著者
内藤 通孝 加賀谷 みえ子
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

果糖は、安価で効率の良い甘味料として急速に使用が普及してきたが、一方では、肥満、メタボリック・シンドロームなどの生活習慣病を助長する可能性が指摘されており、健康に対する悪影響が懸念されている。本研究では、高脂肪食と同時に、果糖を多く含む飲料(コーラなど)を摂取すると、食後の脂質代謝が増悪・遷延し、食後の高脂血状態が長く続くことから、動脈硬化の重大な危険因子となり得ることを示した。これらの同時摂取は新たな「合食禁(食べ合わせ)」として注意すべきであり、高脂肪食を摂取する場合の飲料としては、高果糖飲料以外の飲み物、例えば日本茶、ウーロン茶、無糖の紅茶・コーヒー等を選択することが薦められる。
著者
渡辺 毅 浜田 穣 渡辺 邦夫 WATANABE Tsuyoshi
出版者
椙山女学園大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

スラウェシマカクに関する調査研究は,日本の調査隊によって,1981年以来継続されてきた。当初の問題点は,いくつの種が分布しているのかにあり,形態学的・行動学的・生化学的・遺伝学的研究の総合の結果,7種であるとの結論に達っした。ところが,オ-ストラリアのGroves(1984)と本研究分担者渡辺(1990)によって,雑種の存在が観察・記載され,新たな問題点が発生するに至った。自然条件下での雑種形成に関する研究が必要となり,本研究が計画されたのである。今回の研究は,以下の3点にわたっておこなわれた。1)スラウェシ島中央部に生息するMacaca tonkeanaと南東部のM.ochreataの分布境界域を確定するため,現地を踏破した。自動車を借用して現地を移動しながら,生息するサルたちの直接観察と,現地住民にペットとして飼育されているサルたちの観察調査により,捕獲地点を特定し,また雑種の有無,その程度を記載することで,分布境界線と雑種のゾ-ンを決定していった。今回の調査により,境界線の南西域にあたる100km相当が確認され,雑種と思われる個体の観察もなされた。調査期間の最後に,分担者の渡辺と浜田の2名は,最南西部のM.ochreataとM.brunescensの分布境界域で同様の調査をおこなったが,日数の関係上,将来への予察的調査となった。2)スラウェシ島南部のカレンタ自然保護区に生息するM.maurus(ム-アモンキ-)の1群が餌づけられていて,長期継続観察が可能となっている。この群れは,分担者渡辺によって個体識別が進められ,今回現地参加の松村が長期観察にとりかかった。研究の目的は,社会構造の解明,行動特性の解明にあるが,長期観察により,繁殖の季節性,個体の成長パタ-ン,個体の移出入などが明らかになりつつある。スラウェシマカク7種のうちで,もっとも特殊化の進んだ種は,M.nigra(クロザル)とされているが,この両種の詳細な行動比較は,スラウェシマカクの種分化を解明する上での,キ-ポイントの一つとなっている。3)スラウェシ島の最北端に生息するクロザルは,激しい人為的環境破壊により,分布が寸断され,存続が危ぶまれている。ハルマヘラ群島の一つであるバチャン島にクロザルが生息しているとの情報があり,その生息状況を調べるために,分担者の浜田がバチャン島へおもむいた。アプロ-チに日数のかかる離島であるが,調査の結果,数千頭のクロザルが生息しており,島民のサルへの態度も敵対的ではないため,クロザルの種の保存や今後の研究にとって良好のフィ-ルドであることが判明した。今回の調査により,スラウェシ島において自然条件下で雑種が形成されていることは,ほぼ間違いなく確認された。しかも雑種が1代限りでないこと,つまり妊性のある雑種が形成されていることも確実だ。これは,いわゆる生物学的種(biological species)の定義に反する。それならば,雑種形成をとげている両種は,別種ではなく同種と分類しなければならないのだろうか?スラウェシ島以外の地域において,自然条件下での雑種が存在しているのだろうか?