著者
鈴木 実
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.12, pp.5-12c, 1976-12-20

昭和50年7月21日〜7月23日,9月18日〜9月20日,11月17日〜11月19日,12月19日〜21日と昭和51年2月16日〜2月19日の5回にわたり山口県笠戸島周辺に生息する海浜動物物の分類学的・生態学的な調査を行なった。その結果,見出された殼アメーバ類,太陽生類,腹毛生類,ナマコ類などはすべて日本未記録種であり,このほかヒドロ虫類,輪毛虫類,棘皮虫類などにも若干の日本未記録種が見出された。
著者
小黒 千足 笹山 雄一
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.27, pp.101-106, 1984-03-25

文部省科学研究費(海外調査)によってなされたマーシャル群島の動物相調査において,1982年8月8日同群島マジュロ環礁より2個体のジュズベリヒトデに属するヒトデが採集された.これらはFromia nodosa A. M. CLARKと同定されたが,原記載は西インド洋で得られた1個体の固定標本によってなされたもので,既知の他の3個体もいずれもセイロン島以西産であり,この報告は太平洋における本種の最初の記録である.
著者
沢田 勇 原田 正史 織田 銃一
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.54, pp.19-27, 1995-12-25

1994年7月24日から8月6日までの間,南中央シベリアの2箇所にて3属7種からなる29種のトガリネズミ類が採集された.消化管を剖検した結果,9属12種の条虫類が寄生していた.その条虫類はSoricinia longisegmentalis,Ditestolepis diaphana,D.secunda,D.sp.,Lineolepis skrjabini,Skrjabinacanthus jacutensis,Neoskrjabinolepis singularis,Staphylocystis(Staphylocystis)naganoensis,Vampirolepis novosibirskensis,Cucubilepis skrjabini,Choanotaenia crassiscolex及びC.baicalensisであった.これら条虫類の寄生率は29頭のトガリネズミ類の62%であった.今回は前調査で寄生がみられなかった4種の条虫類(Skrjabinacanthus jacutensis,Cucubilepis skrjabini,Ditestolepis secunda,Choanotaenia baicalensis)について記載した.
著者
川勝 正治 Rovasio Roberto A.
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.48, pp.7-23, 1992-12-25

Dugesia ancepsはBORELLI(1895)がパラグアイからPlanaria dubiaとして最初に報告し,続いてBOHMIG(1902)がアルゼンチン東部から報告した種類であるが,KENKによって上記の種名に修正された.最近,CAZZANTGA and CURINO(1987)が再記載したが,やや不完全な点もあり,本稿ではコルドバ産(アルゼンチン中部)の材料に基づいて詳細な分類学的再記載を与えた.生時の体長は15-18mm,体幅1.5-2.5mm.黒褐色,中等度に発達した耳葉を持つ.精巣は腹位で多数,陰茎基部は球形で,陰茎基部腔は分離,相称形の陰茎突起部は円錐形で,単一射精管が開く.交接のうは中等度の大きさで,交接のう柄の筋肉層は厚く,腔も発達している.卵殻は球形で,糸状の柄がある.南米産の近似種について,分類学的考察を加えた.
著者
江波 義成
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.40, pp.39-42, 1989-12-25

滋賀県の土壌中からササラダニ類ジュズダニ科Belbaの1新種を記載し,ササカワジュズダニBelba sasakawaiと命名した.本種は,その1対の後体部背毛(ps_1)が長い点でB. meridionalis BULANOVA-ZACHVATKINA,1962と類似する.しかしなから,後種のps_1はps_2やps_3の約2倍長であるのに対し,本種のそれは3倍以上あること,また本種は8対の背毛(c-, l-, h-series)がやや内側に列生することとより小型(約2/3の体長)であることからB. meridionalisと区別される.
著者
蒲生 重男
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.11, pp.32-36c, 1975-10-30

