著者
長嵜 悦子 佐久田 斉 仲栄真 盛保 比嘉 昇 國吉 幸男 古謝 景春
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.2913-2917, 2003-11-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1

肺塞栓症の塞栓源として下肢深部静脈血栓症が知られている.肺塞栓症を合併した孤立性ヒラメ筋静脈血栓症の3症例を経験したので報告する.症例1: 59歳,女性. Cushing syndromeに対する腹腔鏡下副腎摘出術後3日目に胸部圧迫感,低酸素血症が出現.症例2: 54歳,女性.卵巣癌の既往があり1カ月前より左下腿鈍痛が出現.症例3: 44歳,女性.両下腿に腫脹,鈍痛があり,階段昇降時に息切れを自覚.いずれも下肢超音波検査でヒラメ筋静脈のみに限局した血栓,肺血流シンチで肺血流欠損像,胸部造影CT検査で多発性肺動脈血栓を認めた. 3例中1例にウロキナーゼによる血栓溶解療法,全例に抗凝固療法を行い症状の改善が得られた.ヒラメ筋静脈血栓症は臨床症状が乏しいため見落とされやすい.しかし肺塞栓症の合併,血栓の中枢側進展,再発を繰り返すことがあり,積極的に診断,治療,予防する必要がある.
著者
三枝 晋 大井 正貴 今岡 裕基 志村 匡信 井上 靖浩 楠 正人
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.1320-1323, 2014 (Released:2014-11-29)
参考文献数
11

症例は50歳,男性.貧血精査のため,カプセル内視鏡(CE)目的に当院紹介となった.CEの回盲部への到達は確認出来なかったが,観察範囲に多発小腸潰瘍を認めた.5カ月後,貧血の再発を認めたため,再紹介となった.再診時,腹部症状は認めなかった.腹部X線写真・単純CT上,骨盤腔内小腸にCE滞留を認めた.1週間後の腹部X線写真においても,同部位でのCE滞留を認めたため,腹腔鏡下手術を施行した.CEおよび病変部位は,腹腔鏡下に容易に同定可能であった.回腸末端より約50cmの回腸にCEおよびfat wrapping signを伴う狭窄を認めた.その他の小腸に異常は認めなかった.狭窄部を含む約30cmの小腸を切除し,機能的端々吻合を行った.病理学的所見は,非特異性単純潰瘍であった.術後経過は良好であり,貧血の進行を認めていない.回腸狭窄によるCE滞留例に対し,腹腔鏡下手術を施行したので報告する.
著者
貴島 孝 白尾 一定 桑畑 太作 秦 洋一 田中 弘之 牛谷 義秀 夏越 祥次
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.9, pp.2569-2573, 2014 (Released:2015-03-31)
参考文献数
17
被引用文献数
1

症例は63歳の女性.既往歴に9カ月前交通外傷にて頸椎捻挫症,腰痛症となり入院歴がある.腹痛を主訴に前医受診,腹部腫瘤性病変を認め腹膜炎疑いにて当科紹介受診となる.腹部CTにて横行結腸頭側脂肪織内に約3.8cmの腫瘤を認め,炎症性腫瘤の診断にて入院,抗菌薬治療となった.抗菌薬投与1週間後の腹部CTでは炎症性腫瘤に変化なく手術を施行した.横行結腸頭側に膿瘍が存在し,結腸,胃大弯側に巻き込んでいたため,膿瘍を含めた横行結腸・胃部分切除術を施行.術後経過は良好で第15病日に退院となった.病理組織検査では大網内に菌塊を認め,放線菌症と診断された.腹部放線菌症は稀な疾患であり大網原発例は僅かである.また,交通外傷時のシートベルトによる打撲の部位と大体一致して大網放線菌症による腸管狭窄をきたしていたことから,シートベルト損傷と腸管損傷,大網放線菌症の関係が示唆された.
著者
齋藤 孝晶 小谷野 憲一 松田 巌
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.474-478, 2003-02-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
23
被引用文献数
3 2

症例は12歳,男児.右下腹部痛を主訴に1996年5月30日当院外科外来を受診した.腹部US, CTで回盲部に3×5cmの腫瘤を認め, WBC 15, 300, CRP 10.1と高値であった.全麻下に腫大した虫垂とこれに癒着していた腫瘤状の大網を切除し, 7病日目に退院となった.しかしその翌日,発熱と下腹部痛のために再入院し, CTで左腸腰筋前面に膿瘍を認め,手術時の摘出標本の病理組織検査では大網の炎症性肉芽腫の中に放線菌のコロニーが認められた.以後放線菌症の診断にて保存的加療を行い軽快した.小児の腹部放線菌症は稀な疾患であるが,炎症を伴う腹部腫瘤の鑑別疾患として念頭に置くべきである.
著者
森谷 雅人 高木 融 鈴木 敬二 佐々木 啓成 伊藤 一成 片柳 創 土田 明彦 青木 達哉 小柳 〓久
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.2114-2117, 2002-09-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
13

