著者
飯塚 景記 片山 知史
出版者
水産総合研究センター
雑誌
水産総合研究センター研究報告 (ISSN:13469894)
巻号頁・発行日
no.25, pp.1-222[含 英語文要旨], 2008-12
被引用文献数
1

耳石形態に関する研究は、魚類年齢研究と共に早くから行われており、研究報告も比較的多い。それらの内容は、一魚種の耳石外形から複数魚種の耳石の外形、溝、核等の特徴を解析した研究まで様々である。しかし、耳石サイズを含めて耳石形態を体系的に整理した報告はこれまで発表されていない。筆者らは、耳石の形と大きさを分類群内、分類群間で比較を行い、さらに縦偏形、側編形等の魚体型や定着性、回遊性等の生活型との関連を検討することにより、多用な耳石形態法則性を見いだすことを目的として、日本産硬骨魚類29目、162科、550種の耳石を収集し、表面各部の観察と耳石の長さと高さの計測を行った。本稿では第1章において、耳石形態研究が国内外でどのような研究経緯で進められてきたかを簡潔に述べ、次に、耳石の外部形態について、全体の形および各部位の形状を類型化し、さらに耳石の大きさの基準を決めた。第2章では魚種毎の観察結果、計測結果を基に、魚種毎の耳石形態を分類群毎に整理して記載した。第3章では各章で得られた耳石形態の特徴を総括し、耳石形態に関する系統進化学的、生態学的、機能形態学的な検討を行い、耳石形態を規定する要因を考察した。
著者
反田 實 赤繁 悟 有山 啓之 山野井 英夫 木村 博 團 昭紀 坂本 久 佐伯 康明 石田 祐幸 壽 久文 山田 卓郎
出版者
水産総合研究センター
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.37-46, 2014 (Released:2014-10-29)

瀬戸内海の水質改善は進んだ。しかし,溶存無機態窒素(DIN)濃度の低下によって養殖ノリの色落ちが発生するとともに,漁獲量の減少が続いており,海域の生産力の低下が懸念されている。このような状況を踏まえ,瀬戸内海の今後の環境保全の在り方について環境省から意見募集が行われた。これに対応するため瀬戸内海ブロック水産試験場長会はモニタリングデータを収集分析するとともに,会員の意見を集約した。その結果,全ての府県でDIN濃度が低下していることが明らかとなった。また,ノリの生産量や漁獲量の減少が続いていることが確認された。
著者
野口 浩介 野田 進治
出版者
水産総合研究センター
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.131-135, 2011 (Released:2012-12-06)

ナマコ種苗生産で発生するコペポーダの防除法確立のための基礎試験を行った。種苗生産現場で発生するコペポーダはシオダマリミジンコと判定され,0.2個体/cm2の密度では稚ナマコの初期餌料となる付着珪藻は維持できるが,2.0個体/cm2では約7日間で全て摂餌され,体長0.4~1.0mmの稚ナマコはコペポーダ密度0.2個体/cm2以上で斃死することがわかった。付着珪藻を繁茂させたシャーレに稚ナマコとコペポーダを混在させた場合,コペポーダはまず付着珪藻を摂餌し,付着珪藻が減少するまでの期間,稚ナマコが斃死しないことが判明した。また,UV発光するFITC染色した稚ナマコを斃死させたコペポーダを蛍光顕微鏡で観察したところ,脚部付近は強く発光するが,胃や糞では発光せず,この結果から稚ナマコの斃死要因は食害ではなく,接触ダメージであると推測された。
著者
木原 稔 田本 淳一 星 貴敬
出版者
水産総合研究センター
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.39-43, 2009 (Released:2011-07-26)

