著者
吉田 右子 川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.2-15, 2009-05-01

本稿は建築史研究者で文化景観学,子どもの空間,図書館建築などに関心を持つアビゲイル・ヴァンスリックの図書館史研究を研究史的に取り上げたものである。本稿では代表作『すべての人に無料の図書館』を含めて,ヴァンスリックの研究の特徴を2つの側面から明らかにした。従来の図書館建築史研究やカーネギー図書館の研究史の中での斬新さと特徴,および図書館というスペースに注目しての女性や利用者からの視点による図書館の捉え返し。そうした特徴を指摘しつつ,いっそう盛んになってきている「場としての図書館」への歴史的研究の貢献の可能性と,この視点の重要性を指摘した。
著者
辻 慶太 滝沢 伸也 佐藤 翔 池内 有為 池内 淳 芳鐘 冬樹 逸村 裕
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.253-267, 2013-11-01

本研究では(1)T大学図書館の貸出履歴約6年分を用いたアソシエーションルールの確信度・支持度,(2)図書のタイトル類似度,(2)NDC,(4)「BOOK」データベースの要旨の類似度,の各種組合せを学習用データとしたサポートベクターマシン(SVM)を用いて図書推薦の実験を行った。さらにSVMを用いず上記情報を単独で用いた場合やAmazonによる推薦も比較検証した。被験者は32名で,結果,「NDC+タイトル+貸出履歴」と「タイトル+貸出履歴」の組合せが有効であること,Amazonの推薦の方が評価が高いことを確認した。
著者
名城 邦孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.240-253, 2010-09-01

本論文では18世紀前半に飛躍的な発展を遂げたフランスの王室図書館について,当時の図書館長ジャン・ポール・ビニョン(Jean Paul Bignon)という人物の活動から考察する。ビニョンの図書館長としての成果は広く知られているが,それ以前の文化機関での活動はあまり注目されてこなかった。そこで,館長就任以前の活動がどのように図書館改革に有効に生かされていったのかを検討することを通して,当時ヨーロッパ最大の図書館と言われた王室図書館がどのように改革されていったのかを総合的に理解する。
著者
北 克一
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.226-230, 1999-11-01

日本図書館研究会特別研究例会において,糸賀雅児氏の講演「地域電子図書館構想と<無料原則>のゆくえ」が行われた。本稿では,この内,氏の提起された図書館サービスの公共経済学的視点に焦点をおいて取り上げる。
著者
前田 稔
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.2-16, 2003-05-01

学校図書館蔵書の除去にマインドコントロールの危険は潜むのだろうか。裁判官を悩ませたのは表現の自由の解釈よりも,むしろ思想の自由の扱いであった。本稿では除去をめぐる合衆国裁判所判決群の対立・混乱の歴史を紹介した上で,その背後には司法の自己制限と思想の自由という2つの原理が存在することを指摘する。このことにより表現の自由よりも思想の自由を基点とした説明が今後の図書館界に適切であることを示す。
著者
後藤 敏行
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.190-203, 2012-09

RFID(Radio Frequency Identification)を用いた図書館システムがわが国の図書館に普及しつつある。本稿は,図書館RFIDの導入館を対象に自由記述の質問紙調査を実施することによって,貸出・返却業務,蔵書点検業務,および不正帯出防止機能という,図書館RFIDの代表的な3機能について,現状における課題を考察する。44館からの回答を分析した結果,読み取り性能がより良く,関連機器がより使いやすく,壊れにくく,現状にはない新しい機能を備えたRFIDを,より安い価格で図書館が求めていることが明らかとなる。