著者
張 周恩
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、PETイメージングの感度と信憑性を高めるために、腫瘍の分子ターゲットを増幅する新たな戦略を提案し、腫瘍を標的する多機能性ホスト・ナノ粒子-ゲストPETトレーサー・システムの構築を試みた。PAMAMデンドリマーをホスト分子シクロキストリン(CD)修飾して、多機能性ホスト・ナノ粒子PAMAM-CDを得ることが出来た。C-11標識したカボラン類縁体などはゲストPETトレーサーとして設計し合成した。該類多機能性ホスト・ナノ粒子-ゲストPETトレーサー・システムは癌の超高感度イメージング及び画像誘導治療への応用が期待できる。
著者
丑田 公規
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
産学が連携した研究開発成果の展開 研究成果展開事業 平成20年度までに募集を終了した事業 独創的シーズ展開事業 大学発ベンチャー創出推進
巻号頁・発行日
2006

しばしば大量発生するエチゼンクラゲなどは現状では、発電所や各種工場、漁業関係者に多大な除去作業負担を強いるだけの全く無価値の廃棄物である。本研究開発では、これらエチゼンクラゲなどの各種クラゲを収集して、破砕・減量化/抽出・精製の工程作業を経て有効成分を単離して、食品添加物、生分解性プラスチック、化粧品材料をはじめ、胃腸薬、点眼薬、粘液などの医療品原料として広い用途が期待されるムチンの新規な生産法を開発する。廃棄物の除去作業負担を軽減するなど環境保全に寄与するほか、天然物由来の安全な高付加価値製品の創出が期待される。
著者
多々良 源 河野 浩 柴田 絢也
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

スピン伝導現象と制御(スピントロニクス)は基礎科学と応用の両面で緊急かつ重要な課題である。本研究ではスピントロニクス現象において本質的な役割を担っているスピンに作用する有効電場及び有効磁場に関する理論的解析をおこなった。その結果、それらの場は電荷に作用する通常の電磁気現象と同様の数学的構造をもち、これによりエレクトロニクスと同等な信頼性をもつデバイス設計が可能であることが明らかになった。また、スピンの運ぶ情報を電荷情報に変換するためにはスピン軌道相互作用が重要な役割をしていることもわかった。この変換をスピンの電磁気学の観点でみると、磁化の運動からモノポールが誘起されアンペール則により起電力が発生するという新たな現象であることがわかった。このことはスピントロニクスをエレクトロニクスに融合させる上での新たな可能性を示唆している。
著者
NORI Franco (2010 2012) NORI FRANCO (2011) GIAVARAS Georgios ジャバラス ギョルゴス
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

電磁場を組み合わせて形成させたグラフェン量子ドットの性質を詳細に研究した。電場により、ゲート電極を使用して発生させることができるであろう滑らかな量子井戸ポテンシャルが生成される。単層グラフェン内でのクライントンネル効果のために、量子井戸ポテンシャルの状態は振動的な漸近依存性をもち、したがってこの井戸のみでは電子を閉じ込めることはできない。しかしながら、均一な磁場がグラフェンシートに直交するように印加される場合は、この状態は閉じ込めに必要なように漸近的に減少する。我々は電場がランダウギャップ内にエネルギーレベルを誘起することにより、ランダウレベルのスペクトルを変化させることを見出した。これらのエネルギーレベルに対応する状態は、外場に束縛されており、その外場で調節することが可能である。これらの状態数は電場の強度に比例する。状態密度の計算結果によれば、量子状態は低密度領域内に存在し、従って量子状態は電子輸送測定を利用して実験的に探査することが可能であろう。更に我々は、スピンがブロックされたダブル量子ドットにおける電子輸送を研究した。スピン・軌道相互作用の強度を調節することにより、ダブルドットを通過する電流は、ゼロ磁場で落ち込む、あるいは2つの電子エネルギーが反交差するような磁場でピーク値になることを示した。この振舞いは、磁場およびスピン・軌道振幅による1重項と3重項との混合に依存するためである。我々は、電流の近似表現を、輸送サイクルに含まれる状態の振幅の関数として導出した。また、有限個数の核スピンを考慮した別のモデルを考え、電子と核スピンとの間にこのモデルの結果として生じる動力学を研究した。我々は、スピンアンサンブルが熱状態にあれば、一時的な電流の規則的な振動とそれに続いて、熱的ジェインズ・カミングスモデルで見られるものと類似する準カオスのリバイバルが存在することを示した。
著者
神長 伸幸
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,小学校児童の読み理解の発達過程を眼球運動パターンの変化という視点で検討した。研究1では小学校3年生と5年生および成人に教科書の副読本より選出した文章を自然に理解しながら読むときの眼球運動を測定した。その結果,発達に伴って単語に停留する時間は短くなった。ただし,漢字表記語はひらがな表記語と比較して,発達による停留時間の短縮の度合いが低かった。研究2では小学校2年と4年生と成人を対象に,文章の分かち書きが読み理解に及ぼす影響を検討し,文を文節に分かち書きすることが読み理解の促進につながることが小学校児童でのみ示された。
著者
関根 俊一
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

