逐場所の違いによる行動の差は見られなかった.
著者
宮ノ下 明大 今村 太郎 古井 聡 曲山 幸生
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.65-67, 2016-09-20 (Released:2017-11-16)
参考文献数
13

2015年12月10日に茨城県西部の玄米貯蔵施設5カ所で,その敷地内を対象に屋外のコクゾウムシの越冬個体を探索し採集した.5施設の内,4施設でコンクリート片や木片の下にコクゾウムシを発見した.4施設で採集したコクゾウムシ成虫を玄米に投入して,25°C・70%RH・16L8Dの条件で40日後に調べると,次世代の成虫羽化が確認され,12月前半の個体は産卵能力があると考えられた.
著者
辻 英明
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.25-30, 2003-05-30 (Released:2019-07-11)
参考文献数
9
被引用文献数
3

When sticky traps were placed at the inside edge of closed windows,a closed door,and in a mail box attached on the door,very small insects with body lengths of about one millimeter or less were caught depending on the operation of a ventilation fan in the room. No insects were caught when the ventilation fan was not operated. This suggests that minute contaminant insects invade structures through small crevices around closed doors,windows,and even incomplete walls and floors,depending on the operation of ventilation fans. Moderate sized insects also invaded another room near by through an incompletely closed window depending on the operation of the same ventilation fan above used. Substantial number of insects even went out during the fan was stopped. The dominant insects were moth flies, chironomid midges, and fungus gnats; this coincides with a trend which is often observed in many industrial facilities.
著者
辻 英明 菅野 格朗
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.113-116, 2003
参考文献数
3
被引用文献数
7

前報において,閉め切った室内に微小な昆虫が入る主要因は換気扇稼働(室内陰圧化)に伴う隙聞からの吸引であること,また吸引の影響は照明による誘引より大きい事例が示されている.そこで今回は,市販の給気用換気扇に防虫用フィルターを追加装着して室内に給気したところ,問題の微小昆虫の侵入を防止できた.この防虫用フィルターの追加装着による換気扇モータ一部の温度上昇は1℃にとどまり,負荷の増加も少ないことがわかった.
著者
辻 英明
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.5-9, 2005-06-30 (Released:2019-04-10)
参考文献数
8

緑茶の残渣,メロンの皮,バナナ(皮を含む),梨果実の芯,柿果実(断片),ハムの薄切り切片(水添加)等を個別のカップに入れ,隙間のある窓際に9〜12日間置き,12日〜17日目に発生している小型のハエ類の成虫,蛹,幼虫の定性的な観察を1999年9月中下旬に行った.その結果,バナナ,梨,柿にはキイロショウジョウバエが多数発生したが,オオキモンノミバエはわずかしか発生しないか,あるいは全く発生しなかった.しかし,メロンの皮からはオオキモンノミバエの蛹の発生数がショウジョウバエより多かった.ハムからは圧倒的多数のオオキモンノミバエが発生し,ショウジョウバエはわずかであった.緑茶の残渣には多数の小型のチョウバエ類と若干のニセケバエ(ナガサキニセケバエ)とノミバエが発生した.小型のチョウバエ類とニセケバエは他の残渣には発生していなかった.
著者
中野 敬一
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.101-106, 2013-11-15 (Released:2019-04-10)
参考文献数
22

2011年6~12月に,東京都港区にある超高層ビルの公開空地と都市公園の樹木の樹洞において,粘着トラップによるゴキブリの捕獲調査を行った.両方の場所でクロゴキブリ成虫と幼虫が6~11月まで捕獲された.捕獲数における幼虫の比率は,公開空地では90.5%,公園樹木では73.7%であった.公園樹木ではヤマトゴキブリ成虫と幼虫も捕獲されたが,その捕獲数はクロゴキブリよりも少なかった.公開空地や公園緑地の植栽はクロゴキブリやヤマトゴキブリの生息環境として重要である.