アフリカのヒヒ類とグエノン類,南米のオマキザルなどで雑種の存在が報告されている。これらすべてをそれぞれ同種に変更すれば,生物学的種と矛盾はしなくなる。しかし,われわれは,形態も行動も社会も異なる2種の霊長類を同種と認めるわけにいかない。ここで生起する大問題は,「種とはなにか?」である。これまでの研究成果をふまえてのわたしの見解は,ヒトという動物が一般の動物とややおもむきを異にしているのと同様に,霊長類というヒトも含む分類群もまた,他の動物とやや異なった存在ではないか,とするものだ。このような見解は,当然のことながら,激しい反論を呼ばずにはいられない。近々,発表する予定のこの見解が議論を惹起し,霊長類学,生物学の発展の一助になれば,と期待している。
著者
松原 小夜子
出版者
椙山女学園大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、住まいの各所を移動して行われる家事作業の特性に着目して、既存住宅と高断熱住宅の比較も念頭におきながら、家事作業時の暑さ感と防暑行為を捉えた。その結果、両住宅区分ともに、「暑さで困っている」との回答は多いが、作業の性質上、冷房利用の効果はあまり期待できないため、既存住宅はもとより高断熱住宅においても、くつろぎ時に比べると冷房利用は少なく、「窓開放」などの様々な防暑行為を行っていることがわかった。家事作業時の暑さ感を緩和するにあたっては、高断熱高気密化や、自然な方法による防暑の工夫などによって、内部空間全体の温度分布が小さくなるような住まいや住まい方が求められることが示唆された。
著者
村井 宏栄
出版者
椙山女学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、中世という日本語書記法の多様性が最も拡大化した時期において、漢字片仮名交じり文の書記法を調査し、小字仮名の用法とその他文字分節方法との関わりの解明を目指したものである。本研究においては特に親鸞関係資料に注目し、『三帖和讃』においては「大字仮名+小字仮名」の表記種連続において小字仮名「ニ」への偏りが見られること、また『西方指南抄』の同仮名連続においては、同字反復が語頭に偏るのに対して重点(踊り字、「ヽ」)が非語頭に集中するという明確な分布を示し、仮名遣いの問題とともに言語分節の標示という点から統一的な説明を示した。
著者
森棟 公夫 金谷 太郎 末石 直也
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ボラティリティとは収益率の分散(あるいま標準偏差)の事を言うが,金融データの時系列分析では収益率の系列を調べても,通常,何ら特性が見つからない事が一般に知られている.特に,効率的な市場だと,収益率はランダム・ウォークに従うとされる.この研究では金融時系列におけるボラティリティの分析法の研究を行う.特にティック・データが利用できる状況において,効率的かつ実際的なボラティリティの推宿法を求めてきた.ティック・データを用いたボラティリティ分析でよノイズの処理が理論的には大きな関心を持たれているが,時系列処理で,ノイズをフィルターする手法を考案してきた.ボラティリティは自在に変化し,ノイズは独立同一分布を持つという通常の仮定の下ではボラティリティは観測個数にのみ依存する値となる.この1生質を使って,間引き標本などの手法を用いてノイズを除去しようとする試みは行われてきたが,本研究では二次モーメントを基礎とするノイズ除去法を追求した.理論的な研究を進めてきたが,数系列を用いたシミュレーションも行った.しかし,このようなシミュレーションは常に理論的な結果をサポートする事になるので,実際の金融データを使った実証的な検証も行った.この手順は非常に重要で,理論的な分析がもたらすある種のモデル・スペシフィケーション・バイアスを除去することができた幅の広い誤差分布においても従来の分析法が維持できるか否かを検討したが,明確な結果は得ることができなかった.代表的な系列に限定してもデータ購入の費用が高額であった.データについてはこれからも利用していく.