症例は61歳,女性.胃癌にて1997年12月9日,胃全摘術,膵脾合併切除施行. 1998年1月9日より化学療法施行. 18日より経口摂取不良となり,高カロリー輸液(以下, TPN)を開始したが, 2月10日より記銘力低下, 14日より意識レベル低下し, 15日に急性循環不全を呈した.血液ガス分析では, pH 7.136, PaO2 157.0mmHg, PaCO2 9.8mmHg, HCO3-3.3mEq/l, Base Excess -23.4mEq/lと代謝性アシドーシスを呈していた.炭酸水素ナトリウム500ml投与するも効なく,乳酸値を測定したところ144.0mg/dlと高値を示したためビタミンB1欠乏による乳酸アシドーシスを疑い塩酸チアミンを投与したところ,投与後6時間でpH 7.598, Base Excess 8.9mEq/lとなり,意識レベル,循環動態も改善した. 自験例を含めたTPN施行時のビタミン欠乏による乳酸アシドーシスの報告例について文献的考察を加えて報告する.
著者
平林 邦昭 戸口 景介 吉川 健治 山口 拓也 硲野 孝治
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.3330-3333, 2009 (Released:2010-04-05)
参考文献数
12

症例は76歳,男性.盲腸癌に対する右半結腸切除術の3カ月後に腹痛発作で入院した.腹部単純X線,腹部CT検査,腹部エコー検査で,腹腔内に線状金属陰影を認めた.腹部症状が悪化し,X線下に開腹手術を施行したところ,小腸を突き破る長さ7cmの金属片を確認した.摘出した金属片をただちに調査し金属スタイレットの先端部分であると断定した.先の手術の麻酔導入時に食道挿管されており,その時に金属疲労した先端部分が折損し食道内に進んだものと推察された.術後経過は順調で術後10日目に退院した.現在術後3年半が経過したが,合併症なく外来通院中である.
著者
山口 敏之 花村 徹 高田 学 小松 信男 橋本 晋一 小山 正道
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.1611-1614, 2008-07-25
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

症例は66歳,男性.39歳時,左乳房のしこりに気付き外来受診.生検により乳癌と診断され胸筋合併乳房切除術(Br+Mj+Mn+Ax)を受けた.病理学的にはScirrhous carcinoma,T1cn0M0 StageIであった.術後8年間の外来通院後診察は中断されていたが,術後12年目(51歳時)に久しぶりに外来受診したところ右乳頭直下に腫瘤が触知され穿刺吸引細胞診によりclassVと診断され,胸筋温存乳房切除術(Br+Ax)を受けた.病理学的にはSolid-tubular carcinoma,T1bn0M0 StageI,ER(+),PgR(+)であった.第1回目の手術から27年,第2回目の手術から15年経過した現在(66歳)も再発の徴候は認めていない.
著者
上田 毅 濵上 知宏 福本 陽二 中村 誠一 澤田 隆 清水 哲 遠藤 昭博 浅井 泰雅
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.846-850, 2011 (Released:2011-10-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

症例は62歳,男性.多発結腸癌および直腸癌に対しD3郭清を伴う直腸切断術が施行された.総合所見がf-StageIIIaであったことから補助化学療法としてカペシタビン単独療法を外来にて開始した.内服開始4日目,歩行困難,全身倦怠感,精神錯乱にて再来され,脳MRIにて白質脳症と診断された.薬剤の中断と対症療法により数日で症状は軽快しMRI所見でも白質脳症に伴う変化は消失した.薬剤性の白質脳症は様々な抗腫瘍薬で発症が報告されているが,カペシタビンによる白質脳症の本邦報告例は無い.自験例ならびに海外の報告からは,内服開始から発症までの期間が数日間と短い傾向があり,初回投与の際に十分な注意が必要と思われる.
著者
河村 祐一郎 金谷 誠一郎 小原 和弘 長久 吉雄 砂川 理三郎 松下 貴和 五味 隆 和田 康雄 大歳 雅洋
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.2620-2627, 2009 (Released:2010-02-05)
参考文献数
12

当科では,低侵襲性と機能温存を期待して,早期胃癌に対し,腹腔鏡下自律神経温存D1+β郭清術を行ってきた.本稿では,特にその迷走神経腹腔枝温存の手技と臨床評価について報告する.2001年5月から2008年6月までに当院で施行した腹腔鏡下幽門側胃切除術(デルタ吻合によるB-I再建)150例のうち追跡調査可能であった129例(温存群:84例,非温存群:45例)の患者アンケートおよび内視鏡検査により評価した.結果,非温存群では,便の性状が軟便傾向となる率が高く(20.5%対44.4%),胃内容こみ上げも有意差を認めた(17.9%対33.3%).内視鏡検査所見では,胆汁逆流が非温存群で有意に高い結果(44.1%対62.2%)となった.今回の検討では,両群間で郭清程度,病期といった背景が異なるものの,迷走神経腹腔枝の温存によって,下痢,逆流症状といった,術後後遺症が軽減される可能性があると考えている.
著者
住田 亙 大島 一夫
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.2522-2525, 2013-09-25
参考文献数
12

