著者
岡田 祐一 伊藤 景子 鳥居 由美 今村 太郎 宮ノ下 明大
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.109-115, 2004-09-15 (Released:2019-07-11)
参考文献数
15

七味唐辛子とその原料7種類 (赤唐辛子,黒ごま,ちんぴ,山椒,麻の実,けしの実,青のり) におけるノシメマダラメイガの発育 (1齢幼虫から成虫) を調べた.その結果,麻の実,黒ごま,けしの実,ちんぴでは成虫まで発育が見られ,赤唐辛子,青のり,山椒では全く発育しなかった.これまで本種が七味唐辛子のどの原料を食物としているかは不明であったが,主成分の赤唐辛子では発育せず,黒ごまや麻の実といった種子系原料を利用することが確認された.米糠で発育を見た場合,平均して約40日 (37~54.5日) で羽化しているが,七味唐辛子の原料では,米糠に比べて大部分の個体は2~3週ほど羽化が遅れ,最長では70日以上遅れた個体があった (51~111日).また,羽化率も明らかに低かった.
著者
稲岡 徹 宮田 弘樹
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.95-101, 2004-09-15 (Released:2019-07-11)
参考文献数
8

工場敷地内の外灯の照明光源を水銀灯から高圧ナトリウム灯に変換したときの飛来昆虫数に与える影響を調べた.1.実験に用いた高圧ナトリウム灯の紫外線放射量は水銀灯の約1/60,水銀灯から高圧ナトリウム灯への変換によって外灯への誘虫性は約1/2に低下した.2.外灯に近い施設周辺では,外灯照明の誘引作用により,建物との距離に応じて昆虫の密度が高まり,そのため施設内への昆虫の侵入数は,照明のない場合に比べ増加していると思われる.3.外灯の光源を水銀灯からナトリウム灯に変換すると,その周辺の施設内への昆虫の侵入数も減少するが,減少率は外灯自体への飛来数ほど顕著ではなく,20%前後であった.4.外灯間の距離が28-45mという実験条件では,各外灯は独立して昆虫を誘引し,水銀灯とナトリウム灯を同時に点灯した場合にも,各外灯間の相互影響は認められなかった.5.水銀灯から高圧ナトリウム灯への変換によって,鱗翅日・膜翅目・半翅目・鞘翅目では飛来数は約70%減少したのに対し,双翅目のユスリカ類やコバエ類では30-40%の減少率であった.
著者
矢部 辰男 大友 忠男 原島 利光 重岡 弘 山口 健次郎
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.53-55, 2017

<p>横浜市中区の市街地で,2015~2017年の3年間(いずれも2月)に,屋外に生息するドブネズミについて,人獣共通感染症である広東住血線虫の寄生状況を調べた.広東住血線虫の検出可能な2カ月齢以上のドブネズミにおける寄生率は,2015年から2017年までの順に,2/41(4.9%),5/27(18.5%),6/21(28.6%)となり,2017年の値は2015年よりも有意に大きかった.</p>
著者
城戸 毅
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.45-47, 1992-11-06
被引用文献数
4

食品を加害する蛾類には,ノシメマダラメイガ・スジマダラメイガ・スジコナマダラメイガ・チャマダラメイガ・バクガ等が知られており,加工食品工場では重要な害虫として問題視されている.大型食品工場においては,工場内環境がほぼ一定であるため,年間を通してこれら蛾類の発生が見られるようになって来ている.これら蛾類の発生モニターとして最も有効であるのは,フェロモントラップとされている.食品害虫用の性フェロモントラップの利用法は,1.成虫発生の早期発見(発生予察)2.発生場所の探知・限定3.定位阻害4.大量捕獲5.未発生の高度な確認・証明が挙げられる。そこで,フェロモントラップを使用してのモニタリング調査及び防除対策を行っている某食品工場の過去3ヶ年間のデータをとりまとめて報告する.
著者
渡辺 護 品川 保弘
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.14-20, 1997-09-25
参考文献数
5
被引用文献数
3

Since 1995, we have conducted the research for the control of Ororo-tabanidfly, Hirosia iyoensis at some mountainous areas in Toyama Prefecture, central part of Japan, where a great number of Ororo-tabanidflies occur every year. The effect of traps baited with CO_2 gas to H. iyoensis was studied. These canopy traps were effective in mass-capturing Ororo- tabanidflies. The performance of pyrethroid insecticides and a repellent were also investigated. Pyrethrum extract, pyrethrin and prallethrin showed fast knock down effects against Ororo-tabanidflies. And, also deet had a repellent action.
著者
山内 健生
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.13-17, 2014-05-15