1966年秋に,東京大学海洋研究所の堀越増興博士が相模湾中央部の相模堆周辺の深海系底生生物の調査(KT-66-23)を行った時に,Smith-McIntyre型採泥器によって採集された端脚目ヨコエビ亜目の標本のうちにLysianassidae科属やLepidepecreum属に属すると思われる1種類があっ。この標本は深度704mの海底(相模堆北側斜面St.16)から採集されたもので,体長7.4mmを有する雄1匹である。体はよく石灰化して硬く,側扁し,自在胸部と腹節背面中央には顕著な1条の竜骨状隆起があり,さらにその上に歯状の突起がある。自在胸部基板は著しく拡張している。本種はオホーツク海及び日本海北部の50〜500m深から記載されたL. comatum GURJANOVA, 1962に極めて近似しているが,体背面の歯状突起,第2顎脚腕節及び第1触角柄部第1節などに相違がみられることから別種と考えられ,新種L. sagamiensisとして報告する。(第10回動物分類学会大会にて講演)
著者
山崎 柄根
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.45, pp.45-49, 1991-12-25

1989年,国立科学博物館(東京)によって行われた台湾高山帯の動物相調査の際,従来知られたモリバッタTraulia ornataの亜種とは異なる1型を,中部の能高越えルートにおける2,000m以上の地点および南部の藤枝および鶏南山の1,550m以上の地点から得た.これまで低地から知られていたタイワンモリバッタ(モリバッタ基亜種)T.o.onataとはとくに脛節の色彩によって明瞭に区別され,また体長も安定性があるので,新亜種T.o.chuiとして記載した.本亜種は,その分布の状況から,おそらく低地の基亜種から直接に分化したものではなく,共通の祖先集団が前後2度にわたって中国大陸から台湾へ侵入し,最初に入った集団が高地型chuiとして進化を遂げ,後に入ったものが低地型ornataになったものと考えられる.
著者
宮本 正一 安永 智秀
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.49, pp.47-52, 1993-07-25

日本産のメクラカメムシ亜科に含まれる近縁な2積を検したところ,いずれも既知の属にあてはまらない未記載種と判明したので,新属Adelphocorisellaを創設し,各種にA.lespedezae,A.insulanaの種小名を与え,後種については終齢幼虫も含め記載,図示した.前種は本州(青森市,つくば市),九州(福岡市)において,マメ科植物(マルバハギ,クズ)から得られている.後種は西表島,与那国島から知られ,クズの1種に寄生する.この両種は互いに酷似するが,分布が異所的であることに加え,頭頂複眼間の幅,触角の長さ,雄交尾器の形状などに相違がある.Adelphocorisella属は,Adelphocoris属と極めて近縁で,一見非常によく似ている.しかし,雄交尾器のvesicaにAdelphocoris各種の共有新形質である櫛状骨片と鈎状骨片を欠く上,体がやや小さく,前胸背につやがないこと,脛節棘が淡色であること,雄の腹部生殖節(把握器基部付近)に突起がないことで区別でき,新属として扱うことに矛盾はない.なお各種の和名であるが,それぞれカスミヒゲナガメクラガメ(lespedezae),リュウキュウヒゲナガメクラガメ(insulana)としておきたい.
著者
Golovatch Sergei I. MIKHALJOVA Elena V. 田辺 力
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.53, pp.71-80, 1995-06-25

東アジアに産するモリヤスデ属Haplogonosoma BROLEMANNについて分類学的検討を行ない,以下の結論を得た.Sphalmatogonus JEEKELはモリヤスデ属のシノニムである.モリヤスデ属は本州中部から国後島,千島列島にかけて分布するムツモリヤスデH.implicatum BROLEMANN,1916と,少なくとも九州およびスマトラ(?)に分布するモリヤスデH.silvestre TAKAKUWA,1942の2種から構成される.フタマタモリヤスデH.silvestre dichotomum TAKAKUWA,1942およびS.carli JEEKEL,1980はモリヤスデのシノニムである.また,モリヤスデ属の族の所属を検討した.
著者
野田 浩司
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.11, pp.13-16, 1975-10-30

沖縄県那覇市南部に分布する豊見城層のシルト岩より,特徴的なArcoscalpellumの峰板殼化石を採集し,これを検討した。降板は表面にV宇型の特徴ある彫刻とその側面とのなす横断面は屋根型状を呈している。近似種と比較したが,本邦最初の化石種として,これをArcoscalpellum okinawanumと命名した。