著者
中畑 充弘
出版者
明治大学大学院
雑誌
政治学研究論集 (ISSN:13409158)
巻号頁・発行日
no.22, pp.1-43, 2005

本稿は、2004年の鉄鋼マーケットの好況下における鉄鋼流通業界の'歓喜'と'苦悩'のカンパニー・グラフィー(社誌)に関する記述である。近年、それまで基幹産業の代表格としての鉄鋼業界は'斜陽産業'とレッテルを貼られてきたものの、高度成長時代からはおよそ30年ぶり、そしてバブル経済からは約15年ぶりに好況期(2004年~)を迎えた。鉄鋼需要過多と価格高騰に因る企業業績の改善によりメーカー・商社・流通ともに久方ぶりに恩恵を受けたが、反面、未曾有の世界的需要の増大で、供給限界や材料調達難など数々の問題点が露呈してきたことも事実である。殊に2004年の鉄鋼事情はこれまでの実需旺盛型の好景気とはどうやら質を異にし、好転の主たる要因は正に世界経済・世界市場の事情と関連もしくは直結しており、筆老の調査した日本最大の鉄鋼流通基地である鉄鋼流通各社の好況や'賑わい'が世界的な鉄鋼需要・消費量及び地球規模の鉄源の生産・供給能力と密接に関連していることがつぶさに実感できる2004年であったと言っても過言ではない。
著者
小河内 葉子
出版者
明治大学大学院
雑誌
法学研究論集 (ISSN:13409131)
巻号頁・発行日
no.30, pp.215-233, 2008

介護保険制度が施行されて以来8年が経過している。介護保険制度については、制度施行当初から様々な問題点が指摘されている。特に介護現場で事故が生じた場合の対応である。介護事故に関する判例の件数が多いわけではなく、裁判に至るまで発展したものは事故事例のごく一部である。しかし、裁判所の判断も数々の問題点が指摘されている。本論文では日本における介護事故の裁判例に対して提起される問題点を検討し、近年強化されている品質保証の内容及びドイツでは介護事故の責任を負う者について裁判所がどのように判断しているか、及びわが国で指摘される問題点がドイツでも生じているかにつき検討した後、今後の日本における制度の方向性を考察する。
著者
安藤 詩緒
出版者
明治大学大学院
雑誌
商学研究論集 (ISSN:1340914X)
巻号頁・発行日
no.26, pp.161-174, 2006

本稿の目的は、防衛部門による民間部門への外部性効果を測定することで、経済成長に対してどのような影響を及ぼしているかを分析し、経済と国防の相互依存関係を検証することである。国防(Defense)は、通常は公共経済学における公共財の一例として取り扱われているが、国防に焦点を当てた経済分析、つまり、防衛政策を経済学の視点から考察する防衛経済学という分野が1960年代から研究され始めている。それは、冷戦期のアメリカのソ連に対する防衛戦略に起因する。国防の問題を一大経済問題と捉えた事で、近年においても国防に対する経済学的な認識が広範になってきている。しかし、防衛経済学は、アメリカやヨーロッパでは広く研究されているのに対し、日本ではあまり知られていない。本稿では、始めに防衛経済学の概念を確認する。
著者
田村 悠
出版者
明治大学大学院
雑誌
文学研究論集 (ISSN:13409174)
巻号頁・発行日
no.38, pp.115-125, 2012

大正期の谷崎は探偵小説のような作品を多く書き記してきた。そしてその探偵小説群の根幹にあたる作品はこの「秘密」であろう。この「秘密」は探偵小説として一体どのような性質をもっているかを考えたとき、そこに《秘密》という概念が根底に潜んでいることが見て取れる。その《秘密》という概念が「秘密」という作品の中でどのような影響を与えているか、またそのことが「秘密」をどのような探偵小説としての意義をもたらしているか考えてみたとき、谷崎の「秘密」は通常の探偵小説とはいささか異なった特性を持っていることがうかがい知れた。単なる変態性欲やマゾヒズムといった見地とは違う立場からこの「秘密」という作品を読解していくと、そこには《秘密》と《謎》という新たなテーマが浮かんできた。
著者
許 英姿
出版者
明治大学大学院
雑誌
商学研究論集 (ISSN:1340914X)
巻号頁・発行日
no.24, pp.41-54, 2005

