著者
三原 建弘 杉崎 睦 磯部 直樹 牧島 一夫 根来 均 林田 清 宮田 恵美 上野 史郎 松岡 勝 吉田 篤正
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

全天X線監視装置MAXIは2009 年8 月15 日から観測を開始した。本科研費により地上解析計算機と地上ソフトウエアの整備を行い、2009 年12 月から観測データの自動世界公開を行っている。MAXI は3 年9 か月を経た現在でも順調に観測を続けている。3 年間の観測で|b|>10°の高銀緯領域において0.6mCrab 以上の502 個のX線源を検出した。14 個のセイファート銀河からも有意なパワースペクトルを得たが、検出器数が予定より半減、観測時間が半減したため統計負けし、精度の良いブラックホールの質量推定には至っていない。
著者
窪田 杏子
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

(1)論文として、以下の題目でこれまでの成果をまとめ、雑誌にて発表した。『Tumor necrosis factor receptor-associated protein 1 regulates cell adhesion and synaptic morphology via modulation of N-cadherin expression』Kubota K.et al.Journal of neurochemistry(2009)110,496-508(2)上記の論文ではカドヘリンによる細胞間接着がうつ病発症に関与する可能性が示唆されたが、分子レベルでの詳細な解明には至っていない。近年、微小管上を移動するモータータンパク質による輸送の破綻が精神疾患の発症に寄与する可能性が報告されている。さらに、当研究室において新たに微小管上を移動するモータータンパク質とカドヘリン複合体との関わりが見出されたことから、本年度はそのカドヘリンと微小管上を細胞接着部位へと移動することが考えられるKIFC3について詳細な検討を行った。結果、・KIFC3結合タンパク質Xを同定した。・KIFC3またはタンパク質Xの発現を抑制すると細胞間接着に異常が認められた。よってカドヘリンによる細胞間接着の制御に微小管上を運行するモータータンパク質が関わっていることが新たにわかった。この知見は精神疾患発症機序のみならず、細胞間接着の異常によって引き起こされる他の疾患の治療法開発においても大変重要なものである。
著者
五十嵐 誠 望月 優子 高橋 和也 中井 陽一 本山 秀明 馬場 彩 望月 優子 高橋 和也 中井 陽一 本山 秀明
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

研究成果の概要:南極ドームふじ基地において掘削された氷床コアおよそ100m分についてイオン濃度分析を実施し、硝酸イオン濃度プロファイル中の十数箇所に超新星爆発起源と思われる高濃度スパイクを検出した。本研究ではこれらの発現年代を正確に推定するため、ドームふじ氷床コアの硫酸イオン濃度測定結果と大規模火山噴火年代との関連性を考慮して、誤差1年以内の氷の堆積年代(深度と年代の関係)を求めた。
著者
間 陽子 竹嶋 伸之輔 小沼 操 竹嶋 伸之輔 小沼 操
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

我々は以前に、ウシ主要組織適合遺伝子(BoLA)-DRB3遺伝子のタイピング法(PCR-SBT)を開発して牛白血病ウイルス(BLV)誘発性牛白血病の発症に対して感受性および抵抗性を示すアリルを同定した。本研究では、南米に生育するウシ品種に適応した新規タイピング法を開発し、日本のウシを用いて同定した感受性・抵抗性アリルのアメリカ大陸(米国、アルゼンチン、ボリビア、パラグアイ、ペルー、チリ)における分布調査とBLV感染の有無を調査した。
著者
礒村 宜和
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

本研究計画では、ラットの運動皮質と線条体における運動情報と報酬情報の統合の過程を細胞型レベルで調べることを目指した。これまでに独自開発したレバー押しの運動課題の自動訓練装置(特許出願中)を活用し、脳定位固定状態の覚醒ラットに報酬交替性の前肢自発運動課題を約2週間で効率よく学習させた。そして、前肢の自発運動を発現中に、一次運動野が投射する線条体背外側部の単一神経細胞の発火活動を傍細胞記録法で観察するとともに、一次あるいは二次運動野に16チャンネルのシリコンプローブを挿入して多数の神経細胞の発火活動もマルチユニット記録法により計測した。傍細胞記録した線条体細胞は、ドーパミンD1受容体のmRNAの発現をin situハイブリダイゼーション法により検出するとともに、オピオイドμ受容体に対する免疫組織染色により線条体のパッチ・マトリックス構造への帰属を判定した。現在までに、60頭を超えるラットに運動訓練を施し、運動および報酬予測・獲得に関連する発火活動を示す多数の線条体細胞を記録し同定することに成功しており、そのなかには大脳基底核の直接路として黒質網様部などへ投射すると考えられるD1陽性の中型有棘細胞や、間接路として淡蒼球へ投射すると考えられるD1陰性の中型有棘細胞や、高頻度で発火するアセチルコリン作動性と考えられる介在細胞などが含まれていた。また、記録した細胞のほとんどがマトリックスに分布していた。さらに、マルチユニット活動データを含めた詳細な解析を加え、運動情報と報酬情報を統合する大脳皮質一基底核連関の仕組みを明らかにした。
著者
伊集院 良祐
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、一酸化窒素合成酵素(NOS)のPETイメージングを目的として、その分子プローブ開発およびプローブ合成における標識反応の開発を行った。反応開発として、PET標識条件下における炭素-炭素結合、特に最も反応性の低いsp^3-sp^3カップリング反応を放射条件下において行うことに成功した。現在、所属研究室ではsp-sp^3、sp^2-sp^3カップリング反応を効率的に行うことができているが、sp^3-sp^3カップリング反応に成功したことにより、さらに多くの化合物への標識が可能となるものである。
著者
岩田 修永
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