巨大なタンパク質複合体であるRNAポリメラーゼは、そのコンフォメーションを多様に変化させながら転写を遂行する。その実体を明らかにするために、CPX法を開発してRNAポリメラーゼの構造状態の解析を行うことにより、主な転写機能とRNAPの構造状態との相関関係を確立した。また、転写開始・伸長中にRNAP が形成するいくつかの複合体の結晶構造解析を行い、転写エラーの校正や外来因子による転写制御のメカニズムを明らかにした。
著者
横山 茂之 関根 俊一 伊藤 拓宏 藤井 佳史 関根 俊一 伊藤 拓宏 藤井 佳史
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

遺伝子発現の根幹である転写および翻訳においてそれぞれ中核的な役割を担うRNAポリメラーゼおよびリボソームについて、転写・翻訳の構造基盤を解明すべく構造生物学研究を行った。原核生物のRNAポリメラーゼやリボソームを中心に形成される巨大複合体の構造解析を行うとともに、真核生物の転写・翻訳関連因子の調製法の確立および構造解析を行った。
著者
丑田 公規
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近年発見したクラゲ由来ムチンは、構造が判明したシンプルなムチンの稀少例で、これを用いて構成したモデル粘液系の中で起きる物理化学作用をいくつか取り上げ、構造と動的挙動の関係を調べた。金属イオンとの相互作用を重点的に調査し、モルフォロジー変化、化学反応による吸着現象のダイナミクスを明らかにした。特にサンゴ粘液による珊瑚柱形成時のバイオミネラリゼーションをクラゲ粘液成分によって人工的に再現することに成功した。
著者
阪口 雅弘 辻本 元
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

犬においてワクチン接種後の副反応としてアナフィラキシーなどワクチン成分に対するアレルギー反応が認められている。このワクチン接種後の副反応の原因アレルゲンを検討したところ、ワクチンに含まれる牛胎児血清(FCS)成分が原因であることをこれまでに明らかにした。本研究においてはFCS中の原因アレルゲンを検討した。ワクチン接種後アレルギー反応を起こした犬血清を用いたImmunoblot法により、FCSを解析した。68kDaに強いバンドが、75kDaに弱いバンドが検出された。分子量から68kDaのタンパクとして牛血清アルブミン(BSA)が疑われたため、精製BSAに対するImmunoblot法を行ったところ、BSAに対する強いバンドが検出された。以上の結果から、BSAがFCS中に存在するアレルゲンの1つとして同定された。初めてワクチンを接種する犬においても副反応が起こることや犬の食物アレルギーの原因として牛肉が最も多く報告されている。これらの理由からワクチンを接種前に犬が牛肉等のアレルギーに感作されていた可能性があると考え、牛肉成分中のアレルゲン成分を解析した。牛肉アレルギー犬の血清を用いたImmunoblot法では、牛肉アレルギーの犬において67-kDaと55-kDaに陽性バンド認められた。精製タンパクを用いたimmunoblot法により、67-kDaのバンドはBSA、55-kDaのバンドはbovine gamma- globulin (BGG)であることが判った。BSAおよびBGGは、牛肉アレルギーの犬における牛肉成分中のアレルゲンであることが同定された。市販の犬用ワクチン中には多量のBSAおよびBGGが含まれていることから、本研究結果はワクチン接種後アレルギー反応と牛肉アレルギーの関連性を示唆している。
著者
村中 厚哉
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

円二色性(CD)と磁気円二色性(MCD)強度が共に強い有機分子を開発するために、卍形の分子構造を持つキラルなフタロシアニン系有機色素を新規に合成し、その光物理特性について調べました。このような分子は、新しい磁気光学効果である磁気キラル二色性(MChD)が観測されることが期待されています。卍形異性体が得られた化合物に関しては、光学分割を行い、CD・MCDスペクトルを測定し、量子化学計算を用いて絶対配置を帰属しました。
著者
宮田 純
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