著者
森本 伊知郎
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、まず、第1部「近世陶磁器の研究史」で、近世考古学と近世陶磁器の研究史について略述した。第2部「消費地遺跡における近世陶磁器の研究」では、第1章で江戸遺跡の事例をあげ、陶磁器の出土状況を検討した後、陶磁器の生産年代から遺構の廃絶年代を推定する方法を述べ、産地組成、器種組成から江戸における陶磁器流通とその背景を考察した。第2章では陶磁器の数量把握の方法を論じ、望ましい数量把握の方法を示した。第3章では江戸から京都、大阪にいたる東海道の消費地遺跡を多数取り上げて産地組成を比較し、近世陶磁器の流通には地域差が存在したことを明らかにした。第4章では、消費地で少数ながら出土する茶陶や鍋島藩窯製品などのやや特殊な高級陶磁器の出土状況を検討した。第3部「生産地遺跡出土の陶磁器」では、生産地の窯跡、物原から出土した陶磁器について、多変量解析など統計的な手法を含む型式学的な分析を行った。第1章では肥前広東碗の器形と文様の変化について検討し、量産品が多い近世陶磁器についても、微細ながら器形の形態変化が捉えられることを示した。第2章では有田と瀬戸の磁器端反碗の容量と規格性を論じ、ふたつの産地にみる販売戦略の違いを検討した。第3章では、器形の微細な差異から生産した窯や陶工個人を識別する可能性を論じた。第4部「近世陶磁器と文字資料」では、紀年銘資料、暦を記した陶器碗、関口日記の事例などから、文字記録を考古資料の関係について論じた。以上のような分析から、遺跡から出土する近世陶磁器は編年や年代推定の資料になるばかりではなく、近世の文化や社会を解明する上で有益で重要な遺物であることを示した。
著者
影山 穂波
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、ホノルルにおける戦後移住の日本人の「居住空間」とジェンダーの関係を明らかにすることである。そこで日本人女性を中心に展開されるネットワークに注目し、それぞれの活動内容と参加者のライフヒストリーの聞き取り調査を実施した。その結果、彼女たちが、自分たちの必要とおかれた状況に応じて居住空間を形成していることが分かった。彼女たちは、意識的にも無意識的にも周囲に期待される「日本人女性」としての役割を演じており、それがアイデンティティの再生産にもつながっていた。一方でこうしたネットワークを通じて、彼女たちはハワイ社会で自らの居住空間を形成していたのである。
著者
戸田 由紀子
出版者
椙山女学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、トニ・モリスンの小説が「母性」の言説をどのような政治的レトリックとして用いているかを、「共和国の母」の理念と「近代母性のイデオロギー」といった19世紀に大量生産された「母性」の言説と、黒人女性との歴史的関係を踏まえて考察した。公民権とフェミニズムを経た現代黒人文学では、黒人女性たちの多様な「母性」を自己定義することができるようになった。しかしその一方で、奴隷制や人種間の非常にデリケートな問題を扱う場合には、白人の「近代母性のイデオロギー」が戦略的に用いられていることを分析し、人種とジェンダーの問題が根強く残るアメリカ社会をモリスンの小説が提示しながら批判していることを論じた。
著者
松村 多美子 竹内 比呂也 金 容媛 田村 俊作 DEMPSEY Locan MOORE Nick DEMPSEY Loca
出版者
椙山女学園大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1998

本調査研究では、アジア・太平洋地域諸国における情報基盤整備を効果的に推進し、国際的な情報流通システムへの参加を促進するための戦略的モデルの開発に必要な情報の収集・分析を行うことを目的とした。そこで、平成6-8年度に「アジア・太平洋地域における学術情報ネットワークの基盤構造に関する調査研究」で実施した現地調査の結果を、情報基盤整備の方策策定の観点から分析し、シンガポール、オーストラリア、フィリピンを対象に選定し現地調査を行った。さらに、欧米先進国の例としてイギリスの調査も実施した。この結果、情報基盤整備に関する政策の枠組みの策定メカニズムは、それぞれの国で異なることが明らかになった。たとえば、シンガポールは政府主導で「IT200」や「Singapore ONE」などの情報化ビジョン・全国マルチメディアネットワーク構想を公表し、その構築・運営にあたり財政面はもとより推進・調整に政府が中心的役割を果たしている。