屋久島の原生的照葉樹林とその近隣のスギ人工林とで,Townes型マレーズトラップとIBOY式ウインドウトラップを用いてカミキリモドキ類を調査した.マレーズトラップでは5種61個体が捕獲された.個体数がもっとも多かったのはカトウカミキリモドキで,全個体数の53.6%を占めた.フタイロカミキリモドキがこれに次いだ(29.0%).オオサワカミキリモドキ,オキナワカミキリモドキ,ホソカミキリモドキは少数が採集されたのみであった.カトウカミキリモドキはスギ人工林で多くの個体が捕獲された.カトウカミキリモドキは3月下旬から7月下旬に捕獲され,性比は雌に偏っていた.ウインドウトラップではカトウカミキリモドキ8個体のみが捕獲され,性比は雄に偏っていた.
著者
小松 謙之 徳義 聡 栗田 知己
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.15-17, 2017-03-20 (Released:2018-04-14)
参考文献数
4

抗凝血剤を使用して防除を行った場合のクマネズミの死鼠発生場所を,ビル内の飲食店舗で調べた.2015年の店舗解体時には,厨房機器の裏で2個体,天井裏で1個体が発見された.これとは別に2007年から2015年における定期点検中に天井裏で5個体が発見された(この間に64個体が粘着シートで捕獲された).なお,この8年間に異臭や害虫の発生,あるいは中毒したネズミの徘徊による苦情はなかった.したがって,抗凝血剤による死鼠の多くは回収可能な天井裏で発見される傾向が見られた.
著者
谷川 力
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.29-30, 2010-05-31
著者
角野 智紀 齋藤 はるか 市岡 浩子
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.13-15, 2006
参考文献数
8

愛知県海部郡蟹江町の港湾地帯にある倉庫でトルキスタンゴキブリ<i>Blatta lateralis</i>の若虫と成虫が2005年6月から10月にかけて捕獲されたが,これは愛知県では初記録であった.本種の生態と生活史を考え合わせ,当該倉庫内に定着している可能性があると判断した.今後,空調が完備した建築物等での本種の繁殖および害虫化が危惧される.
著者
辻 英明 志澤 寿保
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.16-21, 2000-05-31
被引用文献数
6

数種殺虫剤を用い,直径5.5cmの処理ろ紙面の中心の無毒餌と,無処理面中心の無毒餌に接近摂食する個体数を比較し,処理面通過接触による死亡の起こり方も観察した.ペルメトリン水性乳剤処理(10倍希釈0.4cc)ろ紙は激しく忌避され(50分〜78分後3区平均87.7%忌避),死亡率は低かった(6日後平均5.6%).フェニトロチオン乳剤処理(10倍希釈0.4cc)ろ紙にはやや忌避性があったが(4区平均42.3%),長期間後に若干の死亡がみられた(6日後平均37.5%).ダイアジノンMC剤処理(10倍希釈0.4cc)ろ紙では忌避は少なく(2区平均-39.6%),ホウ酸粉末に次ぐ死亡率が得られた(6日後平均83.3%).プロペタンホス乳剤処理への忌避は殆どなかったが(10倍希釈で-61.3%,3倍希釈で16.4%),死亡率は低かった(10倍希釈3区6日後平均5.6%).ホウ酸粉末処理(200メッシュ篩過紛50mg)ろ紙に対する忌避は少なく(3区平均4.3%),殺虫効果は最も高く,かつ最も速やかであった(6日後3区100%).ホウ酸粉末剤+プロペタンホスのエアゾール剤(不快害虫用市販品)200mg(乾燥後の重さ)を処理したろ紙上(直径11cm)に市販ベイト(ヒドラメチルノン)を置いた場合,ベイト容器への侵入は阻害されず,無処理ろ紙上にベイトがある場合より1〜2日速くゴキブリが全滅した.
著者
辻 英明
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.67-71, 2007-10-15