自然免疫による好酸球性気道炎症モデルにおける12/15-リポキシゲナーゼ(以下、12/15-LOX)遺伝子欠損動物を用いた解析によって、12/15-LOXの保護的作用が見出された。12/15-LOX欠損動物では、好酸球を誘導するサイトカインであるIL-5の主要な産生細胞の数の増加が認められた。気道炎症惹起時の肺の網羅的な脂質解析によって、プロテクチンD1に代表されるDHA由来の12/15-LOX代謝物が起炎時に産生され、遺伝子欠損動物では産生量が減少していた。これら代謝物の一部がIL-5産生細胞に対して、抑制的な作用を有することが確認された。
著者
笹井 芳樹
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

我々はこれまでにフィーダー細胞を用いずに、ES細胞の細胞塊を無血清下に浮遊培養ですることで、効率よく神経細胞に分化させる系をまず樹立した(SFEB法)。マーカー解析の結果、SFEB法でES細胞から産生された神経細胞はこれまで産生が困難であった大脳の前駆細胞であることが明らかになり、さらにShhを作用させることにより、この大脳前駆細胞から大脳基底核などの細胞を試験管内で分化誘導することに成功した。この研究により、従来不可能であった試験管内での大脳神経細胞の大量産生が可能なり、大脳の変性疾患(ハンチントン病やアルツハイマー病など)の発症機序の解明や大脳疾患の治療法開発に大きく貢献することが期待される。SFEB法によりES細胞からの前脳の分化誘導は確認されたが、小脳、橋などへの分化効率は低い。小脳、橋などを含む変性疾患に関連する後脳吻側部に着目し、細胞外シグナルによる分化誘導系の樹立を目指し、条件検討を行い、マウスES細胞からの10%程度での小脳主要ニューロンの安定した分化誘導法を確立した。一方、ヒトES細胞分化にSFEB法を応用するにあたっては、ヒトES細胞特有の問題として、細胞死による細胞生存の低さがあった。今年度、この細胞死をROCK阻害剤が抑制することを発見し、大量培養を効率よく行うことが可能となり、これを用いてヒトES細胞からの大脳の分化誘導にも成功した。ヒトES細胞の技術をさらに広く再生医療や創薬に用いるために重要な基盤技術が確立された。
著者
笹井 芳樹
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

代表研究者らはアフリカツメガエルの系を用いて、核内ZnフィンガータンパクTsh3が初期胚体軸極性を制御する必須因子であることを見いだした。Tsh3の機能阻害では、背側体軸の形成が著しく阻害され、腹側化した胚が発生する。機能亢進及び機能阻害実験からWntシグナルを細胞内で活性化することが明らかになった。Luciferaseアッセイから、Tsh3はs-cateninによる核内での標的遺伝子の発現活性化を促進することも判明した。タンパクレベルの解析から、Tsh3はs-cateninに結合し、直接あるいは間接的にその活性を正に制御することがその機序であることも示唆された。Tsh3はsperm entryによって誘導された背側での弱いWntシグナル活性をブーストして、明確な体軸形成につなげる増幅系に関与している可能性が高い。
著者
笹井 芳樹
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1998

神経予定外胚葉はまず中枢神経系原基である神経板と末梢神経原基である神経堤細胞とに分画化される。中枢神経原基・神経板は発生のごく初期に吻尾方向と背腹方向の2軸に沿って大きく分画化され、いわゆる領域特異性を獲得する。吻尾方向には大脳・間脳、中脳、後脳、脊髄が大きく区分され、背腹軸では背側(翼板)、腹側(基板)、中間部に区分される。それぞれの領域には特異的な分子マーカー(ホメオボックス遺伝子など)が既に同定されており、それらを用いて神経細胞がどの領域特異性を獲得したかを判定することが原則的に可能である。しかし、この領域特異性の上流にあって、その個性付け獲得を制御している因子については多くが不明のままである。そこで、領域特異性の上流にある神経分化の個性付け因子を系統的に遺伝子スクリーニングすることを行った。まず初期神経板で働く領域特異的分泌タンパクを系統的にシグナル・シーケンス・トラップ法によって用いて、アフリカツメガエルの系で神経管の背側に位置する非神経外胚葉に早期から発現する新規の分泌因子Tiarinを単離に成功した。H15年度は単離したマウスおよびニワトリホモローグを用いて、これちの種での機能について強制発現を用いて解析し、神経提細胞の産生促進効果を観察した。また、現在2種類のマウス関連遺伝子に関して遺伝子破壊法で機能阻害研究を進めている。研究の促進のため、ES細胞から神経前駆細胞を分化させ、これを用いた試験管内神経パターン形成のアッセイ系を確立した。この系を用いて末梢神経系を含む神経提細胞のES細胞からの分化に世界で初めて成功した。
著者
笹井 芳樹
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

