著者
佐藤 雅彦 高橋 玄 渡部 英 根上 直樹 斎藤 徹也 山田 正樹
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.1039-1043, 2009 (Released:2009-10-05)
参考文献数
17
被引用文献数
1

症例は36歳,男性.平成19年5月より嘔吐あるも自然に軽快した.同年10月再び嘔吐あり水分摂取も不可能となり入院精査となった.内視鏡検査では胃前庭部に約10cm大の粘膜下腫瘍が認められ,上部消化管造影では同部に境界明瞭な陰影欠損があり造影剤の通過は不良であった.腹部CTでは胃の前庭部に嚢胞性病変が認められた.絶飲食後の内視鏡検査で腫瘍は6cm大にまで縮小し,同時に施行した腫瘍穿刺では無色漿液性の液体を吸引し,細胞診はclassI,アミラーゼ19,588IU/l,CEA 253.9ng/ml,CA19/9 184716.0U/mlと異常高値を呈し,異所性膵,胃嚢胞などを疑った.症状の増悪軽快を繰り返し,また悪性疾患の合併も否定できず同年12月に手術を施行し,病理検査は胃の異所性膵であった.胃の異所性膵によって前庭部での狭窄をきたした症例は比較的稀であり,文献的考察を加えて報告した.
著者
松田 佳子 森末 正博 飯島 崇史 元井 信
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.472-477, 2011 (Released:2011-08-25)
参考文献数
13

症例は42歳,女性.心窩部痛が出現し,翌日になっても症状が続くため当院を受診した.初診時は心窩部に腹膜刺激症状と腹部CT検査にて大網内に粗大な石灰化を伴う多結節状の腫瘤と骨盤内に腹水の貯留を認めた.よって悪性腫瘍の腹膜播種や胃粘膜下腫瘍,あるいは汎発性腹膜炎なども疑われたため,腹腔鏡下に観察することとした.術中所見は胃前庭部幽門輪大彎側に10×7cm大の腫瘤を認めた.腫瘤は浮腫様で境界も不明瞭であり,胃壁に強固に癒着していた.よって胃壁の1部とともに腫瘤を摘出した.切除標本の病理組織学的検査所見では膵の構成成分を有しておりHeinrich I型の迷入膵と診断した.
著者
岩崎 靖士 佐藤 知美 清水 壮一 中村 修三 高橋 伸
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.1951-1954, 2008 (Released:2009-02-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

症例は34歳,男性.黒色便,眩暈を主訴に当院受診した.採血上貧血を認め,緊急上部消化管内視鏡検査を施行したところ,ファーター乳頭の口側2cmの十二指腸下行脚に約2cmの潰瘍を有する隆起性病変を認め同部より出血をきたしていた.内視鏡的に止血できず,受診後2日目に腫瘍核出術を行い止血しえた.病理組織学的所見で十二指腸粘膜下にHeinrichI型の十二指腸異所性膵を認めた.潰瘍底には小動脈および拡張した毛細血管が認められた.十二指腸粘膜下腫瘍からの出血に対して保存的治療で止血しえない症例では外科的治療を行う必要があると考えられた.異所性膵は一般に無症状に経過することが多く,手術摘出標本や剖検時に指摘されるものがほとんどである.今回,十二指腸異所性膵により出血をきたした稀な症例を経験したため報告する.
著者
川畑 方博 井原 司 赤司 昌謙 松永 章 野々下 政昭 井関 充及
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.201-207, 2010 (Released:2010-07-16)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

症例は68歳,男性.近医で糖尿病のフォロー中であった.平成17年7月頃より食欲不振,体重減少が出現.平成17年8月6日同院にて上部消化管内視鏡検査施行.十二指腸下行脚ファーター乳頭よりやや口側に径約5cmの隆起性病変を認めた.生検では壊死組織のみで悪性所見は確認出来なかった.平成17年9月5日精査加療目的にて当科紹介入院.術前に確定診断は得られなかったが,原発性十二指腸癌の診断にて平成17年9月16日に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的に腫瘍は十二指腸の固有筋層内にみられ,腺癌約50%,扁平上皮癌および腺扁平上皮癌約15%,肉腫様腫瘍約35%で構成されていた.固有筋層内に異所性膵が管状腺癌と混在し,膵管由来を思わす像もみられた.今回十二指腸に異所性膵由来と考えられる肉腫様成分を伴った膵管癌の1例を経験した.術後比較的良好な経過をたどっており,若干の文献的考察を加え報告する.
著者
木村 研吾 堀 明洋 森岡 淳 岡本 哲也 芥川 篤史 浅羽 雄太郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.12, pp.3108-3112, 2010 (Released:2011-06-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

症例は35歳,女性.原因不明の腹痛で当院受診歴があった.2008年7月同様の腹痛と発熱が出現し再診.腹部造影CTでは内部に低吸収域を伴う胃壁の肥厚を認め,胃壁内膿瘍と診断し入院となった.上部消化管内視鏡検査では,胃幽門部大弯側に粘膜下病変を認めた.抗生剤投与により腹痛は消失,退院となった.2009年4月再び腹痛が出現し,再診.CTでは前回入院時と同様の所見を認め,上部消化管内視鏡検査では,同病変頂部に潰瘍と膿の排出を認めた.以上より再燃性の胃壁内膿瘍と診断,手術を施行した.病変は直径3cm大の境界不明瞭な硬結として触知し,胃部分切除術を施行した.病理組織学的検査では病変部に膵腺房細胞と拡張した導管を認め,膿瘍部では高度慢性炎症の像を呈しており,異所性膵に併発した胃壁内膿瘍と診断した.症状を伴う異所性膵は稀であり,文献的考察を加え報告する.
著者
鈴木 道隆 茂垣 雅俊 浜口 洋平 舛井 秀宣 福島 忠男 長堀 薫
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.1958-1961, 2009 (Released:2010-01-05)
参考文献数
13
被引用文献数
3