マナマコへの給餌方法の検討を目的に、ワカメ粉末、ワカメ粉末と砂粒、および砂粒を水槽底面に散布し、マナマコに70日間給餌した。その結果、砂粒+ワカメ粉末区では糞塊が高い頻度で確認でき、生残率も高く(73%)、体重も実験開始時に比べ2.2倍に増加した。砂粒区では糞塊は確認できず、ワカメ粉末区では糞塊は確認できたものの、飼育開始後30日目での生残率は2区ともに20%以下であった。以上より、ナマコには微粒子の栄養物質に併せて砂粒を投与することで、給餌効果を高められると考えられた。
出版者
水産総合研究センター
雑誌
水産総合研究センター研究報告 (ISSN:13469894)
巻号頁・発行日
no.30, pp.1-104, 2010-06

2006〜2008年に亘るアーカイバルタグなどを用いた標識放流の研究から以下のことが明らかとなった。すなわち、日本海におけるブリ0〜1歳魚の移動範囲は、小規模であり、能登半島以西の0〜1歳魚は放流海域付近に滞留し、大きな移動は行わない。日本海北部となる能登半島以北の0〜1歳魚は能登半島(輪島)〜青森沖の範囲に留まり、越冬期にも寒冷レジームであった1980年代と異なり能登半島以西には移動しない。アーカイバルタグの水温履歴の解析から、最低水温期(3〜4月)に能登半島以北の海域を遊泳していた若齢魚が見出され、環境水温は10℃以上であった。よって、現段階では、最低水温期に10℃以上の海域がブリ幼魚の越冬可能な海域であると仮定することができるとみられた。これに基づき、ブリ幼魚の越冬可能な海域の範囲について経年変化を調べた結果、冬期(最低水温期3、4月)における水温分布の変化が年代による分布回遊の変動の主要因になっていた可能性があるとみられた。既往の知見および本研究の成果を総合すると、日本海側に来遊したブリ未成魚(0〜2歳)は各地の沿岸で小規模な季節回遊を行い、回遊範囲を拡大しながら成長するものの、現在の温暖レジーム下では、産卵期を迎える3歳までは能登半島を境にして北部海域と中西部海域のそれぞれの海域で回遊するものと推定された。日本海側の海域別・年齢別漁獲尾数の解析から、同一年級の0歳時の漁獲尾数と3歳時の漁獲尾数の間には高い正の相関がみられ、日本海側各海域において漁獲された0歳魚の尾数をキーとしてその後の同一年級群の漁況予報を行うことの可能性が示された。異なる水温でブリ仔魚を飼育し、18〜22℃の範囲では水温が高いほど耳石の成長が良いという傾向を明らかにした。この関係と、実際に東シナ海、日本海で採集された仔稚幼魚の耳石の初期成長試料とを付きあわせることで、ブリの産卵海域は、産卵初期の2月には水温の高い東シナ海南部、その後徐々に低水温域に移行し、産卵終期の6月には日本海西部付近であった可能性が示された。
著者
重田 利拓 薄 浩則
出版者
水産総合研究センター
雑誌
水産技術 (ISSN:18832253)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-19, 2012-09

野外での魚類によるアサリ食害実態に関する知見を取りまとめレビューするとともに,食害魚種に閧するリストを作成した。トビエイ科からフグ科の12科23種がリストアップされた。このうち,日本には12科21種が,瀬戸内海には12科18種が生息する。アサリの被食4部位区分では,稚貝を食害する魚種が多く,このうち,ナルトビエイ,クロダイ,キチヌ,キュウセン,クサフグの5種が親貝をも食害すること,イシガレイやマコガレイの稚魚・未成魚など8種が水管を食害すること,クロダイとキュウセンは,足を除く,全ての区分で食害が認められること等を明らかにした。
著者
中川 雅弘
出版者
水産総合研究センター
巻号頁・発行日
no.25, pp.223-287, 2008 (Released:2011-03-05)
著者
中川雅弘
出版者
水産総合研究センター
雑誌
水産総合研究センター研究報告 (ISSN:13469894)
巻号頁・発行日
no.25, pp.223-287, 2008-12
被引用文献数
3