脊椎動物の中枢神経系は領域特異的に背腹軸に沿った極性を有している。背側領域の中枢神経組織の発生制御解析は腹側領域に比して遅れている。中枢神経系背側領域の初期決定に関わる分泌性シグナルの分子実体と誘導源の解明のため、我々はこれらの観点からアフリカツメガエルの系を用いてスクリーニングを行い、前脳を含めた中枢神経系の背側領域の分化を誘導する新規分泌性シグナル因子Tiarinを同定した。本研究では、Tiarinによる中枢神経系の背側領域分化誘導の制御機序を胚・細胞レベルで明らかにするため、Tiarinタンパクがどのようなシグナル伝達系の活性化または抑制によって、細胞分化を制御しているかを明らかにした。まず、Tiarinは既存の背腹軸に関与するシグナル(Shh, Wnt, BMP)との強い相互作用によって働くのかを検討した。その結果、これらのシグナル因子と物理的な結合や受容体の競合などの直接的な相互作用は認められなかった。さらなる細胞内シグナルの検討から、Tiarinとこれらの因子のクロストークは下流シグナルのレベルのみに認められることが判明した。シグナル解析のためにはTiarinタンパクの大量作成が必須であり、293細胞を用いてmg単位の産生に成功した。このタンパクを用いての結合実験から、受容体の多く発現する細胞を複数同定した。プルダウン法により、結合膜タンパクを精製し、複数の候補タンパク質をプロテオミクス的手法によって選別した。さらにTiarinのファミリー遺伝子をニワトリ胚およびマウス胚より複数単離した。そのうちマウスのmONT3について発現解析をノックイン法で行い、神経系や中胚葉組織などの特異的な発現を検出した。ニワトリのcONT1はニワトリ胚での強制発現で神経堤細胞の産生が亢進することを見いだした。
著者
笹井 芳樹
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では初期胚、特に神経系のパターン形成の分子機構を解明するため、Znフィンガー型転写因子およびそれらの関連遺伝子ネットワークの前脳・中脳発生における役割について、アフリカツメガエルを用いて研究を行った。XSa1Fは中枢神経系の吻側領域の決定因子であることを以前に証明したが、本研究ではさらにXSa1Fに拮抗するZnフィンガー型転写因子としてXTsh3を同定し、カエル胚(尾芽胚)の尾側中枢神経系に特異的に発現し、同部位の発生を促進することを見いだした。微量注入法により、XTsh3を外胚葉に強制発現すると神経系を尾側化し、前脳の発生を抑制した。逆にXTsh3-MOによる外胚葉での機能阻害では、前脳の拡大を誘導した。細胞内シグナル解析により、XTsh3はWnt/beta-catenin系を促進することが明らかとなった。XTsh3はbeta-cateninおよびTcf3と結合し、Wntシグナルによる核内転写の強化因子として働くことを証明した。そのことと一致して、中内胚葉でのXTsh3-MOによる機能阻害では、原腸胚での背側軸形成が強く抑制され、胚全体の腹側化が観察された。既に報告していたXSa1FによるWntシグナルに対する反応性の低下に加え、今回の研究ではTsh3が反対の活性を持ち、機能的な拮抗因子として働くことが判明し、XSa1F-Tsh3という2つのZnフィンガー型転写因子によって、細胞のWntシグナルへの反応性が正負に制御される機構が初期胚の軸形成に決定的な役割を果たすことが明らかとなった。
著者
笹井 芳樹
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、哺乳類初期胚における神経外胚葉への分化の制御機序を明らかにするため、多能性幹細胞の試験管内分化系を用いて、この過程を制御する2つのZnフィンガータンパクの機能を解析した。まず、XFDL156のマウスのホモローグであるmZfp12を単離し、mZfp12の強制発現が、ES細胞からの中胚葉分化を抑制し、神経分化を促進することを明らかにした。さらに、新規のスクリーングでZfp521を単離し、これが未分化外胚葉から神経前駆細胞への分化に必須の遺伝子であることを証明した。
著者
黒崎 知博 疋田 正喜
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