これに対してイギリスでは、教育分野で教育・雇用省が「Connecting the Learning Society: National Grid for Learning」によって学習社会のビジョンと全国ネットワーク形成の行動計画を公表し、また、個人情報の保護の面では政府から独立した機関である Office of the Date Protection Registrar が活動するなど。さまざまな政策・行動計画が広範囲に展開されており、国家情報政策はこのような多様なイニシアチブの総体である。このように各国の政治・文化的背景によりアプローチはそれぞれ異なるが、同時に、調査結果の分析から情報基盤整備のためのアジェンダを構築することができ、これを用いて調査対象国の整備方策を共通の基準で比較概観することが可能となった。これは調査対象国の現状を個別に明らかにできたことと共に、本研究の大きな成果である。今後はさらに他の諸国の調査を継続して実施し、アジエンダの妥当性を検証することが必要である。
著者
及川 佐枝子 市原 学 久保 雅敬
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、近年化粧品や食品などに広く利用されている二酸化チタンや酸化亜鉛のナノ粒子について、THP-1マクロファージ様細胞および大腸癌細胞Caco2を用いて炎症反応の誘導および炎症性疾患増悪作用の検討を行った。その結果、二酸化チタンのナノ粒子による炎症反応誘導作用は、ルチル型よりアナターゼ型で強く認められた。また、THP-1マクロファージ様細胞において、酸化亜鉛のナノ粒子により粥状動脈硬化進行の原因とされるマクロファージ泡沫化の促進が認められたが、二酸化チタンのナノ粒子では認められなかった。酸化亜鉛ナノ粒子はマクロファージの泡沫化を促進し、粥状動脈硬化症を増悪する可能性が示唆された。
著者
戸田 由紀子
出版者
椙山女学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、20世紀初頭の黒人女性文学における「母性」の表象に着目し、その前後の時代の黒人女性文学における「母性」の表象と比較分析することによって、アメリカ黒人女性文学における「母性」の戦略の在り方を、その歴史的変遷を通して明確にすることである。24年度はハーレム・ルネサンス期における黒人女性作家の作品に焦点を当て、黒人女性や母性がどのように表象されているかをジェシー・フォーセット、ネラ・ラーセン、ドロシー・ウェストの作品を中心に考察を行った。これらハーレム・ルネサンス期の黒人女性作家の小説に描かれる黒人女性の表象の考察を通して、従順愚鈍なマミー、放埒なイゼベル、悲劇のムラータといった19世紀末に黒人女性に課せられたさまざまな因習的ステレオタイプにも、それを払拭するために用いられた当時の理想的な黒人女性像にも当てはまらない、複雑な黒人女性像を提示できることを明らかにした。23年度に考察したように、19世紀末には、高潔で愛情溢れる「啓蒙された母親」が重要な役割を果たすのだとフランシス・ハーバーら活動家によって主張され、Women's Club Movementを始めとした社会運動/組織を通してこのような黒人母性のイデオロギーが普及していた。20世紀初頭のハーレム・ルネサンスは男性主流の運動であったことは周知の通りであるが、高潔で母性的な黒人女性像は引き続きハーレム期の黒人男性リーダーや芸術家によって作品や活動を通して推奨、普及されていた。しかしハーレム期の黒人女性作家は、ハーレム期に推進されていた「真の黒人母性像」の型にはまるのではなく、黒人女性の暮らしにさまざまな制限のあった20世紀初頭で、自己矛盾し続け、家庭の閉塞感に抵抗しつつもそこから抜け出すことができない複雑な黒人女性を描き出している点において評価できる。またそれは母性を前面に押し出すことで政治的戦略として用いた19世紀末や、1970年代以降の現代黒人女性文学とは異なっており、本研究ではその重要性を明らかにした。
著者
飯塚 恵理人 三木 邦弘
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

藤田六郎兵衛師より提供いただいた明治30年代の藤田家と東京の役者の出演交渉に関する書簡を翻刻した。これについては鶴舞図書館の郷土文化に投稿するため現在原稿作成中である。佐藤友彦氏より提供された尾張藩御役者山脇和泉家に伝わる間狂言本を撮影し、現在翻刻中である。研究機関内に第三冊「修羅冊」まで翻刻を発表することが出来た。
著者
梶田 正巳
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

