著者
松本 純
出版者
明治大学大学院
雑誌
商学研究論集 (ISSN:1340914X)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.35-49, 2000-02-29

Ⅰ 問題の所在 1867年のパリ万国博覧会で、イギリスの工業製品に対するヨーロッパ大陸諸国の工業製品における技術的優位が露呈された。次いで、1873年の「大不況」('Great Depression')よりイギリス経済は、ヴィクトリア時代の繁栄から一転して慢性的な不況に陥った。このような事件を経て、世論でイギリス経済の相対的衰退が議論されるようになって以来、その処方箋として実業教育制度の改善が絶えず唱われてきた。例えぽ、1867年、博覧会に出席したプレイフェア(L.Playfair)は、イギリスの出品物における相対的な質的低下を嘆き、その理由としてヨーロッパ大陸諸国には整備された技術教育制度があるのに対して、イギリスにはそれがないことを主張した。
著者
井田 正道
出版者
明治大学大学院
雑誌
明治大学大学院紀要 政治経済学篇 (ISSN:03896064)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.161-172, 1987-02-10

未成年期における政治意識の形成過程に関する研究は、政治的社会化研究という名の下でここ30年近くにわたって欧米で蓄積されてきた分野である。なかでもアメリカにおける研究蓄積は、膨大な数にのぼる。それに対して、わが国では、政治的社会化という言葉自体、まだ馴染みがうすく、研究蓄積も未だ寒々しい状況にある。確かに、戦後日本はしばらくの間、政党制と社会構造の変容が激しく、成人後の政治行動に及ぼす初期社会化の影響力は欧米に比べ、かなり弱かったと考えることは可能であるし、そのことが日本における実証研究を遅らせた一因となっていたのかもしれない。しかし、今日の青年層1)は、55年体制成立後少なくとも15年以上経た後に初期社会科を経験しており彼らの政治意識の形成に関しては、家族をはじめとする初期往会化のエージェントの影響力がかなり大きく作用し、しかも今後におけるその影響力の残存も相当のものがあると思われる。
著者
藤井 秀登
出版者
明治大学大学院
雑誌
商学研究論集 (ISSN:1340914X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.177-203, 1997-02-28

現在、日本の主要な都市には、地下鉄が運転されている。設立された順にならべると、東京、大阪、名古屋、神戸、札幌、横浜、京都、福岡そして仙台である。東京に地下鉄が開業してから仙台に地下鉄が開業するまで、六十年の開きがある。経営形態に着目すると、東京に都営と営団が併存することを除き、日本の全ての地下鉄は市営となっていることが指摘できる。東京に異なる経営形態が並立し、それ以外の都市では市営となっていることの契機は、日本で初の地下鉄である早川徳次の東京地下鉄道株式会社と、日本で初の市営地下鉄である関一(せき はじめ)の大阪地下鉄とを比較・検討することによって、明確にできると思われる。東京に日本で始めての地下鉄が開業したのは、1927(昭和2)年であった。
著者
藤井 秀登
出版者
明治大学大学院
雑誌
商学研究論集 (ISSN:1340914X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.185-206, 1996-09-10

現代の都市交通機関として、地下鉄ほど確実な「移動」を保証するものはない。なぜなら、都市部においては、専用通路部分を持つ鉄道、特に地下鉄は定時性という点で、路面交通機関の機能を遥かにしのいでいるからである。これに対して、私的交通機関の発達に伴い、道路交通の混雑が顕著になってきたことが、私的交通機関・公共交通機関の両者に、交通の本来の目的である「移動」の阻害という現象を生じさせている。ところで、こうした都市部の交通機関は、「都市」と不可分の関係にある。よって、都市交通を検討する場合、まず、その母体である「都市」から考察していかなくてはならない。そもそも現在の日本の「都市」の原型は、明治時代に形成されたものである。