申請者らが樹立してきたPLC-γ2欠損マウス(Hashimoto et al.J.Immunol., 165, 1738-1742, 2000)は、著しいTI-II応答性の低下を示しており、このシグナル分子がB細胞の成熟、または、成熟後抗体産生細胞への分化障害が生じていることを強く示唆している。本年度は、著しいTI-II応答性の減弱にも関わらず、PLC-γ2欠損マウスがほぼ正常なT-D応答性を示すことに着目し、この奥に潜むメカニズムの解明に努めた。すなわち、この一見正常に見える免疫応答性が、B細胞の活性化低下にも関わらず、他の免疫担当細胞(T細胞、樹状細胞)がその機能低下を代償しており、結果的に正常に見えるのではないかという仮説を構築し、この仮説の検証を試みた。まず、この仮説の検証の第一歩として、B細胞がIgMからIgGIにクラススイッチしてはじめて、PLC-γ2が欠損するようなマウスを作成した。このマウスでは恒常状態における血清IgGIの含量がコントロールマウスに比して非常に低下していた。このことは、IgMからIgGIにクラススイッチした後、PLC-γ2がIgGI positive B細胞に必須であるか。生存には必須ではないが、IgGIを分泌する細胞への分化に必須であることを示している。当然ながら、このマウスでは、T-D応答性の低下が予測され、現在この可能性を検討中である。また、B細胞以外の免疫細胞の関与も検討する必要があり、ノックアウトマウスを放射線で処理し、このマウスに正常マウス及びノックアウトマウスから得た骨髄細胞を注入して、その効果を調べている。
著者
宿里 充穗
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

Cyclooxygenase(COX)イメージング剤の開発を目的として、非ステロイド性抗炎症薬のうち2-アリールプロピオン酸類を中心に11C標識PETプローブ化を行い、LPS誘発脳内炎症モデルラットを用いたPET撮像の結果、COX-1選択的なケトプロフェンの誘導体の11C標識体(11C-KTP-Me)が特に炎症領域の特異的描出に優れることを見出した。さらに、11C-KTP-Meはミクログリアの活性化に伴うCOX-1の変化を特異的に認識し、ミクログリア特異的マーカーとして有用である可能性が示唆された。また、サルにおいても同様に脳内炎症への集積が確認され、代謝動態もプロとレーサーとして適切なものであったため、今後、ヒトを対象とした臨床応用が期待される。
著者
川野 光興
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

精子では転写が行われていないため、今まで精子を用いた大規模なcDNA配列解析はなされていない。しかし最近の報告により、精子内にもRNAが存在していることが明らかになった。よって本研究では、精子中に存在する転写産物の網羅的同定を塩基配列決定により行い、新規の機能性RNA分子を探索することを目的とした。精子は体細胞とは異なり全体的に非常に凝集したクロマチン構造をとっている。そのような状況下において存在しているRNAの生理機能を解析することにより、精子における遺伝子サイレンシングやゲノム構造の維持機構に関する理解を深められる。これらのデータは、RNAが遺伝物質として機能するという仮説の上に立った候補RNAを探索する基礎データにもなりうると考えられる。今年度の具体的な研究内容を以下に述べる。始めにマウスおよびチンパンジーから運動能力のある精子を採取して全RNAを精製した。今回の解析では、小分子RNAを含むできるだけ多くの転写産物の同定を行えるようにするため、RNAの長さおよび末端の形状に依存しない両末端タグ法を用いてcDNAを調整した。454シークエンサーを用いてcDNAの塩基配列決定を行い、マウスは約45万、チンパンジーは約5万のcDNAタグを得た。生物情報学的解析により、cDNAのゲノムへのマッピングを行いRNAの分類をした。その結果、マウスおよびチンパンジーの精子中にはrRNA、tRNA、mRNAの断片やmiRNA、piRNA、snoRNAなどの機能性RNAが存在することを明らかにすることができた。mRNAとmiRNAの幾つかのものについては、実際に精子中にRNAが存在することをTaqMan qRT-PCR法を用いて確認した。さらに、マウスの精子から新規miRNAの候補を複数同定した。今後は、マウスとチンパンジーの精子RNAプロファイルを比較解析する。