メバル属魚類の多くは、有用な水産資源として沿岸漁業、栽培漁業、養殖の対象種である。我が国において栽培漁業対象種とされるメバル属魚類は、クロソイやメバルをはじめとして6種におよぶ。しかし、どの種類においても親魚養成や種苗生産に関して断片的な報告があるものの、中間育成、標識技術、放流効果調査を含めた一貫した栽培漁業技術としての研究はない。本研究ではメバル属魚類の中で最も多くの種苗が放流されているクロソイを研究対象として、本種の生物学的知見に基づいた栽培漁業技術の構築を図るとともに、残された問題点を検討した。
著者
松里 壽彦
出版者
水産総合研究センター
雑誌
水産技術 (ISSN:18832253)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.5-11, 2008-09

現存する多くの産業も同様であろうが、水産業は複雑な技術の塊である。現在の水産業で用いられている技術のなかには、科学的には説明されていない古来からの伝承的技術から現代科学の最先端の技術までを含むことから、水産業の技術を一言で説明することは困難である。考え方によっては、現在用いられている我が国の水産業の技術は、農業と同様、知的財産化されていない宝の山とも、多くの先人達の工夫と知恵の集合体とも思える。特に他産業技術と比べ、機械、器具等のハード技術より、永い歴史とともに蓄積された機械、器具を使いこなす技術、いわゆるソフト技術の比重が大きいことが特徴である。多少乱暴な言い方をするなら、水産業は人間の食料供給に係わる産業であるため、業としての成立はともかく、基本的な技術の発祥は、人類の発祥とともに始まったと考えられる。少なくとも、今から五千年以上前の古代エジプトにおいて川漁で今日用いられている道具の多くが壁画現物(網地・鈎針等)として残っており、さらには船上での干物加工(背、腹両開き)や蓄養と思われる図まで発見されている。我が国においても、全国各地で発見されている貝塚は、現在も行われている「煮貝」技術の証拠でもあろうし、貝塚から発見される数十種にのぼる魚骨は、それぞれの魚種に対応した漁獲技術があったからに他ならない。この永い歴史を持つが故の、近代科学成立以前からのハード、ソフト技術の塊である水産業の技術を考えるためには、多少考え方を整理することが必要であろう。
著者
松下 吉樹 本多 直人 藤田 薫
出版者
水産総合研究センター
雑誌
水産総合研究センター研究報告 (ISSN:13469894)
巻号頁・発行日
no.10, pp.15-17, 2004-03
被引用文献数
3

3種類の刺網を千葉県館山湾奥部の水域に20~37日間設置した。その後潜水観察を行い、羅網した生物と網成りの変化を記録した。刺網には27個体の魚類と甲殻類が設置後14日以内に羅網し、その後は観察されなかった。網目が展開している網の面積は、いずれの刺網も時間経過とともに減少して0となった。これは刺網が持つ漁獲機能のうち、特定の層を遊泳する生物の通路を遮断する機能と、生物を網目に刺させる機能が無くなったことを意味する。
著者
木所 英昭 安木 茂 志村 健 加藤 修
出版者
水産総合研究センター
雑誌
水産総合研究センター研究報告 (ISSN:13469894)
巻号頁・発行日
no.14, pp.1-6, 2005-03 (Released:2011-03-05)

日本海で漁獲されるマアジTrachurus japonicusの多くは東シナ海で生まれ、対馬海峡を通って日本海に来遊する。本研究はその移入経路を明らかにする目的で行った。調査は、加入前のマアジの分布、および対馬暖流との関係を調べるために3隻の調査船によって中層トロールネットを用いて2002年5月下旬~6月上旬に実施した。中層トロール試験では、実施した48回の曳網中、42回の曳網(最大474個体、平均38.2個体)でマアジを採集した。各調査点で採集したマアジの平均尾叉長は28.3~54.2mm(平均40.2mm)であり、これまでの飼育個体の成長記録を基に4月から5月上旬に生まれたと判断した。沿岸分枝流域で加入前のマアジを多く採集したが、沖合分枝流域ではほとんど採集できなかった。この結果は多くのマアジは加入前に対馬暖流の沿岸分枝から日本海に来遊することを示している。