ネプリライシン(NEP)活性低下モデルマウス脳の神経病理を解析し、アルツハイマー病(AD)病理との類似点について検討した。NEP遺伝子を欠損したアミロイド前駆体蛋白質トランスジェニックマウス(NEP-KO×APPtg)脳ではAPPtgマウス脳に比較して加齢依存的に3pyroE型Aβの形成と蓄積が加速し、ヒトと類似するアミロイド病理を示した。NEP-KO×APP tgマウスにさらにアミノペプチダーゼ(AP)A-KOマウスを掛け合わせると、3pyroE型Aβの蓄積が30%抑制されることも明らかになった。また、NEP-KO×APP tg脳ではAPP tg脳に比較して、APNやDPP4の発現量が1.5~2倍近く上昇し、グルタミン酸の環化を触媒するグルタミニルシクラーゼ(QC)の発現量は4倍ほど増加し、上述のペプチダーゼの発現増加量を大きく上まわった。このように、3pyroE型Aβの産生はNEP依存的なAβの生理的分解経路が遮断された場合に促進し、AP/ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)やQCが関与する副経路を介して生じると推察される。QCはアストロサイトに局在することから、炎症過程や細胞の保護・修復等に関わる酵素であると考えられるので、脳内にカイニン酸を注入して炎症反応を惹起させると、QCタンパク量は野生型マウスで10倍、NEP-KOマウスで18倍増加した。同様に、APP tgマウス脳ヘカイニン酸を注入すると3pyroE型Aβの形成が促進することも明らかとなった。これらの結果は、NEP活性の低下は炎症応答の亢進を介してQC発現を増強することを示唆する。このように、アミロイド蓄積によって惹起された炎症反応はQC発現を増強し、NEPの活性低下はアミロイドの蓄積および炎症反応の惹起を異なる作用点で増強し、結果的に3pyroE型Aβの形成と蓄積を進行させると考えられる。
著者
岡ノ谷 一夫 入來 篤史 時本 楠緒子 上北 朋子 沓掛 展之
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

社会性齧歯類デグーは豊富な音声レパートリーを有し,約20種類の音声を状況別に使い分けコミュニケーションをする。デグーの発声中枢PAGの電気刺激実験の結果から、状況依存的発声はより上位の領域において制御され,特定の文脈における適切な発声が可能になっていると考えられる。学習・記憶研究において,海馬は文脈認知の有力な候補であるが,発声と海馬の関与は未だ明らかでない。文脈依存的な発声行動における海馬の役割を明らかにするため,海馬損傷を施した個体の発声の変化を飼育場面と求愛場面において検討した。海馬損傷個体において歌頻度が減少し、求愛開始時に特徴的な導入行動が欠落するなどの歌の変化が見られたほか、機能の異なる音が求愛歌中に出現した。求愛行動に関しても、海馬損傷個体では雌の拒絶の発声にも関わらず、雌に対する接触行動が増加した。また、海馬損傷個体では、同性個体に対しても接触頻度が増加し、喧嘩頻度の増加がみられた。ただし、海馬損傷個体が喧嘩の開始をすることはなく、他個体の拒絶にも関わらず接近行動を繰り返すなど、対他個体への反応様式の変化が喧嘩を誘発する傾向があった。親和行動に関しては、グルーミング行動や他個体に寄り合って寝る行動の減少がみられた。物体に対する馴化や新奇物体の認知に関しては、海馬損傷個体に異常はなかった。これらの結果から、海馬が音声・非音声コミュニケーションにおける状況の認知に寄与していることが示唆された。
著者
宮脇 敦史 濱 裕 佐々木 和樹 下薗 哲 新野 祐介 阪上 朝子 河野 弘幸 深野 天 安藤 亮子
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

個体、器官、組織内の個々の細胞について、その働きに関する時空間パターンを調べる技術を開発してきた。本研究では、細胞周期プローブFucciの開発とその発生、癌研究への応用、レチノイン酸プローブGEPRAの開発とその発生研究への応用、生体固定組織の透明化技術Scaleの開発とその中枢変性疾患研究への応用などを行ってきた。技術間のcrossoverを図ることに努めた。たとえばFucci+Scaleで、マウス胎仔における細胞の増殖と分化の協調パターンを包括的に可視化した。また、Fucci+GEPRAで、魚胚の体節形成における細胞周期とレチノイン酸濃度勾配との関係について理解することが出来た。
著者
ペリー アンソニー VERMILYEA M.D.
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