既報のアリーナ内実験では,タバコシバンムシ成虫は夕方から潜伏場所から出て20時過ぎに活動のピークを示し,5月には歩行によって暗い方向に移動する傾向があり,7〜8月には明暗差別なく歩行移動し,8月には明るい方向に飛翔移動する個体も多かった.今回,より広い空間で観察する目的で,540mm×360mm×高さ250mmの室内の中央で成虫とシェルターの入った放飼カップを設置開放し,周囲に設置した餌入りの捕獲カップ14個と,水または蜂蜜水を含んだ脱脂綿の入った捕獲カップ14個への侵入状況を調査し,床や壁に残された個体の回収も行った.2006年6月4〜5日(実験A)と16〜17日(実験B)の各一昼夜の実験の結果,周囲の容器への侵入は,人為的振動の多い放飼カップ設置直後を除けば,夕方から夜間にかけて多くみられた.放飼カップを離れた個体のうち,周囲の捕獲カップに侵入した個体の割合は実験Aで11%,実験Bで29%,捕獲カップ以外で翌朝回収できた個体は実験Aで13%,実験Bで8%,その他は行方不明であった.餌場以外での活動も多いことは既報のアリーナ実験と共通の結果と言える.侵入した捕獲カップの位置にはある程度の方向性があり,散光ガラス窓(南側)に対面する明るい白壁(北側)の方向は少なかった.むしろ散光ガラス窓の下の逆光となる壁側(南側)に侵入が多かった.餌入りカップと水入りカップが同数の実験Aでは,侵入した成虫のうち8%(=1/12)が水入りカップに侵入し,餌カップと蜂蜜水入りカップが同数の実験Bでは,20%(=4/20)が蜂蜜水入りカップに侵入した.成虫は幼虫の餌に産卵するためだけでなく,自身の栄養摂取や水分摂取のためにも移動侵入すると言える.
著者
内藤 親彦
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, 2012-04-30
著者
平林 公男 山本 優 武田 昌昭 花里 孝幸 中本 信忠
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.91-101, 2003-10-30
参考文献数
34
被引用文献数
2

諏訪湖周辺地域においては,ユスリカ類の成虫が恒常的に大量飛来し,周辺住民や観光客から不快害虫として嫌われている.本研究では,湖から発生するユスリカ成虫の防除対策を検討するたあに,成虫の飛翔行動(飛翔時間と飛翔高度)のパターンを調査し,その特徴を把握することを目的として,1989年4月18日から20日まで,同年6月5日から7日まで,1999年6月5日から6日まで,2000年9月4日から6日までの期間,観測を行った.調査は湖東岸に位置する信州大学山地水環境教育研究センターにて行い,ライトトラップを異なった高さ(地上1m,9m,16m)に1器ずつ設置し,オオユスリカとクロユスリカについて捕獲数を調べた.オオユスリカ成虫は16mに設置したトラップで最も多く捕獲されたのに対し,クロユスリカ成虫は,9m設置のトラップで最も多く捕獲された.飛翔時間帯を明らかにするために,調査期間中,2時間おきに調査した結果,オオユスリカ成虫の場合,季節により異なり,春と秋では18:00から20:00まで,夏は18:00から翌朝の6:00までの間,捕獲数が多かった.一方,クロユスリカ成虫の場合は,発生期間をとおして18:00から20:00に多かった.以上のことから,飛翔高度は種ごとに異なり,また,特にオオユスリカについては,季節により飛翔時間帯が異なることが明らかとなった.
著者
青山 修三 青山 達哉 間瀬 信継
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.7-9, 2008-05-18
参考文献数
7
被引用文献数
1

Seventy-two houses infested by dark-brown ants, Lasius japonicus Santschi, were surveyed from April 2005 to September 2006 in Sapporo and neighboring cities. The ants were active in the warmer seasons, especially in June. The infested houses were categorized into two types: less than 5 years (30.6%) or more than 21 years (27.8%) after construction. These phenomena might be caused by changes in the external insulation in recent houses and the house deterioration in aged mortared houses.
著者
立岩 一恵 冨室 光司 山内 章史
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.31-34, 1997-09-25
被引用文献数
2

Two kinds of marketed spices, cayenne-pepper powder (Shichimi-togarashi) and curry powder (Kare-ko), were tested as food for Indian meal moth larvae, Plodia interpunctella (H.). When eggs were introduced into newly purchased spices, no larvae developed. Even young 5th instar larvae placed on the spices could not develop, and died, in the newly purchased spices. After one or two months of air-exposed aging of the newly purchased spices, however, about 50% of introduced eggs (hatching larvae) grew, pupated, or emerged into adults in cayennepepper powder containers, but no larvae developed in the curry powder containers yet. After 6 months of aging of the newly purchased curry powder, one of 30 introduced 5th instar larvae could emerge into an adult. These results suggest that the newly purchased spices contained some factor(s) killing Indian meal moth larvae, and the factor(s) would fade out during the aging periods of the spices under the air-exposed conditions.