著者
天野 由貴
出版者
椙山女学園大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2017

本研究の目的は、高大を接続する「確かな学力」における知識・技能を活用して、自ら課題を発見しその解決に向けて探究するために必要な思考力の育成と、その探究過程で学生が主体的に取り組むために重要な学習意欲を引き出す学習支援モデルの枠組みを設計することによって、学生の深い学びを促進することにある。本研究ではまず、1)ARCSモデルとそれに関連するインストラクショナルデザインに関する文献調査を行う。そのうえで、2)問いをつくるスパイラルモデルを基に、ARCSモデルを用いてインストラクショナルデザインを試みる。そして、3)2)の試作結果について、IFLA大会でのポスター参加、日本図書館情報学会などへの報告を行うことで、専門的な知見からの意見やアドバイスをもらい、モチベーション(学習意欲)を引き出し維持するための学習モデルとその枠組みへの改良を試みる。本研究は、図書館における情報リテラシー教育や学習支援において、モチベーション(学習意欲)という視点から現行の「問いをつくるスパイラル」モデルの再構成を行うと共に、高校では探究学習のテキストとして、大学では、大学に入学した学生のためのテキストとして使用されていることから、学習者が学習の意欲を向上させるためのカリキュラムを設計する枠組みを検討した。そこで、ARCSモデルアプローチ(John M. Keller)でのインストラクショナルデザインを行った結果、スパイラルモデルをカリキュラムに統合し、学習のモチベーションを向上させるための新しいフレームワークを試作した。このモデルでは、学習のモチベーションを設計するためのワークシート10枚と動機づけチェックリストを新たに追加し、そのフレームワークを8月20日、21日にポーランド、ブロツワフで開催されたIFLA World Library and Information Congress : 83rd IFLA General Conference and Assemblyでポスター発表した。ここで各国の図書館員や大学教員、図書館情報学に関連する専門職約30名から、枠組みを改良するための意見を収集し、その結果を反映した「深い学びを促進する学習支援フレームワーク」を再構築した。新しいフレームワークでは、学習意欲をひき出すために重要な、注意を引きつけ、関連性を理解し、満足感を自信につなげることに特化したワークシートの作成や授業設計を行うことを可能とした。
著者
中尾 友紀
出版者
椙山女学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本の社会保険は議論が開始された1880年代から、特に公的年金には巨額の国庫負担の必要が認識されていた。保険という形式だったが、公的年金はあくまで労働者あるいは「少額所得者」を救済する防貧政策だったからである。このような理念で1941年に創設された労働者年金保険は被保険者の適用範囲を「少額所得者」に制限し、その上で保険給付に要する費用にも国庫負担を規定した。したがって、国庫負担は「少額所得者」の救済を意図したものだったと考えられる。