「動きイメージ」の認知的機能を研究することが基本的目的であった。「動きイメージ」は単語の認知処理である記憶実験によって検討した。そのためにカタカナ語をその筆順を示すことで、「動きイメージ」の効果を検討することになった。すなわち、「動きイメージ」をディスプレイに示すソフトウエアを利用して「動きイメージ」を生成することになった。しかしながら、初年度から、参照モデルがないために、以前には予想もしなかったいろいろな問題、テーマに遭遇した。単語刺激であるカタカナ語の筆順は、ストローク間を一定のtime-intervalでコントロールして、「動きイメージ」を生成した。しかし、単語刺激のカタカナを見た被験者は、筆順の「動きイメージ」がやや不自然に見えるという問題が発生したのである。この不自然さが、かえってカタカナ語の認知に大きな影響を及ぼすために、いかに不自然さを縮減することが出発点となった。すなわち、文字の「ストローク」を自然な動きにするために、カタカナ語の各ストロークを異なったタイム・インタバルによって制御することが不可欠になり、基礎的な実証的研究をしなければならなくなった。そこで、カタナカ語を大人に書いてもらい、ストロークごとの「動きの速さ」を反映した「動きイメージ」を作成しなかればならなくなった。厳密には、不可能であるが、新しい基礎研究を実施することになった。すなわち、カタカナ語を書かせて、文字のストローク毎に動きの速さを測定した。多くの被験者のカタカナ語の筆順の動きを集めて、ストロークの速さの概要を把握することにした。ここで明らかになったことは、「自然な筆順の動きイメージ」は、学校の教育過程で習得され、具体的には、文字学習の過程と一体になった実践的研究をすることは不可欠になった。こうした問題意識にかわって、当初と違って大きく深まった。しかしながら、単語の「動きイメージ」は、その認知処理過程に「生成処理」と同じ効果を持つであろうという理論は、関連研究をレヴューすると間違っていないので、理論編を学会誌に発表することにしている。
著者
加藤 雪枝 橋本 令子 雨宮 勇
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

現代の社会生活においては、毎日の生活の中に人間が本来求めている方向性を見極め、安らぎのある生活空間を特に必要としている。本研究は最も身近な環境すなわち、生活環境の色、室空間容積と照明や音環境などを整え、日々のストレスを解消していく環境とは何かについて研究するものである。生理学的には刺激に対する人体反応の評価方法として有効な中枢神経活動や自律神経活動の測定方法を用いた。中枢神経活動の測定には脳波計を用い、自律神経活動の測定では心電計を用いた。心理学的にはSD法を実施し、因子分析などの解析法を用いた。生活環境下の光色刺激、室内空間や被服の色などの身近な生活環境の色彩について心理的・生理的影響を調べ、比較検討した。対象が異なっても、心理評価の活動性の因子は刺激の高い色において高まり、その結果、α波含有率が抑制され、HF成分は小値となり、評価性の因子が低下することが確認された。音刺激を受けるとα波含有量が増加する環境音は、小鳥のさえずりと風鈴であり、リラックス状態を示した。また花火は、情景を連想して興奮状態となるが、快適な気分となることが確認できた。ヒーリング音楽は、音楽開始後にα波含有量が増加し、音楽を聴取した場合の影響がわかった。そしてヒーリング音楽は、単調で落ち着く音楽が生理評価と心理的評価においてよい影響を与えることが明らかとなった。好みの音楽は、快適感を得る音楽と明るく元気のでる音楽が生理的、心理的評価によい影響を与えた。空間容積、内装色、照度の違いによる快適感の実験である。空間容積では、天井高が2.3〜2.7mで見ると4種の面積のうち6、12畳の長方形空間が快適感が高く、天井高2.3mに限定すると4,5畳が最も高いことがわかった。照度では、270Lx近辺で快適性の高い範囲があり、これは被験者の自室の大きさに近いことが影響を与えていると考えられる。照度を5Lx〜1500Lxに広げると照度が増す毎にα波出現率が下がることが示唆された。
著者
浪川 幸彦 黒木 哲徳 三宅 正武 真島 秀行 清水 美憲
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は,学校数学教育カリキュラム策定における数学リテラシー概念の応用に基づき,教員養成数学カリキュラムの開発を行う。先行研究における教員養成数学カリキュラムモデル例の提案を踏まえ,本研究では教員養成数学カリキュラム教材の開発を行うことを主目的とし,事例研究を進めた。また(数学および一般)教員の持つべき数学リテラシー像策定に向けて,大学での数理科学参照基準策定,大学数学基礎教育でのコンピテンシー研究など関連する研究から,数学リテラシー概念の深化を図った。さらに教科内容学会の設立にもつながった。