著者
飯嶋 秀治
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.265-292, 2011-09-30

本稿では、「宗教の教育と伝承」を考える糧として、グレゴリー・ベイトソンのメタローグを取り上げる。そこで、メタローグを、まずは(一)ベイトソンの諸テクスト内部から、その重要性を確認する。その上で、(二)次にそれを当時、彼がおかれていた歴史的コンテクストに照らして、その効果と行方を検討してゆく。ここでは特に、パールズのゲシュタルト療法との交流と、エリクソンとの催眠療法との影響関係を重視する。結論として、ベイトソンのメタローグは、「聖なるもの」それ自体を語らずに提示する表現形式であった可能性を論じる。それは「宗教の教育と伝承」をテクスト上でどのように行うのかという可能性の一端に光を投げかけてくれるであろう。
著者
宮本 要太郎
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.447-471, 2014-09-30

フランクルのいうように、人間は本質的に「苦悩する人間」である。とりわけ、愛する人を失う喪失体験は、その人を忘れたくないという願望や忘れてはならないという決意に促され、死者との新たな関係性の構築に向かい、生者自身を新たな生へといざなう(悲しみの力)。同時に、そのような願望や決意は、それらに共感的に寄り添う「記憶の共同体」が存在することで救われる(共苦の力ないし苦縁の力)。その意味で、故人を想起することと、その想起に協同的に参与すること(痛みを共有すること)は、いずれも宗教的な意味を帯びている。幸福は脆く儚い。その厳然たる事実自体が悲哀の念を呼び起こす。しかし、同時に、だからこそ今この瞬間のつかの間の幸福が有難くなってくる。人は悲しむ(悲しめる)存在であるからこそ、幸福を真に噛み締めることができるのである。悲(哀)しみは人を結ぶ力がある。悲(哀)しみを媒介として関係性のなかに生きるとき、それは(うちに悲しみを含んだまま)幸せの感覚をもたらす。
著者
江島 尚俊
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.571-595, 2014-12-30

現代日本に生きる我々は、大学という高等教育機関において宗教が学べ、宗教を研究できることを自明なものと認識している。しかし、近代的な大学制度が無かった明治以前において、その認識は成立し得なかった。そこで本稿では、この認識を"新しい自明さ"と設定した上で、それを成立せしめた制度的条件の解明を行っていく。方法としては、高等教育制度史および教育政策史の観点から、明治期の文部行政、および文部省と宗教系専門学校の関係に焦点を当てていく。最初に、明治前期の文部省が有していた専門学校に対する消極性、および宗教系諸学校に対する忌避意識を明らかにする。次に、宗教系諸学校に対する方針転換をした文部省が明治三〇年代になって制定する私立学校令・専門学校令を契機として、高等教育の中に宗教を学び、研究するという体制が拡大していくことを論じる。結論としては、宗教系専門学校が近代教育制度の中において、宗教を学問的に教育・研究する学校と位置づけられていったことを明らかにする。
著者
江島 尚俊
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 = Journal of religious studies (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.571-595, 2014-12

現代日本に生きる我々は、大学という高等教育機関において宗教が学べ、宗教を研究できることを自明なものと認識している。しかし、近代的な大学制度が無かった明治以前において、その認識は成立し得なかった。そこで本稿では、この認識を"新しい自明さ"と設定した上で、それを成立せしめた制度的条件の解明を行っていく。方法としては、高等教育制度史および教育政策史の観点から、明治期の文部行政、および文部省と宗教系専門学校の関係に焦点を当てていく。最初に、明治前期の文部省が有していた専門学校に対する消極性、および宗教系諸学校に対する忌避意識を明らかにする。次に、宗教系諸学校に対する方針転換をした文部省が明治三〇年代になって制定する私立学校令・専門学校令を契機として、高等教育の中に宗教を学び、研究するという体制が拡大していくことを論じる。結論としては、宗教系専門学校が近代教育制度の中において、宗教を学問的に教育・研究する学校と位置づけられていったことを明らかにする。
著者
大宮司 信
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.1083-1084, 2013-03-30