当研究チームは、受精直後数時間中に起きるエピジェネティックなクロマチン再構築に関する研究を続けており、これまでに減数分裂再開の起因となる物質を精子頭部より採取し、これを減数分裂第II期中期の卵母細胞へ移植する方法を見付けている。この方法により、卵子や雄系クロマチンによる介入の変化を観察する事が可能となりその後、同ステージの受精卵で起こる変化と比較する事も可能となった。(この減数分裂再開は精子由来の活性因子がまだ衰退していない受精卵で通常起こる。)この結果、減数分裂第II期中期と受精卵で起こるヒストン修飾に相違が見られる事が判明した。そこでこの相違の列挙に取りかかったが全ての相違の掌握に限りがあり、そもそも基本的な再構築がどの様に起こっているのかまだ分かっていなかった。この事を考慮に入れて、当プロジェクトでは発生学と分子細胞の方法を統合し、より包括的に初期段階のヒストン変化を列挙させる事にした。またこの結果を元に我々は修飾を引き起こす遺伝子制御を解析しようとした。この研究は非常に研究結果の期待出来るものであって、現在取りかかっているマウス初期胚で起こるエピジェネティックな制御に関する研究への導入となる基礎を築いた。しかしながら残念な事に当プロジェクトは研究途中で中断させなければならなくなったが、ここで大きな進展のあった研究は現在も引き続き継続させている事を報告したい。当プログラムは米国籍の特別研究員を日本の研究室において研究する機会を与え、今後も米国と日本の研究室が研究交流を続ける機会を与えてくれた事は多いに意義があると言える。
著者
ANTHONY Perry
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

我々は、マウスでの遺伝子導入(tg)によるRNA干渉(RNAi)法の開発を試みた。まず、この導入実験として、短い二重鎖RNAによるRNAi(siRNA)実験を未成熟卵(GV)において行い、そのターゲットに対するRNAi効果(遺伝子発現抑制効果)を示した。我々が選んだターゲットは、その遺伝子欠損に由来する表現系が既知であるものから、今回のRNAi実験により新たな表現系が発見されたものまでを含む。RNAiによるターゲットの転写産物の減少度はGV卵1個レベルでの準定量的RT-PCRを実施し確認した。次に、我々はRNAポリメラーゼIII(Pol III)によりショートヘアピン型RNA(shRNA)を転写しsiRNAを産生するベクターを構築した。このshRNAのターゲットは、我々が初期に提案したeGFP、チロシナーゼおよびレプチンとした。これらのshRNA発現ベクターの有効性は、哺乳類培養細胞の遺伝子導入実験によるスクリーニングシステムによって検討した。我々のシステムでは、ターゲット発現ベクターとしてヽターゲットのオープンリーディングフレームの下流にires(mRNA内部のリボゾーム結合サイト)によってレポーター遺伝子である蛍光タンパク質venusを発現させるフレームを挿入したバイシストロン性発現ベクターを用いた。このベクダーでは、1種類のmRNAから2つのオープンリーディングフレームが翻訳される。したがって、これをshRNA発現ベクターと共に培養細胞に導入した場合、その蛍光タンパク消失の有無を観察することでターゲットに対するRNAi効果を検出することができる。我々は、このスクリーニング法により候補shRNAから効果の高いshRNAを選択し、各トランスジェニックマウス系統の作出に用いた。本スクリーニングシステムはRNAポリメラーゼII (pol II)による次世代RNAiベクターの開発にも使用している。
著者
加藤 忠史 垣内 千尋 林 朗子 笠原 和起 窪田 美恵 福家 聡 岩本 和也 高田 篤 石渡 みずほ 宮内 妙子 亀谷 瑞枝 磯野 蕗子 小森 敦子
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

XBP1を持たない神経細胞では、BDNFによるGABA神経細胞マーカーの発現増加が減弱していた。また、XBP1の標的遺伝子であるWFS1のノックアウトマウスは、情動関連行動の異常を示し、変異Polg1トランスジェニック(Tg)マウスと掛けあわせると、Tgマウスの表現型を悪化させた。Polg1マウス脳内で、局所的に変異mtDNAが蓄積している部位を同定した。
著者
高島 忠之
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

様々な薬物のPET評価検討の後、Celecoxib代謝物SC-62807の^<11>C標識体である[^<11>C]SC-62807を見出した。[^<11>C]SC-62807は正常マウスで代謝を受けずに速やかに胆汁排泄、腎排泄されるが、Bcrpノックアウトマウスではこれらの排泄が劇的に低下することをPET評価で明らかにした。本研究により[^<11>C]SC-62807を用いたin vivo PET評価でBcrpの機能を比較的シンプルに解析できる可能性が動物試験により実証された。
著者
竹久 妃奈子
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

申請者は、世界で初めて塩害水田において選抜された耐塩性系統6-99Lの耐性に浸透圧ストレス耐性機構が関与していること、その原因遺伝子が1遺伝子であり、第6染色体に座上している可能性を示した。さらに申請者は、その遺伝子が、塩害水田におけるイネの草丈や千粒重、整粒歩合を高く維持する能力を有することを示唆した。本研究の結果、この1原因遺伝子を調節することによって、野外の塩害水田におけるイネ育種が可能となる可能性を示した。