本稿は、mark-to-market会計を使ったエンロンの粉飾決算事例を検証し、公正価値の性質を解明しようと試みたものである。その考察の結論は以下の通りである。エンロンは、mark-to-market会計を利用することによって、取引の完成を待たずに、契約を現在市場価値で評価し、それに基づいて売上を計上していた。取引市場で参考にできる現在市場価値がない場合には、エンロン自身の見積もりによって計算される。エンロンの2000年度の利益の半分ぐらいが未実現利益である。現在市場価値の見積もりは、エンロンがコンピューターモデルなどを使い、「mark-to-model」法で予測していた。このような算式(モデル)から生まれる売上および未実現利益は、「架空の売上および利益」といえる。
著者
鹿嶋 瑛
出版者
明治大学大学院
雑誌
法学研究論集 (ISSN:13409131)
巻号頁・発行日
no.32, pp.1-14, 2009

現代憲法では,「法の下の平等」原則は,法律を執行し適用する行政権及び司法権を拘束するだけでなく,法の内容における平等すなわち立法権をも拘束する原則であると理解されている。ところが,中国では「法の下の平等」原則は,法律を執行し適用する国家機関が市民を差別してはならないという,法の適用における平等を意味すると解釈され,法の内容における平等が否定されてきた。しかし,法の内容に不平等な取扱いを規定していれば,例えば都市と農村では代表定数配分において極端に不平等な規定をおく選挙法などをいかに平等に適用しても,平等の保障は実現されず,通説的見解はむしろ市民の権利保障を阻害する機能を持っている。「法の下の平等」は法の内容における平等も意味すると主張する論者が現れ,通説を批判する議論が高まっている。
著者
川端 庸子
出版者
明治大学大学院
雑誌
経営学研究論集 (ISSN:13409190)
巻号頁・発行日
no.16, pp.413-434, 2001
著者
趙 銀仁
出版者
明治大学大学院
雑誌
法学研究論集 (ISSN:13409131)
巻号頁・発行日
no.40, pp.231-248, 2013

中国の道路交通安全法76条では,立証責任の転換を通じて,交通事故の加害者に無過失責任に近い責任を負わせることを定めている。また,被害者救済のため,強制責任保険制度を設けている。しかし,中国における交通事故賠償法の立法,司法及び学説の現状を検討することにより分かるように,交通事故の損害賠償について,まず,加害者に責任があるか否かにかかわらず,先に保険会社が強制責任保険の限度内において賠償責任を負い,次に,強制責任保険の限度を超えて,不足の部分について再び加害者と被害者の間で責任を分配することになる。このような強制責任保険の賠償原則および交通事故損害賠償の帰責原則はかなり特異だと言わざるを得ない。
著者
笹岡 伸矢
出版者
明治大学大学院
雑誌
政治学研究論集 (ISSN:13409158)
巻号頁・発行日
no.16, pp.95-114, 2002

近年、市民社会に関する議論が活発である。それはまた、世界的規模で進展してきた民主化の説明要因として、市民社会に注目が集まったこととも関連している。だが、民主化を達成したはずの多くの国々において、デモクラシーの必要条件として論じられることの多い市民社会が、実際には必ずしも十分に発展していないというジレンマが存在しているといわれる。市民社会とは何かという問題は後論に譲るとして、その市民社会を形成するうえで必要な条件の1つに、市民が自立的に行動する自由や権利が認められていることがあげられよう。世界各国を対象として「政治的権利」と「市民的自由」を点数化して示している機関として、アメリカのフリーダムハウス1がある。