背景:先天性大腸狭窄症(本症)はまれな先天奇形である.今回,異物誤飲による大腸穿孔を契機に診断された多発性膜様狭窄症の1例を経験したので報告する.<BR>症例:症例は2歳女児.高熱,嘔吐を認め,総合病院を受診し,絞扼性イレウスで手術適応として当院に搬送となった.手術所見は,大腸に複数箇所の狭窄部位を認めた.下行結腸の狭窄部の口側で腸管が穿孔していた.穿孔部位からおはじきが摘出され,狭窄部位で引っ掛かり穿孔したと診断した.双孔式人工肛門を作成し,穿孔部位は単純閉鎖した.小腸には明らかな狭窄部位を認めなかった.現在は人工肛門を閉鎖し経過を観察している.<BR>考察:本症は非常にまれで,特に複数の狭窄部位を認めた報告は検索しうる限りない.異物の誤飲を経過観察する際,通常であれば通過する大きさであっても,本症を伴っていると通過せず穿孔をきたす場合もあり,経過観察の際に本症の存在も考慮するべきと考えられた.
著者
江本 慎 蒲池 浩文 田原 宗徳 神山 俊哉 松下 通明 西田 睦 藤堂 省
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.1589-1595, 2010 (Released:2010-12-25)
参考文献数
18

背景:胆嚢の隆起性病変はしばしば診断に難渋する.今回われわれは胆嚢腺筋症(adenomyomatosis:ADM)に合併した胆嚢隆起性病変の質的診断に造影超音波検査が有効であった症例を経験したので報告する.症例:58歳,男性.2009年2月,職場の健診で腹部超音波にて胆嚢腫瘍を指摘され当科紹介となった.血液検査ではCEAが8.3ng/mlと上昇していた.体外式ultrasonography(US)では乳頭状隆起性病変を指摘でき,肝床部浸潤を疑う所見であったが,CT,MRIでは隆起性病変の良悪性の鑑別は困難であった.Positron emission CT(PET-CT)では隆起性病変に異常集積を認めなかった.腹部造影超音波検査では乳頭状隆起性病変に強くdiffuseな造影効果を認め,ADMに合併した胆嚢癌と考えられた.悪性を否定できず,同年3月に開腹拡大胆嚢切除術を施行した.肉眼所見では分節型ADMと乳頭状の胆嚢癌を認めた.病理診断ではtub1>pap. s(-),ss,pHinf0,pBilf0,pPV0,pA0,pN0,pBM0,pHM0,pEM0,int,INFβ,pn0,ly1,v0,pT2,pN0,fStageIIであった.結語:胆嚢の隆起性病変の診断に造影超音波検査は有用な検査となりうる.治療に際し検査所見から総合的に判断することが重要と考えられる.
著者
窪田 公一 田中 知博 纐纈 真一郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.1462-1466, 2010 (Released:2010-12-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1

アナフィラクトイド紫斑は,IgA抗体優位の免疫複合体の沈着が小血管に証明される血管炎で,主に小児の疾患である.成人の発症は少ないがときに重篤な腎障害をきたす.症例は75歳の女性.食道癌術後に腸閉塞手術を経て創部MRSA感染症を合併し,2日後に腹痛,発熱が出現した.創部処置にて腹痛,発熱は治まったが下腿に紫斑が出現した.臨床所見と免疫血清検査によりアナフィラクトイド紫斑と診断した.安静と止血剤で紫斑は一時改善したが,その後,再燃して紫斑病性腎炎からネフローゼ症候群を呈した.ステロイドによるパルス療法と内服の後療法を行い病態は安定した.成人でのアナフィラクトイド紫斑の発症はdermadromeとしての報告は散見する.しかし術後発症の報告はあまりみかけず,自験例は興味深い症例と思われた.発症誘因は悪性疾患や手術侵襲を背景とした全身状態下における創部MRSA感染症と考えられた.

1 0 0 0 OA 口演:19日-02

出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.Supplement, pp.S521-S550, 2009 (Released:2010-11-02)

1 0 0 0 OA 示説:20日-01

出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.Supplement, pp.S851-S880, 2009 (Released:2010-11-02)

1 0 0 0 OA 口演:21日-01

出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.Supplement, pp.S661-S690, 2009 (Released:2010-11-02)

1 0 0 0 OA 招請講演

出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.Supplement, pp.S270-S276, 2009 (Released:2010-11-02)

1 0 0 0 OA 口演:21日-02

出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.Supplement, pp.S691-S720, 2009 (Released:2010-11-02)