症例は64歳,女性.関節リウマチのため10年前よりステロイドを内服していた.平成18年12月,腹痛・悪心嘔吐を主訴として救急外来を受診し,腹部単純X線写真で著明な小腸ガス像を認めたため,腸閉塞の診断で入院となった.第2病日にイレウス管を挿入するも,自覚症状・画像所見はともに改善せず,第6病日に呼吸困難を発症した.胸部単純X線検査・胸部CT検査で右胸腔内に拡張した小腸を認めたため,横隔膜破裂と診断した.第7病日に横隔膜修復術,イレウス解除術を施行した.術後経過は良好で,第25病日に退院となった.横隔膜破裂の原因は外傷が殆どであるが,本例は,ステロイド内服による組織の脆弱化と腸閉塞による腹腔内圧の上昇が原因と考えられた,稀な発症様式の横隔膜破裂例であった.腸閉塞による横隔膜破裂の報告は,検索しうる限り本例が本邦で2例目であった.若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
古元 克好 水野 礼 森 友彦 伊東 大輔 小切 匡史
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.3704-3708, 2009 (Released:2010-05-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

10例の急性上腸間膜動脈閉塞症例を検討した.術前診断に有用と考えられたのは腹部CTにおけるsmaller SMV signで,単純CTでも指摘できた.全例が小腸大量切除と大腸部分切除を必要とし救命例6例の平均残存小腸長は75cmで,うち中心静脈栄養を離脱しえた4例は95cm,離脱しえなかった2例は35cmであった.代表例として,中心静脈栄養を離脱できずにいる1例について報告する.68歳男性,腹痛を主訴に来院し腹部単純CTでsmaller SMV signを認め,さらに14時間後のCTで上腸間膜動脈血栓が明らかになったため,発症28時間後に手術を行った.残存小腸が20cmで経口摂取が不可能なため在宅中心静脈栄養中だが,カテーテル感染を繰り返し24回の入れ替えを行っており必ずしも良好なquality of lifeではない.5年以上生存しておりこのような例はまれであるが,肝,腎障害や高カルシウム血症も経験しており短腸症候群の管理の困難さを痛感している.
著者
星川 竜彦 小林 健二 鹿股 宏之 篠崎 浩治 加瀬 建一 尾形 佳郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.2135-2140, 2009 (Released:2010-01-05)
参考文献数
10

症例は42歳,男性.検診で肝機能障害を指摘され,当院を紹介受診し,腹部CT検査と腹部超音波検査で肝内側区域に腫瘤性病変を認め,精査加療目的で入院とした.腹部MRI検査で左肝内胆管の閉塞と右前後区域の分岐部にも胆管壁の不整像があり,腹部血管造影検査では左門脈枝の完全閉塞と門脈本管の左右分岐部付近での狭窄を認めた.以上より切除不能胆管癌と診断し,減黄後にGemcitabine 400mg/body/week投与と放射線照射(50.4Gy)を施行した.3カ月後の腹部MRI検査で腫瘤は縮小し,6カ月後には腫瘤を指摘できなかった.その後,治療開始から9カ月目に溶血性尿毒症症候群(以下HUS)を発症し,血漿交換などを施行したが2カ月後に死亡した.切除不能胆管癌は予後不良であり,今回われわれは化学放射線が奏効した後にGemcitabineによると思われる溶血性尿毒症症候群をきたした1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
著者
田中 俊一 島山 俊夫 増田 好成 麻田 貴志 岩砂 里美 江藤 忠明 千々岩 一男
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.1585-1589, 2008 (Released:2009-01-06)
参考文献数
20
被引用文献数
4 3

はじめに:当科で経験した腹部外科手術症例について,年齢別,緊急・待期手術別,併存疾患別に術後合併症発生率と術後30日以内死亡率を検討し,90歳以上の高齢者の手術における問題点を検討した.対象:2003年4月から2006年3月までの3年間に腹部手術を行った1,534例を対象とし,うち80歳代が240例,90歳以上の超高齢者は52例であった.結果:90歳以上の超高齢者群では,90歳未満群と比べて女性が多く,併存疾患を有する率も高率で,術後合併症発生率は44%と90歳未満の20%と比べ有意に高値であった.90歳以上の超高齢者群における術後死亡率は9.6%と,79歳以下と80~89歳の2群の死亡率と比較して高値を示し,待期・緊急手術両方とも90歳以上の超高齢者群で有意に高率であった.特に,術前併存疾患がある場合と術後合併症発生例において,超高齢者群で術後死亡率が有意に高かった.多変量解析で超高齢者の術後死亡に影響する有意な要因は,術後呼吸器合併症であった.考察:90歳以上の超高齢者の手術で,術前併存疾患を伴う症例や術後合併症を伴う症例では術後死亡率が高く,慎重な手術適応と術後管理を要するものと考えられた.
著者
藍澤 哲也 岡村 一樹 内田 雄三 野口 剛
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.3228-3233, 2008 (Released:2009-06-11)
参考文献数
29
被引用文献数
2

症例は57歳,男性.腹痛および食欲不振を主訴に当院外来受診した.肝右葉に12.6×11.7cm大の膿瘍性病変を認め,一部腹腔内穿破をきたしていた.血液検査にて炎症反応の亢進と赤痢アメーバIgG抗体を認め,アメーバ肝膿瘍の腹腔内穿破裂による汎発性腹膜炎と診断した.HTLV-1および梅毒陽性であった.治療は経皮経肝膿瘍ドレナージ術と2週間のメトロニダゾール投与を行い,膿瘍径の著明な縮小および炎症所見の改善を認めた.